(経営成績等の状況の概要)
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
当連結会計年度における日本経済は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い経済活動が制限されたものの、個人消費の持ち直しや、世界経済の回復を背景とする設備投資の増加を受けて、緩やかに回復しました。第4四半期には、ウクライナ情勢の緊迫化を受けて資源・エネルギー価格が高騰しました。
このような状況のもと、当社グループは中期経営計画「PLAN23」の基本方針である 「脱炭素社会に向けた戦略投資の強化」と「デジタル化の推進」に取り組みました。
水素エネルギー社会の実現に向けては、関係省庁や多くの民間企業と連携し、CO2フリー水素サプライチェーンの構築に向けた取り組みを推進しました。具体的には、 豪州で褐炭由来の水素を液化し、液化水素運搬船による日豪間の海上輸送・荷役を行う実証試験に参画しており、2022年2月に実証試験を成功させました。また、 FCV向け水素ディスペンサーなどエネルギー供給設備に強みを持つトキコシステムソリューションズ株式会社の株式を100%取得する事とし、メーカーおよびエンジニアリング機能の強化を図りました。加えて、コスモエネルギーホールディングス株式会社との間で、水素ステーション事業や水素製造に関わるエンジニアリング分野等で協業していく事を合意しました。
総合エネルギー事業については、 当社独自のIoTプラットフォーム「イワタニゲートウェイ」により取得したデータを活用し、地域社会のカーボンニュートラル化の支援や、暮らしを支える新しいサービス・価値の創造に取り組みました。加えて、J-クレジット制度を活用した、お客様のCO2排出削減を支援するサービスの提供や、バイオマス発電事業への参画等、長期ビジョンである『オールイワタニでの「脱炭素社会の実現」』に向けた営業活動を推進しました。
当連結会計年度の業績は、売上高6,903億92百万円(前年度比1,281億69百万円の増収)、営業利益400億76百万円(同107億24百万円の増益)、経常利益464億13百万円(同122億61百万円の増益)、親会社株主に帰属する当期純利益299億64百万円(同69億34百万円の増益)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
①総合エネルギー事業
総合エネルギー事業は、LPガス輸入価格が高値で推移したことや、業務用・工業用LPガスの販売増加により、増収となりました。LPガスの小売部門では、輸入価格の上昇により収益性が低下したことに加え、半導体不足によりガス関連機器の販売が減少しましたが、市況要因が大幅なプラス(前年度比61億81百万円の増益)となったことや、海外でのカセットこんろ・ボンベおよび産業用エネルギー設備の販売が好調に推移し、増益となりました。
この結果、当事業分野の売上高は3,271億75百万円(同734億53百万円の増収)、営業利益は226億55百万円(同57億93百万円の増益)となりました。
②産業ガス・機械事業
産業ガス・機械事業は、エアセパレートガスについては、電力料金の上昇による製造コストの増加があったものの、電子部品業界向けを中心に販売が伸長しました。水素事業は、水素の販売は主に半導体業界向けに増加しましたが、水素関連設備で大型案件が減少しました。特殊ガスについては、新型コロナワクチン向けのドライアイスの販売が増加しました。また、機械設備については、顧客の設備需要の回復に伴い、売上が伸長しました。
この結果、当事業分野の売上高は1,843億32百万円(前年度比122億47百万円の増収)、営業利益は124億67百万円(同25億86百万円の増益)となりました。
③マテリアル事業
マテリアル事業は、ミネラルサンドについては、世界的なサプライチェーンの混乱を受けた供給制約により市況が上昇する中で安定供給を確保したことに加え、豪州の自社鉱区で生産効率の改善が進んだことにより、収益が増加しました。金属加工品はエアコン向けを中心に販売が増加し、機能性フィルムについてもスマートフォン向けの販売が伸長しました。
また、低環境負荷PET樹脂、バイオマス燃料、二次電池材料といった環境商品の拡販にも注力し、売上が伸長しました。
この結果、当事業分野の売上高は1,509億74百万円(前年度比392億13百万円の増収)、営業利益は72億55百万円(同25億61百万円の増益)となりました。
④自然産業事業
自然産業事業は、業務用冷凍食品の需要回復に加え、一般消費者向け冷凍食品の販売が増加しましたが、仕入コストおよび物流費が上昇しました。また、農業・畜産設備においても販売は増加しましたが、資材コスト等が上昇しました 。
この結果、当事業分野の売上高は 233億76百万円 (前年度比 30億65百万円の増収 )、営業利益は 6億75百万円 (同 1億55百万円の減益 )となりました。
⑤その他
売上高は 45億34百万円 (前年度比 1億88百万円の増収 )、営業利益は 14億69百万円 (同 11百万円の減益 )となりました。
