(1) 企業環境
当期の世界経済は、新型コロナウイルスの大流行への対策としての先進国を中心とした金融・財政支援を背景に、景気回復の動きが強まりました。需要が大きく回復する一方、供給網においてはさまざまな制約が生じ、さらに、欧州での異例の風況による風力発電量の急減に端を発するエネルギー価格の世界的な高騰などから、物価上昇の傾向が顕著になりました。これを受け、多くの国・地域で金融政策を緩和から引締めに転換する動きが見られました。加えて、ロシア・ウクライナ情勢に起因する経済制裁で世界が分断され、エネルギーや穀物などの価格が一層不安定になりました。中国では、各種規制の強化などの影響を受け、不動産危機をはじめとした成長の鈍化傾向が見られました。
国際商品市況は、近年では経験したことのない大幅な上昇となりました。世界的な脱炭素化の潮流を受け、化石燃料の上流権益への投資が減少するなか、世界的な景気回復の強まりや欧州のエネルギー危機を契機とした需要回復の動きにより、原油や天然ガスなどの価格が騰勢を強めました。また、急激な需要回復による物流の混乱やロシア・ウクライナ情勢の緊迫化による供給網の寸断リスクの高まりは、原油や天然ガスなどの価格のみならず、ニッケルや亜鉛などの非鉄金属、鉄鋼、穀物、さらにはガスを原料とする肥料などの原材料価格を一段と押し上げました。国内経済は、新型コロナウイルス感染症の感染状況に左右されて一進一退の動きとなったことや、半導体などのサプライチェーンの不安定な状況が続いたことなどにより、期待されたほど回復しませんでした。また、エネルギー価格の上昇と円安により輸入金額が大きく増加し、貿易収支は赤字に転じました。
(2) 業績
当期の収益は、5兆4,950億円となり、前期の4兆6,451億円に比べ、8,500億円の増益となりました。売上総利益は、1兆96億円となり、前期の7,295億円に比べ、2,801億円の増益となりました。これは電力EPC案件で前期に工事遅延に伴う追加コストを計上したことの反動に加え、ボリビア銀・亜鉛・鉛事業で増益となったことなどによるものです。販売費及び一般管理費は、7,139億円となり、前期の6,789億円に比べ、350億円の増加となりました。固定資産損益は、126億円の損失となり、前期の856億円の損失に比べ、730億円の改善となりました。これは欧米州青果事業や鋼管事業などにおいて前期に減損損失を計上したことの反動などによるものです。有価証券損益は、482億円の利益となり、前期の29億円の利益に比べ、453億円の増益となりました。これは当期に複数の案件でバリュー実現を行なったことなどによるものです。持分法による投資損益は、1,768億円の利益となり、前期の414億円の損失に比べ、2,182億円の増益となりました。これは航空機リース事業で当期にロシア・ウクライナ関連の損失を計上した一方、マダガスカルニッケル事業で前期に減損損失を計上したことの反動に加え、2021年3月から操業を再開したことによる販売数量の増加に伴う増益や債務リストラに伴う一過性利益の計上があったことなどによるものです。これらの結果、親会社の所有者に帰属する当期損益は、4,637億円の利益となり、前期の1,531億円の損失に比べ、6,168億円の増益となりました。
(3) 事業セグメント
当社は、6つの業種に基づくセグメント(事業部門)により事業活動を行っております。
6つのセグメントは金属事業部門、輸送機・建機事業部門、インフラ事業部門、メディア・デジタル事業部門、生活・不動産事業部門、資源・化学品事業部門から構成されております。2021年4月1日付で、エネルギーイノベーション・イニシアチブを新設しました。インフラ事業部門、生活・不動産事業部門、資源・化学品事業部門傘下の組織から次世代エネルギー関連事業を同イニシアチブに移管し、消去又は全社に含めることとしております。また、同日付で、金属事業部門傘下にあったアルミニウム地金及び板の生産・販売事業を資源・化学品事業部門傘下の組織に移管しました。これに伴い、前期のセグメント情報は組替えております。
前期及び当期の売上総利益、当期利益又は損失(親会社の所有者に帰属)の事業セグメント別実績は以下のとおりであります。
事業セグメント別売上総利益の内訳
|
前期 (自2020年4月 1日 至2021年3月31日) (億円) |
当期 (自2021年4月 1日 至2022年3月31日) (億円) |
増減額 (億円) |
増減率 (%) |
金属 |
662 |
1,403 |
741 |
111.9 |
輸送機・建機 |
1,404 |
1,894 |
490 |
34.9 |
インフラ |
155 |
715 |
560 |
360.8 |
メディア・デジタル |
1,053 |
1,110 |
57 |
5.4 |
生活・不動産 |
2,354 |
2,227 |
△128 |
△5.4 |
資源・化学品 |
1,601 |
2,712 |
1,110 |
69.3 |
計 |
7,230 |
10,060 |
