当社グループは、事業活動に関するリスク管理を所管するリスク管理委員会(委員長CEO、副委員長COO)を設置し、経営上重要なリスクの抽出・評価および執行におけるリスク管理状況の確認を行い、常務会及び取締役会に定期的に報告しております。又、特に品質、貿易管理、法令違反、安全・衛生・環境、経済安全保障、情報セキュリティのリスクについては、関係する執行役員を構成員とする各専門委員会でそれぞれ管理しており、リスク管理委員会はこれらの委員会の活動状況の報告を受け、最終的に全社リスクとして評価し、管理しております。
これらの管理を通じて、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、リスクの顕在化の不測の事態に備え、主要取引銀行との間で合計30億円のコミットメントラインを設定しており、緊急時の流動性を確保しております。
Ⅰ. 事業に関わるリスク
(1) 品質に関するリスク
当社グループは、基本理念として「Value&Quality」を掲げ、品質を事業活動の根幹の一つに据えております。当社グループは、過去から蓄積してきた製品に関する知見や技術データ、製造工程におけるノウハウを駆使し、品質を開発から販売に至るまでの各過程で作りこみ、顧客が求める基準に合致する品質管理体制を構築しております。しかしながら、品質上の問題やクレームを完全に排除することは不可能であることや、今後中期経営計画(NF2023)に則り、新素材、新市場、新事業へ参入していくにあたり、新たな製品やサービスに関わる品質管理体制の構築が追い付かなかった場合には品質上の問題やクレームが発生するなど、当社グループの信用低下や業績及び財政状態に影響を与える場合があります。
(2) 新製品開発に関するリスク
当社グループは、研究開発活動を積極的に展開し、シール製品及び機能樹脂製品の業界においては先駆的な役割を果たしております。又、新たな技術探索とオープンイノベーションによる外部技術活用を積極的に展開しております。しかしながら、様々な内外の環境変化によって、着手している研究開発テーマの進捗や個々の新製品販売が、全て計画通りに実行できるものではありませんので、研究開発部門全体としてのリスクを考慮しつつ、当社の成長に寄与する開発運営を行なっております。従って、新製品開発の結果次第では、当社グループの業績及び成長計画に影響を与える場合があります。
(3) 石綿問題に関するリスク
当社グループは、2006年9月1日施行の労働安全衛生法施行令による「アスベスト全面禁止」に先立ち、2006年7月31日をもって一切の石綿製品の供給を停止いたしました。石綿代替品(ノンアスベスト製品)の品揃えは他社に先駆け完了しておりますので、今後ともノンアスベスト製品の強力な販売活動を展開してまいります。2006年3月27日施行の「石綿による健康被害の救済に関する法律」に基づく被害者救済策が講じられておりますが、当社の対応といたしましては、以下の措置を継続して講じております。
・石綿関連の質問や相談に応じるための「相談窓口」の開設
・従業員及び元従業員のうち、希望された方への健康診断の実施
・当社ホームページでのアスベストに関する情報の開示
当社規定による補償金や見舞金の支払いによる費用負担は、限定的なものでありますが、今後も継続する可能性があります。又、健康被害に関して損害賠償請求の訴訟を受けており、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える場合があります。
(4) 他社との業務提携等に伴うリスク
当社グループは、中期経営計画(NF2023)に則り、新素材・新市場・新事業への参入に向けた大胆なM&Aや業務提携に積極的に取り組んでおります。当社グループでは、取締役会や常務会をはじめとする社内承認プロセスを通じて様々な視点から検証し、リスクの低減に努めておりますが、当初想定していなかった事情により投資先や提携先に財務上その他事業上の問題が生じ、又、市場と当社の意図に乖離が生じる可能性があり、その場合には当初予定した通りの成果を得ることはできず、当社グループの業績、財政状態及び成長計画に影響を与える場合があります。
(5) 原材料価格変動と調達に伴うリスク
当社グループは、国内外から部品や原材料を購入して製品の製造を行なっており、調達のマルチソース化や適時適量な在庫の確保などにより、最適なサプライチェーンの構築に努めております。さらに現在、中期経営計画(NF2023)に則り、地政学リスクの増大に対応したサプライチェーン改革の断行を進めておりますが、当社グループが提供する一部の部品や原材料については、市場ニーズに応えるための高い品質・性能を追求する結果、供給が滞った際の代替調達先や十分な物量を確保できない場合があります。その場合、地政学リスクによる需給の逼迫や価格変動等が原因となり、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える場合があります。
(6) 海外事業展開に関するリスク
