中期経営計画
●「SHIFT 2023」の進捗
当社は、前中期経営計画の最終年度である2020年度において、新型コロナウイルス感染症拡大のほか、経済環境の激変を受け、大幅に業績が悪化しました。そのため「事業ポートフォリオの収益力向上と下方耐性の強化」を当社の喫緊の課題として捉え、低採算事業の整理の徹底や事業ポートフォリオの再構築のための既存事業のバリューアップを加速させるなどの構造改革に徹底して取り組みました。そして、2021年5月に2023年度までの3か年を対象として策定した中期経営計画「SHIFT 2023」において、「事業ポートフォリオのシフト」、「仕組みのシフト」、「経営基盤のシフト」の3つのシフトに取り組んでいます。2021年度における取組状況は、以下のとおりです。
(1)事業ポートフォリオのシフト
「SHIFT 2023」の資産入替の徹底の取組として、低採算事業からの撤退を進め、また、バリューアップ施策による収益性、効率性等の改善(以下「ターンアラウンド」という。)を加速させました。具体的には、「SHIFT 2023」の策定に先立って分析を行った約400社の事業会社群のうち、撤退・バリュー実現先として特定していた101社について、32社の撤退が完了した2020年度に続き、2021年度は更に32社の撤退を完了させました。また、ターンアラウンド先として特定していた76社についても、各現場での打ち手が着実に成果に繋がってきており、特にマダガスカルニッケル事業や米国タイヤ販売事業、欧米州青果事業は、各事業において、事業戦略や経営体制、オペレーションの見直し等を通じて業績を改善させました。
また、当社は2020年度にすべての事業を市場の魅力度と当社グループの強みの発揮度を軸に、戦略を同一とする事業群であるStrategic Business Unit (SBU)ごとにくくり直し、「バリュー実現」、「バリューアップ」、「注力事業」及び「シーディング」の4つの戦略カテゴリーに分類し、そのうえで、高い収益性と下方耐性の強い事業ポートフォリオの構築を目指し、当社の強みが発揮できる事業分野へ経営資源(資金・人材)のシフトを進める仕組みを作りました。
その結果、「バリュー実現」のカテゴリーのSBUにおいて、経営資源の回収が着実に進捗したほか、効率性向上と新たな付加価値の提供により既存の収益の柱を更に太くする「バリューアップ」や事業規模の拡大を通じた収益の柱の育成を目指す「注力事業」、次世代のビジネスを育成し新たな収益の柱を目指す「シーディング」のそれぞれのカテゴリーのSBUにおいても着実に戦略を推進しました。
事業ポートフォリオのシフトの定量的な進捗状況及び具体的な取組は、以下のとおりです。
<定量的な進捗状況>
(注)1.「SHIFT 2023当初計画」における「資産入替による資金回収」は、「その他の資金移動」額を控除した額へ修正しています。
2.上記表の「-」は、金額が100億円未満であることを示しています。
<具体的な取組の例>
また、これら事業ポートフォリオのシフトを進めるうえで、特にデジタル化への対応とサステナビリティの視点を取り込み、社会とともに発展、成長する事業ポートフォリオの構築を目指しています。
デジタル化への対応は、全社のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するために設立したDXセンターがSBUと協働し、戦略を具体化しています。SCSK株式会社との連携に加え、当社が100%出資するDX技術専業会社である株式会社Insight Edgeの機能を拡充し、リテイル分野などの注力事業の更なる強化や製造業の生産性向上などのバリューアップとデジタルを核とした新事業開発を進めています。
サステナビリティの観点では、当社グループは2020年6月に持続可能な社会の実現のために当社グループが取り組むべき6つの「重要社会課題」と「長期目標」を設定し、2021年5月にはその具体的なアクションプランを示す「中期目標」を定めました(注1)。「重要社会課題」の中でも特に「気候変動緩和」については気候変動をめぐる世界的な情勢を踏まえ、継続的に「気候変動問題に対する方針」の見直しを実施しています。当社の石炭火力発電事業及び一般炭鉱山開発事業の方針やカーボンニュートラル化に向けた道筋を具体的に示しており、より環境への負荷が少ない事業ポートフォリオとすることを明確に謳っています。