2,830 |
39.1 |
消去又は全社 |
65 |
36 |
△29 |
△44.3 |
連結 |
7,295 |
10,096 |
2,801 |
38.4 |
事業セグメント別当期利益又は損失(△)(親会社の所有者に帰属)の内訳
|
前期 (自2020年4月 1日 至2021年3月31日) (億円) |
当期 (自2021年4月 1日 至2022年3月31日) (億円) |
増減額 (億円) |
増減率 (%) |
金属 |
△398 |
552 |
950 |
- |
輸送機・建機 |
△175 |
349 |
524 |
- |
インフラ |
△552 |
333 |
885 |
- |
メディア・デジタル |
443 |
394 |
△49 |
△11.0 |
生活・不動産 |
△48 |
440 |
488 |
- |
資源・化学品 |
△595 |
2,473 |
3,068 |
- |
計 |
△1,324 |
4,542 |
5,866 |
- |
消去又は全社 |
△206 |
95 |
302 |
- |
連結 |
△1,531 |
4,637 |
6,168 |
- |
金属事業部門
当期の売上総利益は1,403億円となり、前期の662億円に比べ、741億円(111.9%)の増益となりました。当期利益又は損失(親会社の所有者に帰属)は、552億円の利益となり、前期の398億円の損失に比べ、950億円の増益となりました。これは、前期に鋼管事業で減損損失を計上したことの反動に加え、海外スチールサービスセンター事業や北米鋼管事業が増益となったことなどによるものです。
輸送機・建機事業部門
当期の売上総利益は1,894億円となり、前期の1,404億円に比べ、490億円(34.9%)の増益となりました。当期利益又は損失(親会社の所有者に帰属)は、349億円の利益となり、前期の175億円の損失に比べ、524億円の増益となりました。これは、航空機リース事業で当期にロシア・ウクライナ関連の損失を計上した一方、インドネシア自動車金融事業で前期に一過性損失を計上したことの反動に加え、リース事業や自動車関連事業が増益となったことなどによるものです。
インフラ事業部門
当期の売上総利益は715億円となり、前期の155億円に比べ、560億円(360.8%)の増益となりました。当期利益又は損失(親会社の所有者に帰属)は、333億円の利益となり、前期の552億円の損失に比べ、885億円の増益となりました。これは、電力EPC案件がピークアウトした一方、前期に電力EPC案件で工事遅延に伴う一過性の追加コストや豪州発電事業などで減損損失などの一過性損失を計上したことの反動などにより増益となったものです。
メディア・デジタル事業部門
当期の売上総利益は1,110億円となり、前期の1,053億円に比べ、57億円(5.4%)の増益となりました。当期利益又は損失(親会社の所有者に帰属)は、394億円となり、前期の443億円に比べ、49億円の減益となりました。これは、国内主要事業会社が堅調に推移した一方、海外通信事業が減益となったことなどによるものです。
生活・不動産事業部門
当期の売上総利益は2,227億円となり、前期の2,354億円に比べ、128億円(5.4%)の減益となりました。当期利益又は損失(親会社の所有者に帰属)は、440億円の利益となり、前期の48億円の損失に比べ、488億円の増益となりました。これは、欧米州青果事業で前期に減損損失を計上したことの反動に加え、米国市況回復により増益となったこと、また、不動産事業で大口の収益計上があったことなどによるものです。
資源・化学品事業部門
当期の売上総利益は2,712億円となり、前期の1,601億円に比べ、1,110億円(69.3%)の増益となりました。当期利益又は損失(親会社の所有者に帰属)は、2,473億円の利益となり、前期の595億円の損失に比べ、3,068億円の増益となりました。これは、マダガスカルニッケル事業で前期に減損損失を計上したことの反動に加え、2021年3月から操業を再開したことによる販売数量の増加に伴う増益や債務リストラに伴う一過性利益の計上があったことや、チリ銅・モリブデン鉱山事業の売却益を計上したこと、また、資源価格が高値で推移したことや化学品トレード・農業資材ビジネスが堅調に推移したことによる増益などによるものです。
(4) 仕入、成約及び販売の実績
当期において、資源価格の上昇並びに北米鋼管事業における販売数量増加等により、前期と比較して収益が大幅に増加しております。
なお、販売の状況については上記「(2)業績」及び「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4 セグメント情報」をご参照ください。
(5) 連結包括利益計算書における主要な項目
以下は、連結包括利益計算書における主要な項目についての説明であります。
収益
当社では、収益を、商品販売に係る収益とサービス及びその他の販売に係る収益に区分して表示しております。
