課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

①経営方針

当行は、「地域から親しまれ、信頼され、地域社会の発展に寄与する銀行」という経営理念に基づき、変わらぬ価値観である「職業倫理と高度の専門性を身につけるよう努めるとともに、真にお客様にとって必要とされる商品、サービスを提供し、お客様の最善の利益を追求する」という顧客本位の業務運営を目指します。

 

②経営環境

 2021年度の国内経済は、4月~9月期は全国的に「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」が発出され、旅行や外食などの個人消費が控えられたことから、全体として景気は弱い動きとなりました。10月~12 月期は9月末に「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」が全国的に一斉に解除されて人流が回復したことから、景気は持ち直しの動きがみられました。しかし、2022年1月~3月期は再び全国的に「まん延防止等重点措置」が発出されて人流が抑制されたことに加え、東南アジアからの半導体や部品などの供給不足の顕在化、中国経済の回復鈍化による輸出の減少などで、景気は再び弱い動きとなりました。

沖縄県経済は、基本的には全国と同様の動きとなり、4月~9月期は後退局面、10月~12月期は下げ止まり(底這い)局面へ移行、2022年1月~3月期は再び後退局面となりました。沖縄県では「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」に「飲食店の時短営業」まで加えた人流抑制期間が257日にも及び、産業構成比で製造業の割合が低く第三次産業の割合が高いことから、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を色濃く受けました。

 

③対処すべき課題

当行を取り巻く経営環境はマイナス金利政策の継続や異業種からの金融参入に加え、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う景気後退やウクライナ情勢をきっかけとした資源価格、物価の上昇によってインフレ加速の懸念が高まるなど、金融環境の先行き不透明感が増しており、厳しい環境が続いています。

一方で社会的環境に目を向けますと、新型コロナウイルスの感染症拡大を契機に人々の生活様式や非対面・非接触志向の拡大が急速に高まっていることに加え、気候変動の原因とされる温室効果ガスの削減を目的とした取り組みが世界的な潮流となっており、企業活動の中でも気候変動リスクへの対応の重要性が高まっています。これらの環境変化に伴い、デジタル化や脱炭素化への流れは今後さらに加速していくものと思われます。

このような環境下、当行が取り組むべきことは地域社会を下支えすることであり、地域の経済、社会、環境の維持・発展に寄与するため、地域社会やお客さまの課題解決に向けた以下の取り組みを積極的に進めてまいります。

(ア)地域経済再生への取り組み

沖縄県は新型コロナウイルスの感染症拡大により観光関連産業、飲食業を始めとする対面型サービス業を中心に甚大な影響を受けております。当行では銀行の社会的責任である地域社会の持続的な発展に向け、地域経済の再生を図るため、お客さまとのコミュニケーションを密にした上で業況把握の徹底に努め、資金繰り支援や長期借入金の一本化による金融支援の他、ウィズコロナ、アフターコロナを見据えた事業承継・M&A、販路拡大など適切な支援を実施してまいります。

(イ)りゅうぎんグループ間の連携強化

当行では従前からグループ会社間の連携を通じた事業領域の拡大、シナジー創出の実現に取り組んでまいりました。具体的にはリース媒介業務を中心とした株式会社琉球リースとの連携、カード業務を中心とした株式会社OCS、株式会社りゅうぎんディーシーとの連携により、お客さまの機材調達やキャッシュレス化への対応などの課題解決に貢献してまいりました。今後もお客さまの様々なニーズ、課題解決に対応するため、グループガバナンスの高度化を図り、グループ連携による金融分野・非金融分野でのソリューションの提供強化に努めてまいります。

 

(ウ)サステナビリティに関する取り組み

当行は気候変動への対応を経営上の重要課題として認識しております。今後、気候変動のリスクが事業・財務内容に与える影響を把握・分析し、気候変動リスクに関するガバナンス態勢の確立、脱炭素化への取り組み強化に努めてまいります。

また、地域金融機関には持続可能な地域社会の実現に向け、金融仲介機能の発揮等の本業以外に気候変動の環境問題など地域社会を取り巻くさまざまな課題解決に向けた支援強化が求められています。こうした状況に対応するため、当行ではお客さまのSDGs(脱炭素、健康経営等)への取組状況を診断し、課題解決に向けたサポートを通じて、お客さまの価値向上に貢献してまいります。

