当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度における世界経済は、多くの国で前期の新型コロナウイルス感染症拡大の影響による急激な落ち込みからの回復が見られました。米国経済は感染再拡大や人手不足の影響を受け、雇用や消費の拡大ペースが鈍化し始めたものの、回復傾向は持続いたしました。欧州ではオミクロン株の急拡大に伴う行動規制の強化などが経済活動に大きく影響を与えました。中国でも経済は堅調に推移いたしましたが、「ゼロコロナ」政策の影響や不動産市場の低迷などにより成長は鈍化いたしました。
わが国の経済は変異株拡大により活動制限と緩和が繰り返されましたが、回復基調を維持し、慎重だった個人消費にも9月の緊急事態宣言解除後は持ち直しの動きが見られました。
このような中、当社でも変異株の感染急拡大に伴い、ステークホルダーの健康、安全に留意しながら第7次中期経営計画の戦略を推進しました。ウオッチ事業では「グランドセイコー(GS)」や「セイコー プロスペックス」を中心としたグローバルブランド(GB)拡大の取組みを進め、特に海外市場で売上高が大きく伸長しました。電子デバイス事業では医療分野などの好調な需要を確実に捉え、システムソリューション事業でも多角化やストックビジネス拡大への取組みが奏功し、両事業とも前年度および新型コロナウイルス拡大前の前々年度を上回る売上を計上しました。その結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は、2,373億円(前年度比17.1%増)となりました。
連結全体の国内売上高は1,244億円(同10.0%増)、海外売上高は1,129億円(同26.1%増)となり、海外売上高割合は47.6%でした。
当連結会計年度の広告宣伝販促費は、前年度に対して約7%増加いたしましたが、前々年度に対しては約15%下回る水準となりました。その他の販売費及び一般管理費も会計基準変更の影響による増加の他、事業活動の平常化にあわせて概ね通常の水準まで戻りましたが、売上高の回復や収益性の改善により営業利益は前年度から65億円改善し87億円(同299.7%増)となりました。営業外収支が持分法による投資損益や為替差損益などにより前年度から改善した結果、経常利益は前年度を93億円上回る99億円(前年度は経常利益6億円)となりました。補助金収入1億円を特別利益に、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う損失等、合計で11億円を特別損失に計上し、法人税等および非支配株主に帰属する当期純利益を控除した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は64億円(同84.6%増)となりました。
なお、当連結会計年度の平均為替レートは1米ドル112.4円、1ユーロ130.6円でした。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
ウオッチ事業の売上高は前年度比206億円増加の1,257億円(前年度比19.7%増、前々年度比7.2%減)となりました。当連結会計年度の国内の完成品ウオッチは変異株拡大の影響で計画を若干下回ったものの、第3四半期からは回復基調に転じております。140周年記念モデルや荘厳な白樺林をダイヤルに表現したモデルを中心に好調だったGSが前年度を上回ったほか、「セイコー アストロン」の売上高が伸長しました。流通別には、富裕層の旺盛な購買に支えられた百貨店や時計専門店が順調に推移いたしました。
海外ではGSが牽引し、GBの売上高はすべての地域で前年度だけでなく前々年度を上回りました。米国ではクリスマス商戦も好調に推移し、GS、「セイコー プロスペックス」を中心に前年度、前々年度を大きく上回りました。欧州でも英国、フランスなど多くの国でGSをはじめとするGBが売上を伸ばしました。中国では夏以降、不動産会社のデフォルト懸念が広がるなど社会不安から消費マインドが低下し、売上高は前年度を下回りました。変異株拡大の影響によりその他のアジアの売上高は前年並みに留まりましたが、オーストラリアではGBを中心に好調に推移しました。
ウオッチムーブメントの外販ビジネスは、アジア市場向けが低調でした。
事業活動の回復に伴い費用は前年度から通常水準に戻りましたが、売上高増加に伴い営業利益は前年度から20億円増加し76億円(同36.4%増)となりました。
電子デバイス事業は売上高646億円(前年度比28.8%増)、営業利益58億円(同347.4%増)となりました。サーマルプリンタや一部の精密デバイスで部材供給の遅れなどの影響を受けたものの、医療向け電池や水晶に加えオシレータや半導体製造装置向けの高機能金属、自動車向けやデータセンター向けの精密部品などが引き続き好調に推移し、前年度から大幅な増収増益となりました。
システムソリューション事業は売上高344億円(前年度比0.9%増)、営業利益39億円(同11.5%増)となりました。外食産業などがコロナ禍の影響を受けたほか、一部で部材調達難が発生いたしましたが、社会のデジタル化の波を捉えた電子契約関連ビジネスや株式会社アイ・アイ・エムの性能管理・セキュリティ関連ビジネス、さらに公共・通信業界向けの5G向けネットワーク関連ビジネスなどが伸長し、24四半期連続で対前年同期増収増益を達成いたしました。