商品販売に係る収益としては、以下の取引に関連して発生する収益が含まれております。
・卸売、小売、製造・加工を通じた商品の販売
・不動産の開発販売
・長期請負工事契約に係る収益
サービス及びその他の販売に係る収益としては、以下の取引に関連して発生する収益が含まれております。
・ソフトウェアの開発に関連するサービス
・賃貸用不動産、船舶などの貸付金、ファイナンス・リース及びオペレーティング・リース
売上総利益
売上総利益は、以下により構成されております。
・当社が主たる契約当事者として関与する取引における総利益
・当社が代理人等として関与する取引における手数料
収益が総額で計上される場合、販売に直接寄与する第三者への費用または手数料は、商品販売に係る原価として計上され、売上総利益は、収益の総額から販売に係る原価を差引いた金額となります。当社はサービス及びその他の販売に係る収益の一部として手数料を計上しますが、この手数料は純額表示されるため、結果としてサービス及びその他の販売が売上総利益に占める比率は、収益合計に占める比率よりも大きくなっております。当期、サービス及びその他の販売が収益合計に占める比率は9.1%ですが、売上総利益に占める比率は22.9%となっております。
固定資産評価損益
棚卸資産、繰延税金資産及び生物資産を除く当社の非金融資産の帳簿価額については、期末日ごとに減損の兆候の有無を判断しております。減損の兆候が存在する場合は、当該資産の回収可能価額を見積り、のれん及び耐用年数を確定できない、または未だ使用可能ではない無形資産については、回収可能価額を毎年同じ時期に見積った上で、資産または資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、減損損失を認識しております。また、減損損失の戻し入れを行った場合は当該戻し入れ金額も含めております。
固定資産売却損益
当社は、資産のポートフォリオの戦略的かつ積極的な入替えを図っております。その結果、不動産の含み益を実現するために売却する場合や、価格の下落した不動産を売却する場合、売却損益を計上することになります。
受取配当金
受取配当金には、当社の子会社及び持分法適用会社以外で、当社が株式を保有している会社からの配当金が計上されております。
有価証券損益
当社は事業活動の一環として相応の規模の投資を行っております。これらの投資対象のうち、公正価値で測定し、その変動を当期利益で認識する金融資産(以下、FVTPLの金融資産)は公正価値で当初認識しております。当初認識後は公正価値の変動を当期利益で認識しております。また、償却原価で測定される金融資産は、公正価値(直接帰属する取引費用も含む)で当初認識しております。当初認識後、償却原価で測定される金融資産の帳簿価額については実効金利法を用いて算定し、帳簿価額の変動について、必要な場合には減損損失を認識しております。償却原価で測定される金融資産並びに子会社及び持分法適用会社への投資等を売却する際に、売却損益を認識しております。
持分法による投資損益
投資戦略やビジネスチャンスの拡大に関連して、当社は、各セグメントで状況に応じ、新規または既存の会社の買収や出資、他の企業とのジョイント・ベンチャーの結成、または同業他社とのビジネス・アライアンスの組成を行っております。一般的に、当社は、出資比率が20%以上50%以下である会社の投資に対し、その持分利益や損失を計上しております。
FVTOCIの金融資産
公正価値で測定し、その変動をその他の包括利益で認識する金融資産(以下、FVTOCIの金融資産)は、公正価値(直接帰属する取引費用も含む)で当初認識しております。当初認識後は公正価値で測定し、公正価値の変動をその他の包括利益で認識しております。
確定給付制度の再測定
当社は、確定給付負債(資産)の純額の再測定を、その他の包括利益で認識しております。
在外営業活動体の換算差額
在外営業活動体の資産・負債(取得により発生したのれん及び公正価値の調整を含む)については期末日の為替レート、収益及び費用については期中平均レートを用いて日本円に換算しており、在外営業活動体の財務諸表の換算から生じる為替換算差額はその他の包括利益で認識しております。当社のIFRS移行日以降、当該差額はその他の資本の構成要素である「在外営業活動体の換算差額」として表示しております。
キャッシュ・フロー・ヘッジ
デリバティブを、認識済み資産・負債、または当期利益に影響を与え得る発生可能性の非常に高い予定取引に関連する特定のリスクに起因するキャッシュ・フローの変動をヘッジするためのヘッジ手段として指定した場合、デリバティブの公正価値の変動のうちヘッジ有効部分は、その他の包括利益で認識しております。
(6) 重要な会計方針及び見積り
