(1) 経営成績等の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響が長期化する中、ワクチン接種の進展などにより経済社会活動が徐々に正常化しつつありますが、新たな変異株であるオミクロン株の感染拡大や資源・エネルギー価格の高騰によるインフレ懸念など景気の先行きは不透明感が増しております。世界経済においても、ワクチン接種や各種経済政策などによる景気の回復傾向は見られますが、世界的なインフレ率の上昇やロシア・ウクライナ問題、中国の主要都市におけるロックダウンなど世界経済の先行きは不透明な状況にあります。
このような環境の中、当社グループの当連結会計年度の営業収益は615億66百万円(前期比38億11百万円増)、経常利益は178億13百万円(前期比80億90百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は65億45百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失30億15百万円)となりました。
当社グループは、当社、連結子会社4社及び持分法適用関連会社2社で構成されており、セグメントごとの分類は次のとおりであります。
銀行関連事業 ハーン銀行(Khan Bank LLC)、キルギスコメルツ銀行(OJSC Kyrgyzkommertsbank)、
ソリッド銀行(JSC Solid Bank)
証券関連事業 エイチ・エス証券株式会社 ※
債権管理回収関連事業 エイチ・エス債権回収株式会社
その他事業 当社、H.S. International (Asia) Limited、株式会社外為どっとコム
※当連結会計年度末において、当社は、当社の連結子会社であるエイチ・エス証券株式会社の全株式を譲渡いたしました。本株式譲渡により、エイチ・エス証券株式会社は連結の範囲から除外されることとなりました。なお、報告セグメントごとの業績における「証券関連事業」は、当連結会計年度の業績となります。
報告セグメントごとの業績を示すと、次のとおりであります。
a)銀行関連事業
銀行関連事業の当連結会計年度の営業収益は551億62百万円(前期比60億45百万円増)、営業利益は150億49百万円(前期比70億31百万円増)となりました。また、持分法適用関連会社であるソリッド銀行の業績は、持分法による投資損益に反映されます。
ハーン銀行(本店所在地:モンゴル国)
モンゴル経済につきましては、新型コロナウイルス感染症の感染防止策に伴う外出禁止令や国境封鎖の強化などにより落ち込んだ前年と比べ鉱工業生産や資源輸出が大きく増加し、また、モンゴル国内での10兆トゥグルグ(以下、MNTという。)規模の景気対策の結果、景気は回復傾向にありますが、輸入品価格の上昇を原因としたインフレ率の大幅な上昇などにより、実質GDPはコロナ以前の水準までには回復しておりません。2021年度の実質GDP(1-12月)は前期比で1.4%増加、インフレ率は食料品価格等の上昇により前期比13.4%の上昇となりました。今後も、インフレ率の上昇懸念や中国経済のロックダウンによる景気悪化など、モンゴル経済の先行きは不透明な状況が続いております。外貨準備高は海外からの直接投資の増加や国際援助機関からの支援を背景に43億ドル台(前期比3.7%減少)となり、貿易収支は対中国輸出の増加により24億ドルの黒字(前期比5.3%増加)となりました。ただし、年度末には中国主要都市のロックダウンを受け、対中国輸出は大幅に減少しております。為替市場では、現地通貨MNTが前期比で米ドルに対して0.02%上昇(ドル安)、円に対して10.5%上昇(円安)となりました。
モンゴルの銀行業界につきましては、モンゴル政府が実施した低金利融資等の景気対策、延滞している融資の返済期限延長などの施策の結果、金融セクターの融資残高は前期比で28.2%増加し、延滞債権残高は26.1%減少、不良債権残高は3.6%増加となりました。
このような環境の中、モンゴルにおいて最大級の商業銀行であるハーン銀行につきましては、大口企業向け融資や中小企業向け融資、また、モンゴル国のデジタル化の方針に従い個人向けのデジタルバンキングサービスを中心に積極的に展開してまいりました。新型コロナウイルス感染症やインフレ率上昇などの影響はありますが、モンゴル経済は徐々に回復しており、その影響で資金運用収益は増加し、また、モンゴル政府が実施した施策により普通預金・当座預金に対する利息の支払いが免除されたことにより資金調達費用が大きく減少したことから、増収増益となりました。さらに、前期は、2020年1月に年金担保ローンに関する法律が施行された影響から大幅な減益となっていたため、当連結会計年度の当期純利益は前期比で大幅に増加いたしました。
結果として、現地通貨ベースでは、預金残高は前期比で13.0%増加、融資残高は34.9%増加、資金運用収益は5.9%増加、当期純利益は77.1%増加いたしました。また、融資残高の内訳としましては、法人向け融資は前期比で35.9%増加、個人向け融資は8.4%増加、農牧業向け融資は43.7%増加いたしました。
キルギスコメルツ銀行(本店所在地:キルギス共和国)
キルギス経済につきましては、新型コロナウイルス感染症が収束傾向にあり、そのため、特にサービス業や鉱工業を中心に景気は回復傾向にあり、2021年度の実質GDP(1-12月)は前期比で3.6%増加となりました。また、キルギスにおいても、食料品価格などの上昇によりインフレ率が前期比11.9%と大幅な上昇となっております。
このような環境の中、キルギスコメルツ銀行は、既存融資先のサポートを徹底するとともに、新規顧客開拓に注力いたしました。新型コロナウイルス感染症の収束を背景に経済社会活動が回復し、融資残高と預金残高が増加したものの、インフレ率の高止まりなどから預金コストが上昇しました。また、カード業務とモバイルバンキングの新決済システムを導入しリテール事業の強化を実施しました。