タイムクリエーション・和光事業他の売上高は前年度比24億円増加の273億円(前年度比9.8%増)、営業利益は7億円(前年度は営業損失40百万円)となりました。国内で個人消費に持ち直しの傾向が見られた第3四半期以降順調に回復し、第4四半期も2022年1月から東京都等でまん延防止等重点措置が適用されたものの影響は限定的で、好調を維持することができました。また、海外向けクロックも、新型コロナウイルス感染症拡大の影響からの市況回復にあわせ、前年度より売上を伸ばしました。
(資産)
当連結会計年度末の総資産は3,275億円となり、前連結会計年度末に比べて78億円の増加となりました。流動資産では、現金及び預金が18億円減少した一方、商品及び製品等の棚卸資産が46億円増加したことに加え、受取手形、売掛金及び契約資産の合計が前連結会計年度末の受取手形及び売掛金と比べ15億円増加したことなどにより、流動資産合計は前連結会計年度末より47億円増加し1,547億円となりました。固定資産では、有形固定資産19億円増、無形固定資産9億円減、投資その他の資産21億円増となり、固定資産合計は前連結会計年度末と比べ31億円増加の1,727億円となりました。
(負債)
負債につきましては、短期借入金が89億円、長期借入金が65億円減少いたしましたが、1年内返済予定の長期借入金が64億円増加した結果、借入金合計は1,161億円となりました。また、支払手形及び買掛金が17億円、電子記録債務が10億円、未払金が20億円増加したことなどにより、負債合計は前連結会計年度末と比べ6億円減少の2,059億円となりました。
(純資産)
純資産につきましては、株主資本が31億円、為替換算調整勘定が40億円増加したことなどから、合計で前連結会計年度末と比べ85億円増加の1,216億円となりました。
当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は307億円となり、前連結会計年度末と比べて16億円の減少となりました。また、営業活動および投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは110億円となりました。
これは主に以下の要因によるものです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が88億円となり、減価償却費108億円を加え、退職給付に係る負債の増減額△17億円、売上債権の増減額14億円、棚卸資産の増減額△20億円等の調整を行った結果、前年度から174億円増加となる203億円のプラス(前年度は28億円のプラス)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出△87億円等を計上した結果、93億円のマイナス(前年度は78億円のマイナス)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長短借入金の返済および借入がネットで△96億円、リース債務の返済による支出△17億円、配当金の支払額△20億円等があり139億円のマイナス(前年度は104億円のプラス)となりました。
当社グループの主な資金需要は、製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金需要、設備投資や研究開発費、ブランディング費用などの成長及び企業価値向上を目的とした投資需要であり、資金の主な源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー、有利子負債による資金調達であります。
資金の流動性につきましては、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は 307億円であり、将来の資金需要に対し適正な水準を確保していると認識しております。また、当社および国内の事業会社においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、グループ全体の資金効率化を図っております。さらに、様々な不測の事態においても機動的かつ安定的に経常運転資金を確保するため、複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は、製造原価によって算出しております。
2.連結消去後の金額で記載しております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.連結消去後の金額で記載しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.連結消去後の金額で記載しております。
2.総販売実績に対する割合が100分の10以上の販売先はないため、「主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合」の記載は行っておりません。
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