IFRSに基づく連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の資産・負債の計上や偶発資産及び偶発債務の開示、並びに期中の収益費用の適正な計上を行うため、マネジメントによる見積りや前提が必要とされます。当社は、過去の実績、または、各状況下で最も合理的と判断される前提に基づき、一貫した見積りを実施しております。資産・負債及び収益費用を計上する上で客観的な判断材料が十分でない場合は、このような見積りが当社における判断の基礎となっております。従って、異なる前提条件の下においては、結果が異なる場合があります。以下、当社の財政状態や経営成績にとって重要であり、かつ相当程度の経営判断や見積りを必要とする重要な会計方針につき説明します。なお、当社の主な会計方針は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針」を参照願います。
金融資産の減損
当社は、償却原価で測定する金融資産、リース債権、契約資産及びその他の包括利益を通じて公正価値で測定する負債性金融資産に係る減損については、当該金融資産に係る予想信用損失に対して損失評価引当金を認識しております。
当社は、信用リスクの変動及び予想信用損失の算定にあたっては、主に当社独自の信用格付けである Sumisho Credit Rating(SCR)を用いております。これには、債務者の過去の貸倒実績、現在の財務状態及び合理的に利用可能な将来予測情報等が含まれております。
公正価値で測定する金融資産
当社は、有価証券やその他の投資等の金融資産を保有しており、FVTOCIの金融資産と、FVTPLの金融資産とに分類しております。当社は、投資先企業との取引関係の維持・強化による中長期的な収益の拡大などを目的として保有しており、公正価値の変動を業績評価指標としていない金融資産をFVTOCIの金融資産として分類し、公正価値の変動を獲得するために保有し、業績評価指標としている金融資産をFVTPLの金融資産として分類しております。当該金融資産の公正価値は、市場価格、割引将来キャッシュ・フローや純資産に基づく評価モデル等の評価方法により算定しております。
非流動資産の回収可能性
当社は、様々な非流動資産を保有しており、持分法で会計処理されている投資や無形資産などの非流動資産について、帳簿価額の回収可能性を損なうと考えられる企業環境の変化や経済事象が発生した場合には、減損テストを行っております。実際に減損の兆候があるかどうかの判定に際しては、様々な見積りや前提が必要となります。例えば、キャッシュ・フローが直接的に減損の懸念がある資産に関係して発生しているのかどうか、資産の残存耐用年数がキャッシュ・フローを生み出す期間として適切かどうか、生み出すキャッシュ・フローの額が適切かどうか、及び、残存価額が適切かどうか、などを考慮しなければなりません。また、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産について、少なくとも年1回、更に減損の発生が予測される場合は、その都度、減損テストを実施しております。減損テスト時には、資産の回収可能価額を見積っております。資産または資金生成単位の回収可能価額は使用価値と売却費用控除後の公正価値のうち、いずれか高い金額としております。使用価値の算定において、見積将来キャッシュ・フローは、貨幣の時間的価値及び当該資産の固有のリスクを反映した税引前の割引率を用いて現在価値に割引いております。当社では、過去の経験や社内の事業計画、及び適切な割引率を基礎として将来キャッシュ・フローを見積っております。これらの見積りは、事業戦略の変更や、市場環境の変化により、重要な影響を受ける可能性があります。なお、非流動資産の回収可能性に関連する会計上の見積りのうち、重要なものは以下になります。詳細については、「第5経理の状況 連結財務諸表注記 11 持分法適用会社に対する投資、注記 13 無形資産」を参照願います。
① マダガスカルニッケル事業
AMBATOVY MINERALS S.A. 及びDYNATEC MADAGASCAR S.A. (以下、プロジェクト会社)の固定資産に減損の兆候が認められ、かつ、減損テストの結果、回収可能価額が固定資産の帳簿価額を下回った場合には、当社において持分相当額を持分法投資損失として認識いたします。プロジェクト会社における固定資産の回収可能価額は、使用価値と処分コスト控除後の公正価値のいずれか高い方が採用され、その見積りには、プロジェクト会社の生産状況、将来の資源価格(主にニッケル及びコバルト等の中・長期予想価格)、可採埋蔵量、割引率といった重要な仮定が使用されております。
② 欧米州青果事業
欧米州青果事業において、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産の減損テストは、複数の資金生成単位グループに分けて実施しており、回収可能価額は使用価値に基づき算定しております。使用価値は、取得価額の前提とした事業計画に対して、直近の事業環境を反映させた将来キャッシュ・フローの現在価値を用いて、独立した鑑定人の支援を受け、評価しております。使用価値に大きく影響を及ぼす仮定は、バナナ&パイン事業における販売数量・マージン・割引率等であります。
