業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

 当連結会計年度では、国内での新型コロナウイルス感染症の再拡大、上海でのロックダウンによる部材供給の停止や、ウクライナ紛争の勃発による世界的な資源高騰、円安による原材料価格の上昇などから、日本経済には大きな影響が懸念されたものの、日本企業の設備投資は本年に入って拡大が予想されており、個人消費の回復とともに国内経済は持ち直しの動きが顕著となりました。

 

 内田洋行グループでは、2021年9月、第16次中期経営計画(2022年7月期 ~2024年7月期)を公表しました。2025年以降から加速する労働人口の急速な減少により、日本は社会全体のスマート化が生産性向上のために必須となります。デジタル庁の創設が契機となり、官公庁・自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)が動き出すとともに、民間企業のDX投資も加速し始めています。しかし真の意味でのDXの実現には、将来のデジタル社会の担い手の育成が重要であり、「人」と「データ」への投資の強化がより一層必要となります。

 お客様のこの社会変化への対応をご支援することこそが、内田洋行のこれからの成長機会と考え、従来の延長の個々の事業枠から脱却し、グループ全体のリソースを生かした経営を目指すことを第16次中期経営計画の主要課題としております。

 一方、第15次中期経営計画期間にあった、昨年の学校市場におけるGIGAスクール構想の超大型案件や一昨年のWindows更新需要など、幾つかの特別な需要は終了しましたが、各事業分野で競争力は向上していることから特需を除いたベースラインは着実に上昇しており、今後の堅実な成長が可能であると考えます。

 

 以上のような状況のもと、本年はGIGAスクール構想案件終了に伴う前年同期の超大型売上はなく、売上は大きく減少しますが、GIGAスクールの追加周辺需要が予想以上に伸長したことに加え、ICT支援員などの人材サービス事業などの新たな需要を獲得できたほか、今期は通常のICT環境整備需要の復活が大きく、公共分野は当初の想定を大きく超える実績となりました。また民間市場では、半導体不足にともなう情報機器の納期遅延やコロナ禍による地方経済の復活の遅れがある一方で、首都圏の大手民間企業を中心に企業の情報投資は活発であり、ソフトウェアライセンスの大型案件の受注が進みました。これらの結果、売上高は2,218億5千6百万円(前連結会計年度比23.8%減)となりました。

 利益面でもGIGAスクール案件終了の影響が大きいものの、教育ICTにおいて当社の競争力が発揮しやすい複合化した案件が復活したほか、大手企業向けのネットワーク構築やクラウドサービスが拡大しており、営業利益は78億9千万円(前連結会計年度比23.9%減)となりました。また経常利益は78億4千3百万円(前連結会計年度比28.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は44億7千7百万円(前連結会計年度比27.3%減)となり、自己資本当期純利益率(ROE)は9.8%(前連結会計年度は14.7%)となりました。

 

 なお、当第4四半期連結会計期間では、ソフトウェアライセンス販売の伸長に加えて、民間設備投資の回復によりオフィスリニューアル需要の急増等があったことから、2022年6月1日に公表した予想を大幅に上回り、通期においては売上と利益の両方でGIGA特需前の一昨年の水準から大きく増加しました。

 

 セグメント毎の経営成績は以下のとおりであります。

 

<公共関連事業>

 公共関連事業分野では、教育ICT環境を整備する通常案件が回復して想定以上に増加したほか、GIGAスクールの追加需要や、ICT支援員などの人材サービス事業、高等学校の1人1台タブレット端末整備などの周辺需要の獲得も順調に推移しました。またGIGAスクール後を見据えた文部科学省の大型実証案件の受託など、GIGAスクール構想に対応した取り組みも進展しております。加えて自治体や大学分野も堅調に推移しました。しかしながら、前年度にあったGIGAスクール大型需要や、学校での新型コロナ感染症対策にともなう特需の収束の影響は大きく、売上高は747億4千7百万円(前連結会計年度比52.3%減)となりました。

 利益面では、教育ICT分野での当社の競争力が発揮される複合化した案件が大きく伸長して収益性が改善したことなどから、営業利益は42億8千4百万円(前連結会計年度比46.3%減)となり、当初の見込みを大幅に上回りました。

 

