課題

1 【経営方針、経営環境および対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社は経営理念として、①地域社会に対する貢献、②企業の持続的成長を目指す、③人的資源の尊重を掲げております。

 

(2)経営環境及び経営方針・戦略等

地球温暖化、天災の発生増加や激甚化、ロシアによるウクライナ侵攻等を踏まえた社会情勢は、上流から下流までの一貫して安定したエネルギー供給が当然のものではなくなったことを明らかにしました。また、メタバースの仮想空間テクノロジーやNFT(※1)、スマートコントラクト(※2)等の技術の進化、コロナが後押ししたデジタルの急速な浸透は、事業の在り方を従来の中央監視型モデルから地域分散型モデルへと大きくシフトさせております。

このように大きく変化する経営環境のもと、当社は、「エネルギーソリューション」へとビジネスを進化させます。これからの地域社会に最も必要なのは再生可能エネルギーや、今後急増が予想される電気自動車(EV)の利用を前提としながら、災害時でもエネルギーを自立的に供給できるレジリエントな分散型のエネルギーシステムの構築です。従来のガスや電気を仕入れて販売するという事業モデルを刷新し、電気とガスをセットでお客さまにご提供することを前提に太陽光発電設備、蓄電池としてのEV等の分散型エネルギー源設備(DER)を提供して各家庭のスマートハウス化を推進し、その上で、広く地域社会に対して最適なエネルギー利用を提案することを目指します(“NICIGAS 3.0”)。このビジネスモデルの実現は、カーボンニュートラルやTCFD 、SDGs等の社会課題に対応しながら当社の企業価値を中長期的に向上させる一番の近道でもあると考えております。

エネルギーソリューションに向けた第一歩として、今年2月に「でガ割007」をリリースしました。この商品は、非化石電源の活用によりCO₂排出量を実質ゼロとし、EVユーザーに蓄電のメリットがある電気の新料金メニューです。加えて、太陽光発電設備や蓄電池、ハイブリッド給湯器のご家庭のお客さまへの提供も開始しております。当社は、エネルギーのラストワンマイルを担う企業として、エネルギーソリューションの実現を通じ、他社とのパートナーシップによる共創で新たな形で地域社会に貢献し、中長期的に企業価値を向上してまいります。

※1 非代替性トークン(Non Fungible Token)のこと。アート等のデジタルデータをブロックチェーン上にのせることで、本データが偽造できない鑑定書や所有証明書の機能を持つ。これによりデジタルデータが資産的価値を持つことができるようになり、売買市場の形成につながっている。

※2 ブロックチェーン上で契約を自動的に実行する仕組み。イーサリアム等多くの仮想通貨で実装されている。

 

(3)資本政策

当社はROEを財務上の最重要KPIと設定し、これを高めることを経営の重要課題としております。なぜならROEが株主の皆さまにとっての投資利回りであり、経営にとってはお預かりした株主資本をどれくらいの効率で増やせたかを表す指標と認識しているからです。当社は、25/3期にROE20%を達成する計画です。


 

ROE向上に向け、バランスシートのコントロールを重視しております。資産(の運用)サイドでは、規模を大きく増やさず、その内容を、Cashを生まない資産である現預金や本社等から、LPガスやICT等の「高収益資産」に入れ替え、資産の収益性/ROICを高めております。また資産を使わない事業では電気事業に注力し、人的リソースの配分を高めて事業を強化し、ガスと電気のセット率を高めております。これらの施策を通じ、ROICを切り上げてまいります。資本の調達サイドでは、適正自己資本比率を設定し、この水準を超える株主資本(不要な資本)を株主の皆さまからお預かりせず適切に借入を活用することで、ROICの向上をダイレクトにROEにつなげる計画です。

還元については、20/3期以降、総還元性向ほぼ100%の水準を続けております。これは、積極的な投資を行いながらも不要な資産を売却、資産を圧縮して資産全体の規模を抑えているため、株主資本を積み増す必要がないからです。また還元の方法については、配当の割合を高める方針です。

 

(4)サステナビリティへの対応

気候変動、人的資本、多様性等のサステナビリティへの対応は、中長期の企業価値向上の前提と考えております。当社はこれらの取組みについて、統合報告書等で情報開示を進めております。

 

①重要な課題(マテリアリティ)

当社は、中長期的に企業価値成長に影響を与え得る重要な課題をマテリアリティとして特定し、それぞれの重点テーマに関し、リスク対応と機会の創出を図っております。
<当社の重要な課題(マテリアリティ)>

・脱炭素社会への対応

・公正・公平な社会の構築

・地域社会の基盤づくり

・人材の育成とダイバーシティ推進

・ガバナンスの強化

 