繰延税金資産の回収可能性
当社は、繰延税金資産の全部または一部について、回収が不確実となった場合に、マネジメントの判断により、減額しております。繰延税金資産の回収可能性の評価にあたっては、繰延税金資産計上の根拠となっている将来の一時差異の解消が見込まれる期間内、または、繰越欠損金の繰越可能期間内に、納税地において将来十分な課税所得を生み出せるかどうかを評価しなければなりません。当社では、有利・不利に関わらず、入手可能なすべての根拠・確証を用いてこの評価を実施しております。繰延税金資産の評価は、見積りと判断に基づいております。納税地での将来の課税所得に影響を与える当社の収益力に変化があった場合、現状の繰延税金資産の回収可能性の評価も変わる場合があります。
引当金の測定
引当金は、過去の事象の結果として、当社が、現在の法的または推定的債務を負っており、当該債務を決済するために経済的資源の流出が生じる可能性が高く、その債務の金額が合理的に見積り可能である場合に認識しております。引当金は、見積将来キャッシュ・フローを貨幣の時間的価値及び当該負債に特有のリスクを反映した税引前の利率を用いて現在価値に割引いております。
確定給付債務の測定
確定給付型年金制度は、確定拠出型年金制度以外の退職後給付制度であります。確定給付型年金制度に関連する当社の純債務は、制度ごとに区別して、従業員が過年度及び当年度において提供したサービスの対価として獲得した将来給付額を見積り、当該金額を現在価値に割引き、制度資産の公正価値を差し引くことによって算定しております。割引率は、当社の債務と概ね同じ満期日を有するもので、期末日において信用格付AAの債券の利回りであります。この計算は、毎年、年金数理人によって予測単位積増方式を用いて行っております。
(7) 資産及び負債・資本
当期末の資産合計は、9兆5,822億円となり、前期末の8兆800億円に比べ、1兆5,022億円の増加となりました。これは円安の影響による増加に加え、営業資産や持分法投資が増加したことなどによるものです。
資本のうち親会社の所有者に帰属する持分合計は、3兆1,978億円となり、前期末の2兆5,280億円に比べ、6,699億円の増加となりました。これは配当金の支払いがあった一方、円安の影響や親会社の所有者に帰属する当期利益を認識したことなどによるものです。
現預金ネット後の有利子負債(注1)は、2兆2,737億円となり、前期末の2兆3,004億円に比べ、267億円の減少となりました。
この結果、ネットのデット・エクイティ・レシオ(有利子負債(ネット)/親会社の所有者に帰属する持分合計)は、0.7倍となりました。
(8) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資金が増加した一方で、コアビジネスが着実に資金を創出し、基礎収益キャッシュ・フロー(注2)が3,595億円のキャッシュ・インとなったことなどから、合計で1,941億円のキャッシュ・インとなりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、エチオピア通信事業や中国下水処理事業への参画などの投融資を行った一方で、チリ銅・モリブデン鉱山事業の売却や国内外不動産案件などの資産入替による回収があったことなどから、490億円のキャッシュ・インとなりました。
これらの結果、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加えたフリーキャッシュ・フローは、2,431億円のキャッシュ・インとなりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、リース負債の支出や配当金の支払いなどにより、1,399億円のキャッシュ・アウトとなりました。
以上に加え、為替変動による影響などを加味した結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、7,338億円となり、前期末の5,990億円に比べ、1,348億円の増加となりました。
(注1)有利子負債=社債及び借入金(流動・非流動)の合計 (リース負債は含まれておりません)
(注2)基礎収益キャッシュ・フロー=(売上総利益+販売費及び一般管理費(除く貸倒引当金繰入額)+利息収支+受取配当金)
×(1-税率)+持分法投資先からの配当
税率は当期は25%、前期は31%を使用しております。
(9) 資金調達と流動性
当社の財務運営は財務健全性の維持・向上を基本方針とし、低利かつ中長期にわたり、安定的な資金調達を行うこと、及び十分な流動性の保持を図ることとしております。当社グループ内での資金管理については、グループファイナンスを整備し、資金調達を当社及び金融子会社、海外現地法人に集中した上で、キャッシュ・マネジメント・システムを通じて、当社グループ内で資金を効率的に活用する体制を整えております。