(エ)デジタル化の推進

デジタル庁発足など、政府におけるデジタルトランスフォーメーションの取り組みが進められています。当行ではこれまでにも業務のデジタル化を通じて生産性の向上を実現してまいりましたが、引き続き、行内のペーパレス化を推進し、デジタル技術を活用した与信管理やデータマーケティングなどの高度化を図ってまいります。

また、お客さまの非対面・非接触ニーズに対応した金融サービスのデジタル化を推進するとともに、お取引先企業のデジタル化やIT導入の支援を通じて業務効率化などのサポートを展開してまいります。

 

2021年度より複数の不祥事件が発覚し、株主の皆さま、お客さま、地域の皆さまに多大なご心配とご迷惑をおかけしましたことを改めて深くお詫び申し上げます。公共的な役割を担い、信用を第一とすべき金融機関としてこのような事態を招いたことについて、役職員一同深く反省し、コンプライアンスを経営の最重要課題として位置付け、全行を挙げて信頼の回復と再発防止に取り組んでまいります。

 

このような取り組みを通じて、今後も地域や地域のお客さまの多様なニーズにお応えする魅力ある商品、サービスを提供するとともに、地方公共団体とも連携を深め、持続可能な「まちづくり」への関与や地域社会の根本的な課題解決に向けた取り組みをより一層強化してまいります。

 

 

 

 

中期経営計画の4つの基本戦略

 

Ⅰ.構造改革

経営環境の変化に対応しつつ、新たな分野にチャレンジするため、筋肉質の財務体質への変革を図る

Ⅱ.考動改革

顧客本位の業務運営を徹底するため、研修態勢を充実させるとともに、役職員の意識を変え行動を変える

Ⅲ.IT投資戦略

デジタル技術を積極的に活用し多様化する顧客ニーズに対応するとともに、行員の働き方もサポート

その一方で、既存システム経費や維持更改費用の削減に取り組みメリハリのあるIT投資を実現する

Ⅳ.グループブランド戦略

グループ各社の商品・サービスをいつでも受けられる態勢とし、琉球銀行グループのブランド力および企業価値向上に努める

 

 

(2)目標とする経営指標

 

中期経営計画「SINKA2020」最終年度(2022年度)の目標

 

2022年度

① 親会社株主に帰属する当期純利益

55億円

② 連結ROE

4%以上

③ 顧客向けサービス利益(※1)

55億円

④ 単体自己資本比率(完全実施ベース)(※2)

8.5%以上

⑤ 単体コアOHR

79%以下

⑥ カード加盟店グループ総取扱高

880億円

⑦ 事業性評価シートによるソリューション提案

3,500件

 

※1 顧客向けサービス利益=預貸金収支+役務利益-経費

※2 完全実施ベースの自己資本比率は、土地再評価差額金の資本算入額をゼロとし、無形固定資産および前払年金費用等を資本調整額として全額計上するベース。

 

(注)目標とする経営指標に関する記述は、当行が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当行として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性がございます。

 

 

 

(3)環境問題に対する対応状況

①サステナビリティへの取り組み

琉球銀行は、「地域から親しまれ、信頼され、地域社会の発展に寄与する銀行」の経営理念のもと、地域社会の皆様と手を携え合いながら、地元発展のため企業活動を行っています。

当行の営業基盤である沖縄県は、四方を海に、また豊かな森林やそこで生息する動植物など、多種多様な自然 環境に恵まれ、観光業を中心に第三次産業を基盤とする経済圏を形成しています。

一方近年は、気候変動の影響を受け、沖縄県においても少なからず自然環境が破壊されています。2021年、IPCCにおける気候変動の自然科学的根拠を担当する第1作業部会(WG1)が公表した第6次評価報告書では「人間の影響が大気・海洋・陸域を温暖化させたことは疑う余地がない」と記載され、この気候変動は人為的な影響に基づくものだと断言されています。

私たち金融機関は、投融資を通じ様々な企業および個人の活動の原動力となっています。そこで、金融機関が 温暖化抑制・廃棄物削減など環境に配慮した健全な投融資活動を行えば、環境保全に大きく貢献できる一方、配慮しなければ環境破壊を助長することになると考えます。

環境破壊は、観光業やサービス業などの第三次産業はもちろん、建設業、不動産業、製造業、農業、金融機関 などにも波及し様々な企業や人々に多大な影響を及ぼします。これは、貧困など沖縄県が抱える社会的な問題の 悪化を助長する可能性があります。つまり、ここ沖縄県においては、環境破壊は環境問題だけでなく社会的な問題に深刻に繋がっていくということです。