2021年度には、化石エネルギー事業の権益の一部を売却し、再生可能エネルギー事業の推進などを通じてポートフォリオシフトを進めると同時に、既存の石炭火力発電事業の脱炭素化・低炭素化等に向けて検討を進めました。2021年4月に新設した営業組織であるエネルギーイノベーション・イニシアチブ(Energy Innovation Initiative (EII) )において、次世代エネルギー関連のビジネスの拡大及び創出に着実に取り組みました。また、「循環経済」関連では、既存のリサイクルやシェアリング事業の拡大等を通じて、リサイクル・省資源型ビジネスを推進したことに加えて、主要天然資源の持続可能な調達体制の強化の一環として、当社グループの「森林経営方針」と「林産物調達方針」を2022年3月に策定・開示しました。加えて、「人権尊重」関連では、2025年までに当社グループの全事業の人権リスクを的確に評価することを目標とし、事業部門ごとの人権デューデリジェンスを開始しており、リスクの低減・防止策の強化に着手しています。
その他の「重要社会課題」に関しても、長期目標・中期目標達成に向けて鋭意取り組んでおり、各課題の長期目標・中期目標の達成状況や具体的な取組については、毎年改訂する「ESGコミュニケーションブック」(注2)や統合報告書などにおいて開示しています。
(注)1.重要社会課題に対する、長期・中期目標については、23ページをご参照ください。
2.ESGコミュニケーションブックについては、当社ウェブサイト
(https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/sustainability/report)に掲載しています。
(2)仕組みのシフト
事業ポートフォリオのシフトを実効性のあるものとするために、仕組みのシフトも推進しました。具体的には、各SBUにおいて戦略目標の達成状況を客観的に測る指標(KAI・KPI)を設定のうえ、年2回の戦略会議の場においてその進捗状況をモニタリングし、戦略見直しの要否を議論するとともに、常に改善につなげるPDCAサイクルを強化しています。また、個別事業の取り進めにおいては、投資案件の選定や継続の要否を判断するための投資案件選定指針の制定による投資規律の厳格化や、投資パフォーマンス連動報酬制度の導入等により、事業投資の成功確度向上と価値最大化に向けた仕組みづくりを行いました。
事業部門の戦略・取組を全社最適の観点から補完するための取組も強化しました。具体的には、既存組織を横断するような社会課題、事業領域に対する全社的な取組を強化すべく、上述のエネルギーイノベーション・イニシアチブ(EII)を立上げたほか、社会インフラ、ヘルスケア、農業等の成長戦略テーマの推進や、各地域組織における事業開発等、全社横断的な取組を強化しました。また、全社最適の観点から経営資源の配分、各事業部門の戦略構築や事業推進について、グローバルイノベーション推進委員会(注)が業務執行の最高意思決定機関である経営会議の諮問機関として、議論・提言する体制を整えました。
(注)SBU戦略を全社最適の観点から審議し、全社投融資枠(資金)・人的リソース配分を経営会議に提言する機能を持つ、経営会議の諮問機関。
(3)経営基盤のシフト
当社が中長期的に成長、発展していくための経営基盤についても、着実に強化、拡充を進めました。
①ガバナンスの強化
取締役会においては、重点的に審議すべき重要経営課題の設定(アジェンダ・セッティング)を取締役会メンバー全員で行っています。2021年度は、このアジェンダの一つとして、事業ポートフォリオのシフトなどの「SHIFT 2023」の各施策や6つの「重要社会課題」の中期目標などの進捗モニタリングに注力しました。また、各事業部門からは戦略の進捗状況及び課題並びにその対応方針に関する報告を受け、当該課題に焦点を当てて審議を行ったほか、主要な委員会(内部統制委員会、コンプライアンス委員会、情報セキュリティ委員会(2021年7月に「IT 戦略委員会」に改組)など)から定期的な報告を受けました。これらにより、当社全体の業務執行の状況について継続的にモニタリングし、監督機能の強化を図りました。また、住友商事及びグループ各社が尊重すべき3つの原則(自律、対話、連携)を中心とするグループマネジメントポリシーを2021年6月に策定し、当社グループの企業価値の向上のためグループ経営の高度化を推進しています。
