有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、後述のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 業績の変動要因について
① 新設住宅着工戸数の減少や職人不足による工期遅れの影響について
当社グループは、住宅建材及び住宅設備機器の製造販売を主たる事業としており、国内販売に関しては新設住宅着工戸数の減少や職人不足による工期遅れがもたらす販売減が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
主な対応策として、新築戸建市場に加えてリフォーム市場や非住宅市場の開拓や海外での販路拡大など新しい顧客開拓に注力するとともに、職人不足に対応した省施工を可能にする商品開発等でその影響の軽減を図っています。
② 原材料の調達リスク及び価格変動リスクによる影響について
当社グループは、床材を主体とした木材の二次加工品の製造及び造作材等木質建材商品の加工販売を主要な事業としており、原材料である木材について、調達が困難となった場合や価格が高騰した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
主な対応策として、ニュージーランド子会社Juken New Zealand Ltd.において30年サイクルの循環型の持続可能な山林経営を行い、当社グループの原材料の主要な供給元とすることで木材の調達リスクや価格変動リスクを軽減しています。また、国内産の木材など、ニュージーランド子会社以外からの木材調達についても、調達先の多様化などで安定的な調達に努めています。
③ 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響について
新型コロナウイルス感染症の感染拡大について、経済面では、対面での顧客サービスを行う産業などに依然として影響が残るものの、政府の経済支援策等もあり、全般的には一時の大幅な景気低迷は脱した状況にあります。一方、感染力の強い変異株のまん延などで、一部地域では以前にも増して感染者数が急増しており、今後の動向に留意が必要な状況となっています。こうした感染者の急増が当社グループの国内・海外の営業拠点・製造拠点で発生した場合、営業・生産活動が低迷・中断することで当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
主な対応策として、当社グループ各社において、各国政府・保健当局等の要請・指導に沿った感染防止対策・クラスター防止対策を徹底するほか、生産、供給面においては海外子会社を含めたサプライチェーンの一層の強化を、販売面においてはニューノーマル(コロナ禍後の新常態)を見据えた新たな営業プロセスとして従来の「訪問型営業」に「オンライン型営業」を加え、顧客接点の増強や営業生産性の向上を図っています。また、ITツールの整備、活用、定着化を進め、生産性を向上し経費削減に努めながら、テレワークなどにも柔軟に対応しています。なお、万一、上記のような事態が発生した場合、社内で定めた緊急時の対応を実施し、影響を最小限にとどめるよう対応します。
④ 為替変動による影響について
当社グループは、ニュージーランド子会社Juken New Zealand Ltd.からの木材の仕入れに関しては決済条件を円建てとしており、当社は為替の変動による影響は受けないものの、Juken New Zealand Ltd.ではニュージーランドドルの為替相場の変動によって、為替差損益が発生する可能性があります。また、海外子会社の借入金につきましても、現地通貨以外の通貨建てによる借入金において為替差損益が発生する可能性があります。
主な対応策として、為替変動が当社グループに与える影響度合いを勘案する中で、必要に応じて為替予約等によるリスクヘッジを行っています。
⑤ 木質バイオマス燃料の安定確保の影響について
木質バイオマス発電の運営におきましては、安定的に燃料を確保することが重要となりますが、当社では、森林から直接産出する「間伐材等由来の木質バイオマス」、当社グループ内も含め製材所や木材加工所から生じる端材・木屑などの「一般木質バイオマス」、建築解体現場から排出される「建設資材廃棄物」に加えて、フィリピン子会社で加工した木質燃料を輸入するなど、安定的に燃料調達を行っています。しかしながら、近隣での新たな大規模バイオマス発電所の稼働や自然災害などの不測の事態等により、社内外からの木質バイオマス燃料の供給が中断または減少した場合や品薄等により燃料価格が高騰した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、発電所が重故障等による長期停止に及んだ場合は電力売上が減少する可能性があります。
主な対応策として、フィリピン子会社で加工した木質燃料の輸入を増やすことで自社調達比率を上げ、外部調達の影響を縮小しています。加えて「間伐材等由来の木質バイオマス」の供給業者を増やし自然災害リスクの分散を図っています。
発電所の重故障等による長期停止対応策として粗悪な燃料を排除するためのふるい機や選別機の活用やメーカーによる定期点検と所員による日常点検等の徹底、予兆診断等の所員のレベルアップを徹底しています。
⑥ 地震・津波・台風等の大規模な自然災害による影響について
地震・津波・台風等の大規模な自然災害が発生した場合、当社グループの生産・物流・販売活動に影響を与え、財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
大規模な自然災害による被害を完全に回避できるものではありませんが、主な対応策として、当社グループで策定した規程・ルールに基づき、非常時を想定した全社的なリスク管理体制を構築、運営しています。
具体的には安否確認システムの導入や防災訓練の定期的な実施、地震保険への加入などを実施しています。
⑦ 海外展開にともなうリスクについて
当社グループは、ニュージーランド、フィリピン、インドネシアなど海外での投資や事業展開を進めています。これら海外への事業進出には、予期しない法律又は規制の変更、政治又は治安混乱、雇用環境の変化、テロ・戦争等といったリスクを内在しており、これらは今後の事業に影響を及ぼす可能性があります。
主な対応策として、海外の政治・経済情勢の情報収集に努め、必要に応じて外部専門家の助言等も得る中で的確かつ迅速に対応しています。
⑧ 固定資産の減損会計による影響について
当社グループは、有形固定資産や美術品等の固定資産を保有していますが、これらの資産については減損会計を適用しています。有形固定資産は当該資産から得られる将来キャッシュ・フローによって資産の帳簿価額を回収できるかどうかを検証しており、美術品は美術専門家等の第三者より入手した価格に基づき算定した価格を回収可能価額として、減損が必要な資産については適切に会計処理を行っています。しかし、将来の環境変化により固定資産の将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合や美術品の回収可能価額が大きく下落した場合、追加の減損処理により、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
