当連結会計年度において、2020年11月2日に行われたOlympus Surgical Technologies Americaのノーウォーク工場取得による企業結合に係る暫定的な会計処理の確定および、クラウド・コンピューティング契約におけるコンフィギュレーションまたはカスタマイゼーションのコストについて会計方針の変更を行っており、遡及処理の内容を反映させた数値で前連結会計年度との比較・分析を行っています。
また、当連結会計年度より、報告セグメントとして記載する事業セグメントを変更しており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 4.事業セグメント」の「報告セグメントの変更等に関する事項」をご参照ください。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
① 財政状態および経営成績の状況
当社グループはMissionに「人材能力とコア技術の多様性」を成長の原動力として、高い競争力を有する特徴ある製品・サービスの創出によりお客さま価値を実現し、「人々の豊かな生活」の実現に寄与することを掲げています。このMissionのもと、2030年のあるべき姿をサステナビリティビジョン(長期ビジョン)とし、バックキャストして2023年に目指すべき中期ビジョンとそこに至るための戦略を第7次中期経営計画として定めています。第7次中期経営計画では、これまでに獲得・構築したグローバルベースの事業基盤を最大限に活用し、シナジーの最大化による成長基盤の確立を目指しています。
当連結会計年度におけるグローバル経済情勢は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が残る厳しい状況にあったものの、欧米を中心としたワクチン接種の進展や財政出動などにより経済活動が再開し、全体的には景気回復の動きとなりました。年前半は世界の生産と貿易が急回復した一方で、年後半には半導体不足や原材料価格の高騰など供給面の制約により景気回復のペースは鈍化しました。わが国の経済については、海外経済の改善に伴う輸出の増加などにより景気の持ち直しが続いたものの、度重なるCOVID-19の感染拡大や半導体不足など供給面での制約により、景気回復のペースは緩やかなものとなりました。
このような状況の下、当連結会計年度の業績につきましては、ディバイス事業の需要継続、産業資材事業の需要拡大やメディカルテクノロジー事業のCOVID-19からの需要回復などにより、売上高は堅調に推移しました。下半期においては、ディバイス事業のスマートフォン向けの需要減少に加え、半導体不足などの影響を受けて一部で需要変動がありました。利益面については、供給面の制約に伴う原材料費や人件費などの増加はあったものの、堅調な製品需要の影響に加え、生産の平準化や生産性向上策の効果などにより、営業利益は前期比で大幅に改善しました。
これらの結果、当連結会計年度の連結業績は、売上高は1,892億85百万円(前期比5.2%増)、利益面では営業利益は173億63百万円(前期比138.5%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は158億59百万円(前期比124.6%増)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりです。
産業資材
産業資材事業は、さまざまな素材の表面に付加価値を与える独自技術を有するセグメントです。プラスチックの成形と同時に加飾や機能の付与を行うIMD、IMLおよびIMEは、グローバル市場でモビリティ、家電製品などに広く採用されています。また、金属光沢と印刷適性を兼ね備えた蒸着紙は、飲料品や食品向けのサステナブル資材としてグローバルベースで業界トップのマーケットシェアを有しています。
当連結会計年度においては、半導体不足などの供給制約が製品需要に影響を与えましたが、モビリティ向けの加飾製品やサステナブル資材の蒸着紙などの製品需要は総じて旺盛なものとなり、売上高は前期比で伸長しました。利益面については、原材料費の増加など供給制約の影響はあったものの、力強い製品需要に加え、収益構造の改善などにより、営業利益は前期比で大幅に拡大しました。
その結果、当連結会計年度の連結売上高は605億43百万円(前期比23.9%増)となり、セグメント利益(営業利益)は51億61百万円(前期比501.4%増)となりました。
ディバイス
ディバイス事業は、精密で機能性を追求した部品・モジュール製品を提供するセグメントです。主力製品であるフィルムタッチセンサーはグローバル市場でタブレット、スマートフォン、携帯ゲーム機、産業用端末(物流関連)、モビリティなどに幅広く採用されています。このほか、気体の状態を検知するガスセンサーなどを提供しています。
当連結会計年度においては、スマートフォン向けの製品需要が下半期に入り減少局面を迎えた一方で、タブレット向けや産業用端末向けなどの製品需要は堅調に推移しました。製品需要の継続による生産平準化や生産性向上策などが寄与し、営業利益は前期比で大幅に拡大しました。
その結果、当連結会計年度の連結売上高は969億71百万円(前期比5.6%減)となり、セグメント利益(営業利益)は142億42百万円(前期比40.6%増)となりました。
メディカルテクノロジー
メディカルテクノロジー事業は、医療機器やその関連市場において高品質で付加価値の高い製品を提供し、人々の健康で豊かな生活に貢献することを目指すセグメントです。心疾患向けを中心に幅広い分野で使われる低侵襲治療用の手術機器や医療用ウェアラブルセンサーなどの製品を手がけており、現在はグローバルベースで大手医療機器メーカー向けの開発製造受託(CDMO)を展開するとともに、医療機関向けに自社ブランド品を製造・販売しています。
当連結会計年度においては、COVID-19の影響により減少した製品需要の回復が続き、売上高は前期比で着実に伸長しました。米国における原材料費や人件費の増加などが収益性を圧迫し、営業利益は前期比で概ね横ばいとなりました。
その結果、当連結会計年度の連結売上高は241億76百万円(前期比17.5%増)となり、セグメント利益(営業利益)は7億76百万円(前期比21.8%減)となりました。
当連結会計年度末における総資産は2,092億74百万円となり、前連結会計年度末(2020年12月期末)に比べ97億20百万円増加しました。
流動資産は1,035億46百万円となり、前連結会計年度末に比べ109億21百万円増加しました。主な要因は、営業債権及びその他の債権が73億80百万円減少した一方、現金及び現金同等物が172億63百万円、棚卸資産が16億37百万円増加したこと等によるものです。
非流動資産は1,057億28百万円となり、前連結会計年度末に比べ12億1百万円減少しました。主な要因は、為替換算等の影響によりのれんが16億31百万円増加した一方、有形固定資産が34億93百万円減少したこと等によるものです。
当連結会計年度末における負債は1,110億10百万円となり、前連結会計年度末に比べ66億20百万円減少しました。
流動負債は525億73百万円となり、前連結会計年度末に比べ316億89百万円減少しました。主な要因は、営業債務及びその他の債務が133億35百万円、社債及び借入金が169億64百万円減少したこと等によるものです。
非流動負債は584億36百万円となり、前連結会計年度末に比べ250億69百万円増加しました。主な要因は、社債及び借入金が244億38百万円増加したこと等によるものです。