②人材マネジメントの強化
2020年度に策定したグローバル人材マネジメントポリシーを具現化すべく、年次管理を撤廃し職務や成果を従来以上に報酬と連動させた職務等級制度の導入、評価制度の刷新、従来型の職掌別管理を廃した職掌の一本化等、当社の人事制度を大きく改訂し、人材マネジメント改革の基盤を整備するとともに、Diversity & Inclusionの推進を加速しました。また、事業ポートフォリオ再構築に伴う人材シフト、事業ニーズや環境変化に即したリソースマネジメントにも取り組みました。
③財務健全性の維持・向上
事業環境の回復にも支えられ、着実な利益の積み上げが実現できた結果、デット・エクイティ・レシオは、昨年度末の0.9倍から0.7倍に低下、リスクアセットもコア・リスクバッファーの範囲内に収めています(注)。引き続き「SHIFT 2023」の3年間合計の配当後フリーキャッシュ・フローの黒字の方針は堅持し、財務健全性の向上に努めます。
(注)「コア・リスクバッファー」とは、「資本金」、「剰余金」及び「在外営業活動体の換算差額」の和から「自己株式」を差し引いて得られる数値で、当社は、最大損失可能性額である「リスクアセット」を「コア・リスクバッファー」の範囲内に収めることを経営の基本としています。
対処すべき課題
(1)事業ポートフォリオのシフトによる収益力の強化
「SHIFT 2023」初年度の業績は堅調に推移しましたが、資源価格の上昇などの外部環境の影響があったことも事実です。「SHIFT 2023」で掲げた高い収益性と下方耐性の強い事業ポートフォリオの構築に向けて既存事業の撤退やターンアラウンドは堅調に推移していますが、これらを計画どおりに実行することに加え、当社の収益を支える事業群である「注力事業」や「バリューアップ」に分類されているSBUが、当社の強みを十分に活かしながら、各事業の資本コストをカバーし、更にそれを大きく超過する収益力の獲得とともに、投下資本を増やして収益基盤の拡大も図っていきます。また、将来の収益の柱となる新たなコア事業の創出についても、成長戦略テーマを中心に想定する成果が得られるよう、引き続き注力していきます。社会の価値観や生活様式が大きく変化するなかで、総合商社である当社がその強みを活かし新たに事業を創出できる機会は数多くあり、住友の事業精神にある「進取の精神」や「企画の遠大性」を念頭に、新たなコア事業の創出に向けた取組を加速していきます。
(2)サステナビリティ経営の高度化
当社グループにおいては、前述のとおり6つの「重要社会課題」の解決に向け取り組んでいますが、その中でも「気候変動緩和」、「循環経済」、「人権尊重」の取組に対する社会の要請は一層の高まりを見せており、社会の潮流や変化を見極めながら適時に対応していきます。「気候変動緩和」については、当社及び連結子会社でのCO2排出量に加え、排出総量に影響が大きい持分法投資先の火力発電事業における直接排出量や化石エネルギー権益事業における間接排出量も含め、カーボンニュートラル化をコミットしています。当社は、2050年の当社事業のカーボンニュートラル化に向けたマイルストーンを明確にし、当社事業のカーボンニュートラル化の実現と同時に、地域社会の発展・進化を目指して次世代エネルギー事業を創出し、社会のカーボンニュートラルへ貢献していきます。
また、「循環経済」についてはリサイクル・省資源型ビジネスの推進や天然資源の持続可能な調達体制の強化に更に注力し、「人権尊重」については当社グループの全事業における人権リスクの低減・防止を一層強化していくことで新たな価値創造を実現していきます。
(3)人材マネジメント改革の実行
当社グループの持続的な発展にとって人材は最重要の経営リソースであり、2021年度に導入した新人事制度の運用の実効性を高め、人材マネジメント改革の成果をスピード感を持って目に見える形にしていく必要があります。Diversity & Inclusionの更なる推進、年齢や性別その他属性にとらわれないPay for Job, Pay for Performanceの考え方に基づく適所適材の人員配置により、すべての役職員の最大限のパフォーマンス発揮を目指します。人的資本の拡充に向けては、グローバル人材マネジメントポリシーに掲げる新たな価値創造に挑戦する人材集団を目指して、採用手法の多様化や個にフォーカスしたピープルマネジメント力の強化、経営人材育成やプロフェッショナリティ強化などの人材開発施策を実行していきます。また、ウィズ・コロナの長期化で生じた組織活力やチーム運営上の課題を解決し、組織の活性化とアウトプット向上を目的に、人材育成とコミュニケーションの強化、役職員一人ひとりのエンゲージメントの向上にも取り組んでいきます。