当社は総額3兆214億円の社債及び借入金を有しており、このうち短期の借入金は、前期比753億円増加の2,637億円で、内訳は短期借入金(主として銀行借入金)1,997億円、コマーシャルペーパー640億円となっております。
一年以内に期限の到来する社債及び長期借入金3,443億円を含めた当期の社債及び長期借入金は、前期比339億円増加の2兆7,577億円となっております。このうち、銀行及び保険会社からの長期借入残高は、前期比36億円減少の2兆2,686億円、社債残高は前期比373億円増加の4,890億円となっております。
当社の銀行からの借入の多くは、日本の商慣行上の規定に基づいております。当社は、このような規定が当社の営業活動や財務活動の柔軟性を制限しないと確信しておりますが、いくつかの借入契約においては、財務比率や純資産の最低比率の維持が求められております。さらに、主に政府系金融機関との契約においては、当社が増資や社債の発行等により資金を調達した際に、当該金融機関から、当該借入金の期限前返済を求められる可能性があり、また、一部の契約では当社の剰余金の配当等について当該金融機関の事前承認を請求される可能性があります。当社は、このような請求を受けたことはなく、今後も受けることはないと判断しております。
詳細は、「2 事業等のリスク(3) タイプ別リスク ⑬資金の流動性に関するリスク」を参照願います。
資金調達については、各金融機関との良好な関係に基づく銀行借入等の間接金融を中心に、コマーシャルペーパーや社債等の直接金融との適切なバランスに留意し、調達期間の長期化を通じた償還期日の分散等による安定的な調達構造を構築しております。また、外貨建ての資金調達については、銀行借入や外貨建て社債発行、通貨スワップの他、金融子会社、海外現地法人におけるコマーシャルペーパー、ユーロMTN等の活用によって資金調達ソースの多様化に取り組んでおります。
なお、当社は、資本市場での直接調達を目的として、以下の資金調達プログラムを設定しており、当期末時点での当社の長期及び短期の信用格付は、ムーディーズでBaa1/P-2(見通し安定的)、スタンダード&プアーズで BBB+/A-2(見通し安定的)、格付投資情報センターでA+/a-1(見通し安定的)となっております。
・3,000億円の国内及び海外公募普通社債発行登録枠
・国内における5,000億円のコマーシャルペーパー発行枠
・米州住友商事により設定された、1,500百万米ドルのコマーシャルペーパープログラム
・当社、英国のSumitomo Corporation Capital Europe(以下、「SCCE」という。)、米州住友商事及び
シンガポールのSumitomo Corporation Capital Asiaが共同で設定した3,000百万米ドルのユーロMTNプログラム
・SCCEが設定した1,500百万米ドルのユーロコマーシャルペーパープログラム
保有流動性については、金融市場の混乱等、複数の有事シナリオを想定し、当期末時点で現預金と国内外の主要な金融機関との総額1,210百万米ドル、及び2,850億円を上限とする以下の長期コミットメントラインを中心に、当社及び当社子会社における資金需要や1年内に期日が到来する借入や社債の償還資金等を補完する十分な流動性を確保しております。なお、当有価証券報告書の提出日までに、これらのコミットメントラインに基づく借入はありません。また、これらのコミットメントラインには、借入の実行を制限する重大なコベナンツ、格付トリガー条項などは付されておりません。なお、これらのコミットメントラインのほかに、当社は、コミットメントベースでない借入枠を有しております。
・米国及び欧州の大手銀行によるシンジケート団との間で締結した、1,060百万米ドルのマルチ・カレンシー(円・米ドル・ユーロ建)/マルチ・ボロワー(住友商事及び英国、米国、シンガポールにおける当社子会社への融資)型長期コミットメントライン
・大手米銀との間に締結した、米州住友商事への100百万米ドルの長期コミットメントライン
・大手欧銀との間に締結した、SCCEへの50百万米ドルのマルチ・カレンシー(円・米ドル・ユーロ・ポンド建)型長期コミットメントライン
・大手邦銀のシンジケート団による1,500億円の長期コミットメントライン(内、790億円はマルチ・カレンシー型)
・有力地方銀行のシンジケート団による1,350億円の長期コミットメントライン
資金調達の内訳
|
前期 (2021年3月31日) (億円) |
当期 (2022年3月31日) (億円) |
||
短期 |
1,884 |
2,637 |
||
|
借入金(主に銀行より調達) |
1,381 |
1,997 |
|
|
コマーシャルペーパー |
503 |
640 |
|
長期(一年以内期限到来分を含む) |
27,238 |
27,577 |
||
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担保付 |