②気候変動、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応

当社はCO₂削減という社会課題に対し、ラストワンマイルを担う企業として責任を果たす方針です。他社とのパートナーシップによる共創で業界全体の排出量を削減しながら、エネルギーソリューションへと事業を進化させ、中長期的企業価値の向上と2050年までのCO₂排出ネットゼロを目指します。

 

当社の気候変動に関する取組みを、TCFDの枠組みにもとづいてお伝えしております。

<ガバナンス>

気候変動関連のリスクや機会の評価、目標設定、その進捗の確認について、取締役会の諮問委員会である「ESG経営推進委員会」で専門性の高い議論を行い、その内容を、四半期に1回、取締役会に報告・提案し、取締役会で議論しております。


 

<リスク管理>

上記ガバナンス体制において気候変動関連リスクや機会を評価し、各取組みの進捗を管理しております。各取組みの具体的な内容は1.5°C、2°Cおよび4°Cシナリオにおける事業環境の想定にもとづく戦略を踏まえ、ESG経営推進委員会を経て取締役会で特定しました。

シナリオ

事業環境へのインパクト

1.5 ℃、 2 ℃シナリオ

・エネルギー規制が大きく進むことによる脱炭素関連需要増

・炭素税等の導入による原料コスト増

・自然エネルギーへの対応、化石燃料の需要減

・脱炭素の対応遅れによる事業機会の喪失や信頼低下リスク増

4 ℃シナリオ

・エネルギー規制は限定的

・気候変動による自然災害は増加

 

 

<事業戦略(リスクと機会)>

短期:今後3年程度、中期:2030年まで、長期:2050年までとして時間軸を分けて分類し、企業価値を向上しながら気候変動に対応するための戦略を検討しております。当社は迅速な意思決定で事業機会に取り組みます。


 

<指標と目標>

当社は、2030年までを目途としたCO₂削減目標として、①LPガス業界のCO₂排出量(LPG託送による):約▲50%、②世帯あたりCO₂排出量:約▲50%、③削減貢献量:約145万t-CO₂(2030年時点)の3つを設定しております。

 

③人的資本、多様性に関する取組み方針

エネルギーソリューションへと進化し、新たな形で地域社会に貢献するには、内部・外部環境の変化に対応し、挑戦し続けるグループ全従業員の力が不可欠です。当社は、多様なバックグラウンドや人生の目的を持つ、従業員一人ひとりの価値を最大限に引き出しながら中長期での企業価値向上につなげてまいります。

<具体的な取組み>

■多様な働き方の導入

従業員一人ひとりが能力や生活スタイル、人生の目的、ステージに合わせて柔軟に働き、自らの価値を最大限に引き出せるよう、多様な働き方を導入しております。

・働き方改革

・ジョブ型雇用制度の導入(高度人材向け)

・新規専任職制度

・副業の推進

・女性に加え、男性の育休制度の導入(※20223月期実績:9名取得)

■人材の育成

従業員一人ひとりが環境の変化に対応し、挑戦するマインドを持つために各種研修を実施しております。IT/DX研修を通じた広い知識の習得や、ガス機器研修による営業知識の向上を図り、新たな価値の創出につなげております。

・各種研修(基礎研修・営業研修・IT/DX研修等)

・営業力強化(ガス機器研修等)

・社外ビジネススクールへの派遣

・他社との人材交流

・武者修行プラン(IT等のベンチャー企業への派遣)

■ダイバーシティ推進

多様化する地域社会で必要とされるサービスを提供するためには、様々な考えを持った従業員一人ひとりが主体的に考え、それぞれの視点で議論を深め、補完し合いながら会社を進化させることが重要と考えております。この考えのもと、多様な人材が特性を活かし、意欲を持って能力を発揮できる環境の整備に注力しております。

・女性の活躍推進

2025年度末までの管理職比率目標:10%(20223月期実績:約5%)

・中途採用人材の活躍推進

・外国籍の方の活躍推進

・若い世代の活躍推進

・障がいのある方の活躍推進

■公正な評価と処遇

失敗を恐れず挑戦するマインドと結果を重視しております。加えて優秀な人材ほど流動性が高いという認識のもと、成果を出した従業員のモチベーションアップにつなげるべくインセンティブ制度を整備しております。

・従業員向け株式報酬制度

・営業インセンティブ制度

 

※サステナビリティに関する取組み詳細は、「2021-2022年統合報告書」をご覧ください。 

 

 

https://www.nichigas.co.jp/ir/library/annual/ 

 


 

 

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