本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は本有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当行が属するSBIグループは、下記5つを共通の経営理念として掲げています。
・正しい倫理的価値観を持つ
・金融イノベーターたれ
・新産業クリエイターを目指す
・セルフエボリューションの継続
・社会的責任を全うする
上記の下で、当行グループにおいては、下記3つを経営理念として掲げ、お客さまとともにさらなる成長を目指しております。この経営理念は、当行グループの目指すべき姿を示したものであり、重要な指針としてグループ内で共有されています。
・安定した収益力を持ち、国内外産業経済の発展に貢献し、お客さまに求められる銀行グループ
・経験・歴史を踏まえた上で、多様な才能・文化を評価し、新たな変化に挑戦し続ける銀行グループ
・透明性の高い経営を志向し、お客さま、投資家の皆様、従業員などすべてのステークホルダーを大切にし、また信頼される銀行グループ
(2)経営環境
当行グループは、中長期的な環境変化を下記のように認識しております。
(中長期的な環境変化)
・情報技術の高度化による市場構造の変化を伴うデジタル化の加速
・生産年齢人口の減少による労働力不足や長寿化による消費者ニーズの変化を伴う社会の高齢化
・価値観の多様化による働き方や消費スタイルの多様化
・老朽化対応によるインフラ開発や海外からの資本流入による投資機会の広がり
・ITリテラシーの格差や都市部への人口集中による地域間格差の深化等の格差社会・分断の深化
(3)当行グループの経営戦略
当行グループは、今後の目指すべき方向として、2022年度から2024年度を対象期間とする中期経営計画「新生銀行グループの中期ビジョン」を策定しております。「新生銀行グループの中期ビジョン」は、2021年12月にSBIグループ入りした新生銀行グループが、その一員として実現を志向する、3つの「2024年度に目指す姿」と、その達成のための3つの「基本戦略」で構成されています。
①.中期ビジョン(2024年度に目指す姿)
(ⅰ)連結純利益700億円の達成と更なる成長への基盤の確立
SBIグループ入りしたことにより、新たなステージに入った新生銀行グループの収益力向上を図り、2024年度には連結当期純利益700億円の達成を目指します。この目標を達成するために、顧客中心主義を徹底し、グループ内外の価値共創機会の追求、新生銀行グループが持つ強みの深化・フルラインナップ化などを通じた顧客基盤の拡大を図り、それを商品・サービスの質の向上に転化することで、成長の基盤を確立してまいります。
(ⅱ)先駆的・先進的金融を提供するリーディングバンキンググループ
他者に先駆けるスピード感と起業家精神を持って、先進的技術を取り入れながら商品・サービス・機能を提供するリーディングバンキンググループを目指してまいります。そのために、今後は、SBIグループの金融生態系が有する顧客基盤、知見・ノウハウを、新生銀行グループのビジネスに徹底的に取り込むことで、目指す姿の実現に向けた礎を構築してまいります。
(ⅲ)公的資金返済に向けた道筋を示す
公的資金の返済は、新生銀行グループにおける最重要課題の一つであり、2024年度までに返済に向けた道筋や方向性を示すことができるよう、少数株主保護を前提に、政府・その他関係者の理解を得るべく、SBIグループと連携してこれに取り組んでまいります。公的資金返済に向けた道筋を示すには、返済原資や企業価値の源泉である収益力の向上が不可欠であると認識しております。事業戦略の観点からは、SBIグループ入りを通じて得られたSBIグループの機能や顧客基盤を活用しつつ、中期ビジョンで示す各種戦略を着実に遂行することで、顧客基盤の拡大や収益力の大幅かつ持続的な向上を実現してまいります。株主還元の観点からは、事業戦略の実践による収益力の向上を最優先するため、従前の株主還元方針は見直して、事業基盤拡充と収益力強化のための資本活用や利益の内部留保をより重視した運用としてまいります。
②.中期ビジョン実現のための戦略
(基本戦略)
3つの基本戦略の詳細については、後述の「(4)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題」に記載しております。
