課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループでは、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により世界各国で経済環境が急変し、産業構造が大きく変動している中にあって、事業の収益性の今後の見通しについて、抜本的な見直しが求められているとの認識の下、既存の事業ポートフォリオの価値や将来性を徹底的に見直し、株主価値の最大化を目指した事業展開を図っていくことを今後の主要な課題としております。

今後も更なる経営基盤強化と持続的な成長を図るため、その実現に向けた取組みを行ってまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2022年3月30日)において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

「既成概念にとらわれないファイナンシャルサービスを提供する企業体を目指す」のビジョンのもと、景気動向に業績が左右されない銀行業、債権買取回収事業を中核とする総合金融サービスを目指してまいります。収益モデルにつきましては、既存の事業ポートフォリオの価値や将来性を徹底的に見直すことにより収益構造の改善を図ってまいります。今後はこの方針をさらに加速させ、聖域を設けることなく、事業ポートフォリオの価値を見直し、新たな成長戦略を構築することにより、株主価値の最大化に努めてまいります。さらには、コンプライアンスやガバナンスを第一に考えた経営を機軸におき、お客様に付加価値の高い金融サービスを提供するなど地域とともに共存共栄で発展していく企業体を目指してまいります。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題

(日本金融事業)

信用保証業務では、既存の債務保証残高からの安定的な保証料収入をベースとして、アパートローン保証を中心とした収益構造から、不動産担保ローンやリバースモーゲージ型商品に対する保証事業、クラウドファンディングを活用した保証事業等へと軸足を移すべく、新商品の開発(多角化)を推進しております。不動産業界で以前問題となったアパートローンの保証につきましては、2021年12月末で154,713百万円(前年同期比0.2%減)と一定の残高を維持しており、今後も保証料収入は安定的に計上される予定です。また、入居率は問題以前とほぼ変わらず、現在まで保証履行も延滞もほとんど無い状態で推移しております。日本金融事業における主要な課題、対策は以下のとおりです。

 

項目

課題

対策

不動産担保ローンに対する保証事業

海外不動産に対する保証では、新型コロナウイルス感染症による海外渡航制限などにより低調に推移

不動産担保ローンに対する資金需要は旺盛であり、重点施策として不動産関連の保証事業に注力。2021年12月に京阪電鉄不動産株式会社と新たに不動産担保ローンに対する保証を開始するなど、国内において債務保証残高の増加に努める

リバースモーゲージ型商品に対する保証事業

・提携金融機関の拡大

・高齢者のお客様の資金需要に対応した商品設計

老後の安定した生活の困難さが社会問題化するなどリバースモーゲージの潜在的需要の高まりにつれて、着実な増加を見込む

クラウドファンディングを活用した保証事業

・大手が参入しないニッチな分野をターゲットとして、クラウドファンディング(不動産特定共同事業法に基づくものも含む)等を活用した保証事業について、積極的に参入を検討

・クラウドファンディング業者との連携強化

現在、クラウドファンディング業者8社(注)と提携し、株式会社日本保証(以下、「日本保証」という。)の債務保証を組み込んだファンドの共同組成に取り組んでいる。融資型クラウドファンディングにおける債務保証や、不動産投資型クラウドファンディングにおける不動産買取保証などの取扱高が2021年12月時点で50億円を達成するなど順調に増加しており、今後も収益基盤の強化に努める

 

(注)

提携先グループ

金融2種免許認可会社又は

不動産特定共同事業認可会社

ファンド名

SAMURAI FINANCIAL HOLDINGS株式会社

SAMURAI証券株式会社

SAMURAI FUND(融資型)

株式会社CAMPFIREグループ

株式会社CAMPFIRE SOCIAL CAPITAL

CAMPFIRE Owners(融資型)

株式会社財全グループ

ソーシャルバンクZAIZEN株式会社

Pocket Funding(融資型)

株式会社ZUU

(東証マザーズ:4387)

株式会社COOL及び

株式会社COOL SERVICES

cool(融資型)

株式会社ミライノベート

(旧 株式会社プロスペクト)

(東証2部:3528)

株式会社グローベルス

大家.com(不動産投資型)

株式会社イーダブルジー

TOMOTAQU(不動産投資型)

ONE DROP INVESTMENT株式会社

FUNDROP(不動産投資型)

株式会社プレサンスコーポ

レーション

(東証1部:3254)

株式会社プレサンスリアルタ

プレファン(不動産投資型)

 

