課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

当社は、卸売市場法に基づく東京都中央卸売市場の荷受会社として、“国民の健康的な食生活への貢献”という社会的使命を果たしていくとともに、集荷力・販売力の強化に努め、首都圏の一大消費地を抱える市場荷受としての優位性を発揮しつつ、“旧来型の荷受会社から、広範な機能を有する販売会社への転換”を図り、新たな価値創造によってステークホルダーの期待に応えてまいります。

 

(2)経営戦略等

上記経営方針のもと、当社グループはMSC、ASCといった海洋保護活動に貢献する国際流通認証を取得し、海洋資源保護や環境に配慮した水産物の取扱いを増やすことにより、出荷者・生産者から、買受人の皆様の顧客満足度を高められるよう、集荷及び販売に注力していきます。また、生産地加工・消費地加工の充実、豊洲市場内の冷蔵庫などの設備を活用し、多種多様な顧客ニーズに沿った販売を心掛けていくとともに、グループ会社を横断する形で物流委員会を設置、グループ会社資産の全てを有機的に結合することで、生鮮冷凍物流通網を構築していくことを目指します。

 

(3)経営環境

当連結会計年度における我が国の経済は、2020年初頭から続く新型コロナウイルス感染症の拡大により、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が実施され、断続的に社会経済活動が制限されたことに加え、今年に入ってからのロシア・ウクライナ情勢の影響、円安による輸入価格の上昇もあり、非常に厳しい1年間であったと同時に、今後の経済情勢が今まで以上に不透明な状況となっております。水産物卸売業界においても、同感染症拡大の影響により、外食産業や業務筋の水産物需要の低迷、それに伴う高単価商材の売れ行き不振、加えて原材料費・物流費などの上昇により水産物価格が上昇傾向にあり、厳しい業界環境が継続しております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上課題

〇中期経営計画の策定

当連結会計年度は、2021年度(2022年3月期)から2023年度(2024年3月期)までを対象期間とした新中期経営計画『SG-2023』(Sustainable Growth 2023 サステナブル グロウス2023)の初年度にあたります。その中で決定した基本コンセプトと行動計画により、当社グループは最終目標年度である2023年度(2024年3月期)まで、また、その後に続く未来に向けての持続的な成長を目指します。基本コンセプトと行動計画は以下のとおりであります。

 

・基本コンセプト

「水産食品卸としてのプラットフォームを充実させ、持続的な成長を目指す」

近年の水産資源に関わる原料供給の変化、食にまつわるライフスタイルの変化に加え、新型コロナウイルスの蔓延が消費者購買スタイルに構造的な変革を促しております。この状況下、当社グループは水産食品卸として、持続的な成長を続ける為のプラットフォームを充実させる施策を実行してまいります。また、荷主・メーカー、仲卸をはじめとする買受人との協業を基に、商流の深化と拡大を目標と致します。

 

・重点課題と行動計画

a)機能面について

1.物流の根幹を成す2棟の冷蔵庫を統合し、有機的・効率的な運営を行い、首都圏物流の充実を図る。

2.グループ会社での加工機能の強化を図り、製品販売・流通網の拡大を目指す。

3.保有するMSC、MELver.2など、持続可能な漁業・水産物の各種認証を活かした商流を拡大する。

4.安全・安心基準の更なるレベルアップを推進する。

5.機能強化のために新規投資を推進する。

6.人事制度の刷新を含めた、働き方の多様性を尊重した労働環境の改善を目指す。

 

b) 商品戦略について

1.生鮮

豊洲市場の大きな特色である鮮魚類・鮮マグロ類については、産地・品質に徹底したこだわりを持ち続け、出荷者様と買受人様の満足度の最大化を図る。

2.養殖

供給面と品質の安定性を持つ養殖魚の取扱いを拡大するため、養殖魚取扱いの専門組織を新設する。

3.塩冷・加工品

荷主様・メーカー様との販売企画及び商品開発を拡大し、有機的な製販協業体制の構築を目指す。

 

上記経営計画とともに、持続的成長に資する経営基盤を目指し昨年来より実施している、

①責任体制の明確化

②顧客重視の品質管理体制の充実

③保有在庫の適正化と回転を早めるための社内管理体制の見直し

④採算管理の細分化により営業費用の適正化を図る

についても継続して取り組んでまいります。

 

・SG-2023最終年度の目標(連結ベース)

(単位:百万円)

 

 

SG-2023

 

2021年3月期

2022年3月期

2024年3月期

 

