文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
①連結経営成績の状況
当社は、中期経営計画(2021年度~2025年度)の基本方針を「第二の創業 バリューチェーンの革新とネットワークの創造」と定め、グループの成長に向けた改革を進めております。初年度となる2021年度において、国内では、イオングループのID共通化に向けた投資及び基盤整備を進めるとともに、キャッシュレス化の推進や保険商品等の新規サービスの導入に取り組みました。海外では、各種商品の申込みからご利用までをスマートフォンで完結するためのアプリ開発や、与信・債権管理の高度化を通じ、デジタル金融包摂の進展に取り組みました。加えて、当社グループのサステナビリティ経営を推進する上でのガイドラインとなる、「サステナビリティ基本方針」を制定しました。当社グループは、「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」というイオンの基本理念のもと、絶えず革新し続ける企業集団として、「持続可能な社会の実現」と「グループの成長」の両立を目指してまいります。
当期は展開国・地域において、新型コロナウイルス感染症による厳しい経済状況は下期に入り徐々に改善されましたが、2021年末からのオミクロン株の流行により再び経済回復の不透明感が高まりました。このような状況のなか、グループを挙げての徹底した感染対策に取り組みながらも、オンラインサービスの拡充やグループ共通ポイントを活用したイオン生活圏の構築、国内でのコード決済や生命保険元受事業の開始など、中長期的な成長に向けた取り組みを進めました。また、お客さまの消費動向の変化に対応した販促施策の実施のほか、潜在需要や返済状況の分析をもとにご利用枠を柔軟に見直すこと等により、各種取扱高の拡大を図り、特に国内カードショッピング取扱高についてはコロナ禍以前の水準を上回り過去最高となりました。しかしながら、国内におけるカードキャッシングや個品割賦を中心とする営業債権残高の回復が鈍かったことを主因とし、連結営業収益は4,706億57百万円(前期比3.4%減)となりました。一方で、前年度から継続して審査の精緻化や債権回収体制の強化に努め、貸倒関連費用が大幅に改善したことや、デジタル化を通じて販管費の抑制に努めたことで、連結営業利益は588億52百万円(前期比44.8%増)、連結経常利益は599億44百万円(前期比49.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は302億12百万円(前期比70.8%増)と大きく改善しました。
なお、中期経営計画<2021年度~2025年度>においては営業収益、営業利益、営業利益率(国内:国際)を経営指標と定めており、上記取り組みに係る2021年度実績数値は、以下のとおりです。
経営指標 |
実績数値(2021年度) |
目標数値(2025年度) |
営業収益 |
4,706億円 |
7,600億円 |
営業利益 |
588億円 |
1,000億円 |
営業利益比率(国内:国際)※ |
国内:45%、国際:55% |
国内:40%、国際:60% |
※本社・機能会社を除く、国内及び国際の単純合算数値より算出
②セグメントの状況
国内リテール事業は、カードショッピング収益や、住宅ローンを中心とする貸出金利息収益が増加した一方で、保険収益やカードキャッシング収益の減少などにより、営業収益2,135億78百万円(前年同期比7.2%減)、一方、営業利益は、保険費用や貸倒関連費用、預金利息の減少などにより、80億90百万円(同74.0%増)となりました。
国内ソリューション事業は、ショッピング収益や個品割賦収益が前期並となったことに加え、キャッシング収益等の融資収益が減少し、営業収益1,788億47百万円(前年同期比2.1%減)、一方、営業利益は、貸倒関連費用の改善のほか、主要提携カードご利用明細の完全Web化(2020年11月)に伴う郵送費や印刷費の削減、広告宣伝費の抑制等により、178億36百万円(同7.3%増)となりました。
中華圏のセグメント業績については、カードショッピングやキャッシング取扱高の増加などにより、営業収益157億43百万円(前年同期比1.1%増)、営業利益は、安定した債権管理が大きく寄与し、貸倒関連費用を大幅に抑制できたことで55億30百万円(同21.7%増)となりました。
メコン圏のセグメント業績については、2020年8月に適用となったタイ政府による上限金利の引下げや、カードキャッシングと個人ローン債権の平均残高の減少等により、営業収益724億16百万円(前年同期比2.0%減)、一方で、審査や債権回収の精緻化による貸倒関連費用に改善や金融費用、販売促進費の減少等により、営業利益は152億98百万円(同42.9%増)となりました。
