業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当事業年度のわが国経済は、12月まで緩やかな回復傾向を辿りました。10~12月期の実質国内総生産(GDP)は前期比1.1%増・年率換算4.6%増と1年ぶりの伸びを示し、年換算額はコロナ禍の打撃が鮮明化する直前、2020年1~3月期以来の540兆円台を回復しました。しかしながら、2022年に入ると新型コロナ・オミクロン株の感染急増もあり景気ウォッチャー調査の現状判断DIが急降下したほか消費動向指数も低下傾向となりました。雇用関連のデータは堅調でしたが、海外の経済・政治情勢の変化に起因する資源価格の上昇や円の下落が進み、国内経済への先行き警戒感が強まる格好となりました。

海外に目を向けると、米国の10~12月期実質GDPは年率換算で前期比伸び率6.9%増と好調で、コロナ禍で急降下した2020年4~6月期をボトムに6四半期連続成長と回復傾向でした。小売売上高(前月比)は12月に一旦マイナス成長となりましたが、2022年に入ると右肩上がりに回帰しました。雇用環境の改善も継続しており、時給増によるインフレ警戒に繋がる状況となりました。またユーロ圏の実質GDPは10~12月期まで3四半期連続で成長を確保しましたが、2022年になると、小売売上高は米国と同様に堅調ながら、成長率は鈍化傾向となりました。日米欧の中では米国経済の好調ぶりが目立つものの、ロシアによるウクライナ侵攻が世界経済に与える影響が懸念されます。

当事業年度の国内株式市場は4~8月までもみ合いから緩やかな下落となり、日経平均株価は8月20日に同年の安値(26,954円81銭)を記録しました。しかし9月に入ると菅首相の退陣表明などを契機に急反転し、安値から約1ヵ月後の9月14日に約31年ぶりの高値(30,795円78銭)まで上昇しました。その後、国内コロナ感染者の急速な減少による経済活動平常化期待、総選挙での与党勝利、概ね順調な4~9月期決算、中国不動産企業の経営難や米長期金利の上昇、新型コロナの変異株(オミクロン株)発見など好悪双方の材料でもみ合う展開となりました。2022年に入ると米金融政策の正常化加速懸念や国内での新型コロナ・オミクロン株の感染拡大、更にはロシアによるウクライナ侵攻により調整色が鮮明化し、日経平均株価は3月9日に約1年4ヵ月ぶりの安値(24,681円74銭)となりました。その後、同月中旬に米FOMC(利上げ実施)を通過し先行き不透明感が一旦和らいだこと、円安の進行による輸出関連企業への業績改善期待から月末にかけて急速に戻し、最終的に当事業年度末の日経平均株価は2021年3月末と比べ4.7%安い27,821円43銭で終了しました。

 このような状況の中、第五次中期経営計画の柱であるコア・サテライト戦略を推進したことで、当社の戦略商品であるファンドラップの残高は着実に増加し、期末の預り資産は1,244億円(前期末比 109.9%)となり、投資信託については、公社債投資信託及びファンドラップを除く期末の預り資産は2,841億円(同 105.4%)となりました。しかし、日米株式市場は2021年4月以降、上値が重い状態が続き、更に2022年に入ってから調整する動きとなったことを背景に国内株式と米国株式を併せた株券委託売買金額が9,299億円(前期比 78.1%)となったこと等から、当事業年度の業績は、営業収益が136億83百万円(同 89.0%)と減少し、営業収益より金融費用52百万円(同 73.1%)を控除した純営業収益は、136億30百万円(同 89.1%)と減少しました。また、販売費・一般管理費は121億7百万円(同 97.0%)となり、その結果、営業利益は15億23百万円(同 54.1%)、経常利益は19億61百万円(同 61.2%)となりました。特別損失が5百万円(前事業年度実績 3億59百万円)、税金費用が5億66百万円(前期比 57.8%)となったことから、当期純利益は13億89百万円(同 74.4%)と減少しました。

 

 主な概況は以下のとおりであります。

 

イ 受入手数料

当事業年度の「受入手数料」の合計は、121億17百万円(前期比 87.2%)となりました。

 

a 委託手数料

「委託手数料」は、54億63百万円(同 69.6%)となりました。これは、主に株券委託売買金額が9,299億円(同 78.1%)と減少したことにより、株式の委託手数料が54億13百万円(同 69.8%)となったことによるものです。なお、受益証券の委託手数料は49百万円(同 54.5%)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、「委託手数料」は4百万円減少しております。

