文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針
当社グループは、“業界一流のメーカーとして、本業を極め、本業に徹し、一流の商品をお客様にご提供することを通じて、社会の発展に貢献する”を経営理念とし、顧客ニーズに沿った商品開発に注力するとともに、自然環境の保護と社会の発展に貢献すべく企業活動を展開しています。
(2) 経営戦略等
当社グループでは、これからの厳しい競争時代を勝ち抜くため、着実に業績の伸展を目指し、次のような施策を実践していきます。
① 森林資源を保全する法正林施業(植林、育林、間伐、伐採)を採用したニュージーランドの育林事業により安定した品質と量の原材料確保を図ります。
② 貴重な資源を更に活かす為、高度な木材加工技術の更なる向上を図ります。
③ 木が持つ潜在能力を梃子(てこ)に、新成長市場であるアジア市場や国内のリフォーム、非住宅、商環境市場などで、“勝てる市場×勝てる仕掛け”を創造します。
④ 変化する市場の本質を見極め、魅力ある商品・サービスを提案し、新たなファンを創造します。
⑤ 新たな戦略を全社で迅速に推進する為、国内外の製造ネットワークを更に整備し、効率的な運営とコスト低減を図るとともに、社内の仕組みを再構築します。
⑥ 認証材を活用した国内外のニーズに応えていきます。
当社グループの森林経営に対する基本方針は、正しい林業を行うことで、二酸化炭素を吸収する森林面積を減らすことなく、一定の周期で毎年一定の木材を永続的に収穫することです。正しい林業は、まさに資源の循環にほかならず、環境経営そのものと認識しています。また、木材は、切削、曲げ、接着など加工時においてもその加工性の良さから、もともと消費エネルギーの少ない素材です。当社グループはその木材を更に無駄なく効率よく使う方法を常に考え続け、生産過程で生じる木くずもバイオマス発電に使用しています。経済効率を上げることは、同時に環境にも貢献することになります。当社グループは、収益を上げ、雇用を生み出し、税金を納め、社会の発展に貢献することが、第一の社会的責任であると考えています。企業が社会性のある集合体であり、社会の中で生かされている以上、社会に対してどれだけ貢献できるかが問われることは当然のことと認識しています。上記の通り、当社グループの経営戦略の実践は、サステナビリティについての取組でもあります。
当社グループの強みであるニュージーランドで産出される木材を、一貫生産・国際分業体制をもって、さらに競争力のある製品として作り上げるべく、研究開発や知的財産投資を進めるとともに、適正価格で顧客に提供するために、グローバルな視点で商品開発・生産・販売・管理の各部門を運営することのできる人材を育成するための人的資源投資を積極的に行ってまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、企業価値の向上と財務体質の強化を図るための経営指標として自己資本利益率(ROE)の向上を目指し、労働生産性の向上などによる収益性の改善や自己資本比率の維持・向上に取り組んでいます。また、事業の拡大と安定的な収益を獲得するために、グループ全体で連結売上高1,000億円を目指しています。
(4) 経営環境
当社グループの経営環境は、構造的な人口減少問題等により市場が縮小していく「量の面での変化」とともに、住宅の高性能化や住宅環境まで視野に入れた「質の面での変化」が同時に起こっており、当社グループがこれからの時代を生き抜き成長するためには、住まい手にとって魅力のある商品や提案を強化するとともに、リフォームや非住宅施設などの新しい市場を開拓していかなければなりません。また、住宅業界における職人不足による住宅品質の低下や工期遅れ、コスト高なども大きな課題となっています。このような環境下で、市場の変化をいち早く察知し、現状を肯定することなく自己変革に努め、常に当社グループ自らが環境の変化に合わせて変わっていくことが必要となっています。AIやIoTといったデジタル技術などを活用し、生産性を向上させることで、新たな付加価値の創造と売上・収益の向上を目指しています。
具体的には、国内においては新築戸建市場に加えてリフォーム、非住宅、商環境市場などの新市場の開拓、また海外においては発展が期待されるアジア圏の市場の開拓を主題とする成長戦略を策定し、当社グループ一丸となってこれらに取り組んでいます。
1990年にニュージーランド北島で森林経営権を取得し、当社グループが培ってきたノウハウによる植林事業を開始してから30年の時が経過しました。毎年、植林面積の拡大を図り、現在では約40,000haの森林について、森を30区画に分けて木の植林―育林―伐採を繰り返す持続可能な森林経営を行っています。手間ひまかけて育ててきたラジアータパインの優良原木がこれから大量に伐期を迎えますが、このことは当社グループが、同業者の追随を許さない品質の高い「無垢材」という強力な武器を大量に獲得することを意味します。大量に出材されるラジアータパインやその他国内外で調達する無垢材をふんだんに使い、価格競争に巻き込まれない高品質で付加価値の高い商品をもって新市場へ進出します。当社グループが永年に亘り築きあげた山林から木材加工までの一貫生産体制を最大限に発揮して商品を開発・生産・販売する仕組みを構築し、独創的に新市場を開拓していきます。
