当行グループでは、事業を取り巻くリスク事象のうち、影響度や蓋然性の観点から重要度の高いリスクを「トップリスク」として特定し、管理を開始しました。「トップリスク」は統合的リスク管理の一環として取締役会にて選定し、具体的な対応策を設定、実施することで、可能な範囲でリスクを抑制するとともに、リスクが顕在化した際の機動的な対応が可能となるように態勢を整備しています。
2022年3月開催の取締役会にて選定した「トップリスク」は次の通りです。
・デジタル転換の遅れ
・営業地盤悪化による収益力低下
・与信費用の増加
・保有資産の価値下落
・大規模システム障害
・サイバー攻撃
・マネロン対策不備での処分
・不祥事件の発生
・大規模自然災害・感染症蔓延による業務停止
・気候変動(TCFD)・カーボンニュートラル対応
(注)上記は認識しているリスクの一部であり、上記以外のリスクによっても経営上、特に重大な悪影響が生ずる可能性があります。
これらを踏まえ、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要かつ重要なリスクは、以下のとおりです。
なお、以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当行グループ(当行及び連結子会社)が判断したものです。
1.信用リスク(不良債権問題等)
信用リスクとは、信用供与先の財務状況の悪化などにより、資産の価値が減少ないし消失し、当行が損失を被るリスクです。その主なリスク事象、当行決算等に与える影響と対応策は以下のとおりです。当該リスクが顕在化する可能性の程度※1は中程度を見込んでいます。なお、顕在化する時期についてはその想定が困難であり、記載していません。
リスク事象 |
影響 |
対応策 |
景気悪化、地域経済動向 悪化 |
・融資先の経営状況悪化により不良債権処理額・引当金※2が増加 |
・審査基準に従った厳正な審査、経営改善が必要なお客さまの支援、破綻先等の整理回収活動を通じた優良な貸出資産の積上げと損失の極小化。 |
震災・台風等の災害発生 |
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個別与信が特定の国・ 業種に集中 |
・社会情勢、経済状況の変化により、特定の国・業種において信用悪化が発生し、一時に大きな損失を被る可能性 |
・国別、業種別、格付別等の角度から VaR等の統一的尺度にて計量のうえ、ストレス・テスト等を実施。 ・与信上限額の設定などによりリスクをコントロール・削減。 |
地価下落 |
・担保権設定した不動産等について、想定金額で換金等ができず、不良債権処理額・引当金が増加 |
・不動産等の処分可能見込額を保守的に見積もるとともに、流動性・換価性を十分に検証のうえ担保取得することによるリスクの削減。 |
不動産流動性低下 |
※1.可能性の程度の目安
高…頻度:概ね1年に1回以上
中…頻度:概ね10年に1回以上 1年に1回未満
低…頻度:概ね10年に1回未満
※2.当行グループは貸出先の状況、債権の保全状況及び過去の一定期間における貸倒実績率等に基づき算定した予想損失額に対して貸倒引当金を計上しています。
2.市場関連リスク
市場関連リスクとは、金利、有価証券等の価格、為替等の変動により、保有する資産の価値が変動し当行が損失を被るリスクです。その主なリスク事象、当行決算等に与える影響と対応策は以下のとおりです。当該リスクが顕在化する可能性の程度は中程度を見込んでいます。なお、顕在化する時期についてはその想定が困難であり、記載していません。
リスク事象 |
影響 |
対応策 |
株価の下落 |
・保有有価証券に減損又は評価損が発生若しくは拡大し、当行の財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性 |
・有価証券投資などの市場性取引や預貸金といった商品ごとのVaR(想定最大損失額)に基づく市場リスク量に対し、限度額を設定。 ・市場リスク量を適切に管理することにより健全性を確保。 |
円高の進行 |
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金利の上昇 |
3.流動性リスク
