課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針・経営戦略等

当社は、1954年(昭和29年)の設立以来「技術革新」をコンセプトとし、事業活動を通して社会に貢献したいとする経営理念のもと、つねに患者さまのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上や医療現場の課題などのユーザーニーズに応える製品開発を推進しております。

製品競争力・市場シェアともに世界トップを目指し、「地産地消」のコンセプトのもと、グローバルに事業展開を行っております。

当社グループは、医療現場におけるニーズ、シーズを積極的に捉えながら、現場の要望に応える商品開発を行いつつ、製造工程の改善によって製品の生産能力を高め、品質の安定とコスト競争力のある製品を提供することによってグローバル市場でシェアを獲得し、販売を拡大することを基本戦略としてまいりました。また、医療、医薬、医薬用包装材料(ファーマパッケージング)の3事業にまたがる当社内の独自技術やその他の経営資源を有効に活用して、ユーザー目線に立ったより安全性の高い、価値ある製品の開発に取り組んでおります。ますます先行きが見えないこの激動の時代においても、製品競争力、市場シェアともに世界トップを目指し、「地産地消」のコンセプトのもとにグローバルで存在感のある企業グループへ発展し、全世界的に総合医療メーカーとしての供給責任を果たしてまいります。

医療関連事業の国内販売におきましては、主力のダイアライザ(人工腎臓)を中心とする透析関連製品に加え、注射・輸液関連製品、糖尿病関連製品、検査関連製品、バスキュラー関連製品、SD(サージカルデバイス)関連製品などの領域において品揃えの充実と新規販路開拓を強力に推し進め、シェア拡大を図ります。また、医療従事者の働き方改革や、オンライン診療、オンライン服薬指導に役立てるシステムの提案を通じて地域医療に貢献してまいります。ジェネリック医薬品については、医療用医薬品の製造・販売を行う企業としての供給責任と使命を今一度しっかり認識し、患者さま目線を基本理念として、品質確保、安定供給へ真摯に取り組んでまいります。また、メディカル営業部門と連携して重点卸との関係を強化し、医療機関、調剤薬局などに貢献できるよう引き続き取り組んでまいります。

海外販売におきましては、商品価値を高め、サービスを向上させることで当社独自のワンストップソリューション体制をつくり、顧客満足度を高め、利益を高めてまいります。また、商品別販売組織の構築と強化、幅広い治療分野を新たな柱とすべく新規商品の導入を行い、売上の拡大に努めてまいります。特に北米を中心に世界各地域で展開する「バスキュラー商品」および「ホスピタル・感染予防商品」としてワクチン接種用シリンジの販売とイオンレス® 次亜塩素酸水等の販売準備を進めてまいります。そのために、特に多くの人口を抱える市場である中国、アジアパシフィック地域における販売拠点の拡大と地方拠点の開設も進め、ニプロブランドを世界の隅々まで浸透させてまいります。さらに、中南米・アジア地域を中心に引き続き自社透析センターの開設を推進し、質の高い治療を提供し、地域医療に貢献してまいります。管理面においては、物流最適化を促進し、ハブ倉庫を活用した輸送の効率化の一方、全世界の患者さまに遅滞なく製品を届けるため安全在庫を確保し、安定供給を進めてまいります。このように今後も顧客目線での活動を行い、顧客満足度を高め、さらなる販売拡大に努めてまいります。

医薬関連事業におきましては、高品質な医薬品を安定的に市場供給することが使命であり、引き続き生産能力の拡大と品質確保のための投資を行い、事業の拡大に邁進してまいります。

注射剤については、シリンジとバイアルの生産能力の拡充に取り組むとともに、抗菌薬やバイオ医薬品の生産能力の充実を図ってまいります。経口剤については、ジェネリック医薬品の安定供給と受託製造の増大のため、新たな生産拠点の構築も視野に入れた増産体制の確立に取り組んでまいります。また、品質保証体制の強化に向けては、引き続きクオリティカルチャーの醸成に注力するとともに、試験機能の充実を図り、QCセンターの設立などに取り組んでまいります。さらに災害対策や老朽化した設備の更新を進め、事業継続性の向上に努めてまいります。研究開発においては、今後予定されているジェネリック医薬品の上市に向けて、生産部門との緊密な連携による準備を進めております。また、高活性に対応した研究設備の増強や、バイオシミラーの研究開発に取り組んでおります。

 

ファーマパッケージング事業は、信頼される医薬品包材メーカ-として人々の健康に貢献することを使命としております。ウィズコロナ、アフターコロナ時代の動向に加え、医療先進国における高機能商品のニーズの充足、発展途上国の急速な需要拡大に対応するため、以下の4つの基本戦略を推進しております。まず最優先事項である「安定供給」に関しては、生産能力を段階的に拡張し、ユーザーの需要に適時に応えられる体制整備を継続的に進めてまいります。次に「商品競争力の向上」に関しては、主力品であるバイアルやシリンジの機能強化や付加価値化に加え、コンビネーション医療機器や在宅医療用機器へのリソースを投下します。さらに「製造原価の低減」に関しては、製造工程の自動化やDXの活用、さらにはサプライチェーンの最適化をグローバルで推進してまいります。最後に「市場カバー率の拡大」に関しては、既存市場である日米欧や中国のシェア率向上と併せ、中南米やアフリカ等の市場を積極的に開拓して行く計画です。