<オフィス関連事業>

 オフィス関連事業分野では、コロナ禍後を見据えて、首都圏の企業でオフィスへの出社と在宅勤務とを併用するハイブリッド型の働き方が広がり、大型のリニューアル案件が増加しました。特に第4四半期に入ると需要は着実に回復しています。また、海外市場におけるクラフトマーカーや印刷関連のデジタルフィニッシャー分野の販売の回復もあったことから、売上高は483億9千4百万円(前連結会計年度比4.4%増)となり、営業利益は4億8千9百万円(前連結会計年度は6億2千6百万円の営業損失)と大きく回復しました。

 

<情報関連事業>

 情報関連事業分野では、大手企業向けのソフトウェアライセンスビジネスで海外法人などを加えた大型案件や追加売上の獲得が拡がり、引き続き伸長しています。またオフィス構築案件とも繋がるリニューアルに伴うネットワーク関連ビジネスの増大に対して、社員の位置情報やオフィスの混雑状況を可視化するシステムの導入が拡大するなど、クラウドサービスの展開も好調に推移しました。これらの結果、売上高は976億8千7百万円(前連結会計年度比12.3%増)となりました。

 利益面では、オミクロン変異株の拡大の影響で地方経済の停滞もつづいており、中堅中小企業の基幹業務システム商談は未だ回復途上にあり、営業利益は26億8百万円(前連結会計年度比0.0%増)となりました。

 

<その他>

 主な事業は教育研修事業であります。教育ICTビジネスによるGIGAスクール構想案件の導入後にICT支援員の派遣事業が大きく伸長したほか、民間企業向けには集合研修が増加し、DX研修なども堅調に推移したことから、売上高は10億2千7百万円(前連結会計年度比1.6%増)ですが、セグメント間の内部売上高も59億9千5百万円となり、営業利益は4億4百万円(前連結会計年度比25.9%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ161億7千3百万円減少し、265億6千3百万円となりました。

 

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

 営業活動によるキャッシュ・フローは54億1千4百万円減少いたしました(前連結会計年度は204億5千7百万円の増加)。これは主に、税金等調整前当期純利益79億6千5百万円(前連結会計年度は109億7千6百万円)、減価償却費18億2千3百万円(前連結会計年度は23億1千7百万円)等の増加に対し、売上債権及び契約資産の増加59億2千2百万円(前連結会計年度は42億1千2百万円の増加)、法人税等の支払額43億3千2百万円(前連結会計年度は33億3千5百万円)、未払消費税等の減少16億5千1百万円(前連結会計年度は3億8千万円の増加)、契約負債の減少9億4千2百万円(前連結会計年度は前受金の増加60億9百万円)、仕入債務の減少8億円(前連結会計年度は22億4百万円の増加)、棚卸資産の増加7億1千6百万円(前連結会計年度は20億4千2百万円の減少)、および製品保証引当金の減少6億4千万円(前連結会計年度は22億9千5百万円の増加)等の減少によるものであります。

 

<投資活動によるキャッシュ・フロー>

 投資活動によるキャッシュ・フローは21億9千8百万円減少いたしました(前連結会計年度は11億3千4百万円の減少)。これは主に、ソフトウェア開発等に係る投資支出16億3千5百万円、および有形固定資産の取得による支出6億1千3百万円等の減少によるものであります。

 

<財務活動によるキャッシュ・フロー>

 財務活動によるキャッシュ・フローは86億3千2百万円減少いたしました(前連結会計年度は14億8千4百万円の減少)。これは主に、連結子会社ウチダエスコ株式会社株式に対する公開買付けに伴う、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出67億6千万円、および配当金の支払額13億7千3百万円等の減少によるものであります。

 

 なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態及び経営成績に影響を及ぼしています。詳細については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)」に記載しております。

 

③生産、受注及び販売の実績

イ 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

公共関連事業

1,269

48.8

オフィス関連事業

3,668

104.5

情報関連事業

7,073

105.0

合計

12,011

93.5

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 記載の金額の表示は販売価格によっております。

 

ロ 受注実績

 当連結会計年度における上記生産に係る受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

公共関連事業

955

36.2

305

49.3

情報関連事業

8,067

118.9

2,740

156.9

合計

9,023

95.7

3,046

128.8

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 オフィス関連事業は、見込生産を行っているため受注実績の記載を省略しております。

 