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借入金 |
2,049 |
2,353 |
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無担保 |
|
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|
|
|
借入金 |
20,672 |
20,334 |
|
|
社債 |
4,517 |
4,890 |
有利子負債合計(グロス) |
29,122 |
30,214 |
||
現金及び現金同等物並びに定期預金 |
6,118 |
7,477 |
||
有利子負債合計(ネット) |
23,004 |
22,737 |
||
資産合計 |
80,800 |
95,822 |
||
親会社の所有者に帰属する持分合計 |
25,280 |
31,978 |
||
親会社所有者帰属持分合計比率(%) |
31.3 |
33.4 |
||
|
|
|
|
|
デット・エクイティ・レシオ(グロス)(倍) |
1.2 |
0.9 |
||
デット・エクイティ・レシオ(ネット)(倍) |
0.9 |
0.7 |
当期末時点での当社の期限別の支払債務は、以下のとおりであります。
期限別内訳
|
社債及び借入金 (億円) |
リース負債 (億円) |
2022年度 |
6,080 |
738 |
2023年度 |
2,884 |
618 |
2024年度 |
3,493 |
518 |
2025年度 |
2,098 |
422 |
2026年度 |
3,323 |
346 |
2027年度以降 |
12,336 |
2,197 |
合計 |
30,214 |
4,839 |
当社は、資金供与に関する契約(貸付契約、出資契約)及び設備使用契約等を締結しており、当期末における契約残高は、8,640億円です。
当期末時点では、資本的支出に対する重要な契約はありません。
上述の契約に加えて、当社のビジネスに関連して、当社は、顧客の債務に対する保証などの様々な偶発債務を負っています。また、当社は、訴訟による偶発債務の影響を受ける可能性があります。これらの偶発債務に関する詳細は、「(10)偶発債務」及び「(11)訴訟等」を参照願います。当社は、現状においては、それらの偶発債務がもたらす資金需要が重大なものとはならないと判断しておりますが、仮に予想に反して、当社が保証を行っている債務に重大な不履行が生じた場合、また、訴訟の結果が、当社に大きく不利なものであった場合には、新たに、大きな資金調達が必要となる可能性があります。
当社は、主に、ワーキング・キャピタル、新規や既存ビジネスへの投資や債務の返済のために、将来にわたり継続的な資金調達を行う必要があります。当社は、成長戦略として買収、株式取得または貸付による投資を行っており、当期は、有形固定資産及び投資不動産の取得に773億円、また、その他の投資の取得に939億円の投資を行いました。当社は、現在、全てのセグメントにおいて、既存のコア・ビジネス及び周辺分野を中心に追加投資を検討しております。
しかしながら、これらの投資は、現在、予備調査段階のものや、今後の様々な条件により、その実施が左右されるものであり、結果的に実現されない可能性もあります。また当社は、手許の現金、現在の借入枠や営業活動によるキャッシュ・インで当面必要とされる資金需要を十分に満たせると考えておりますが、それは保証されている訳ではありません。当社の営業活動によるキャッシュ・インが想定より少なかった場合、当社は、追加借入の実施、他の資金調達手段の検討、または投資計画の修正を行う可能性があります。
(10) 偶発債務
当社の取引に関連して、顧客の債務に対する保証履行のような偶発債務を負うことがあります。当社は、世界各国のサプライヤーや顧客と多種多様な営業活動を行うことにより、営業債権及び保証等に係る信用リスクを分散させており、これらに関し重大な追加損失は発生しないものと見込んでおります。
当社の当期末における保証に対する偶発債務の残高(最長期限2047年)は1,216億円で、このうち持分法適用会社の債務に対する保証が522億円、第三者の債務に対する保証が694億円です。これらの保証は主に持分法適用会社、サプライヤー、及び顧客の信用を補完するために行っているものであります。
(11) 訴訟等
当社は、事業遂行上偶発的に発生する訴訟や訴訟に至らない請求等を受けておりますが、当社の経営上、重要な影響を及ぼすものはありません。
(12) 未適用の新たな基準書及び解釈指針
連結財務諸表の承認日までに公表されている主な基準書及び解釈指針の新設または改訂は次のとおりであり、2022年3月31日現在において当社はこれらを適用しておりません。適用による当社への影響は検討中であり、現時点で見積ることはできません。
基準書 |
基準名 |
強制適用時期 (以降開始年度) |
当社適用年度 |
新設・改訂の概要 |
IFRS第10号 |