①総資産
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ 464億64百万円増加 の 5,584億79百万円 となりました。これは、受取手形及び売掛金が 177億19百万円 、商品及び製品が 151億69百万円 、有形固定資産が 77億23百万円 、電子記録債権が 51億1百万円 それぞれ増加したこと等によるものです。
②負債
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比べ 197億43百万円増加 の 2,781億72百万円 となりました。これは、長期借入金が 43億54百万円 減少したものの、グリーンボンドの発行により社債が 100億円 、短期借入金が 81億34百万円 、電子記録債務が 27億85百万円 、1年内返済予定の長期借入金が 14億61百万円 それぞれ増加したこと等によるものです。
なお、当連結会計年度末のリース債務を含めた有利子負債額は、前連結会計年度末と比べ149億98百万円増加の1,111億60百万円となりました。
③純資産
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比べ 267億20百万円増加 の 2,803億7百万円 となりました。これは、利益剰余金が 256億47百万円 増加したこと等によるものです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ 88億71百万円減少 の 295億74百万円 となりました。
①営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ収入が 357億4百万円減少 したことにより 130億75百万円 の収入となりました。
これは主に、税金等調整前当期純利益 459億43百万円 、減価償却費 211億11百万円 等による資金の増加と、売上債権の増加額 213億21百万円 、棚卸資産の増加額 168億93百万円 、法人税等の支払額 140億55百万円 等による資金の減少によるものです。
②投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ支出が 31億7百万円増加 したことにより 319億39百万円 の支出となりました。
これは主に、有形固定資産の取得 257億7百万円 、投資有価証券の取得 39億85百万円 、無形固定資産の取得 27億37百万円 等による資金の減少によるものです。
③財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ収入が 150億90百万円増加 したことにより 80億38百万円 の収入となりました。
これは主に、社債の発行による収入 100億円 、借入金の純増加額38億49百万円等による資金の増加と、配当金の支払額 43億10百万円 、リース債務の返済による支出 11億68百万円 等による資金の減少によるものです。
(4) 生産、受注及び販売の実績
当社グループの事業形態は主に商品の仕入による販売を主要業務としているため、生産実績及び受注状況に代えて仕入実績を記載しております。
当連結会計年度における外部からのセグメントごとの仕入実績(役務原価等を含む)は次のとおりであります。
当連結会計年度における外部顧客へのセグメントごとの販売実績(役務収益等を含む)は次のとおりであります。
(注) 販売実績が総販売実績の100分の10以上を占める相手先はありません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。なお、見積り及び判断・評価については、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づいて行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a) 売上高及び売上総利益
売上高は、前連結会計年度に比べ22.8%増収の6,903億92百万円となりました。これは主に、LPガス輸入価格の上昇や工業分野向け主力商品の需要回復による販売増加によるもので、詳細は「(経営成績等の状況の概要) (1)経営成績の状況」のセグメント別の経営成績をご参照ください。
売上総利益は、売上高総利益率が3.5ポイント低下したものの、売上高が増収となったことから、前連結会計年度に比べ8.8%増益の1,917億62百万円となりました。
(b) 営業利益
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ3.3%増加の1,516億85百万円となりました。これは主に、運搬費及び減価償却費が増加したことによるものです。この結果、営業利益は、前連結会計年度に比べ36.5%増益の400億76百万円となりました。
(c) 経常利益