(個別戦略)
個人・法人・海外の各ビジネスおよび経営基盤に関連する分野の個別戦略を以下のとおり策定しています。
(a)個人ビジネス
(b)法人ビジネス
(c) 海外ビジネス
(d) 経営基盤
③.財務目標
2022年5月13日に公表した今後の財務目標(連結)は以下の通りです。
(注)1 「営業性資産」は貸出金、有価証券、金銭の信託、買入金銭債権、リース債権及びリース投資資産、有形リース資産、無形リース資産、支払承諾見返、その他資産のうち割賦売掛金等の残高の合計です。
2 「CET1比率」は普通株式等Tier Ⅰ比率(バーゼルⅢ 国際基準/完全施行ベース)です。
(4)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題
①.新生銀行グループ経営の全体戦略
新生銀行グループは、今後3年間の目指すべき方向として、2022年度から2024年度を対象期間とする中期経営計画「新生銀行グループの中期ビジョン」を策定しました。
新生銀行グループの中期ビジョン(以下、「中期ビジョン」)は、2021年12月にSBIグループ入りした新生銀行グループが、その一員として、SBIグループの事業構築の普遍的な基本観をベースとして、実現を志向する3つの「3年後に目指す姿」と、その達成のための3つの「基本戦略」で構成されております。
中期ビジョンの3つの基本戦略
(基本戦略1:グループ内外の価値共創の追求)
「価値共創」(オープン・アライアンス)という概念を、「SBIグループ各社との価値共創」、「新生銀行グループ内での価値共創」、「グループ外との価値共創」、更に「ノンオーガニックな出資・買収」も含めた広義の連携と再定義いたしました。その上で、これらの価値共創によりシナジーを創出し、顧客基盤拡大と収益力向上を通じて躍進的な成長を実現してまいります。
SBIグループ各社との価値共創
・SBIグループ各社との相互送客、機能補完、リソースの共有
・SBIグループの地域金融機関ネットワークを活用した商品・サービス・機能の提供
・共通するビジネス・間接機能のSBIグループとの統合・一本化
新生銀行グループ内での価値共創
・徹底的に顧客の立場に立った商品・サービス・機能の提供、顧客利便性を向上する為のグループ内の連携強化
・顧客接点の刷新やチャネルの拡大等、顧客基盤を拡大する為のグループ内の連携強化
グループ外との価値共創、ノンオーガニックな出資・買収
・非金融領域を含めたパートナーとの機能連携による顧客利便性の向上、顧客基盤の拡大およびノウハウと経験の蓄積
・既存のグループ外との連携案件の本格化・収益化による成長ドライバーへの進化
・国内にとどまらず成長著しいアジア・パシフィック地域をメインターゲットとするノンバンク領域を中心とした出資・買収
(基本戦略2:強みの深化とフルラインナップ化)
小口ファイナンス、機関投資家向けビジネス、海外ビジネスといった、これまで培ってきた強みを深化すると同時に、フルラインナップの商品・サービス・機能の提供により、顧客中心主義を徹底してまいります。そのために、テクノロジーの活用を徹底し、人材、ガバナンス、財務に関する組織的能力を強化してまいります。なお、フルラインナップ化に際しては、自前主義にとらわれず、SBIグループ内外のリソースやノウハウを活用してまいります。
小口ファイナンス、機関投資家向けビジネス、海外ビジネスの強化
・多様な小口ファイナンスを一気通貫で提供できる強みを更に磨くと共に、外部パートナーに最適な形で提供
・再生可能エネルギー等、環境・社会課題の解決に資する分野において、機関投資家に共感される、先駆的なプレイヤー
・海外ノンバンクビジネスについて、アジア・パシフィック地域を中心に事業基盤を拡大
顧客中心主義徹底のためのフルラインナップ化と体制整備
・SBIグループや外部パートナーの商品・サービス・機能を新生銀行グループのプラットフォームに取り込み、フルラインナップ化を図ることで顧客の選択肢を拡充
・顧客中心主義の徹底の観点から組織体制および業務プロセスを最適化
最新テクノロジーの徹底的な活用
・デジタル技術やAI・ビッグデータの活用による顧客利便性の高いサービスの提供(例:スーパーアプリ・BANKIT)
