(1)経営環境
当社グループを取り巻く経営環境を見ますと、これまでにない大きく非連続な変化、極めて先行きの不透明な世界が到来しております。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機とした行動様式の変容、デジタル化の浸透加速と拡大、超緩和的金融環境の正常化、国際協調体制の弱体化及び地政学的リスクの高まり、SDGs達成に向けた社会課題への対応、ESG経営への要請等、既成概念のディスラプションが顕在化・加速化する時代であり、当社グループにとって機会と脅威が同時に到来しております。変化は成長オポチュニティとなる一方で、既存ビジネスモデルは陳腐化リスクにさらされており、これまでのように商品軸をベースとするアプローチだけではもはやソリューションは作り出せなくなると考えております。
(2)会社の経営の基本方針(中期経営戦略について)
① 前中期経営戦略「GC2021」定量目標の達成状況
前中期経営戦略「GC2021」における定量目標に対する実績は以下のとおりであります。
経営指標 |
定量目標 |
2021年度実績 |
連結純利益(2021年度) |
3,000億円 |
4,243億円 |
基礎営業キャッシュ・フロー(※1)(3ヵ年累計) |
12,000億円 |
13,039億円 |
株主還元後フリーキャッシュ・フロー(3ヵ年累計) |
+1,000億円以上 |
+4,192億円 |
ネットDEレシオ(※2) |
0.7倍程度(※3) |
0.80倍 |
新規投資・CAPEX(3ヵ年累計) |
9,000億円程度 |
約7,400億円 |
ROE |
10%以上 |
23.0% |
(※1)調整後営業利益(売上総利益+販売費及び一般管理費)に、営業活動によるキャッシュ・フローのうち、「減価償却費等」、「利息の受取額及び支払額」、「配当金の受取額」及び「法人所得税の支払額」を合計した額。
(※2)ネットDEレシオ=「ネット有利子負債」/「資本合計」(2023年3月期以降、分母は「親会社の所有者に帰属する持分合計」で算出する)。なお、ネット有利子負債は、社債及び借入金(流動・非流動)の合計額から現金及び現金同等物、定期預金を差し引いて算出しております。
(※3)修正GC2021において1.0倍程度に修正。
② 中期経営戦略「GC2024」
中期経営戦略「GC2024」では、前中期経営戦略「GC2021」において定めた2030年に向けた丸紅グループが目指す長期的な方向性を継続し、社会・顧客の課題と向き合い、新たな価値を創出します。
<中期経営戦略「GC2024」基本方針>
○既存事業の強化と新たなビジネスモデル創出を重層的に追求し、着実な収益の柱を育成・確立
○「グリーン事業(*1)の強化」、「全事業のグリーン化推進」によりグリーンのトップランナーへ
「グリーン事業の強化」
・強固な事業基盤、高い競争力を有する既存グリーン事業の強化・拡大
・既存の事業基盤・ネットワークの活用、全社横断的な取組みの推進による新たなグリーン事業の創出
(*1) 脱炭素・循環経済等、地球環境に対しポジティブな影響を与えるサステナブルな事業、及びそれらの事業が必要としかつ代替困難な原材料等を供給する周辺領域
「全事業のグリーン化推進」
・環境負荷の低減、循環経済への移行を全事業領域において追求
・顧客・パートナーとの協働による持続可能なサプライチェーンの構築
・脱炭素社会への移行に欠かせない取組み(天然ガス・LNG等)
■事業指針SPP
当社は事業指針SPPに則り、新規投資を戦略的に厳選するとともに、既存事業の強化及び回収・資産入替えの促進を図り、丸紅グループ全体の事業ポートフォリオの価値最大化を引き続き目指していきます。
「Strategy」
・各分野における在り姿と現状のギャップを埋めることと定義し戦略ありきを徹底
・DXによる事業戦略の変革、実行の高速化
「Prime」
・丸紅グループによる主体的な事業戦略の実行
・マジョリティ投資、若しくはパートナーとの相互補完による主体的な事業価値向上を追求
「Platform」
・丸紅グループのPlatformを拡充・活用し、社内外の知の掛け合わせにより価値を創造
・地域・分野・商品等の拡がりが見込める事業をPlatformとした長期的な事業価値向上を追求
■収益力強化
