課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループは、「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献します」という基本理念のもと、技術革新が速く活発なエレクトロニクス産業の中で、半導体製造装置のリーディングサプライヤーとして、ビジネスを積極的に展開しております。

 

① 経営方針

 当社グループは、技術専門商社からスタートし、開発製造機能をもつメーカーへの移行、グローバルな販売・サポート体制の構築など、事業環境の変化をいち早く捉え、その変化に素早く応えることにより、世界の市場に高い付加価値をもつ製品・サービスを提供してまいりました。また、当社は、半導体製造装置やその関連分野で、技術革新が新たな価値を生み、継続的な市場拡大が見込まれる事業領域において、時代をリードする独創的な技術を創出し成長を続けてきました。

 当社の原動力は、業界のリーディングカンパニーとして育んだ豊かな技術力、確かな技術サービスに基づくお客さまからの信頼、そして環境変化に柔軟かつ迅速に対応できる社員と、そのチャレンジ精神です。

 今後も、当社のもつ専門性と最新技術を活かして事業を推進し、夢と活力のあるワールドクラスの高収益企業を目指すとともに、世の中の持続的な発展を支えるために不可欠な半導体の技術革新に貢献してまいります。

 

② 事業環境

 ICT(情報通信技術)の進化とともに、データ社会への移行が進む中、デジタル技術の活用と応用が様々な産業や分野において拡がっています。そして、これを支えるのが半導体の技術革新です。大容量、高速、高信頼性、低消費電力など、半導体の進化に向けた追求は止まることがありません。トランジスタの誕生から約70年。これまで半導体デバイス市場は着実な成長を遂げ、2021年に5,000億ドルを超えましたが、2030年頃には、現在の2倍に匹敵する1兆ドルに到達する高い伸びが予想されています。また、人とICTをつなぐインターフェイスとしてのディスプレイも半導体製造技術の応用による技術革新が続いています。有機ELの普及に伴い、高精細化、低消費電力化、薄くフレキシブルな特性を活かした大型化やデザイン性の向上など、用途はさらに拡大していきます。当社グループが参入する事業は、社会の重要インフラである半導体とFPDを支え、夢のある社会の発展に向け、今後も大きく成長していくものと予想しております。

 

③ 中長期的な成長を見据えた取り組み

 前述のような将来の成長ポテンシャルを踏まえ、2019年5月に中期経営計画を策定しました。売上高の規模別に営業利益率、自己資本利益率(ROE)の関係を示す財務モデルを定めたもので、2024年3月期までに売上高2兆円、営業利益率30%以上、ROE30%以上をその中核目標に掲げて取り組んでまいりました。そのような中、2022年3月期の決算は、売上高2兆38億円、営業利益率29.9%、ROE37.2%となり、目標の財務モデルに対し、2年前倒しでほぼ到達することができました。そして今後のさらなる当社の発展と成長を目指すため、「⑥ 新中期経営計画」に記載のとおり、2022年6月8日に新たな中期経営計画を発表いたしました。

 半導体の重要性がさらに高まり、半導体製造装置市場がこれからも大きく成長していくことが予想される中、当社のマテリアリティ(重要課題)として定めた高い収益力に基づく強い経営基盤のもと、製品競争力と顧客対応力の強化、生産性の向上に努め、オンリーワンプロダクトの創出により業界をリードしてまいります。

・将来、お客さまが必要とする高付加価値の最先端技術製品をいち早く市場に投入するとともに最良の技術サービスを提供してまいります。

・オンリーワンプロダクトの創出に向け、当社が得意とする分野、蓄積された技術、経営ノウハウが活きる分野でビジネスを展開してまいります。

・世界をリードする技術革新力を維持向上させるため、2022年3月期は、1,582億円の研究開発費を投入し、2019年5月に中期経営計画で公表した、3年間で4,000億円以上の研究開発費の投入を計画どおり実行いたしました。将来の成長を見据え、2023年3月期は、1,900億円の研究開発費を見込んでおり、強い財務基盤を活かした積極的な投資を継続してまいります。

・サービスの分野につきましても、当社がこれまで出荷した業界最多となる8万台以上の半導体及びFPD製造装置をもとに、パーツ販売、装置のアップグレード改造、装置の稼動率向上やお客さまが生産するデバイスの歩留まり向上などの課題解決に努めるとともに、これら高度なフィールドソリューションの提供を通じて、アフターマーケットにおける収益拡大を図ります。また、やがて10万台以上となる装置サポートに備え、遠隔保守などのスマートカスタマーサポートに加え、装置の稼動データやAIの活用などによる予知保全など、高効率、高付加価値サービスの構築にも注力してまいります。