 

b 引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料

「引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料」は、1億1百万円(同 244.1%)となりました。

 

c 募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料、その他の受入手数料

主に投資信託の販売手数料で構成される「募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料」は、28億80百万円(同 96.0%)となりました。これは、米国の持続的な成長企業、世界のAI関連企業の株式に投資する投資信託の販売に注力しましたが、投資環境が悪化し販売額が減少したことによるものです。また、「その他の受入手数料」は、投資信託の代行手数料やファンドラップ報酬の増加等により36億72百万円(同 122.3%)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、「募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料」は12百万円、「その他の受入手数料」は54百万円減少しております。

 

ロ トレーディング損益

当事業年度の「トレーディング損益」は、株券等が9億81百万円(前期比 101.0%)、債券・為替等が3億50百万円(同 131.1%)となり、合計で13億32百万円(同 107.5%)となりました。

 

ハ 金融収支

当事業年度の「金融収益」は、信用取引収益の増加等により2億7百万円(前期比 104.6%)、「金融費用」は信用取引費用の減少等により52百万円(同 73.1%)で差引収支は1億55百万円(同 122.4%)の利益となりました。

 

ニ 販売費・一般管理費

当事業年度の「販売費・一般管理費」は、「不動産関係費」が増加する一方、「取引関係費」などが減少したことから、121億7百万円(前期比 97.0%)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、「販売費・一般管理費」は71百万円減少しております。

 

ホ 特別損益

当事業年度の「特別損失」は、「減損損失」5百万円(前事業年度実績 5百万円)となりました。

 

② 財政状態の状況

イ 流動資産

当事業年度の「流動資産」は、前事業年度に比べ64億76百万円減少し、487億66百万円となりました。これは、「募集等払込金」が2億46百万円増加する一方、「預託金」が34億96百万円、「現金・預金」が24億2百万円、「信用取引資産」が12億76百万円減少したことなどによるものです。

 

ロ 固定資産

当事業年度の「固定資産」は、前事業年度に比べ9億24百万円減少し、157億45百万円となりました。これは、「投資有価証券」が8億68百万円減少したことなどによるものです。

 

 

ハ 流動負債

当事業年度の「流動負債」は、前事業年度に比べ63億34百万円減少し、203億90百万円となりました。これは、「預り金」が44億72百万円、「未払法人税等」が7億83百万円、「未払金」が6億79百万円、「信用取引負債」が5億1百万円減少したことなどによるものです。

 

ニ 固定負債及び特別法上の準備金

当事業年度の「固定負債」及び「特別法上の準備金」は、前事業年度に比べ4億28百万円減少し、50億49百万円となりました。これは、「資産除去債務」が57百万円増加する一方、「繰延税金負債」が2億74百万円、「従業員株式給付引当金」が1億66百万円減少したことなどによるものです。

 

ホ 純資産

 当事業年度の「純資産」は、前事業年度に比べ6億37百万円減少し、390億71百万円となりました。これは、「当期純利益」で13億89百万円増加する一方、「剰余金の配当」で11億72百万円、「その他有価証券評価差額金」で7億20百万円、「自己株式の取得」で1億38百万円減少したことなどによるものです。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度における「現金及び現金同等物の期末残高」は、前事業年度に比べ24億2百万円減少し、227億23百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における「営業活動によるキャッシュ・フロー」は7億21百万円の減少となりました。これは「顧客分別金信託の増減額」で35億円、「税引前当期純利益」で19億55百万円、「信用取引資産及び信用取引負債の増減額」で7億74百万円、「減価償却費」で4億41百万円増加する一方、「預り金及び受入保証金の増減額」で45億79百万円、「法人税等の支払額」で13億30百万円、「受取利息及び受取配当金」で4億95百万円、「募集等払込金の増減額」で2億46百万円、「トレーディング商品の増減額」で2億3百万円減少したことなどが要因であります。なおこれは、前事業年度の「営業活動によるキャッシュ・フロー」22億78百万円の増加と比較すると30億円の減少となっております。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における「投資活動によるキャッシュ・フロー」は5億87百万円の減少となりました。これは、「有形固定資産の取得による支出」で1億87百万円、「敷金の差入による支出」で1億55百万円、「投資有価証券の取得による支出」で1億31百万円、「無形固定資産の取得による支出」で79百万円減少したことなどが要因であります。なおこれは、前事業年度の「投資活動によるキャッシュ・フロー」52百万円の減少と比較すると5億34百万円の減少となっております。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における「財務活動によるキャッシュ・フロー」は13億18百万円の減少となりました。これは、「配当金の支払額」で11億73百万円、「自己株式の取得による支出」で1億38百万円減少したことなどが要因であります。なおこれは、前事業年度の「財務活動によるキャッシュ・フロー」6億52百万円の減少と比較すると6億66百万円の減少となっております。