ROIC(*2)/CROIC(*3)・RORA(*4)により資本効率・リスクリターン効率を定期的にモニタリングすることで、資産の優良化を図り、ROEの向上を目指します。
(*2)ROIC |
:投下資本利益率(Return On Invested Capital) |
(*3)CROIC |
:投下資本キャッシュリターン(Cash Return On Invested Capital) |
(*4)RORA |
:リスクアセット利益率(Return On Risk Asset) |
■人財戦略
「丸紅人財エコシステム」を進化させ、企業価値の源泉となるグループ人財の成長・活躍を促進します。
・ミッションを核とする人事制度 :実力本位の徹底とチャレンジの促進
・多様な人財の活躍・育成 :働く環境の最適化と人財育成の強化
・タレントマネジメントコミッティ :社長・CAO・CSO主導による人財戦略の推進
<中期経営戦略「GC2024」の定量目標>
中期経営戦略「GC2024」における定量目標は以下のとおりとし、中長期的な企業価値向上を追求します。
経営指標 |
定量目標 |
連結純利益(2024年度) |
4,000億円 |
基礎営業キャッシュ・フロー(3ヵ年累計) |
13,000億円 |
ROE |
15% (ネットDEレシオ(※4)0.7~0.8倍程度) |
(※4)「ネット有利子負債」/「親会社の所有者に帰属する持分合計」で算出。
<中期経営戦略「GC2024」における資本配分方針・株主還元方針>
■資本配分方針:財務基盤の継続的な充実・強化に取り組みつつ、成長投資及び株主還元を強化
・基礎営業キャッシュ・フローの最大化
・3ヵ年累計の株主還元後フリーキャッシュ・フローの黒字維持(営業資金の増減等を除く)
3つのホライゾン(ホライゾン1:既存事業の充実、ホライゾン2:既存事業領域の戦略追求、ホライゾン3:White Space=現状では取り込めていない成長領域、新たなビジネスモデルの創出)ごとの新規投資・CAPEXの計画は以下のとおりであります。
ホライゾン1・2 8,000億円から9,000億円
ホライゾン3 1,000億円から2,000億円
基礎営業キャッシュ・フローの最大化により生じるフリーキャッシュは成長投資、自己株式取得、内部留保(将来を見据えた投資余力)等に充当します。
■株主還元方針:配当金の3ヵ年下限を設定し、機動的な自己株式の取得を実施
「配当」
・現行の連結配当性向「25%以上」を維持し、利益成長を通じた配当金の増額を目指す
・2022年度期初に公表した年間配当金(1株当たり60円)を「GC2024」期間の年間配当金の下限とする
「自己株式の取得」
・資本効率の改善及び1株当たりの指標改善等を目的として、機動的に実施
・実施のタイミング・金額は経営環境等を踏まえて判断
(3)ロシア関連ビジネスへの取り組み方針
当社グループは、日本政府が国際社会と協調するロシアに対する制裁方針を遵守いたします。ロシア関連新規取引については制裁方針の対象とならないケースも含めて凍結とし、既存取引についても可能な限り解約を交渉する方針としております。
今後も、個別案件への対応を含めて情報を収集し状況を精査しつつ、人々の安全確保を第一に考えながら、政府をはじめとする関係各所とも協議のうえ、適切な対応を検討してまいります。
なお、当連結会計年度末における当社グループのロシア向けリスクエクスポージャー(*1)は123億円であります。
(*1) 当社及び連結子会社の保有資産のうち、長期与信、固定資産、投資等の長期性資産の金額の合計。
(参考)
当連結会計年度末におけるAircastle社(米国航空機リース事業における当社の持分法適用会社)の当社持分考慮後のロシア向け機体簿価は51億円(*2)であります。
(*2) ロシア向けにリースしている航空機の機体簿価からリース先より預かっている預託金等を差し引き当社持分を考慮した金額は29億円であります。
(将来に関する記述等についてのご注意)
本報告書に記載されている将来に関する記述は、当社が当有価証券報告書提出日現在において入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
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