研究開発費の総額は
なお、主な研究開発活動の内容については、次のとおりであります。
主な研究開発
(1)学習eポータルL-Gateの利用拡大に伴うシステム基盤の開発と強化
文部科学省のGIGAスクール構想の進展により、全国の小中学校において一人1台のタブレット端末環境が大規模かつ急速に整備されました。今後学校現場においては、これらの整備された端末を活用するための様々なソフトウェアやコンテンツの拡充を図るといった課題や、多くの端末や利用者を管理・更新するといったこれまでにない作業が発生することが想定されます。これらの各種課題を解決するために、当社は文部科学省が展開するCBTプラットフォームMEXCBT(メクビット)と接続できる学習eポータルとして、「L-Gate」を開発し自治体・学校にご提案しています。
2022年度にはL-Gateの導入数が、約450団体・約5,000学校・約200万アカウントに拡大しました。これらの急激な利用拡大に伴うアクセス集中に対応するため、Microsoft Azureを基盤としたフルクラウド環境の検証とアプリケーション構成の最適化を実施し、更なる性能向上に必要なアプリケーション開発を継続して実施しています。
令和5年度以降、文部科学省が毎年実施している全国学力・学習状況調査にMEXCBTを利用することが計画されており、学習eポータルL-Gateに対しても更なる利用拡大と性能向上が期待されています。今後、マイクロサービスやコンテナオーケストレーションなど、クラウドネィティブな技術を検証・適用することで、弾力的で安定したサービス提供を進めてまいります。
(2)自治体内部事務の中核となる財務会計・文書管理システムを刷新
2021年9月、デジタル庁が発足し社会全体のデジタル化が加速され、自治体においても行政手続きのオンライン化や働き方改革を通して自治体DXが推進されています。
このような状況の中、自治体内部事務ソリューションの中核となる財務会計・文書管理のアーキテクチャを刷新し、当社共通基盤システムの上で動作するシステムを開発しました。
財務会計システムでは、請求書などの証票を電子化し決裁対象伝票とともに回覧することにより、承認・決裁処理時、会計部門による審査処理時に紙書類を必要としない運用を実現しています。文書管理システムでは、文書の電子化によるコンテンツの検索性を向上させ、文書の検索にかかる処理時間の短縮による事務処理の効率化や、再利用性を高め生産性の向上に寄与しております。
また、電子決裁システムにより承認・決裁プロセスの標準化・見える化を実現しています。決裁業務の電子化にあたっては決裁書類の電子化が必要になりますが、複数の電子ファイルの確認、校閲には時間を要します。この課題への対応として、複数の電子ファイルを1つのPDFファイルとしてまとめる機能を開発しました。PDFファイル化された決裁文書に対して、「要点のマーク」「注釈の付記」などができ、紙文書同様に扱うことを可能とし、ペーパーレスでの決裁業務遂行を支援します。
(3)ハイブリッド型の働き方環境を構成する製品の開発
コロナ後を見据え、ハイブリッド型の働き方を実現するためのオフィス環境構築需要が増加するため、オンラインとオンサイトそれぞれにおいて、利用者と管理者の柔軟な運用を支援しながら、生産性と創造性を高めるための環境を構成する製品の研究開発を行いました。
オンラインミーティングの機会が増える中で、オフィス内に専用のセミオープンのブースを構築する製品の研究開発を行ってきました。快適なオンラインの会話の妨げとなる、人の話し声や生活音を吸音する素材を研究し、連結型パネルに装着する構造を開発しています。なお、多種のパネルと連結パーツの組合せにより、一人から多人数までの様々な形状のブースを組み立てることができる「Lana Panel(ラナ パネル)」を発売しております。
また、オンサイトで集合することで、より質の高い創造的なコラボレーションを促すことができますが、利用者が柔軟に使うことができる製品群の開発にも取り組んできました。可動性、堅牢性と拡張性を併せ持つフレームを開発し、コラボレーションツール「Puller(プラー)」シリーズとして製品化を行っております。大型ディスプレイなどの重量物を装着したまま動かすことができるフレームや、軽量のホワイドボード、躍動的な姿勢に適したスツールなどを柔軟に組み合わせることで、オフィス内にコラボレーション空間を容易に構築することができます。
(4)オンライン配信向けの機器制御システムの機能強化
コロナ禍をきっかけとして学ぶ場や働く場における情報伝達やコミュニケーションのスタイルは多様化しました。企業のセミナーや教育機関の授業等では、オンラインによる配信が広がり、オンラインセミナーや遠隔授業の機会も増加しています。また、予め収録したコンテンツを使い、通信環境や時間に左右されないオンデマンド配信も実施されるようになりました。
このような状況の中で、より効果的な伝達をするために、画像合成や映像・音響の演出などを取り入れた配信・収録のニーズが高まっています。しかし、それらは操作に習熟の必要な専用の機器を用いる必要があり、利用者を限定してしまうという課題があります。
上記課題を解決するために、AV機器の制御システム「codemari」(コデマリ)をベースに、誰もが使えるオンライン配信用機器専用の制御システム「codemari webinar」(コデマリウェビナー)を強化開発し、2022年5月にリリースしました。配信や収録に必要なスイッチャーなどの専用機器を操作用タブレット端末から1ボタン操作による一括制御が可能で、配信の際の画像合成や演出操作、および録画収録の操作も容易に行える機能を搭載しました。
今後も働き方や学び方の多様化に伴う新たな課題に対し、利便性の向上や業務負荷の軽減につながる新たなシステムの企画開発に努めてまいります。
(5)国際技術標準に準拠した校務と学習eポータル間の名簿連携
校務支援システムと学習eポータルや学習系システム間で児童生徒の氏名、クラス、出席番号等の名簿情報を連携するために、国際技術標準に準拠した連携システムを開発し、埼玉県鴻巣市様において年度更新処理の実証研究を行いました。これにより、校務支援システムで作成した名簿情報が学習eポータルにそのまま連携でき、校務支援システムから名簿情報を抽出・加工・適用といった手作業が不要となり、大幅な業務負担・時間の削減につながるという実証結果を得ることができました。
今後は、校務系システムと学習eポータルの名簿情報の連携機能だけに留まらず、学齢簿から校務支援システムまで拡充をはかり、お客様の業務効率化に寄与できる「名簿の一元運用」を実現していきます。
(6)次世代デジタル教材配信システムとAIによる学習履歴データの活用の実証研究
京都大学学術情報メディアセンターでは、次世代デジタル教材配信システムの「BookRoll」と分析ツール「ログパレ」で構成されるラーニングアナリティクスシステム「LEAFシステム」を研究開発しています。その一環として、京都大学と当社教育総合研究所で、学習行動から説明生成を行うAIエンジン「EXAIT (Educational Explainable AI Tools)」を開発する実証研究を、2020年7月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構技術の開発事業に対して提案したところ、採択されました。
同事業においては、「LEAFシステム」へ当社が開発した学習eポータル「L-Gate」から国際技術標準を介して接続できるようにし、シングルサインオンによる学習者に使いやすい環境を実現しています。
「L-Gate」が提供するシングルサインオン環境、「BookRoll」によるデジタル教材の配信と学習履歴の蓄積、「ログパレ」による日々の学習履歴の分析、「EXAIT」による学習履歴のAI活用という一連の学習環境モデルを、一人一台学習端末環境下でデジタル教科書などの教材コンテンツを最大限活用する次世代学習プラットフォームとして、引き続き開発を進め教育現場へ適用してまいります。
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