・人的資源を高付加価値業務に集中させるための業務プロセスのデジタル化
・SBIグループのフィンテック分野の知見を最大限活用
成長と変革のための組織的能力(人材・ガバナンス・財務)の強化
・働き方 改革を通じた多様な人材確保、高度な人材の育成を通じた高付加価値の創出、SBIグループとの人材交流
・価値共創の拡大に対応するガバナンスの強化・高度化(コーポレート・ガバナンス、リスクガバナンス)
・新たな挑戦を可能にする健全かつ適切な自己資本の確保と、聖域なきコスト削減を含む戦略的な経営資源の投入
(基本戦略3:事業を通じたサステナビリティの実現)
グループ内外の力を徹底活用し、顧客や新生銀行グループのみならず、環境や社会全体の持続可能な発展を実現することを目指してまいります。具体的には、地方創生への取り組み、環境・社会課題解決へ向けた金融機能提供を行うと同時に、顧客に信頼されるサービスを提供することにより金融機関としての社会的責任を果たしてまいります。
地域金融機関や企業、住民、自治体の支援を通じた地方創生への取り組み
・地域金融機関支援プラットフォーマーとなり、地域金融機関の課題解決を支援
・地域金融機関と連携して地域の企業・住民・自治体等に金融機能を提供し、地域経済を活性化
環境・社会課題解決へ向けた金融機能提供
・顧客やパートナーが取り組む、環境・社会課題の解決を支援(サステナブルファイナンスなど)
・グループ内外の価値共創により商品・サービス・機能を提供し、顧客や社会が抱える課題を解決
顧客に信頼される金融サービスの提供
・顧客中心主義に根差した商品・サービス・機能を提供し、顧客と持続的な信頼関係を構築
・高度化・多様化する脅威からお客さまを防衛し、堅牢で安定的な金融インフラを提供
②.新型コロナウイルス感染症への対応
新型コロナウイルス感染症の流行収束後の世界にあっても、新生銀行グループが中期経営計画で示した方向性は変わらず、むしろさまざまな取り組みをより加速していく必要があると考えます。リスクに対するディフェンスとして、ステークホルダーすべての命を守ることを優先しつつ、同時に社会的インフラである金融機関としての責任を担い、顧客と社会に貢献します。
③.リスク管理、コーポレート・ガバナンスの強化と透明性の高い経営
当行は、グループ会社を含めた、「バーゼルⅢ」(銀行法に基づく自己資本比率規制で、当行は基礎的内部格付手法を採用)のスムーズな運用とリスク管理の高度化およびリスク・リターンの的確な把握を経営資源の最適な配分に活用する等、バランスのとれた業務運営により一層努めてまいります。バーゼルⅢに対しては、規制上は国内基準行ではありますが、国際統一基準も意識した運営を行っております。
また、当行ではリスク選好と財務計画の整合性を基礎とする経営管理フレームワークの考え方を整備しております。2020年度からは「リスク選好方針」を定めることによりグループのリスク選好を文書化するとともに、リスク文化、リスク選好に基づく適切な業務執行、リスク管理を基本的な要素として捉え、それらに関する基本的な考え方と基本方針を「グループリスクガバナンスポリシー」として定めております。
当行は、監査役会設置会社を選択しております。このガバナンス体制のもと、(ⅰ)経営の最高意思決定機関である取締役会が中期経営計画や年次計画等経営の基本方針をはじめとする会社の重要な業務執行を決定することで、当行の向かう大きな方向性を示すとともに、経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備などを実施し、(ⅱ)業務執行および取締役会から独立した監査役および監査役会が取締役会に対する監査機能を担うことで、適切な経営の意思決定と業務執行を実現するとともに、組織的に十分牽制の効くガバナンス体制を確立しております。