そこで私たち琉球銀行は、“地球環境の負担軽減・再生”、“地域社会の発展、県民のより豊かな生活への貢献”を目標とし、地元の様々な企業や人々と協力しながら、環境と社会という密接に関連する2つの課題解決に果敢に挑戦してまいります。

 

②TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示

ア.ガバナンス

(ア)サステナビリティ委員会

サステナビリティ委員会は、ESG対策等に関する方針・計画・成果指標の設定および取組状況を確認し協議  する機関として2021年10月に設立しました。

同委員会は、頭取を委員長、総合企画部担当役員を副委員長、委員に関係各部の部長を任じ、ESG対策等の 諸課題について四半期に1回議論され、取締役会への報告が定期的に行われています。

また、当行グループのシンクタンクである株式会社りゅうぎん総合研究所がオブザーバーとして毎回参加  しており、県内・国内を取り巻く環境問題について幅広く情報提供が行われています。

(イ)サステナビリティ小委員会

サステナビリティ委員会に諮問する前に、現状の取り組み状況を月1回議論するため、2021年11月にサステナビリティ小委員会を設置しました。

同委員会では、当行融資の約6割は、戸建て住宅、マンション、アパート向けの住宅関連であることから、ゼロエネルギー住宅(ZEH)、ゼロエネルギービルディング(ZEB)や建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)に合致する建築物向けの積極的な融資推進施策や、省エネ建築、設備事業者との連携強化による県内におけるZEB・ZEH推進施策などを議論しています。

 


 

イ.戦略

(ア)重要課題の関係整理

“環境保全”と“地域社会の発展・県民の豊かな生活”は相互に依存するものと想定しています。自然環境の破壊は沖縄県の主力産業に多大な影響を及ぼし、結果として貧困・低賃金などを助長する可能性があります。一方、生産性が低ければ十分な環境保全は望めないと考えられます。

琉球銀行は、環境・社会への影響を十分踏まえ投融資活動を行います。また、これまでにない金融サービスを提供し、地域社会の仕事をこなす力を底上げし、様々な社会的課題の解決を目指します。

実現に向けての要は、人財であり、高度なガバナンス機能です。誰もが平等に安心して働くことができる 環境、持続可能な資源利用、積極的な地域社会との関わり、安全な金融商品の提供やリスクマネジメントの徹底が不可欠と考えます。

 


 

 

ウ.リスク管理

(ア)気候変動に関するシナリオ分析

a.物理的リスク

沖縄県は北西太平洋や南シナ海で発生した台風が接近するため風水被害が多い土地です。また、河川は 他都道府県と比較し、流路延長が短く降雨は海へ直接流出するという特徴があるほか、流域面積が小さく、貯水能力が小さいことから洪水リスクが存在します。

よって、台風・豪雨等の風水害による当行不動産(建物)担保の担保価値影響額および当行各営業店に おける設備等への被害額を分析の対象としました。

ハザードマップ情報、治水経済調査マニュアルのデータや2℃シナリオ・4℃シナリオに基づく将来的な台風による被災状況に関する試算等を踏まえ、2050年までの物理リスクの分析を行いました。

シナリオ

IPCCのRCP2.6シナリオ(2℃シナリオ)およびRCP8.5シナリオ(4℃シナリオ)

データ

当行担保物件および台風被害情報、ハザードマップ、治水経済調査マニュアル 他

分析対象

台風・豪雨等の風水害による当行不動産(建物)担保の担保価値影響額および当行支店における設備等への被害額

分析期間

2050年まで

リスク量

与信関係費用における追加信用コスト:約4億円
支店における設備等への被害額(累積):約5億円~約11億円

 

 

b.移行リスク

沖縄県は亜熱帯海洋性気候の下、美しいサンゴ礁が発達した青い海と多様な野生生物が生息・生育する緑豊かな160の島々から構成され、国内有数の観光リゾート地であり観光産業を基幹産業としていることも考慮したほか、TCFDにて推奨するセクター等を対象に定性的な分析を行った結果、最も移行リスクの高いセクターとして「電気・ガス・水道」セクターおよび「飲食・宿泊」セクターを特定しました。

「電気・ガス・水道」セクターは、炭素税導入によるコスト増、エネルギー転換による大幅なビジネスモデルの転換や設備投資が急務であり移行リスクが大きいと考えられること、「飲食・宿泊」セクターは、航空機での移動制限、それに伴う観光客数の減少などを想定しました。