流動性リスクとは、市場の混乱や当行の財務内容の悪化などにより必要な資金が確保できなくなり、資金繰りがつかなくなるリスクや、資金の確保に通常よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより当行が損失を被るリスクです。その主なリスク事象、当行決算等に与える影響と対応策は以下のとおりです。当該リスクが顕在化する可能性の程度は中程度を見込んでいます。なお、顕在化する時期についてはその想定が困難であり、記載していません。
リスク事象 |
影響 |
対応策 |
調達環境の悪化 |
・必要な資金が確保できず資金繰りが悪化する場合や通常の取引よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされる可能性 |
・金融危機などのストレス時の資金流出に見合う流動資産を保有。 ・市場調達額が過大とならないように一定の限度額を設定。 ・資金の調達と運用のミスマッチを抑制。 |
当行の信用状態悪化 |
4.オペレーショナル・リスク
オペレーショナル・リスクとは、業務の過程、役職員の活動もしくはシステムが不適切であること、または外生的事象により当行が損失を被るリスクです。その項目や主なリスク事象と可能性の程度、当行決算等に与える影響と対応策は以下のとおりです。なお、顕在化する時期についてはその想定が困難であり、記載していません。
項目 |
リスク事象 |
可能性 の程度 |
影響 |
対応策 |
事務リスク |
過失による一般的な事務事故の発生 |
高 |
・発生件数は多いが、1件あたりの損失額は数千円程度と小さい |
・業務管理の高度化、 業務監査体制の拡充。 |
預金誤払いや誤送金など資金移動に関連するもののうち、高額な事務事故の発生 |
低 |
・事務事故発生後の回復が困難な場合、資金移動相当額の損失発生 |
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システムリスク(サイバーリスクも含む) |
システムの全面停止 大量データの誤処理または滞留が発生したシステム障害 |
低 |
・お客さまにサービスが提供できない可能性 ・上記により、お客さまからの信頼低下を招く可能性 ・その結果、業績に悪影響が及ぶ可能性 |
・本質的原因の分析、 再発防止策を徹底。 ・基幹システムの二重化やデータの厳正な管理を実施。 ・コンピュータウイルス等不正プログラムの侵入防止対策の徹底。 ・大規模災害等不測の事態に備えたコンティンジェンシープランを整備。 |
多数のお客さまに影響を及ぼすシステム障害 |
中 |
|||
影響が特定のお客さまに限定されるシステム障害 |
高 |
|||
コンプライアンスリスク |
情報漏洩、不祥事件 |
中 |
・行政処分やステークホルダーからの損害賠償請求を受け、業務遂行や業績に悪影響を及ぼす可能性 |
・情報管理に関する規程・手続きを整備。 ・職員に対する教育研修の実施。 |
訴訟、ADR |
中 |
・行政処分やステークホルダーからの損害賠償請求を受け、業務遂行や業績に悪影響を及ぼす可能性 |
・教育研修等によりコンプライアンスを全ての業務の基本に置く姿勢を徹底。 |
|
マネー・ローンダリング及びテロ資金供与を目的とした金融機能の不正利用 |
低 |
・国内外の当局による行政処分やコルレス契約を解除されることにより、業務遂行や業績に極めて重大な悪影響を及ぼす可能性 |
・リスクベースの顧客管理。 ・不正な取引を検知する ITシステム等の活用。 ・職員に対する教育研修。 |
|
風評リスク |
評判悪化や風説の 流布 |
低 |
・信用力低下や預金の流出により、株価や業績に悪影響を及ぼす可能性 |
・風評が伝達される媒体に応じて定期的又は随時に風評のチェックを実施。 |
5.その他のリスク
上記1.~4.以外に認識している重要なリスク項目や主なリスク事象と可能性の程度、当行決算等に与える影響と対応策は以下のとおりです。なお、顕在化する時期についてはその想定が困難であり、記載していません。
項目 |
リスク事象 |
可能性 の程度 |
影響 |
対応策 |
規制緩和等による業務範囲の拡大に伴うリスク |
規制緩和等による 業務範囲の拡大 |