(4)定量計画
①経営環境
全般
世界経済は、ロシア・ウクライナ情勢の不透明感がみられる中、新型コロナウイルス感染が収束に向かう中で経済活動が再開し、景気回復の傾向は続く見通しです。ただし、その回復には国・地域や産業ごとにばらつきが見られます。先進国では、物価上昇及びそれに伴う金融政策の変更により経済成長は緩やかになるとみられます。新興国でも概ね景気回復の動きは続きますが、中国では鈍化傾向がみられ、財政・金融支援の余力が乏しい国では当面、緩慢な景気回復にとどまる見込みです。リスクとして、ロシア・ウクライナ情勢の悪化と対ロシア経済制裁の強化、一段の物価上昇、金融資本市場の大幅な変動、新型コロナウイルス感染再拡大とそれに伴う経済活動の制限、債務拡大、北東アジアや中東・北アフリカなどでの地政学的リスクの高まりなどが挙げられます。
金属事業部門
当部門は、鋼材・鋼管などの鉄鋼製品を幅広く取り扱っています。
当部門を取り巻く環境としては、鋼材分野では、足もとでは自動車や家電など各分野において回復の傾向が見られる一方で、鋼材需給の逼迫や原材料価格の高止まりなどによる鋼材価格高騰、新型コロナウイルス、半導体・樹脂供給不足などの影響が顕在化しており、今後の動向を注視していきます。
鋼管分野においても、足もとでは原油価格上昇に伴う堅調な需要に支えられ、油井管価格も上昇基調を維持するなど、市況は回復した一方、主要顧客である石油・ガス企業が、石油・ガス需要対応に加え、気候変動問題を念頭に、統合エネルギー事業会社への変容を目指していることに呼応したビジネスへの適合が求められています。
両分野とも、ロシア・ウクライナ情勢の今後の影響を注視していきます。
このような環境を踏まえ、当部門としては中長期的視点で確実に持続的成長を果たせるビジネスモデルへの再構築を完遂します。また、DXを通じた新たな価値提供、再生可能エネルギー・CCUSなど社会のカーボンニュートラル化に資する鉄鋼製品・サービスの供給による気候変動問題への対応をはじめ、サステナビリティ経営の高度化にも引き続き注力し、取組んでいきます。
輸送機・建機事業部門
当部門は、リース・ファイナンス事業、グローバルにバリューチェーン展開する自動車・建設機械・船舶事業、高い専門性を持つ航空宇宙関連事業を中心に、各種取引及び事業投資を行っています。
当部門を取り巻く事業環境としては、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた2020年度と比較し、消費活動や経済の回復を享受した事業も多かった一方、足元は先行き不透明感の強い環境にあります。
航空機リース、建設機械販売、及び自動車販売事業においては、一部ロシア・ウクライナ情勢の影響を受けているほか、他地域においても物価・金利の上昇などによる景気回復のばらつきが想定されます。
このような環境下、当部門では更なる収益基盤の強化と事業ポートフォリオのシフトに向け、リース・ファイナンス事業では引き続き成長分野の優良資産を積増しするほか、建設機械事業では北米を中心とした既存事業の基盤拡大とアジア市場の成長を取込み、自動車事業では戦略の再構築と新たなニーズに即したモビリティサービスの開発を進めていきます。
インフラ事業部門
当部門は、水・鉄道などの社会インフラ事業、EPCビジネスや発電事業などの電力インフラ事業、海外工業団地、保険事業を含む物流インフラ事業を行っています。
当部門を取り巻く足元の環境としては、電力EPCビジネスでは、新型コロナウイルスなどの影響はあるものの、複数案件で工事終盤を迎えており2022年度中の完工を予定しています。発電事業は堅調ながら、一部の欧州洋上風力発電事業で風況悪化の影響が生じています。また、国内の電力小売事業では電力卸売市場価格高騰の影響が生じています。このような環境下、当部門は引き続き持続可能な成長を目指し、世界的な環境意識の高まりによる低炭素社会の到来、新興国を中心とした旺盛なインフラ需要を商機と捉え、新たな取組みを加速させます。