シナリオ

IEAの「ネットゼロ排出シナリオ」

データ

当行の与信コストデータ、マクロ経済指標、IEAの持続可能な開発シナリオ情報

分析対象

「電気・ガス・水道」セクター、および「飲食・宿泊」セクター

分析期間

2050年まで

リスク量

与信関係費用の増加分:最大で約51億円

 

 

c.移行リスク関連資産割合

(a)全体の融資量に占める炭素関連融資割合(「電力・ガス・水道」セクター)

当行の融資量残高に占める炭素関連資産の割合は約0.3%です。

(b)全体融資量に占める移行リスク関連融資割合(移行リスク分析対象セクター)

当行の融資量残高に占める移行リスク関連融資割合は約3.5%です。

 

d.組織におけるリスクの特定・管理方法等

当行では適切に気候関連リスクを含む各種リスクを管理するため、取締役会の定めた「融資運用方針」や「信用リスク管理方針」に基づく債務者の支援スキームを策定しています。

気候関連リスクは、銀行経営全般に影響を及ぼす可能性があり、そのリスクが顕在化した場合、信用リスク、市場関連リスク、オペレーションリスク等といった各リスク・カテゴリーに波及するという特徴を持っています。当行取締役会は、気候関連リスクのこのような特徴を踏まえ、「信用リスク管理方針」に基づき適切なリスク管理態勢を整備しています。

気候変動に関連する物理的リスクや移行リスクに関する定性的および定量的な分析結果を踏まえ、当行取引先の事業活動に及ぼす信用リスクや当行拠点にかかるオペレーショナル・リスクを中心に総合的な管理を実施していきます。

 

 

エ.指標と目標

(ア)琉球銀行におけるScope1・2 GHG(温室効果ガス)排出量と削減目標

a.Scope1・2 GHG排出量

温暖化をめぐる世界的な動向では2016年にパリ協定が発効され、世界共通の長期目標として、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く抑え、1.5℃までに制限する努力を追求すること等が掲げられました。

政府はそれを受け、「地球温暖化対策計画」が策定され、2020年10年には「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2021年4月には2030年度46%削減目標を表明したうえ、2021年10月に新たな削減目標を踏まえる形で「地球温暖化対策計画」が改定されています。

当行では積極的に営業店照明のLED化や老朽化空調機を効率化空調機へ更新したこと、ブランチインブランチ(店舗内店舗)等の施策を展開したことにより、Scope1・2の2021年度CO2排出量は2013年度比約37.1%削減となりました。また、2021年11月に導入した沖縄電力が提供する非化石証書を用いた再生可能エネルギー由来の電力「うちなーCO2フリーメニュー」を控除した場合には2013年度比約42.9%削減となりました。

b.削減目標

Scope1・2のGHG排出量を2030年度までに2013年度比60%削減します。

 


 

(イ)琉球銀行におけるScope3 GHG(温室効果ガス)排出量

a.Scope3 GHG排出量

全国と沖縄県の部門別二酸化炭素排出量(2018(平成30)年度)の排出構成を比較すると、沖縄県の産業構造が全国と比べて製造業の割合が小さいという特徴から、産業部門が全国では35%を占めているのに対し、沖縄県では12%となっています。

一方、沖縄県では民生部門(民生家庭部門、民生業務部門)が45%と、全国(32%)と比べて高い割合を占めており、家庭から排出される二酸化炭素を抑制することで、ある一定の排出量抑制が期待できます。

よって当行では、Scope3のカテゴリー15「投融資の運用に関連する排出量」を算出するにあたり、民生部門である「住宅ローン」や「アパートローン等」の個人向け貸出しに絞り、PCAF(※1)基準の計算方法を基に住宅1棟あたりのCO2排出量を各二酸化炭素排出係数を用い、みなし測定し算出しました。

今後は、当行においてゼロエネルギー住宅(ZEH)、ゼロエネルギービルディング(ZEB)や建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)に合致する建築物向けの融資推進施策を展開し、沖縄県全体のGHG排出量削減に積極的に取り組みます。

b.削減目標

カテゴリ15「投融資」におけるGHG排出量は、金融機関において重要であると認識しています。この計測および削減に向けた目標設定はチャレンジングな課題と考えており、引き続きサステナビリティ委員会で検討や議論を深めたうえで削減目標を開示していきます。

 



 

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