中 |
・業務範囲拡大への取組みが奏功しない可能性 |
・参入前における多面的な事業検証及び参入後の適切なモニタリング。 |
金融制度規制緩和等による競争激化 |
中 |
・業務遂行や業績等に悪影響を及ぼす可能性 |
・競合に対する差別化、 技術・サービス向上。 |
|
項目 |
リスク事象 |
可能性 の程度 |
影響 |
対応策 |
当行格付の 引き下げ |
信用力の低下 |
低 |
・資金調達コストの増加、 一部金融取引の実行不能 |
・確実なリスク管理、着実な自己資本積み上げによる財務体質強化。 |
規制水準への抵触 |
自己資本比率等※3の低下 |
低 |
・業務の全部又は一部の停止 |
|
年金債務の 増加 |
市場環境の変化に よる年金資産の 時価下落等 |
中 |
・追加の資金拠出、費用負担が発生する可能性 |
・法制度、当行の人事制度等を踏まえ、企業年金制度の見直しを随時検討、実施。 |
企業年金制度の 変更 |
低 |
|||
固定資産の 減損※4 |
使用目的の変更 |
中 |
・減損損失が発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性 |
・不採算店舗等の収益性向上等による減損発生の回避。 |
収益性の低下 |
低 |
|||
リスク管理 体制※5の不備 |
リスクの予測不足 |
低 |
・リスク管理体制が有効に機能しない可能性 |
・四半期毎にストレスシナリオ検討会議を実施。関連部を交え、リスクの蓋然性を検討し、早期警戒を実施。 |
※3.当行は、海外営業拠点を有していますので、連結自己資本比率及び単体自己資本比率は、「銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(2006年金融庁告示第19号)に定められる国際統一基準やその他諸規制水準を満たす必要があります。
※4.保有する固定資産については、「固定資産の減損に係る会計基準」(企業会計審議会)を適用しています。
※5.当行はリスク管理体制を整備し、内部監査部署がそれらの適切性及び有効性の検証を行うなど、リスク管理の強化に努めています。(体制図については、後述「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください)
6.特筆すべき事項
(1)新型コロナウイルス感染症拡大に関するリスク
外出自粛や物流の停滞等の影響を受ける融資先の経営状況悪化(信用リスク)、株式相場の悪化および金融市場の混乱(市場関連リスク)に加え、当行内での新型コロナウイルス感染症拡大による業務継続が困難になるリスク等が複合的に顕在化する可能性があります。
当行におきましては、融資先の事業継続に最大限の支援を行い、地域経済の安定化に寄与するとともに、信用リスク顕在化を抑制してまいります。また、マーケット部門において適切なポートフォリオ管理を行うことで、市場リスク顕在化を抑制いたします。業務継続につきましても、全店舗へのアルコール消毒液等の配備、窓口へのアクリルボードの設置のほか、ちばぎんアプリやインターネットバンキング、法人ポータルなどの非対面チャネルの利用促進、テレワークの促進による店頭や執務室内での「三つの密」の回避や、感染者発生時の対策を徹底・整備することでリスク軽減を図っています。
(2)気候変動に関するリスク
気候変動に伴う自然災害や異常気象の激甚化・増加等に伴い、当行の営業拠点が毀損し運営に支障をきたす可能性があるほか、お客さまの事業の停滞や当行担保資産の価値毀損による与信関係費用が増加する可能性があります。
また、脱炭素社会への移行に伴う政策や法規制、市場の変化等に伴うお客さまの業績悪化による与信関係費用の増加のほか、当行グループの気候変動に関する取組みや情報開示が不十分と見做されることにより企業価値が毀損し、当行グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当行グループでは、これらの気候変動リスクが当行決算等に影響を与えないよう、リスクの評価や管理、情報開示に向けた取組みを引き続き強化してまいります。
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