営業外損益は、63億36百万円の収益(純額)となり、前連結会計年度の47億99百万円の収益(純額)に比べ15億36百万円増加しました。これは主に、持分法による投資利益が増加したことによるものです。
この結果、経常利益は、前連結会計年度に比べ35.9%増益の464億13百万円となりました。
(d) 親会社株主に帰属する当期純利益
特別損益は、4億69百万円の損失(純額)となり、前連結会計年度の6億3百万円の収益(純額)に比べ10億72百万円の減益要因となりました。これは主に、投資有価証券売却益が減少したことによるものです。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ30.1%増益の299億64百万円となり、1株当たりの当期純利益は、前連結会計年度の428.36円に対し520.98円となりました。
当社は、中期経営計画「PLAN23」において、最終年度の2024年3月期に、経常利益400億円、ROE9%以上を目標としております。前連結会計年度及び当連結会計年度、PLAN23最終年度目標の経常利益、ROEは次のとおりであります。
(PLAN23との比較)
(第79期目標との比較)
(LPガス輸入価格変動要因(市況要因)を除いた経常利益)
(※)第79期目標は、2022年2月4日に公表した数値を表示しております。
第79期(2022年3月期)実績は、工業分野向けを中心に主力商品の販売が増加したことや、LPガス輸入価格が高値で推移し、市況要因がプラスとなったこと等により、経常利益は464億円、ROEは11.7%となりました。
また、当社の主要な事業の成長を測る指標として、「LPガス直売顧客数」、「国内外カセットこんろ・ボンベ販売数量」、「エアセパレートガス販売数量」、「液化水素販売数量」の4指標を重要事業指標に設定しており、PLAN23最終年度の目標値に向けて概ね順調に推移しております。
LPガスの直売顧客数は、M&Aの推進により103万戸となりました。カセットこんろ・ボンベの販売数量は、新商品開発や新需要創出による事業の拡大によりそれぞれ4,585千台、154百万本となり、国内でのシェアはそれぞれ85%、70%と伸長しました。産業ガスについても、エアセパレートガスは16.7億㎥、液化水素は71百万㎥となり、販売が増加しました。
今後につきましては、引き続き重要事業指標に掲げる4指標の達成に取り組むとともに、各事業の成長に向けた施策を遂行し、PLAN23の経営目標である「経常利益400億円(市況要因を除く)」、「ROE9%以上」の達成を図ります。
LPガス直売顧客数については、全国ネットワークの強みを活かしてM&Aを推進し、顧客基盤の拡大を図ります。カセットこんろ・ボンベについては、国内ではアウトドア向けの需要拡大に取り組み、海外では中国・東南アジアを中心に拡販を図ります。エアセパレートガスについては、成長分野である半導体・電子部品業界向けを中心に拡販を進めます。液化水素については、高純度・大量供給等の特性を活かすことに加え、脱炭素に向けた実証需要の獲得を図るなど、新規顧客獲得を推進します。
キャッシュ・フローの状況については、「(経営成績等の状況の概要) (3) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(a) 資金需要
当社グループの事業活動における運転資金の主なものは、商品の仕入、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、M&Aによる株式取得のためのものであります。当社グループにおいては、安心・安全を支えるインフラ整備については事業全体の収益を考慮して、将来の成長投資については資本コスト等を考慮して多角的かつ慎重に投資判断を行う方針であります。
(b) 財務政策
当社グループは、財務の健全性を保ちつつ、安定的に営業活動によるキャッシュ・フローを生み出すことで、事業運営上必要な資本の財源及び資金の流動性を確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入により調達を行っております。設備投資や長期運転資金の調達につきましては、自己資金並びに金融機関からの長期借入、社債の発行等により行っております。また、グループ内資金の効率化を目的として、グループ会社間で貸付等を行っております。
社債については、 2021 年 12 月に、国内で初めて水素ステーション建設資金を資金使途としたグリーンボンド(期間7年・ 10 年、各々 50 億円)を発行いたしました。これらは、株式会社日本格付研究所(JCR)より、Aの長期債格付けを取得しております。当社はグリーンボンドの発行による資金を水素ステーション建設等に活用し、水素エネルギー需要を創出することで、CO2フリー社会への移行を進めてまいります。
なお、当連結会計年度末のリース債務を含めた有利子負債額は、前連結会計年度末と比べ149億98百万円増加の1,111億60百万円となりました。
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