主な対応策として、これらの資産価値を定期的に確認し、可能な限り価値低下を招かない方策を継続的に検討・実施しています。
⑨ 情報システムに関するリスクについて
当社グループは、生産、販売、管理等の情報をコンピュータにより管理しています。情報システム及び情報ネットワークは欠くことのできない基盤であり、これらの情報システムの運用については、大規模災害による被災、コンピュータウイルス感染によるシステム障害、ハッキングによる被害等によるシステムダウン及び外部への社内情報の漏洩が生じた場合、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社の想定を超えた技術による情報システムへの不正アクセスやコンピュータウイルスへの感染などにより、当社グループの情報システムに障害が発生したり、外部へ社内情報が流出する事態が発生したりした場合、当社グループの財政状態及び業績に、より大きな影響を及ぼす可能性があります。
主な対応策として、適切なウィルス対策ソフトの導入、ソフトウェア更新による脆弱性解消、不正アクセス常時監視等のセキュリティ対策を講じるとともに、インシデント発生時の対応体制の強化に取り組んでいます。
⑩ 温室効果ガス削減(脱炭素)への世界的な取り組みの進展について
2021年に開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)における論議や、同時期に発表されたIFRS財団による国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)設立の動きは、企業の気候変動への取組みを劇的に変える可能性があります。これまで2015年に国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)においてパリ協定が採択され、各国で批准されたのを機に、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガス(GHG)の削減を目的とした取り組みが世界的に進められています。今後、地球温暖化対策として規制の強化等により、これらに関連する対策費用が増加する場合や、特定地域における法令又は規制を遵守することが困難になった場合、当該地域における当社グループの事業運営が影響を受ける可能性があります。
主な対応策として、ニュージーランド子会社Juken New Zealand Ltd.(JNL)において30年サイクルの循環型の持続可能な山林経営を行い、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガス(GHG)の削減に努めています。
当社グループが目指すべき環境に対する主な取り組みは、木を活かしたものづくりを通じて、森林を保全し、自然環境を守ることです。森林は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスのひとつである二酸化炭素の削減に向けた有効な手段として注目されています。JNLが経営する約40,000haの森林におけるラジアータパインによる二酸化炭素の吸収量は年間70万トンになります。温室効果ガスである二酸化炭素は森林で樹木に吸収された後も炭素として木材中に固定されています。木材製品を生産することは植林で吸収した二酸化炭素を炭素として固定する貯蔵庫を生産しているといえます。JNLが2021年度に創出した木材の量は17.3万トンでこれによる炭素固定量を二酸化炭素に換算すると14.5万トンでした。今後、当社グループは、温室効果ガスの削減(脱炭素)に継続的に取り組み、様々な媒体を使って適時に情報開示に努めていきます。
(2) ニュージーランドにおける事業内容及び業績・総資産の推移について
当社グループは、ニュージーランドにおいてJuken New Zealand Ltd.を通じてラジアータパイン等の植林を含む山林経営を行っています。
山林経営は木材市況変化への対応力を高めると同時に原材料調達の安定化や部材調達コストの低減に役立っています。山林経営につきましては、立木の伐採可能量の増加に対応して設備投資が必要となっています。そのため、連結キャッシュ・フローにおきましては、投資活動により使用する資金の多くはニュージーランドにおける投資に充当しています。
ニュージーランドに関する内部取引を含む売上高、経常利益、総資産の推移は次のとおりです。
(ニュージーランドの売上高、経常利益、総資産の推移)
|
|
2018年3月期 (百万円) |
2019年3月期 (百万円) |
2020年3月期 (百万円) |
2021年3月期 (百万円) |
2022年3月期 (百万円) |
ニュージーランド |
売上高 (注) |
17,092 (7,097) |
15,481 (7,004) |
15,344 (7,200) |
15,882 (6,711) |
18,270 (6,209) |
経常利益又は 経常損失(△) |
31 |
△1,075 |
△38 |
491 |
△287 |
|
総資産 |
32,540 |
29,786 |
27,695 |
33,465 |
37,936 |
(注) 売上高下段の括弧内数値は、所在地間の内部売上高又は振替高です。
(3) 有利子負債依存度について
当社グループにおける有利子負債依存度は、2022年3月期末35.4%となっています。当社グループにおきましては、今後も経営資源の効率化等により、有利子負債を適正水準に保つ方針ですが、今後の金利動向等金融情勢の変化によっては当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(有利子負債残高、有利子負債依存度の推移)
|
2018年3月期 |
2019年3月期 |
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
総資産(百万円) |
86,372 |
83,884 |
80,688 |
91,142 |
95,062 |
純資産額(百万円) |
40,850 |
38,976 |
36,497 |
41,129 |
44,188 |
有利子負債残高(百万円) |
33,398 |
32,361 |
30,921 |
35,622 |
33,639 |
自己資本比率(%) |
46.0 |
45.2 |
44.2 |
44.0 |
45.2 |
有利子負債依存度(%) |
38.7 |
38.6 |
38.3 |
39.1 |
35.4 |
(注) 期末有利子負債残高は、社債及び借入金の合計額です。
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