業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国の経済は、新型コロナウィルス感染症の拡大による緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置の適用により外食や宿泊需要が減退し、また、昨年開催された東京オリンピックでは、ほとんどの競技が無観客で行われるなど期待したインバウンド需要もほぼ消滅し、さらには新たな変異株によるウイルス感染拡大もあって、経済活動の回復に遅れが出ております。2022年2月にはロシアによるウクライナへの軍事侵攻が開始され、日本政府はアメリカ、EUその他諸国と協調した対ロシア経済制裁を発動し、今後、エネルギー、金属、水産物、木材等の供給に影響が及ぶと予想されます。アメリカにおいてはインフレ抑制に向けて利上げが決定され、日米の金利差が拡大し急激な円安ドル高が進行しております。すでにエネルギーや食品等においては値上げが実施され、賃金の低迷が続く中でのさらなる物価上昇は、個人消費の下振れリスクを高めるものと予想されます。

 当社グループの主力事業である水産物卸売業界においては、業務筋向けを中心に厳しい販売環境が継続した一方、コロナウィルス感染症の影響から、いち早く回復した海外マーケットへの輸出や巣ごもり需要の継続による量販店への売上が拡大しました。冷蔵倉庫事業は入出庫の増加、業務の効率化もあり順調に推移しました。

 なお、当連結会計年度において、株式会社豊海を連結の範囲に含めております。また、持分法適用関連会社であった東京北魚株式会社の全株式を同社へ譲渡したことにより持分法適用の範囲から除外しております。

 2022年2月28日に、当社の連結子会社である株式会社ホウスイ(証券コード1352、株式会社東京証券取引所市場第一部)の普通株式の全てを金融商品取引法に基づく株式公開買付けによって取得することを決定し、2022年3月1日から2022年4月12日の期間で本公開買付けを実施しました。応募株券等の総数(4,425,278株)が買付予定数の下限(964,400株)以上となり、公開買付けが成立しましたので、株式の全てを取得することを予定しております。

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ現金及び預金の減少2,046百万円、受取手形及び売掛金の増加1,193百万円、商品及び製品の増加2,797百万円、有形固定資産の増加1,639百万円、投資その他の資産の減少1,718百万により、2,758百万円増の71,613百万円となりました。

 負債合計につきましては、前連結会計年度末に比べ支払手形及び買掛金の増加590百万円、短期借入金の増加400百万円等により972百万円増の42,582百万円となりました。

 純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上1,152百万円、剰余金の配当239百万円、その他有価証券評価差額金の増加419百万円等により、前連結会計年度末に比べ1,785百万円増加し29,031百万円となりました。その結果、自己資本比率は34.1%(前連結会計年度末33.6%)となりました。

b.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、当社グループ売上高は「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等の適用により121,842百万円(前年同期比35.1%減)となり、営業利益は1,981百万円(前年同期比39.3%増)、経常利益2,030百万円(前年同期比18.9%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は1,152百万円(前年同期比8.3%減)となりました。

 

 セグメント別の業績概況は次のとおりであります。

 水産物卸売事業におきましては、収益認識会計基準の適用により受託品売上等が減額となりました。冷凍銀鮭、輸入ウニ、国内マグロ、冷凍ホタテ、ワラサの売上高は前年を上回りましたが、養殖ハマチ、ズワイガニ、スルメイカ、サバは全体的に厳しい販売状況となり、セグメント売上高は114,336百万円(前年同期比36.4%減)となりました。売上総利益は増加し、セグメント利益は955百万円(前年同期比120.7%増)となりました。

 冷蔵倉庫事業におきましては、収益認識会計基準の適用により配送取扱手数料売上が減額となり、売上高は6,486百万円(前年同期比5.1%減)となりましたが、量販店向けの市販用商材を扱う物流センター事業が好調に推移した結果、セグメント利益は563百万円(前年同期比24.5%増)となりました。

 不動産賃貸事業におきましては、売上高544百万円(前年同期比3.2%減)となり、株式会社豊海の営業費増によりセグメント利益は426百万円(前年同期比17.3%減)となりました。

 荷役事業におきましては、量販店等への配送業務が増加したため、売上高474百万円(前年同期比13.3%増)となり、セグメント利益は36百万円(前年同期比66.3%増)となりました。

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動・投資活動及び財務活動において減少し、7,532百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は、814百万円(前年同期5,421百万円の獲得)となりました。これは主に、税金

等調整前当期純利益2,483百万円、減価償却費2,153百万円、棚卸資産の増加額2,801百万円、売上債権の増加額1,193百万円、仕入債務の増加額590百万円及び法人税等の支払額470百万円等によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、795百万円(前年同期1,834百万円の使用)となりました。これは主に、有形

固定資産の売却による収入378百万円、有形固定資産の取得による支出1,843百万円、貸付金の回収による収入335百万円等によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、453百万円(前年同期1,654百万円の使用)となりました。これは主に、短期

借入金の純増額400百万円、長期借入金の返済による支出1,826百万円等によるものです。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