(5) ESG(サステナビリティ)への取組みについて
① 環境(E)
環境については、当社グループでは「気候変動の深刻化と森林資源の枯渇」を課題と捉え、木の価値を最大限に生かした地球を守る経営を目指し、持続可能性や環境に配慮した木材・資材調達のため、自ら森を育て、加工・販売までを一貫して行う森林経営の徹底と違法伐採木材の不使用により、森林資源の持続的な活用と保全を行っています。
主な取組みとして、ニュージーランドで木を植え、育て、伐採し、また木を植える、木の年間生長分だけ毎年伐採を行う法正林施業によって持続可能な森林経営を行うとともに、ニュージーランド以外から調達する木材については、違法伐採木材を使用せず、合法的な木材利用を進め、森林資源の保全にも努めています。また、カーボンニュートラル(ゼロ)を目指し、バイオマス発電の実施や再生可能エネルギーによる電力の利用推進、クリーンな材料調達の証明としてニュージーランド子会社の全森林・全工場、香港子会社、フィリピン子会社工場および国内の木質建材工場における森林認証の取得を行っています。
② 社会(S)
社会については、当社グループでは「高齢化社会=労働生産人口の減少」を課題と捉え、木を知りつくし、木とともに歩んできた木質総合建材メーカーとして、木のぬくもりに包まれた高品質で安心・安全で、快適な空間の実現を目指しています。
主な取組みとして、長寿命化住宅実現のための技術・部材開発(耐久性の高い部材やリフォームしやすい内装部材開発、耐震性の高い構造躯体の実現)や設計から品質管理まですべてのラインにおけるISO9001/14001認証取得と継続的改善を実施しています。また、建築現場における労働生産性向上のため、省施工商品の開発や施工説明書のデジタル化などデジタルコンテンツの充実を行っています。
③ ガバナンス(G)
ガバナンスについては、当社グループでは「企業活動の健全性と公益性の維持・向上」を課題と捉え、挑み、成長できる組織作りや公正かつ健全な事業活動の継続を目指し、人材育成のための人的資源投資を積極的に行うとともに、健康経営や働き方改革の推進を通じて、従業員一人ひとりの挑戦を応援し、のびのびと成長できる職場づくりを目指しています。
主な取組みとして、経営理念手帳による企業理念の浸透や、自ら挑む人材の育成に向けた階層別・職務別研修、資格取得奨励一時金の給付、ハラスメント行為の禁止徹底に向けた継続的啓発と内部通報制度の整備、全従業員へのストレスチェックとカウンセラーによるメンタルヘルスケアによる心身の健康サポートを実施しています。また、公正かつ健全な事業活動の実践として内部管理体制の構築とコンプライアンス規程の整備、継続的啓発の実施等の徹底のもと、高い企業倫理の育成と健全な企業風土の醸成を図り、トップを含めたすべての従業員が、公正かつ健全な事業活動を実践しています。
(6) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
新設住宅着工戸数が今後も減少を続ける見通しの中、当社グループがこれからの時代を生き抜き成長するためには、既存市場でこれまで以上の存在感を示し続けるとともに、新しい市場に経営資源を段階的にシフトさせて行くことが課題と考えています。
当社グループは、新しい市場であるリフォーム、非住宅、商環境施設や海外市場に向けて新たな商品を開発し、新たな生産・販売体制、仕掛けで既存の新築市場の動向に左右されない企業を目指します。
国内事業では、製品ユニット単位の商品戦略を軸に商品開発を行うとともに販売・プロモーション、生産などの各機能の強化を図ります。
商品開発に関しては、お客様から選ばれ喜ばれる木質商品として、木材の特性を活かした本物志向の無垢商品や収納商品、職人不足に対応した省施工商品などを開発します。また、ラジアータパインのプルーン材(枝打材)を活用し、メイン商材(ドア・フロア)に続く商品の開発や端材を有効活用した商品の開発を行います。
販売・プロモーション機能に関しては、新たな手法・体制・仕組みで、既存市場に加えて、新市場・成長市場の開拓を目指します。そのためには、人材活用の多様化やITツールの活用等による営業組織力の拡充により、新たな市場への販売体制強化、オンライン型営業による商品訴求力向上・顧客接点強化と、訪問型営業の高効率化を行います。
生産機能に関しては、品質や生産性の向上を目指し、コスト競争力を強化します。また、マスカスタマイゼーションへの対応(一品一様のカスタム品を高度な生産技術で実現)やモノづくりの継承を推進するとともに、情報の一気通貫や自動化(AI・IoT・ロボット)等により部分最適から全体最適を目指します。
また、間接機能に関しては、システム部門では販売・生産などに関わるユーザーが活用しやすいデジタルツールの開発により、属人化した定型業務から、創造的業務へのシフトを推進します。物流部門では運転手不足や待機ロス等の課題により生じる配送リスクへの対応を進めています。管理部門では人事マネジメントシステムの一段の高度化に取り組みます。
海外事業では、ニュージーランド子会社は当社グループ工場向けの生産数量を確保した上で外販の促進を行い、インドネシア子会社はさらなるインドネシア国内市場の開拓と欧米の海外販路開拓を進めています。
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