マレー圏のセグメント業績については、カードショッピングや個品割賦、個人ローンの収益回復により、営業収益499億80百万円(前年同期比4.8%増)、審査の精緻化や債権回収体制の強化等が奏功し、継続的な営業債権の良質化が図られ貸倒関連費用が改善したことから、営業利益は129億77百万円(同210.6%増)となりました。
(2)財政状態の状況
資産の部、負債の部、純資産の部における主な増減内容は次のとおりであります。
(資産の部)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末より1,548億64百万円増加し、6兆2,785億86百万円となりました。これは住宅ローンの取扱高が伸びたことにより、銀行業における貸出金が1,116億30百万円増加したこと、及びカードショッピング取扱高が伸びたことにより、割賦売掛金が451億35百万円増加したこと、及び営業債権の良質化により貸倒引当金が87億82百万円減少した一方で、新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の停滞により、カードキャッシングを中心に営業貸付金が103億12百万円減少したこと等によるものです。
(負債の部)
負債合計額は、前連結会計年度末より1,204億77百万円増加し、5兆7,695億30百万円となりました。これは資金決済口座としての利用拡大により、預金が1,598億78百万円増加した一方で、第3四半期連結会計期間の制度変更に伴い、ポイントの発行主体が変更になったことから、ポイント引当金が135億56百万円減少したこと、及び既存保険契約の満了により、保険契約準備金が222億71百万円減少したこと等によるものです。
(純資産の部)
純資産合計額は、前連結会計年度末より343億87百万円増加し、5,090億55百万円となりました。これは利益剰余金が配当金の支払いにより90億64百万円減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により302億12百万円増加したこと、及び為替換算調整勘定が51億86百万円増加したこと等によるものです。
(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析
①キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローについては、資金決済口座としての利用拡大により預金が増えた一方で、カードショッピング取扱高が伸びたことで割賦売掛金が増加したこと等により、前連結会計年度に比べ140億4百万円増加し、762億87百万円の収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローについては、有価証券の売却・償還による収入が有価証券の取得による支出を上回ったこと等により、前連結会計年度に比べ609億94百万円増加した結果、335億62百万円の支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローについては、配当金の支払額が減少したこと等により、前連結会計年度に比べ8億45百万円支出が減少し、135億8百万円の支出となりました。
以上の結果により現金及び現金同等物は308億90百万円増加し、6,976億28百万円となりました。
②資金需要
当社グループの資金活動における運転資金需要の主なものは、個人向けの金融サービスの提供に係る、お客さま利便性向上のためのシステム、IT、デジタル化投資や個人向け貸出金等であります。
③財務政策と資金調達
当社は業容拡大と効率化に向けた投資と株主の皆さまに対する株主還元に関して適正な利益配分のため、内部留保、投資資金、配当金をそれぞれ三分の一ずつ配分する旨を基本的な考え方としてまいりました。今後もこの考え方に則りながら、業容拡大のための戦略や社会環境の変化によって柔軟に対応してまいります。
資金調達においては、円滑な事業運営のための流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を調達の基本方針としております。当社からの貸付による子会社資金調達の一元化や、調達期間の長期化、調達手法の多様化等により、手元流動性と財務安定性を確保することに注力しています。
国内各社は当社の信用力を活かした直接調達へシフトする一方、間接調達の空き枠は今後の事業拡大に備え、海外子会社へ振り分けます。コマーシャル・ペーパーによる調達は連結借入総額の10%程度とし、資金調達の直接間接比率は50%:50%、長期短期比率は65%:35%のバランスを目指します。さらに資産の信用力を活かした債権流動化による資金調達も実施し、調達の多様化に加え、資産効率性の向上を図ります。