また、日本ファンディング株式会社が販売するIoTを標準搭載した賃貸物件(ROBOT HOUSE)の銀行取引顧客へのマッチングや購入者に対して日本保証が行うローン保証についての金融機関との提携交渉、不動産特定共同事業法(以下、「不特法」という。)に基づく事業を行っている不動産事業者への不特法事業用システムの販売や買取保証交渉等も進めてまいります。

さらに、債権回収業務では、全体の市場規模が縮小する中、債権購入価格の高騰が続いておりますが、金融機関等が実施するバルクセールにおいては、当社の過去の回収実績等により、高い利益率が見込まれるため、積極的に買取を進めてまいります。また、特に大型のカード債権は利益率が高く収益貢献に大きく寄与することから、今後も当社グループの高い回収力を背景として安定的・継続的な仕入れを実現し事業拡大を図ってまいります。

当社は2022年2月9日開催の取締役会において、HSホールディングス株式会社(旧 澤田ホールディングス株式会社、以下、「HSホールディングス」という。)の子会社であるエイチ・エス証券株式会社(以下、「エイチ・エス証券」という。)の発行済株式の全てを取得し子会社化するとともに、金融商品取引法に基づく金融商品取引業を開始することを決議し、HSホールディングスと株式譲渡契約を締結いたしました。今後、エイチ・エス証券が有する機能や顧客層での強みを生かしつつ、投資銀行部門、IPO審査業務の強化を図ってまいります。また、証券会社のツールを取得したことにより、地域金融機関と連携した当社グループの保証事業や海外金融事業とのシナジー効果が発揮され、新たな商品の提供やサービスの拡充を通じて、より一層の事業拡大が図れるものと期待しております。さらに、ベンチャー起業層のニーズに応えられるプライベートバンキング事業への進出も検討してまいります。

 

(韓国及びモンゴル金融事業)

韓国においては、総合金融サービスを展開する上でのインフラが整っており、JT貯蓄銀行株式会社、TA資産管理貸付株式会社における安定的な収益計上が見込まれております。当社は2022年1月12日開催の取締役会において、当社を株式交換完全親会社、Nexus Bank株式会社(以下、「Nexus Bank」という。)を株式交換完全子会社とする株式交換を実施することにつき決議し、Nexus Bankと株式交換契約を締結したことにより、JT親愛貯蓄銀行株式会社が連結子会社となり、更なる安定基盤の構築が見込まれることとなりました。また、韓国においては、直近では法定最高金利が2021年7月7日より24.0%から20.0%に引き下げられるなど毎年のように金融規制の変更が繰り返されておりますが、従前より影響を極力回避できるよう、柔軟に対応しております。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響も長引いておりますが、特段の影響は受けておりません。

このような中で、韓国各社は、翌連結会計年度につきましても、引き続き目標として緩やかな成長をかかげ「量の成長」から「質の成長」を目指し、バランスの取れたRisk-Returnを目標に一定の資産規模を維持し、資産内容の質的な向上を追求してまいります。法定最高金利の引き下げや家計貸付の総量規制等金融規制が強化される中、貸付資産の収益性を改善するためには、資産健全性の強化(質の改善)が最も重要であり、これに向けて個人信用貸付の貸付審査システムの高度化及び延滞率改善、企業向け貸付の強化を最重要課題として認識し実行してまいります。一方で、量的成長も重要な課題と認識しており、営業力を最大限拡大し資本(BIS比率)の許す範囲で持続的な収益創出を行っていく予定です。また、Fintechを活用した審査システムを導入し、個人信用貸付の審査時間と費用を削減、継続的な審査基準のアップデートを行ってまいります。さらに債権回収システムの強化にも努め、人員拡充や教育など量的拡大はもちろん、事前モニタリングや法的措置など能動的な債権回収活動を職員各人に意識付けてまいります。

債権回収事業におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年2月以降に延滞発生した債権は売却禁止となっておりましたが、現在も引き続き売却制限が継続中であります。これまで定期的に実施されていた債権売却は、より延滞状況が進んだ債権に限定され供給の絶対値が減少しているため、競争が激化し価格が高騰しております。今後、新たな債権の購入のタイミングが重要となっており、これまでに培った高い回収力と遵法性を背景に事業拡大を図ってまいります。

 

(東南アジア金融事業)