 

■ 人材に関する取り組み

 「企業の成長は人。社員は価値創出の源泉」という考えのもと、社員のやる気と会社へのエンゲージメントを重視した経営に取り組んでいます。

 ・会社の将来に対する期待と夢がもてる高い経営目標の設定

 ・成長投資に伴う様々な活動やキャリア機会

 ・強い財務基盤のもと失敗を恐れずチャレンジできる環境

 ・成果に見合う競争力のある報酬と公正な人事

 ・社員と経営層の積極的な対話

 上記のような活動を通じ、世の中の持続的な発展を支える半導体の技術革新に貢献することで夢と活力のある会社の維持向上に努めます。

 また、当社は、事業に関わるすべての人々の安全と健康を最優先することを経営理念で明示しておりますが、4年連続で、経済産業省と日本健康会議が共同で選定する「健康経営優良法人2022」の上位500社に認定されました。そして、これは国内グループ会社6社(注)1においても、3年連続の認定取得となります。社員がもてる力を最大限に発揮するために、社員の心身の健康保持・増進をサポートしています。

 加えて、持続的成長を支える次世代の経営執行を担う人材を育成するため、「TELサクセッションプラン」に基づき後継候補者の育成をおこなっております。指名委員会はその育成状況を分析、精査の上、取締役会に報告するとともに、取締役会は後継者育成プランが適切に実行されるよう監督しております。

 

 (注)1:東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ㈱、東京エレクトロン九州㈱、

     東京エレクトロン宮城㈱、東京エレクトロンFE㈱、東京エレクトロンBP㈱、

     東京エレクトロンエージェンシー㈱

 

■ 環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する取り組み

 当社グループは、半導体製造装置のリーディングカンパニーとして、高性能・高品質の製品やサービスの継続的な提供を通じ、より高い利益をあげて経済価値を高めるとともに、持続可能な社会の発展に貢献し社会価値を高めることで経営基盤を強化し、企業価値の向上を図ります。

 

◇ 環境に関する取り組み

 2021年6月に、半導体製造装置業界における持続可能なサプライチェーン構築に向けた取り組みとして、E-COMPASS(注)2というイニシアティブを立ち上げました。このE-COMPASSでは、業界のリーディングカンパニーとして次のような点に先進的に取り組むことで、自社にとどまらず、あらゆるパートナー企業と連携し、サプライチェーン全体でデジタル社会の発展と地球環境保全に取り組み、社会の期待に応えることを目的としています。

 ・高性能・低消費電力デバイス等、半導体の技術革新に貢献し、ICTの発展と低消費電力化を両立

 ・半導体生産時の水、ガス、ケミカルの使用量の低減

 ・環境有害物質の規制への適切な対応

 

 (注)2: Environmental Co-Creation by Material, Process and Subcomponent Solutionsの略

 

◇ ガバナンスに関する取り組み

 当社グループのガバナンスに関する取り組みは、外部からも高い評価を受けており、一般社団法人日本取締役協会が主催する「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー®2021」において、東京証券取引所(以下「東証」)1部上場企業約2,200社の中から大賞となる「Grand Prize Company」を受賞しました。この受賞は、当社の成長への挑戦、海外半導体関連企業の先進的な取り組みからの学び、代表取締役評価のクローズドセッションなど、自社の実情に合わせたものへ常に改善を求めている経営姿勢、攻めのガバナンスが、業績の高い向上につながっている点を評価されたものです。

 また、当社は、2022年4月4日、東証のプライム市場に移行しました。時価総額などの基準が厳しく、東証の「コーポレートガバナンス・コード」の全原則の適用が求められる同市場の上場企業として、高いガバナンス水準を構築してまいります。その一環として2022年6月21日より以下に示すとおりコーポレートオフィサー制度を導入しました。

 

 《コーポレートオフィサー制度について》

  当社は、技術革新が速く市場変化も活発な半導体製造装置業界のリーディングカンパニーとして、ガバナンスのさらなる強化と迅速な意思決定並びに機動的な業務執行を図るため、コーポレートオフィサー制度を導入することといたしました。執行側の最高意思決定機関であるコーポレートオフィサーズ・ミーティングを設置し、取締役会から執行側への適切な権限委譲を進めます。また、コーポレートオフィサーが取締役会に出席し、業務執行に関する説明をおこなうことにより、取締役会が執行側を適切に監督するとともに、コーポレートオフィサーは、取締役会での議論を適切かつスピーディーに業務執行に活かすことで、攻めの経営を推進します。