取締役会においては、一貫して社外取締役の監督機能を重視しており、SBIグループ傘下となり経営陣が交代した2022年2月8日以降においても日常の業務執行を担う社内取締役3名に対して、国内および海外での金融業、高齢者向け事業、ベンチャー経営、経営コンサルティング、及びリスク管理分野等について豊富な経験および高い専門知識を有した社外取締役4名を配置し、社外取締役が過半数を占める取締役会の構成をとっております。さらに、社外監査役2名を含め、合計6名を独立役員として東京証券取引所に届け出ております。かかる構成のもと、メンバーは、自由に発言し、活発な議論を行うことを通じて会社の方針を決定することにより、「コーポレートガバナンス・コード」が求めるグループの持続的な企業価値の向上や株主の皆さまやお客さまをはじめとする様々なステークホルダーの利益の確保に努めております。2019年3月には、取締役候補の指名および取締役の報酬の決定に係る取締役会機能の客観性と透明性の更なる向上を目的として、任意の「指名・報酬委員会」を設置しました。また、親会社グループとの間の利益相反取引について、少数株主の利益保護の観点から、より慎重な管理体制を構築するため、取締役会の諮問機関として「親法人取引諮問委員会」を2022年3月に設置し、事前の審査及び事後のモニタリングを行う仕組みを導入しました。さらに、取締役会の実効性について毎年評価・分析を行い、洗い出された課題に対する改善案を検討・実施することで、継続的な機能の向上を図っています。なお、2019年度より、コーポレートガバナンス・コードに関して、コーポレート・ガバナンス報告書における任意開示事項についても、その取組方針の全文開示を実施しています。当行の「コーポレートガバナンス・コードに関する取組方針」については、以下のリンク先をご参照ください。
https://www.shinseibank.com/corporate/policy/governance/pdf/governance_code_j.pdf
また、日常の業務執行の機動性を確保するため執行役員制度を導入するとともに、代表取締役社長による指揮のもと、取締役会から委任された執行役員がそれぞれ管掌する業務を効率的に遂行する体制を確保しております。さらに、取締役会の承認に基づき、業務執行取締役および執行役員(総括担当役員およびグループ本社の担当役員レベル)等からなる経営会議を設置し、迅速かつ効率的な業務運営を行っております。また、グループ会社に対する内部統制については、グループの経営全般に関する重要事項を決定する場として、主要なグループ会社の業務執行取締役なども参加するグループ経営会議およびグループ重要委員会を設置するとともに、グループ本社で遂行する各間接機能の統括責任者(担当役員)を任命し、権限集約を図り、グループ全体で最適かつ効率的な意思決定を行う体制を整えております。これにより、グループベースのリソース最適化及び意思決定の全体最適化の実現と、グループ本社を通じたより高度なグループガバナンスの実現を一層推進してまいります。
新生銀行グループは、「財務報告に係る内部統制の評価および監査の基準」(いわゆる“J-SOX”)への対応体制を確立し、内部統制システムの運用強化とともに、上場企業として、投資家の目線に立った適時、適切かつ透明性の高い情報開示に取り組んでおります。金融商品取引法等の規定に沿い、お客さま保護や適切な業務運営を念頭にコンプライアンス体制の強化による法令遵守の一層の徹底に引き続き努めてまいります。
中期経営計画の実行を支える経営インフラの整備のうち、システムの安定稼動に努めることは社会基盤の一端を担う金融機関として果たすべき当然の使命であり、重要な経営課題のひとつとして継続して取り組んでおります。また、深刻化・巧妙化するサイバー攻撃に対処するため、専担組織として「新生銀行グループC-SIRT(Computer Security Incident Response Team)」を設置し、2021年度より運用を開始しております。
④.経営健全化計画の達成
当行は、2022年6月に「経営の健全化のための計画」(以下「経営健全化計画」)を金融庁に提出いたしました。これは、2022年度から2024年度を対象期間とする中期経営計画「新生銀行グループの中期ビジョン」をもとにして策定した計画であります。
当行といたしましては、引き続き公的資金を受けている金融機関としての役割・期待を認識し、その社会的責任を全うするとともに、経営健全化計画の達成に向けて、全社員が一丸となって業務に取り組んでまいります。
今後とも、皆さまには、なお一層のご支援・ご指導を賜りますようお願い申しあげます。
(注記)④.については、子会社等を含まない記述となっております。
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