(2) 目標とする経営指標

当社は、2030年度連結売上高1兆円の企業グループとなることを目標に掲げており、そのためにユーザーニーズに即した製品開発により競合他社との差別化をはかり、売上高成長率7%以上を維持することと製品力による営業利益率の向上を目指します。そのうえで一定水準の成長投資を維持しながらキャッシュ・フローの改善により債務償還年数の圧縮と自己資本比率の向上を実現してまいります。

成長性

売上高成長率 年平均7.0%以上

収益性

営業利益率 9.0%以上

財務健全性

純有利子負債/EBITDA 4倍台

資産効率

ROE 14.0%

 

また、2030年度連結売上高1兆円を達成するために、当社グループが実施すべきと考えることは、次のとおりであります。

 経営方針

激動の時代にめげず、ユーザーニーズに応え、製品競争力・市場シェアともに世界トップを目指し、グローバルで地産地消の考えを推し進める

 重点課題

①意欲のある人にチャンスを与える社風を守る

②最終ユーザー目線で判断することを最優先とする

③三方(ユーザー、社会、自社)良しの考え方を堅持する

④全従業員がPDCAの各ステップに関する情報を共有し、意欲を持ってPDCAサイクルを回すことができるようにする

⑤組織の長が理論と現実のギャップを理解し、それを部下が理解できるように指導を行える会社とする

 強化項目

①日本市場において地域医療貢献度No.1メーカーへの挑戦

②ダイアライザで世界各国シェアトップ

③バスキュラー製品における世界市場展開と国内市場の新分野進出

④医薬品受託事業における海外市場への展開

⑤ファーマパッケージング事業における高付加価値製品の開発と製造原価の削減

⑥細胞医薬品事業の強化

⑦新規事業シーズ育成

 

当社グループは引き続きユーザー目線にたっての新商品、新技術の開発を進め、技術革新により社会貢献を志向する事業展開を継続し、医療関連、医薬関連およびファーマパッケージングの各事業において着実に成長を図り、目標達成を目指してまいります。

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題

医療関連事業におきましては、メディカル営業部門では、輸液関連製品、糖尿病関連製品、透析関連製品、バスキュラー関連製品、SD(サージカルデバイス)関連製品の各々におきまして、医療の安全、安心に配慮した設計と、環境への負荷を低減する製品開発に努め、多様化する市場ニーズ・シーズに応えられる製品を積極的に市場展開、販売強化を行い業績の拡大に取り組んでまいります。また、医薬営業部門では、毎年の薬価改定でジェネリック医薬品業界はもちろん、製薬業界全体が非常に厳しい経営環境となることが予想される中、総合メディカル企業として医療用デバイスや診断薬などとジェネリック医薬品を組み合わせた活動で、在宅医療、地域医療連携をはじめ医療現場のニーズに応えながら医薬品卸と一層の連携強化を図り、さらなるニプロブランドの向上に努めてまいります。また、供給問題につきましては、増産体制の強化を図るとともに、医薬品卸や医療従事者の方々への丁寧な説明と対処へ引き続き真摯に取り組んでまいります。

グローバル市場においては、生活習慣病などの都市型疾患への変遷に対応すべく特に新興国を中心に医療インフラの整備と医療体制の普及を視野に入れた事業を進めておりますが、全世界的な新型コロナウイルス感染拡大により、感染症に対する脆弱性が全世界で露呈する格好となりました。再びこのような混乱が起こらぬよう感染症予防と治療に必要な防護用品やワクチン接種用のシリンジ等のホスピタル関連製品に関しても製品ラインナップの拡充と生産能力の強化をしっかりと継続して行います。このように当社グループは医療現場のニーズに応え、メーカーとしての製品供給責任を十分に果たすために全世界で製品生産能力の増強を継続的に行ってまいります。特にダイアライザを代表とする透析関連製品に関しては、対応する生産拠点の能力増強を計画通りに推し進め生産規模拡大を図り、継続する旺盛な需要に対応してまいります。

医薬関連事業におきましては、受託製造の需要の高まりや、ジェネリック医薬品の供給に関する課題に対処するため、生産能力の増強と拡充を確実に進めてまいります。また、市場から求められる高い品質を維持するために、継続して品質保証体制の強化に取り組むとともに、試験機能の充実を図ってまいります。さらに原薬については安定的に調達するための様々な施策を行ってまいります。また、災害対策を進めることによって事業継続性の向上に努めて、供給責任を果たしてまいります。

ファーマパッケージング事業におきましては、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、製剤のみならず、それを安定的かつ安全に保持する容器としてのバイアル、シリンジに対する一般の認知度が大きく高まりました。今後、バイオ医薬品、ワクチン、抗癌剤に加え、全く新しいモダリティの医薬品開発・上市が本格化しますが、これらに適合した医薬品容器に対するニーズは一層厳格化し、品質要求も高まると予想されます。他方でウィズコロナ、アフターコロナを見据え、各国がヘルスケア政策を拡充することで、医療費抑制のインセンティブが働き、医薬品容器の供給価格に下方圧力が加わることも想定されます。これらの市場環境予測を踏まえ、当事業においては、高機能製品のラインナップ拡充と価格競争力の向上が喫緊の課題です。製品開発に際しては、ユーザーニーズに適合した商品の迅速な上市を実現するため、グループ内外のステークホルダーとの連携強化、不足するリソースの確保を進めてまいります。製造原価の低減については、国内外15工場における生産および品質保証体制の統一化、製品仕様や品質基準等の整備をはじめ、主材料の購買システムの見直しやBCP対策を含めたサプライチェーンの再構築を進めております。

 

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