当社グループは、グローバルに生産及び販売拠点を設け、カントリーリスクの分散化を図っておりますが、各国において法律や規制の変更、疫病、テロ・戦争・その他の要因による社会的混乱等が生じた場合、グループの事業活動に支障が生じ、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える場合があります。特に生産拠点の分散及び地政学リスクにさらされやすい地域における生産の見直しについては、地政学リスクの増大に対応したサプライチェーン改革を有事の健全なリスク認識をもって進めております。
(7) 人材に関するリスク
当社グループは、中期経営計画(NF2023)で掲げた戦略に沿って、「THE VALQUA WAY」のもと顧客の信頼に応えH(Hard)&S(Service)の両輪で新たな価値を創造し続ける企業を目指し、「発想の転換」と「大胆なCX」で創業100周年に向け新たな成長の土台づくりにチャレンジしております。当社グループは多様な人材が活躍し、多様な働き方が実現できるような労働環境や体制の整備等、当社グループの魅力を高める取り組みに努めており、人材の採用やその開発・育成を図っておりますが、戦略を担う優秀な人材を採用または育成することができない場合や人材の流出を防止できない場合、当社グループの業績及び成長計画に影響を与える場合があります。
(8) 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、事業を展開するなかで重要な技術情報や取引先・顧客情報、その他様々な情報を保有しております。当社グループでは、情報セキュリティ委員会が中心となって、「情報リスクアセスメント」(管理情報の抽出と管理方法の改善)、「情報セキュリティレベルの把握」(外部機関による脆弱性診断)、「海外状況に合わせたセキュリティ対策」に取り組むなど、グループ全体のセキュリティ管理体制を強化しております。しかしながら、サイバー攻撃や内部的過失や盗難などのリスクを完全に排除できるものではなく、これらの情報が流出した場合には、当社グループの信用低下やグループの業績及び財政状態に影響を与える場合があります。
(9) 法的規制に関するリスク
当社グループは、国内外の法的規制に十分留意した事業活動を行っており、定期的に事業活動を展開する各国の法改正状況を把握したうえで対応を重ねておりますが、各国の規制に対応するためのコスト増や事業活動の制約となる法改正などが生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える場合があります。
(10) 為替相場の変動に関するリスク
当社グループは、海外現地法人による生産及び販売を通じて、多くの輸出入取引を行っております。取引に伴う為替の変動リスクについては、これを極小にすべく細心の注意を払っておりますが、そのリスクの全てを完全に排除することは不可能であり、場合によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える場合があります。
(11) 固定資産の減損に関するリスク
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。将来、当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により、減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える場合があります。
(12) 退職給付債務に関するリスク
当社グループの退職給付費用および債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出しております。しかしながら、数理計算上の前提条件を変更する必要性が生じた場合、あるいは、証券市場の低迷により年金資産が毀損した場合等には、退職給付費用・退職給付債務の増加や年金資産の追加的支出が必要となる可能性があります。このような場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える場合があります。
II. 事業基盤に関わるリスク
(1) 感染症等に係るリスク
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が各国で進められておりますが、一方で今後も新たな変異株の流行、さらには新たな感染症の出現なども考えられます。これらの重大な感染症については感染拡大予防のため経済活動が制限されたり、当社グループや顧客の操業度低下・停止によるサプライチェーンの寸断、並びに信用不安などにより当社グループの業績及び財政状態に影響を与える場合があります。
(2) 地震等の自然災害に関わるリスク
当社グループでは、生産拠点の分散や基幹システムサーバーを外部センターに移設するなどの対策を行っておりますが、地震等の自然災害が発生した場合には、当社グループと顧客企業の生産設備に対して損傷を与え、生産活動の停止・サプライチェーンの混乱などの可能性があります。又、停電や交通機関ストップなどのインフラへの影響により、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える場合があります。
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