具体的には、地域社会全体のニーズを捉えた質の高いインフラアセットを提供すべく、衛生的な上・下水事業、スマートシティ開発、鉄道・空港・港湾事業など、社会インフラ事業に積極的に取組みます。更に2050年のカーボンニュートラルを達成すべく、再生可能エネルギー発電事業に注力し、当社発電ポートフォリオの低炭素化を促進します。加えて、エネルギーイノベーション・イニシアチブとの共創により、再生可能エネルギー発電や環境価値を活かした国内電力小売事業を中心に、新たな電力・エネルギーサービスの事業化を推進します。
メディア・デジタル事業部門
当部門は、ケーブルテレビ、テレビ通販、デジタルメディア、及び5G関連などのメディア事業、ICTプラットフォーム、デジタルソリューションなどのデジタル事業、携帯電話販売、海外通信事業などのスマートプラットフォーム事業を行っています。
当部門を取り巻く環境としては、メディア事業では、生活様式、消費行動の変化に伴い、視聴形態の多様化や非対面・非接触での新たなサービス提供のニーズが見込まれることに加え、5G関連では高速・大容量通信の需要拡大により、携帯キャリアの基地局整備が進んでいます。デジタル事業では、デジタル技術による社会課題の解決やビジネス変革の機会が拡大し、DXソリューションのニーズが高まっています。携帯電話販売事業では端末の高価格化、オンライン契約形態の導入などの市場変化が加速しています。海外通信事業ではミャンマー及び新たに参入したエチオピアにおける地政学的リスクはあるものの、地域の発展に伴うニーズが見込まれます。
このような環境を踏まえ、メディア事業では新たな視聴サービスやオンライン診療などの生活周辺サービスの拡充、5G関連では基地局シェアリングの早期拡大に取組みます。デジタル事業ではSCSKとともにDX事業化やスタートアップ企業との共創による新たな価値創出への取組みを加速します。携帯電話販売事業では端末流通市場の変化に対応した新ビジネスの構築に取組みます。また、海外通信事業ではミャンマー・エチオピアの動向を注視しながら慎重に取組みます。
生活・不動産事業部門
当部門は、リテイル、ヘルスケア、食料、建設資材、不動産などの分野において事業を展開しています。
リテイル分野のスーパーマーケット事業では、新型コロナウイルスの影響による内食需要の増加は落ち着くも、ドラッグストア事業とともに、社会インフラとしての重要性は引き続き高いものとなっています。また、ヘルスケア事業では、国内における高齢化の進展に伴う調剤医療費の抑制、在宅介護、オンライン診療などで事業機会の拡大が見込まれます。
食料分野では、ロシア・ウクライナ情勢の影響に伴う相場価格・輸送費の上昇などの影響が懸念されます。
建設資材及び不動産分野は、物流需要の高まりを受けて物流不動産の市況が好調に推移しているほか、住宅の市況も好調に推移しています。一方で、今後のオフィス需要や、足元の建材・資材価格の上昇に伴う影響に注視が必要です。
このような環境を踏まえ、当部門は、マーケットを慎重に見極めながら、事業の継続及び将来の成長のために必要な施策を引き続き実行していきます。リテイル分野・ヘルスケア分野では、小売現場ならではのデータ活用や、ドラッグストアにおける全自動調剤導入など、現場の課題解決、機能の高度化を目指したDXの取組みを推進していきます。食料分野では、量販店向けの底堅い需要や産地の多角化などを捉えた収益確保に努めます。不動産分野では、引き続き多様なアセットタイプを取り扱うポートフォリオ経営の推進などによる安定した収益基盤の強化に取組んでいきます。
資源・化学品事業部門
当部門は、資源・エネルギー分野では、金属資源・エネルギー権益の開発・生産及び販売事業を、化学品・エレクトロニクス分野では、基礎化学品、農業資材、医薬、化粧品、動物薬、エレクトロニクス材料・製品の開発、製造、販売事業を展開しています。
資源・エネルギー分野では、2020年度において新型コロナウイルスの影響などにより一時操業を停止した鉱山でも操業を再開し、2021年度は概ね計画通りに進捗しました。また、資源全般の市況高騰が追い風となり業績は好調に推移しておりますが、市況の先行きは不透明な状況です。
化学品・エレクトロニクス分野では、半導体不足や物流混乱の影響はありましたが、景気回復に伴う需要回復や市況上昇を捉え、堅調に推移しています。