当連結会計年度末における資本は982億64百万円となり、前連結会計年度末に比べ163億40百万円増加しました。主な要因は、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上等により利益剰余金が136億34百万円、為替換算等の影響によりその他の資本の構成要素が29億71百万円増加したこと等によるものです。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ172億63百万円増加し、423億30百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は187億90百万円(前期比28.3%増)となりました。これは税引前利益194億99百万円の計上に対して、主に営業債務及びその他の債務の減少額として119億27百万円、法人所得税の支払額として38億39百万円計上した一方、減価償却費及び償却費として92億58百万円、営業債権及びその他の債権の減少額として81億22百万円計上したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は68億71百万円(前期比406.3%増)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出として66億61百万円、無形資産の取得による支出として9億36百万円計上したこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は26億9百万円(前期は59億97百万円の支出)となりました。これは主に短期借入金の返済による支出として130億13百万円、リース負債の返済による支出として18億72百万円、長期借入金の返済による支出として135億65百万円、社債の償還による支出として28億40百万円計上した一方、長期借入れによる収入として248億54百万円、社債の発行による収入として99億45百万円計上したこと等によるものです。
③ 生産、受注および販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。
(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 金額は、販売価格によっています。
3. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。
(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。
(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しています。
2. 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合
3. 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
当社グループの当連結会計年度における経営成績につきましては、売上高は、前連結会計年度に比べ5.2%増加し1,892億85百万円となりました。このうち、海外売上高は1,667億31百万円であり、連結売上高に占める割合は88.1%です。海外売上高は主として産業資材、ディバイスおよびメディカルテクノロジーによるものです。また、売上原価は前連結会計年度に比べ1.1%増加の1,448億14百万円、販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ4.5%増加の271億61百万円となりました。売上原価、販売費及び一般管理費、その他の費用に含まれる減価償却費及び償却費は前連結会計年度に比べ10.2%増加の92億58百万円となりました。その他の収益・費用については、前連結会計年度は負ののれん発生益などを主としたその他の収益を17億25百万円計上する一方で、事業構造改善費用などを主としたその他の費用を52億14百万円計上したのに対して、当連結会計年度では為替差益などを主としたその他の収益を11億85百万円計上する一方で、遊休資産諸費用などを主としたその他の費用を10億86百万円計上しました。
これらの結果、営業利益は173億63百万円(前期比138.5%増)となりました。
なお、セグメント別の経営成績につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりです。
金融収益・費用については、前連結会計年度は受取配当金などを主とした金融収益を8億91百万円計上する一方で、支払利息などを主とした金融費用を11億30百万円計上したのに対して、当連結会計年度では為替差益などを主とした金融収益を31億83百万円計上する一方で、支払利息などを主とした金融費用を10億47百万円計上しました。
その結果、税引前利益は194億99百万円(前期比177.0%増)となりました。
法人所得税費用は、前連結会計年度では税効果会計の適用などの影響から22百万円のマイナスを計上したのに対して、当連結会計年度では36億58百万円を計上しました。
これらの結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は158億59百万円(前期比124.6%増)となりました。また、基本的1株当たり当期利益は318円35銭(前期は141円34銭の基本的1株当たり当期利益)となりました。
財政状態の分析につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりです。
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりです。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループの主な資金需要は、事業上必要な運転資金や設備投資、M&Aによる投資です。これらの資金需要については調達規模や調達市場環境に応じて自己資金および金融機関からの借入や社債の発行等により対応します。また、金融コストの最小化と資金効率の向上のため、日本国内のグループ会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、当社への資金フローの集約により一元的な管理を行っています。
③ 経営方針・経営戦略等または経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは2021年1月から運用を開始した第7次中期経営計画において、これまでに獲得・構築したグローバルベースの事業基盤を最大限に活用し、シナジーの最大化による成長基盤の確立を目指しています。医療機器、モビリティ、サステナブル資材などの市場においては、社会課題の解決に資する製品群・サービスの拡充による成長を目指しています。IT機器市場においては製品需要の減少局面に対応し、収益性・効率性を追求しています。
第7次中期経営計画の骨子は以下のとおりです。
1.中期ビジョン(定性的内容)
「グローバルシナジーの最大化による成長基盤の確立」
2.中期ビジョン(定量的内容)
2023年12月期に目指す主要な連結業績のビジョンは以下のとおりです。
※ 上記ビジョンについては有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。
④ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 2.作成の基礎(4)重要な会計上の見積りおよび見積りを伴う判断」に記載しています。
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