連結財務諸表 |
未定 |
未定 |
投資者とその関連会社または共同支配企業との間の資産の売却または拠出の会計処理 |
IFRS第17号 |
保険契約 |
2023年1月1日 |
2024年3月期 |
保険契約の会計処理の改訂 |
IAS第1号 |
財務諸表の表示 |
2023年1月1日 |
2024年3月期 |
負債の流動負債又は非流動負債への分類の改訂及び会計方針の開示 |
IAS第8号 |
会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬 |
2023年1月1日 |
2024年3月期 |
会計上の見積りの定義の明確化 |
IAS第12号 |
法人所得税 |
2023年1月1日 |
2024年3月期 |
単一の取引から生じた資産及び負債に係る繰延税金 |
IAS第16号 |
有形固定資産 |
2022年1月1日 |
2023年3月期 |
意図した使用の前の収入 |
IAS第28号 |
関連会社及び共同支配企業に対する投資 |
未定 |
未定 |
投資者とその関連会社または共同支配企業との間の資産の売却または拠出の会計処理 |
IAS第37号 |
引当金、偶発負債及び偶発資産 |
2022年1月1日 |
2023年3月期 |
不利な契約-契約履行のコスト |
(13) 市場リスクに関する定量的・定性的情報
当社のビジネスは、金利、外国為替レート、商品価格、株価の変動リスクを伴い、これらのリスクマネジメントを行うため、為替予約取引、通貨スワップ・オプション取引、金利スワップ・先物・オプション取引、商品先物・先渡・スワップ・オプション取引等のデリバティブを利用しております。また、後述のリスク管理体制の下、予め決められたポジション限度・損失限度枠内で、トレーディング目的のデリバティブ取引も限定的に実施しております。
金利変動リスク
当社は、事業活動の中で様々な金利変動リスクに晒されております。コーポレート部門の財務・経理・リスクマネジメント担当役員が管掌する部署では、当社のビジネスに伴う金利変動リスクをモニタリングしております。特に、金利の変動は借入コストに影響を与えます。これは、当社の借入金には変動金利で借り入れているものがあり、また、都度借換えを行う短期借入金があるためです。
しかしながら、金利変動が借入コストに与える影響は、金利変動の影響を受ける資産からの収益により相殺されます。また、当社は、金利変動リスクをミニマイズするために資産・負債の金利を調整・マッチングさせるよう、金利スワップ等のデリバティブ取引を利用しております。
為替変動リスク
当社は、グローバルなビジネス活動を行っており、各拠点の外貨建による売買取引、ファイナンス及び投資によって、為替変動リスクに晒されている場合があります。これらのうち、永続性の高い投資等を除いた取引については、為替変動リスクを軽減するために、各拠点において外貨借入・外貨預金等に加えて、第三者との間で、為替予約取引・通貨スワップ取引・通貨オプション取引等のデリバティブ取引を必要に応じ行っております。
商品市況変動リスク
当社は、貴金属、非鉄金属、燃料、及び農産物等の現物取引、並びに鉱物、石油、及びガス開発プロジェクトへの投資を行っており、関連する商品価格の変動リスクに晒されております。当社は、商品の売り繋ぎや売り買い数量・時期等のマッチング、デリバティブ等の活用によって、商品価格の変動によるリスクを減少させるよう努めております。また、予め決められたポジション限度・損失限度枠内で、トレーディング目的のデリバティブ取引も限定的に実施しております。
株価変動リスク
当社は、戦略的な目的で金融機関や顧客・サプライヤーが発行する株式等への投資を行っておりますが、これらの株式投資には株価変動リスクが伴います。これらの株式投資に関しては、継続的なヘッジ手段を講じておりません。当社が保有する市場性のある株式の当期末における公正価値は、2,535億円であります。
リスク管理体制
デリバティブや市場リスクを伴う取引を行う営業部は、取引規模に応じてマネジメントの承認を事前に取得しなければなりません。マネジメントは、場合によってはデリバティブについて専門的知識を有するスタッフのサポートを得て、案件の要否を判断し、当該申請における、取引の目的、利用市場、取引相手先、与信限度、取引限度、損失限度を明確にします。
財務・経理・リスクマネジメント担当役員が管掌する部署は、取引の実施・モニタリングに際して、以下の機能を提供しております。
・金融商品及び市況商品のデリバティブに関する口座開設、取引確認、代金決済と引渡し、帳簿記録の保管等のバックオフィス業務
・ポジション残高の照合
・ポジションのモニタリングと全社ベースでの関連取引のリスク分析・計測、シニアマネジメントへの定期的な報告
当社の子会社が市況商品取引を行う際には、上記のリスク管理体制に沿うことを要求しております。
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