このような環境を踏まえ、ロシア・ウクライナ情勢、新型コロナウイルス感染状況を注視しながら、資源・エネルギー分野では、資源上流権益の安定操業を継続するとともに、2050年の住友商事グループのカーボンニュートラル化に向け、資源・エネルギー権益のポートフォリオ再構築、次世代エネルギー関連事業の開発に取組んでいきます。また、化学品・エレクトロニクス分野では、EMS事業の製造力強化とグローバルネットワーク拡充のほか、農業資材直販事業の強化と次世代農業関連ビジネスの開発に注力していきます。
②定量計画
今般、足元の状況を踏まえ「SHIFT 2023」の当初計画において定めた業績見通し(親会社の所有者に帰属する当期利益)とキャッシュ・フロー計画について、以下のとおり見直しました。
・業績見通し
2022年度の通期連結業績については、ロシア・ウクライナ情勢の影響や、前期の市況高騰の影響が剥落することが見込まれる一方、不動産事業やメディア・デジタル事業部門の国内主要事業会社が引き続き堅調に推移すると見込まれることから、2022年度の通期連結業績の見通しを3,700億円としています。
なお、当社は最適な経営資源配分を通じた事業ポートフォリオのシフトの実行に向けて、「SHIFT 2023」の対象期間だけに限らず、常に3年先までの定量イメージを具体的に持ちながら戦略的議論を実施しているため、2024年度までの利益イメージを示しています。「SHIFT 2023」で掲げる諸施策の取組を通じ、各事業における収益性と下方耐性は確実に向上しており、各年度ともに当初計画を上回る利益計画としています。
・キャッシュ・フロー計画
「SHIFT 2023」において、配当後フリーキャッシュ・フローの黒字を確保する方針に変更はなく、今回の見直しにより増加した基礎収益キャッシュ・フローを原資とした追加の投融資や、株主還元にそれぞれ配分する計画としています。
修正計画では、1兆2,300億円の投融資を計画しており、引き続き、市場の魅力度が高く、当社の強みが十分に発揮できる分野を中心に投融資を実行し、ポートフォリオの収益性と下方耐性を高めていきます。
また、戦略カテゴリーごとの定量計画を、以下のとおり見直しています。
(5)配当方針
配当方針については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」を参照願います。
住友商事グループのサステナビリティ経営の高度化
持続可能な社会の実現に向けた当社の役割を示すことに加え、長期的な事業環境の変化を見通して、当社の事業ポートフォリオが社会で真に必要とされる価値を常に創造し提供し続けることが出来るように、戦略的に経営資源の配分を進めていくことが、当社の持続的成長を可能にすると考えています。
社会のあるべき姿を捉え、それを追求することが、より多くのビジネス機会をもたらします。持続可能な社会と、当社グループの価値創造や持続的な成長がしっかりと重なった姿が、住友商事グループのサステナビリティ経営です。
当社は、住友の事業精神、住友商事グループの経営理念(注1)・行動指針を踏まえて、2017年にマテリアリティ(注2)を特定して、当社グループの事業と社会との関わりを明確にし、一つ一つの事業が社会の抱える様々な課題の解決に貢献することを意識した経営を行ってきました。また、当社は、社会とともに持続的に成長するためのサステナビリティ経営の高度化の一環として、自らの強みである人的リソースやビジネスノウハウ、グローバルなネットワークやビジネスリレーションを活かして、持続可能な社会の実現にどのような役割を果たすのかを、より明確にコミットするため、当社に関わりが深い6つの重要社会課題を選び、それに紐づく長期・中期の目標を定めています。
(注)1.住友商事グループの経営理念については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要③住友商事コーポレートガバナンス原則」をご参照ください。
2.『マテリアリティ』とは住友商事グループが社会とともに持続的に成長するために優先的に取り組むべき課題として
特定したもの。
■住友商事グループの重要社会課題と長期目標
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