 

 今後も半導体製造装置市場は高い成長が見込まれます。それゆえ、当社が事業展開する拠点数も現在の18カ国、77拠点から、近い将来には100拠点を超えると予想しています。このような中、コーポレートオフィサー制度の導入による適切な権限委譲で迅速な経営の執行を推進していくとともに、取締役会における実効性の高い監督機能のさらなる充実を図り、短中長期的な利益の拡大と継続的な企業価値の向上を追求してまいります。

 

④ 資本市場との対話

 当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、経営層が積極的にIR(Investor Relations)、SR(Shareholder Relations)活動に取り組んでおります。国内外のIRカンファレンスでは経営層が適宜スポークスパーソンを務め、直接的な対話を図っています。また、四半期毎の決算説明会に加え、中期経営計画説明会やIR Dayにおいて積極的に事業戦略や成長のストーリーを共有しています。さらに、CEO直轄組織として設置されたIR室は投資家の皆さまとの個別面談などを通じて適切に説明を補足するとともに、いただいたご意見を経営に役立てるべく、定期的に経営層に報告しています。

 このような当社グループの取り組みは高い評価を受けており、米国大手金融情報誌Institutional Investorが発表した、優れたIR活動をおこなう日本の上場企業「2022 All-Japan Executive Team」の電機・精密機器セクターにおいて、最高位となる「Most Honored Company」に7年連続して選ばれております。

 

⑤ 資本政策

 当社グループの資本政策は、成長投資に必要な資金を確保し、積極的な株主還元に継続的に取り組み、中長期的成長の視点をもって、適切なバランスシート・マネジメントに努めることを基本としております。具体的には、営業利益率、資産効率をさらに高め、キャッシュ・フローの拡大に努めることで、持続的な成長を目指し、ROE向上など高い資本効率を追求します。

 当社の配当政策につきましては、業績連動型を基本とし、親会社株主に帰属する当期純利益に対する配当性向50%を目処とします。また、自己株式の取得については、機動的に実施を検討することとしております。この方針に基づき、2022年3月期においては、年間配当1,403円を実施しました。

 当社グループは、以上のような取り組みを実行することで、さらなる持続的成長と企業価値の向上を通じて、世の中になくてはならない会社として、「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献します」という基本理念を実践してまいります。

 

⑥ 新中期経営計画

 当社グループは節目となる第60期を迎え、さらなる成長を目指すにあたり、2022年6月8日に以下のとおり新たなビジョンを発表するとともに、新中期経営計画として財務目標を設定いたしました。本計画の遂行とともに、これからもBest Products、Best Technical Serviceを常に追求し、短期及び中長期的な利益と継続的な企業価値の向上を目指してまいります。

 

◇ 新ビジョン

 「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献します」とした当社グループの基本理念の実践に向けた重点事項として、2030年に向けた新たなビジョンを策定いたしました。

 

『半導体の技術革新に貢献する夢と活力のある会社』

 ・東京エレクトロンは、世の中の持続的な発展を支える半導体の技術革新を追求します。

 ・当社の専門性を活かし、付加価値の高い最先端の装置と技術サービスを継続的に創出することで、

  中長期的な利益の拡大と継続的な企業価値の向上を目指していきます。

 ・そして、企業の成長は人、社員は価値創出の源泉と位置づけ、ステークホルダーとの

  エンゲージメントを通じて、このビジョンの実現に向けて活動してまいります。

 

◇ 新財務目標

 半導体製造装置市場の継続的な成長が見込まれる中、当社グループは、ワールドクラスの営業利益率とROEの実現を目指し、2023年3月期から5年を達成期間とした新たな財務目標を設定いたしました。

 

財務目標(~2027年3月期)

 売上高

3兆円 以上

 営業利益率

35% 以上

 ROE(自己資本利益率)

30% 以上

 

 なお、文中の将来に関する記述は、本有価証券報告書の提出日現在において入手可能な情報をもとに、当社グループが合理的であると判断した一定の前提に基づいており、当社グループとしてその実現を約束する趣旨のものではありません。

 

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