 

④ 生産、受注及び販売の状況

  当社は金融商品取引業を営んでいるため、「生産、受注及び販売の状況」については、「(1)経営成績等の状況の概要①~③」に含めて記載しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 当事業年度の経営成績の分析

当事業年度は「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(1)目標とする経営指標及び(4)優先的に対処すべき課題」に記載のとおり、数値目標の達成及び施策に取り組んでまいりました。

 

数値目標に対する当事業年度の実績は以下のとおりです。

イ 販管費カバー率については、ファンドラップと投資信託の残高増加に伴い投資信託の代行手数料が20億22百万円(前期比124.1%)、ファンドラップ報酬は16億9百万円(同121.5%)となり、30.0%となりました

ロ 2022年3月末のファンドラップ預り資産は、前事業年度末から112億円増加し1,244億円となり、第五次中期経営計画の目標は未達となりました。当社は株式、投資信託及びファンドラップ等によるポートフォリオでの提案を推進しておりますが、市況環境が変化する中で、相対的に投資信託の提案機会が増えたことが主な要因です。

 

投資信託については、第五次中期経営計画の柱であるコア・サテライト戦略を推進したことで、お客さまの中長期保有が進んだことから、公社債投資信託及びファンドラップを除く期末の預り残高は2,841億円(同 105.4%)となりました。近年当社が注力している米国株式については、委託取引と店頭取引を併せた株券売買金額は2,305億円(同80.2%)、預り資産残高は615億円(同 134.8%)となりました。

 

当社は、第六次中期経営計画の施策の下、お客さまのライフプランに応じた最適な金融サービスの提供とそのための人材育成・体制整備及び投資信託・ファンドラップを軸としたストック収入の拡大による安定収益基盤の構築に取り組んでまいります。

 

② 経営成績に重要な影響を与える要因の分析

当社は対面及びインターネットの二つのチャネルを展開しており、対面ではフロー収益として、株式委託手数料、投資信託の販売手数料、外国株式・外国債券等のトレーディング収益、またストック収益として、投資信託の代行手数料、ファンドラップ報酬を主な収益源としております。株式委託手数料及び外国株式のトレーディング収益は、日本及び米国の株式市況に大きく影響を受けます。また、外国株式は為替の影響も受け、円安になると円ベースの価格が上昇いたします。投資信託は運用する資産や手法により様々な要因で基準価格が上下しますが、基準価格が上昇すると販売が伸びる傾向があるとともに、預り残高が増加することで代行手数料も増加いたします。また、ファンドラップは8種類のファンドとMRFを組み合わせ、国際分散投資をしていることから、運用成績や為替の動向で、残高に対する報酬が増減いたしますが、販売は運用成績にあまり影響を受けず、残高は順調に伸びております。なお、インターネット取引については、開設口座数が少数であるため、収益全体に占める割合は少額であります。

費用面では、販売費・一般管理費は固定的な費用が大部分を占めておりますが、「人件費」に含まれる賞与は経営成績によって増減いたします。 

 

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当事業年度末の現金・預金残高は227億23百万円となっており、日常の運転資金としては十分な額を有しております。また、当社は日本銀行に当座預金を開設する金融機関として、万一の場合でも資金決済が滞ることのないよう、非常時に備えた資金を有しておくことが必要であると考えております。さらに、非常時に備え「資金流動性危機対応マニュアル」を策定している他、定期的に資金流動性のストレスチェックテストを実施し、経営会議に報告しております。

現在、信用取引借入金及び有価証券貸借取引受入金を除く借入金は27億50百万円あり、自己資金で返済することは可能ですが、安定的な資金調達を図るため銀行等との関係を重視し、借入を継続しております。また、現在借入実績のない銀行等に対しても借入枠を確保するよう努めております。

当社の現金・預金残高の主な変動要因は信用取引貸付金であります。市況が良い時には信用取引が増加するため、貸付金増加に対応するための資金を確保しておく必要があります。また、お客さまの利便性向上や業務の効率化等のためのシステム投資を行っており、こうした成長投資を継続して実施するための資金を必要としております。株主還元実施後も結果として内部留保が増加する場合においては、信用取引貸付金の原資や成長投資のための資金として有効に活用いたします。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

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