(1)当連結会計年度の生産実績

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

水産物卸売事業

2,323

118.1

2,323

118.1

 (注)金額は製造原価によっております。

 

(2)当連結会計年度の仕入実績

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

水産物卸売事業

 

 

買付品

107,737

73.5

107,737

73.5

 (注)1 本表における仕入高は、仕入金額を記載しております。

2 セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(3)当連結会計年度の売上実績

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

水産物卸売事業

 

 

受託品

1,330

6.2

買付品

113,006

71.4

114,336

63.6

冷蔵倉庫事業

6,486

94.9

不動産賃貸事業

544

96.8

荷役事業

474

113.3

合計

121,842

64.9

 (注)1 受託品売上高は当連結会計年度より卸売手数料を記載しております。

2 セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

  経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりでありま

 す。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成され

ています。なお、「重要な会計方針及び見積り」については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結

財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 売上高は、新設の冷蔵設備が売上高増加に寄与したものの、厳しい調達環境下にあった水産物卸売事業において

減少いたしました。その要因として、水産資源の減少に加え、大型台風の来襲等の天候不順により入荷の不安定さが増したことがあげられます。

 しかしながら、営業利益、経常利益はともに前連結会計年度比増加となっております。営業利益・経常利益の増

加要因は、水産物卸事業における売上総利益率の改善、新設冷蔵庫による利益増加、並びに豊洲移転のための一時

費用の減少、経営改革推進委員会における経費削減効果などによるものであります。

 コロナ感染症による影響の見通しが不透明な状況下、市況が厳しい状況は当面続くと予想されます。こうした中、当社グループは、グループの総合力を生かした顧客ニーズへのソリューション力強化や新規顧客開拓に注力するとともに、コスト意識を徹底して利益拡大に繋がるよう努めて参ります。あわせて前述記載の「2 事業等のリスク」についても適時・迅速に対応し、リスク回避に努める所存であります。

 

③資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは原料・商品の仕入資金のほか、集荷に伴う運搬費等の経費、冷蔵倉庫稼動に伴う経費、一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は設備投資、システム投資等によるものであります。

 当社グループは事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としております。設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としており、シンジケートローンや個別の銀行借入によって調達し、安定した資金繰りの確保に努めております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は24,737百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は7,532百万円となっております。

 

④経営方針・経営戦略、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループの経営方針・経営戦略については「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針」及び「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営戦略等」に記載のとおりであります。

 また、当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、連結ベースの売上高、営業利益、営業キャッシュ・フロー、売上高営業利益率を経営指標としており、業容拡大による利益確保とキャッシュ・フローや利益率を意識した効率的な経営を目指して参ります。

 当連結会計年度の各指標の前年比較は以下のとおりであります。

 

経営指標

前連結会計年度

金額・率

(百万円・%)

当連結会計年度

金額・率

(百万円・%)

売上高

187,697

121,842

営業利益

1,422

1,981

営業キャッシュ・フロー

5,421

△814

売上高営業利益率

0.76

1.63

 

 売上高は、「収益認識に関する会計基準」等の適用により減少しました。一方、営業利益は、水産物卸売事業、売上総利益率の改善により増加しました。冷蔵倉庫事業においては業務効率化を進めたことにより増加しました。その結果、水産物卸売事業、冷蔵倉庫事業ともに増加となり、営業利益率も前年比増加しております。

 営業キャッシュ・フローにおいては、税金等調整前当期純利益が前年より増加しましたが、売上債権、棚卸資産が増加した結果、前年比減少しました。

 以上の通り、経営指標のうち、売上高と営業キャッシュ・フローは前年比減少となりましたが、その他の指標は前年比増加となりました。

 当社グループは前掲の経営方針・経営戦略に基づき、引き続き各経営指標の改善に努めて参ります。

 

⑤セグメントごとの財政状態及び経営成績に関する認識及び分析・検討内容

(水産物卸売事業)

 売上高は、「収益認識に関する会計基準」等の適用により減少しましたが、冷凍銀鮭、輸入ウニ、国内マグロ、冷凍ホタテ、ワラサの売上高は前年を上回りました。営業利益は、売上総利益率の改善により増加しました。

 厳しい環境下ではありますが、高機能化された豊洲市場を活用しながら、当社グループ各社が持つ、冷蔵保管、リテールサポート、荷役、貿易、加工の各機能を最大限に生かし、豊洲市場内外にて主力事業である水産物の集荷販売、利益の増加に努めて参ります。

 

(冷蔵倉庫事業)

 売上高は、「収益認識に関する会計基準」等の適用により減少しましたが、営業利益は増加しました。

 引き続き効率的な稼働を目指し、売上高、利益の増加に努めて参ります。

 

(不動産賃貸事業)

 売上高は売上高減、営業費増により営業利益も減少しました。

 稼働中の物件について稼働率向上も目指し、売上高、利益の増加に努めて参ります。

 

(荷役事業)

 売上高は量販店等の配送業務が増加したため売上高、営業利益ともに増加しました。

 豊洲市場内での新しい物流に対処すべく業務の効率化に向けて合理的な人員配置と経費の削減に努めて参ります。

 

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