ハ 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

公共関連事業

74,747

47.7

オフィス関連事業

48,394

104.4

情報関連事業

97,687

112.3

その他

1,027

101.6

合計

221,856

76.2

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10以上の主要な販売先はありませんので、記載を省略しております。

3 当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。詳細は「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針および見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。

 詳細につきましては、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表]注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び同「注記事項 (重要な会計上の見積り)」をご参照ください。

 

②経営成績の分析

イ 売上高

 教育ICTにおける「GIGAスクール構想」案件終了に伴う前年同期の超大型案件はなく売上高は大きく減少しますが、GIGAスクールの追加周辺需要が予想以上に伸長したことに加え、ICT支援員などの人材サービス事業などの新たな需要を獲得できたこと等から、売上高は、2,218億5千6百万円と前連結会計年度に比べ691億7千9百万円(23.8%)の減収となっております。

 なお、セグメン卜別の概況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」をご参照ください。

 

ロ 営業利益

 売上の減少等により、営業利益は78億9千万円と前連結会計年度に比べ24億7千3百万円の減益となりました。

 

ハ 経常利益

 経常利益は78億4千3百万円となり、前連結会計年度に比べ31億7千5百万円の減益となっておりますが、主に営業利益と同様の理由によるものです。

 

ニ 税金等調整前当期純利益

 税金等調整前当期純利益は79億6千5百万円となり、前連結会計年度に比べ30億1千万円の減益となっておりますが、主に営業利益と同様の理由によるものです。

 

ホ 親会社株主に帰属する当期純利益

 親会社株主に帰属する当期純利益は44億7千7百万円となりました。前連結会計年度に比べ16億8千3百万円の減益となっておりますが、連結子会社ウチダエスコ株式会社株式に対する公開買付け等に伴う影響の他、主に税金等調整前当期純利益と同様の理由によるものです。

 

③財政状態の分析

イ 資産

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ76億1千3百万円減少し、1,255億3百万円となりました。流動資産は、現金及び預金の減少159億2千万円、受取手形、売掛金及び契約資産の増加60億3千8百万円、棚卸資産の増加8億1千1百万円等により前連結会計年度末に比べ79億6千2百万円減少し、950億9千1百万円となりました。また固定資産は、前連結会計年度末に比べ3億4千8百万円増加し、304億1千1百万円となりました。

 

ロ 負債

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ35億2千6百万円減少し、793億8千4百万円となりました。流動負債は、未払法人税等の減少22億6千9百万円、未払消費税等の減少16億5千1百万円、契約負債(前連結会計年度は前受金)の減少9億3千3百万円、仕入債務の減少7億7千4百万円、未払費用の減少5億6千8百万円、賞与引当金の減少4億7千7百万円、未払金の増加38億6千3百万円等により前連結会計年度末に比べ31億7千6百万円減少し、680億7千8百万円となりました。また固定負債は前連結会計年度末に比べ3億5千万円減少し、113億6百万円となりました。

 

ハ 純資産

 純資産合計は、主に連結子会社ウチダエスコ株式会社株式に対する公開買付け等に伴う、非支配株主持分の減少45億2千3百万円および資本剰余金の減少32億9千7百万円、剰余金の配当13億7千3百万円による減少、親会社株主に帰属する当期純利益44億7千7百万円による増加、および上場有価証券の時価評価に伴うその他有価証券評価差額金の増加6億5千7百万円等により、前連結会計年度末に比べ40億8千7百万円減少し、461億1千8百万円となりました。

 

④キャッシュ・フロー

 「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標は以下のとおりとなっております。

 

2020年7月期

2021年7月期

2022年7月期

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

(有利子負債/営業キャッシュ・フロー)

0.5年

0.25年

インタレスト・カバレッジ・レシオ

(営業キャッシュ・フロー/利払い)

205.0倍

255.9倍

(注)1 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

2 2022年7月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオについては、営業キャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。

 

⑤資本の財源および資金の流動性の分析

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、仕入高、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資等によるものであります。

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましても、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。

 

⑥経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、第16次中期経営計画(2021年7月21日〜2024年7月20日)を策定いたしました。同計画において、連結売上高2,200億円、連結営業利益60億円を最終年度に達成すべき数値目標として定めております。

 また、目標とする経営指標として、自己資本当期純利益率(ROE)を8%とし、安定的に達成できる経営基盤の確立を目指します。

 

 

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