東南アジア金融事業においては、新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動等の停滞にやや回復の兆しがあり、新型コロナ対策の活動制限が徐々に緩和されたことで、内需を中心に経済活動が回復し、人流も戻りつつあります。インドネシア中央統計局の発表によると、2021年通年の国内総生産(GDP)成長率は、活動制限の緩和を受けて経済回復が進んだことにより、物価変動を除いた実質で、2020年のマイナス2.07%からプラス回復し、前年比3.69%で推移したとしております。このような中、PT Bank JTrust Indonesia Tbk.(以下、「Jトラスト銀行インドネシア」という。)及びJ Trust Royal Bank Plc.(以下、「Jトラストロイヤル銀行」という。)では、コロナ禍にもかかわらず、積極的な残高増強策により貸出金残高が増加しており、また、各種キャンペーンの効果により預金残高も増加し、流動性が改善され、COF(調達金利)も低下しております。Jトラスト銀行インドネシアにつきましては、長く営業損失が続いておりましたが、業績も上向きで年々赤字幅を縮小しており、今後は収益の柱の一つになるものと期待しております。東南アジア金融事業における主要な課題、対策は以下のとおりです。

 

項目

課題

対策

貸付債権の

積み上げ

収益基盤の強化

貸出増強に向けたミーティングをビジネス部門と日次実施し、ビジネス/審査部門の連携強化により体制を見直し、不良債権リスク低減を図りつつ積極的にローン残高、社債残高の積み上げを図る

自己資本の拡充

規制改正に伴い、インドネシア金融庁(OJK)が自己資本比率14.0%の達成を要請

Jトラスト銀行インドネシアへの資本注入により、2021年12月末の自己資本比率は15.6%となり、現状クリア。今後もOJKの要請に柔軟な対応が必要

マーケティング活動、流動性の確保

・債権の積み上げに対応する安定的な資金の確保

・新型コロナウイルス感染症の影響による想定外の流動性の不足への対応

・収益改善策としてCOF(調達金利)の低下

・TikTok等を利用した各種キャンペーンやイベント開催による新規顧客獲得、高金利預金の継続時金利引き下げ、その他個人向けモバイルバンキングシステムの稼働等により流動性を改善し、COF(調達金利)の低下を図る

・飯田グループホールディングス株式会社傘下のインドネシア子会社との住宅ローン業務提携を展開していく予定であり、今後の収益拡大に期待

 

また、PT JTRUST INVESTMENTS INDONESIAでは、他の金融機関から買取りを行った不良債権について、回収人員や法的回収人員の増員、法的回収の強化等による回収金額の最大化を図っておりますが、新型コロナウイルス感染症の影響の下、債権回収がやや低調に推移しております。今後、この状況が改善し、債権の買取がさらに増加するにつれて、不動産売却市場の活性化が図られ債権回収も増加し好転していくものと考えております。さらにPT JTRUST OLYMPINDO MULTI FINANCEでも、新規貸付の抑制により利息収益が大幅に減少している他、債権の不良化により貸倒費用が増加するなど厳しい状況が続いておりますが、コストを徹底的に下げて赤字幅を縮小し、債権回収の強化等による収益改善や、農機具等のローンの融資への特化を検討する等努めてまいります。

カンボジアにおいて、新型コロナウイルス感染症の影響は比較的小さく、カンボジア国立銀行(NBC)からの返済猶予等条件緩和の要請も現在終了しております。カンボジアの資金需要は堅調であり、Jトラストロイヤル銀行につきましては、預金残高の増加にあわせて貸出金残高もビジネスバンキング部門を中心に堅調に推移しており、既に成長モードに移行しているものと認識しております。今後も、業容拡大方針を維持し、COF(調達金利)を意識した金利の設定・管理や、低金利預金の獲得強化、新規顧客層の開拓強化、大企業取引との取引拡大、富裕層向け商品や各種普通預金商品のラインアップの充実、モバイルアプリ、ネットバンキングのサービス拡充等を通じて安定収益の確保を目指してまいります。

(投資事業)

投資事業においては、Group Lease PCL(以下、「GL」という。)に対する債権回収に努めてまいります。今後も裁判費用等の回収コストを抑制しつつ、回収強化を図ってまいります。なお、GLに対する債権につきましては、すでに全額引当を行っていることから、回収がなされる都度収益計上されます。

 

当社グループは、当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により世界各国で経済環境が急変し、産業構造が大きく変動している中にあって、事業ポートフォリオについて、抜本的な見直しが求められているとの認識の下、コロナ後をも見据えて、積極的に事業基盤の強化や持続的な成長の実現に向けた取り組みを行ってまいりましたが、事業ポートフォリオの再構築は翌連結会計年度で一定の目途がつき、以降はグループが大きく成長していくフェーズに入ると捉えております。そのような中でも、手元流動性、事業基盤の強化及び持続的な成長の実現等について、様々な選択肢の中から最適な成長戦略を検討してまいりたいと考えております。

 

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