また当社グループは国内2社の格付機関から格付を取得しており、本報告書提出時点において、日本格付研究所の格付はA(安定的)、格付投資情報センターの格付はAマイナス(安定的)となっております。また主要な金融機関とは良好な関係を維持していることから、引き続き、業容拡大や投資、運転資金の調達に対して安定的な外部資金調達が可能であると認識しております。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(5)社会貢献、環境保全活動
当社グループは、社会の持続的発展があってこそ事業を展開できることを自覚し、環境保全活動や社会貢献活動に取り組んでいます。また、当社グループの事業が、国内外を問わず、社会に欠くべかざるインフラの一つとして位置づけられるものとなるべく、サステナビリティ経営の推進により経済価値と社会価値の両立を目指しています。
サステナビリティ経営の推進に当たっては、当連結会計年度において、従来のCSR委員会を再編し、サステナビリティ委員会に改称するとともに、サステナビリティの取り組みを経営戦略へ統合するべく、その位置づけと機能・役割の見直しを行いました。
こうした取り組みの具現化を図るべく、当社グループは2021年11月、ステークホルダーにとっての重要度と当社グループにおける重要度の双方について分析を行い、中長期的に当社事業へ影響を及ぼす可能性のある重要な社会課題(マテリアリティ)を特定しました。また、サステナビリティ経営を実践する上での行動のガイドラインとして「AFSサステナビリティ基本方針」を制定し、事業を通じたマテリアリティの解決を推進しています。特に、「革新的な金融サービスを通じた幸せの追求」や「人材の多様性と可能性の発揮」、「レジリエントな経営基盤の確立」、「気候変動等への対応」を経営の重要課題に位置づけ、グループ各社が主体的に事業戦略へ統合を進めています。中でも「気候変動等への対応」については、イオングループの「脱炭素ビジョン」に則り、2040年を目途に、店舗で排出するCO2をネットゼロとする取り組みを推進しています。また、2021年11月、脱炭素社会の構築に向けた「リスクと機会」に関する情報開示フレームワーク「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:「TCFD」)に賛同を表明し、この枠組みに沿った温室効果ガス(GHG)排出量を把握するとともに、気候変動シナリオ分析を実施するなど、取り組みの進化と情報開示の充実を進めてまいります。
さらに、当社グループは持続可能な社会の実現に向け、SDGs(持続可能な開発目標)等の国際目標に則した活動の一環として、高校生や大学生、専門学校生等、学生を対象とした金融教育に継続して取り組みました。
東日本大震災復興支援については、現地でのボランティア活動等を通して、地元の方々との交流を深めてまいりました。当連結会計年度においては、「イオン心をつなぐプロジェクト」の活動の一環としてオンライン注文可能な東北被災地産品の購入による支援活動「心をつなぐお買いもの」を2021年3月から5月、同年10月から2022年1月までの延べ約5ヵ月間に亘り実施し、多くの役員及び従業員が参加しました。
海外子会社においても、香港、タイ、マレーシアの上場3社を中心に、各国における社会貢献活動に継続して取り組んでいます。タイの現地法人ATSでは、イオン・タイ財団を通じて、病院や医療従事者等へ酸素療法装置や個人防護服等の物資の提供による医療提供体制の支援を行いました。マレーシアの現地法人ACSMにおいても病院へ食品や飲料水等の支援物資の寄付を行っています。
また、当社グループは常にお客さま満足を追求し、継続的な事業成長を確実なものとするために一人ひとりの従業員が、「心身ともに健康で、活力に満ちた存在であること」が重要であると考え、グループをあげて健康経営の推進に努めております。この度、当社子会社であるイオンクレジットサービス株式会社は、経済産業省と日本健康会議が2016年より共同で開始した、優良な健康経営を実践している法人を認定する制度である、「健康経営優良法人認定制度」において、健康経営優良法人2022のホワイト500に認定されました。このほか、グループでは8社が健康経営優良法人2022に認定されています。
当社グループにおける健康経営優良法人2022認定の状況
4年連続認定 |
イオンクレジットサービス㈱(ホワイト500)、 イオンフィナンシャルサービス㈱、イオン住宅ローンサービス㈱、 イオン保険サービス㈱、エー・シー・エス債権管理回収㈱、ACSリース㈱ |
3年連続認定 |
㈱イオン銀行、イオン少額短期保険㈱ |
初めての認定 |
イオン・アリアンツ生命保険㈱ |
当社は今後も、ステークホルダーの期待に応え、持続的な社会の発展と事業成長の両立を目指してまいります。
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