事業等のリスク

 

2 【事業等のリスク】

経営者が当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

( 1)事業戦略および事業内容に関するリスク

① 成長戦略

当社グループは2021年1月から運用を開始した第7次中期経営計画において、これまでに獲得・構築したグローバルベースの事業基盤を最大限に活用し、シナジーの最大化による成長基盤を確立することを目指しています。医療機器、モビリティ、サステナブル資材などの市場において、社会課題の解決に資する製品群・サービスの拡充による成長を目指しています。市場環境・社会の動向、技術トレンドの変化、法令・規制の改正などの影響により、成長戦略が想定通りに進捗しない可能性があり、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループは、中期経営計画の進捗状況を取締役会で定期的にレビューし、1年ごとに事業環境の変化を反映させたローリングプランを策定し、事業環境の変化に迅速に対応することで、中期経営計画の達成に向けた取り組みを強化しています。

② 特定のお客さまの需要変動

当社グループでは売上高に占める特定のお客さまの割合が比較的高い状況にあります。こうした重要なお客さま向けの販売は、当該お客さまの製品需要の増減や仕様の変更、営業戦略の変更など当社グループによる管理が及ばない事項を理由として変動する可能性があり、そのような場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループはこうした状況に対して、第7次中期経営計画において医療機器、モビリティ、サステナブル資材などの複数の重点市場で成長戦略を遂行し、特定のお客さまの需要変動に関するリスクの最小化を図っており、売上高に占める特定のお客さまの割合は低下傾向となっています。

 

(2)財務に関するリスク

① のれんの減損損失

当社グループでは事業ポートフォリオの組み換え・最適化のための成長戦略としてM&Aを積極的に活用しています。そのため、当連結会計年度末においてのれんを20,186百万円計上しています。市場環境や競争環境がM&A実行時の想定から大きく変化した場合、買収先会社の業績が悪化し、のれんの減損損失が発生する可能性があります。

M&Aの実行にあたっては事前にデュー・ディリジェンス(対象企業の調査)を徹底するとともに、買収後の経営統合を促進する体制を構築することでリスクの最小化を図っています。

② 為替の変動

当連結会計年度における当社グループの海外売上高比率は 88.1% です。これらは外貨建て取引が中心であり、急激に為替相場が変動した場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループではこのような状況に対して、生産の現地化や為替予約取引などにより為替リスクを最小化するように努めています。

③ その他の財務に関するリスク

その他、保有有価証券の時価減少や売上債権の貸倒れ、棚卸資産の陳腐化などが発生した場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性がありますが、適正な管理体制の強化に努めており、リスクの最小化を図っています。

 

 

(3)サステナビリティビジョン(長期ビジョン)の達成を阻害するリスク

当社グループは、2030年のあるべき姿をサステナビリティビジョンとして示しています。サステナビリティビジョンを実現するために、中長期的に当社グループの経営成績等に大きな影響を与えうる項目をマテリアリティとして特定しています。

マテリアリティは取締役会において決議され、社長を委員長とするサステナビリティ委員会が、「事業機会の創出」「リスクの低減」「経営基盤の強化」「ガバナンスの推進」のそれぞれのテーマについて、関連する事業組織や部会、部門が設定したKPIを承認し、その進捗を確認しています。サステナビリティ委員会は、活動内容を年1回、取締役会に報告しています。

① 気候変動への対応

パリ協定を受けて温室効果ガスの削減に向けた対応が世界共通の解決すべき社会課題と認識され、早急な対応が求められています。

世界全体が低炭素社会に移行した場合、温室効果ガス排出規制、エネルギー効率規制、炭素税など環境関連の法規制の強化やお客さまなどからの要請への対策が必要となり、追加費用が発生する可能性や、要求水準を満たさないことによる機会損失のおそれがあります。一方、気候変動に伴う自然災害の影響により、工場の生産能力の低下、サプライチェーンの寸断による原材料の供給断絶などが発生し、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

気候変動への対応としては、サステナビリティビジョン(長期ビジョン)のなかで、2050年カーボンニュートラルの達成を見据えて、当社グループの事業活動によって発生するCO2総排出量の30%削減(2020年比)を目標として掲げており、再生可能エネルギーへの転換など具体的な取り組みを進めています。