実 績

予 想

目 標

売上高

66,621

58,000

62,000程度

営業利益

132

300

400程度

経常利益

189

300

400程度

親会社株主に帰属する

当期純利益

518

250

350程度

自己資本比率

36.6%

37.0%

40%程度

連結配当性向

15.1%

20~30%を目処に、継続的かつ安定的に実施

 2022年3月期より「収益認識基準に関する会計基準」(企業会計基準第29号)を適用するため、上記表内の2022年3月期予想数値及び2024年3月期目標数値は当該会計基準等を適用した金額となっております。

 

2021年3月期の会計基準(旧来ベース)算出の予想及び目標数値は、下記のとおりとなります。

(単位:百万円)

 

2021年3月期

2022年3月期

2024年3月期

 

実績

予想

目標

売上高

66,621

72,000

76,000程度

(注)上記の予想及び目標値は、現時点における入手可能な情報に基づいて算出しておりますが、実際の業績は今後の事業環境の変化等の様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

・中期経営計画初年度の総括

(単位:百万円)

 

SG-2023

 

2022年3月期予想

2022年3月期実績

売上高

58,000

55,018

営業利益

300

141

経常利益

300

173

親会社株主に帰属する

当期純利益

250

264

自己資本比率

37.0%

36.8%

連結配当性向

20~30%を目処

29.5%

2022年3月期予想は2021年5月14日に作成したものです。

上記予想数値作成時、新型コロナウイルス感染拡大の業績に与える影響は2022年3月末まで一定程度継続するものの、年度後半にはワクチン接種の浸透等により社会経済も回復の兆候が見られるであろうと想定しておりました。しかしながら水産物卸売業、特に豊洲市場において、業務筋を中心に水産物の消費回復の動きは鈍いままで、加えてロシア・ウクライナ情勢の影響、円安による輸入価格の上昇もあり、生鮮水産物、冷凍水産物を中心に取扱数量が当初計画を下回り、また、仕入単価の上昇を一部販売価格に転嫁できなかったことも重なり、売上高、売上総利益ともに計画を下回る結果となりました。

冷蔵事業部門は、株式会社東市ロジスティクスを存続会社とした株式会社東市ロジスティクスと豊海東市冷蔵株式会社との合併を行い、不動産賃貸業とともに当初の予定どおり順調に推移しております。

 

『SG-2023』で掲げた機能面での行動計画の進捗状況は次のとおりとなっております。

当社保有の2棟の冷蔵庫を運営する株式会社東市ロジスティクスは、合併効果により寄託貨物の特性を考慮した施設・庫腹の有効活用が可能となり、弾力的な人員配置も相俟って、少しずつですが、有機的・効率的な運営が図られております。

当社グループの加工機能を担う共同水産株式会社は、首都圏消費にマッチした商材の開発と生産に注力、顧客からも高評価を得ており、同じく株式会社キタショクでは、地の利を生かした北海道産の原料を中心とした水産加工品を生産、その製品を北海道内だけでなく全国へグループ全社で販売しております。現在までのところ大きな設備投資は実施しておりませんが、今後も生産量拡大と機能強化のための設備投資及び加工機械の更新と、安全・安心基準のレベルアップを目指していきます。

当社グループが保有する海洋保護活動に貢献する国際流通認証を活かした商流は、認証を受けた水産物の認知度を上げるべく、出荷者・生産者と共同して取り組んでおりますが、現在までのところ、一般消費者への浸透は進んでおらず、したがって当社販売先の積極的なオファーは限定され、当初予定していたほどの成果を上げるまでには至っておりません。今後も引き続き当社グループの販売先に積極的に働きかけて、SDGs14の「持続可能な開発のために、海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」に資する認証を受けた水産物の認知と拡販に努めていきます。

働き方の多様性を尊重した労働環境の改善について、中期経営計画初年度の2021年度は諸規程の刷新と人事制度の見直しに着手しました。育児・介護・労働安全はSDGs8の「働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)」に不可欠と考え、それら諸規程の刷新について積極的に優先的に対応しております。人事制度の見直しは、2023年度に実施すべく現在、準備を進めております。

 

〇新型コロナウイルス禍への対応

当社グループでは、お取引先様と従業員の安全を第一に、新型コロナウイルス感染予防のため、衛生管理(マスクの着用、手指の消毒、体温の測定と報告等)の徹底とともに、時差出勤、テレワークなどの対策を講じてきました。今後も感染状況の変化を見据えながら対応してまいります。

また、万が一に備え、農林水産省・東京都・豊洲市場協会と緊密な連携のもと、危機管理体制の確立、感染拡大防止策、市場流通の確保、風評被害対策を盛り込んだ「新型コロナウイルス感染症発生に伴う事業継続計画」を策定しております。

 

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