また、当社グループは、金融安定理事会(FSB)が設立したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同し、継続的に気候変動に関するリスクと機会が事業に与える財務的影響についての分析を進めています。

② 人権の尊重

当社グループはグローバルに事業展開をしており、継続的な企業活動を行う上で人権を尊重した事業活動が必要不可欠と認識しています。当社グループおよびサプライチェーン上で、児童労働、強制労働、外国人労働者の差別等の人権にかかる問題が生じた場合は、当社グループの社会的な信用が低下し、お客さまとの取引停止、訴訟や賠償金の支払いが発生するおそれがあります。

当社グループは、関連法令や国際規範を順守するとともに、国際的な行動規範であるRBA(Responsible Business Alliance)を参照した「労働・人権に関する基本方針」を定め、全社員に展開しています。また、サステナビリティ委員会のもとに設置したESGタスクフォースが、グローバルにサプライチェーン上の労働・人権にかかるリスクの把握、低減に取り組んでいます。

③ 人材能力の向上、多様な人材の活躍

当社グループでは人種・国籍・性別にかかわらず、様々な伝統や文化を持つ社員が働いています。その多様性を尊重し、社員の個性や強みを活かし、当社グループのビジョンを実現することを目指しています。一方で当社の事業ポートフォリオの組み換えに沿った人材を十分に確保・育成ができない場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループは、人事基本方針に基づき、会社とともに成長しビジョンの実現に資する人材を育成する人事制度の策定、女性活躍の推進や研修によるリーダー・幹部候補の育成に取り組んでいます。また、第7次中期経営計画で定める重点市場に向けた教育研修プログラムを追加し、社員の能力の拡充を図るなど、リスクの最小化に努めています。

 

④ グローバルガバナンスの高度化

当社グループは、グローバルに事業展開を行っています。ガバナンスや内部統制が機能しなかった場合、子会社等の役員・社員による不正行為や、経営方針に従わない取引や判断が抑止できず、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループは、事業部門によるマネジメント(縦軸)、海外を3つの地域に分けて事業や会社を横断して協力する体制であるRegional Collaboration Committee(横軸)を運用しています。それぞれの軸が互いに補完して、協力して経営を行っています。

また、当社グループは、公益通報者保護法に基づく内部通報窓口(ホットライン相談窓口)を設置し、中国および東南アジアの一部の現地法人では別途通報窓口を設置することにより、不適切な行為の早期発見、早期是正に取り組んでいます。

⑤ その他サステナビリティビジョン(長期ビジョン)の達成を阻害するリスク

その他、責任あるメディカル製品・サービスの提供、持続可能な調達、効率性・生産性の向上、継続的な技術の創出に関連するリスクが生じた場合、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)事業活動の継続性を阻害するリスク

当社グループは、全社的な観点から当社グループが抱えるリスクに対し、アセスメントを行っています。法務担当役員を委員長とするリスク管理・コンプライアンス委員会は、事業活動の継続性を阻害するリスクに優先順位をつけ、適切にコントロールしています。

賄賂・取引先との癒着、天災(地震・台風・洪水等)、長時間労働を含む安全衛生に関するリスクを重要度が高いリスクとして位置づけ、NISSHAグループ全社で実施する企業倫理・コンプライアンス研修や経営層を含むBCP(事業継続計画)訓練の定期的な実施、IT技術を駆使した生産性改革の推進などにより、リスクの最小化に努めています。

また、当社グループでは、社員の心身の健康状態が維持・改善できない場合、会社のパフォーマンス低下につながるとの考えから、社員の健康意識や健康診断の受診率の向上、ストレスチェックの分析・改善活動など様々な施策を実行し、健康経営を推進しています。

その他、当社グループの製品が想定外の事象を起因として大規模な品質問題を発生させた場合や、営業秘密など機密性の高い情報の漏えいが発生した場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。当社グループでは、ISOなどの認証機関が定める規格に準拠した最適な管理体制を構築し、継続的な改善を進めることでリスクの最小化に努めています。

 

(5)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

COVID-19 により、工場の稼働停止やお客さまやサプライヤーが感染拡大に大きく影響を受けた場合は、当社グループの事業活動に影響を与える可能性があります。

当社グループは、対策本部を設置し、感染予防と感染拡大の防止のためのさまざまな施策を実施するとともに、社員やお客さまの安全確保を第一に考えて事業活動をしています。

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