今後につきましては、ロシア・ウクライナ問題やインフレ率の高騰を背景に、キルギス経済の先行き不透明感が高まっておりますが、キルギスコメルツ銀行は安定した預金基盤の構築と顧客のニーズに応える融資商品の提供に注力いたします。そして、中小企業融資やリテール事業に特化し、非金利収入の割合の拡大を図ります。また、国際開発金融機関と提携し、キルギス経済の発展に貢献する融資拡大を計画いたします。
ソリッド銀行(本店所在地:ロシア連邦)
ロシア経済につきましては、新型コロナウイルス感染症の拡大は続いているものの、経済社会活動の回復や原油価格上昇に支えられ、2021年度の実質GDP(1-12月)は前期比で4.7%の増加となりました。また、インフレ率は食料品価格などの上昇により前期比8.3%となり、ロシア中央銀行はインフレ抑制のため数回にわたり政策金利の引き上げを実施しました。
このような環境の中、ソリッド銀行につきましては、融資残高と預金残高の増加を慎重に行い、安定した業種の中堅優良企業への貸出、銀行保証や外為取引などの非金利収入の維持に注力いたしました。また、継続的なコスト削減や不良債権の回収、担保物権の売却に取り組んでまいりました。
今後につきましては、ロシア・ウクライナ問題に起因するロシアに対する幅広い経済制裁を背景に、ロシア経済の先行きについては非常に厳しい状況が続くと予想されます。このため、現地通貨(ルーブル)の為替動向、原油価格の推移、経済制裁及び国際情勢の緊迫化等の様々な要因により、ソリッド銀行の業績に影響を与える可能性がありますが、今後もソリッド銀行は優良企業への貸出増加、預金コストの削減等に注力し、業務の合理化とともに財務状況の改善に取り組んでまいります。
b)証券関連事業
当連結会計年度における国内株式市場は、新型コロナウイルスのワクチン普及による世界経済の正常化とインフレが意識されるなか、日経平均株価は29,441円91銭で取引を開始しました。しかし、新型コロナウイルス変異株の世界的な感染拡大に対する警戒感が高まっていくなか、日本では、東京オリンピック開催直前の7月12日に4度目の緊急事態宣言が発令され、8月下旬まで新型コロナウイルス感染者の増加に歯止めがかからず、一時26,954円81銭まで下落しました。その後、自民党総裁選をきっかけに株価は大幅に上昇しはじめ、新型コロナウイルス感染者数もピークを迎え減少に転じていたことから9月には30,795円78銭と年初来高値を一時更新しましたが、中国不動産大手の恒大集団による社債利払い見送りという中国リスクや新型コロナウイルス「オミクロン株」に対する懸念、11月の米国FOMC会合で資産購入の段階的縮小決定と2022年利上げ開始を示唆したことなどから日経平均株価は伸び悩みました。
2022年に入り日経平均株価は29,098円41銭で取引を開始しましたが、原油高などインフレ抑制に向けて米連邦準備理事会は早期金融引き締めに動き、米経済の景気減速につながるという警戒感の高まりから、ハイテク株を中心に日米の株価は下落し、26,044円52銭まで一時下落しました。その後、戻す場面もありましたが、2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻による地政学的リスクの高まりや原油高などの商品価格の上昇から一時24,681円74銭まで下落しました。大きく売られた銘柄への見直し買いなども入り28,338円81銭まで反発する場面もありましたが、ウクライナ情勢やインフレへの警戒感が継続しているなか、3月末の日経平均株価は27,821円43銭で取引を終えました。なお、当連結会計年度における東証の売買代金は前年同期比で8.7%増加いたしました。
このような環境の中、エイチ・エス証券株式会社につきましては、お客様のパフォーマンスに貢献する証券会社として、国内株式営業への取り組み、外貨建て債券の販売、米国株式を中心とした外国株式の販売に注力いたしました。引受業務におきましては、一般市場への主幹事上場3社を含めた計19社の幹事参入を果たしました。
結果として、当連結会計年度の営業収益は34億79百万円(前期比2億67百万円減)、営業利益は4億72百万円(前期比89百万円減)となりました。
(受入手数料)
当連結会計年度の受入手数料は、12億46百万円(前期比76百万円減)となりました。
その内訳としましては、委託手数料が8億27百万円(前期比2億10百万円減)、引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料が90百万円(前期比37百万円増)、募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料が1億28百万円(前期比43百万円増)、主に投資信託事務代行事務手数料と投資銀行業務に係る手数料で構成されるその他の受入手数料は1億99百万円(前期比52百万円増)となりました。
(トレーディング損益)
当連結会計年度のトレーディング損益につきましては、株券等は9億31百万円(前期比1億65百万円減)となりました。また、債券・為替等は8億62百万円(前期比64百万円増)となり、合計で17億93百万円(前期比1億1百万円減)となりました。
(金融収支)
当連結会計年度の金融収益は4億34百万円(前期比95百万円減)、金融費用は49百万円(前期比68百万円減)となり、金融収益から金融費用を差し引いた金融収支は3億84百万円(前期比26百万円減)となりました。
(販売費及び一般管理費)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、29億56百万円(前期比1億9百万円減)となりました。
c)債権管理回収関連事業
サービサー業界につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大により全国的な景気後退の懸念が継続しているものの、各金融機関において制度融資や緊急融資等の対応により不良債権化する状況には至っておらず、結果として、不良債権市場に供給される債権は減少しており、依然として業界の競争は激しく債権の買取価格の高騰が続いております。
このような環境の中、エイチ・エス債権回収株式会社につきましては、既存の取引先金融機関からの不良債権買取を中心に、収益性を加味した入札の継続により良質な不良債権確保に努めております。また、銀行を中心とした金融機関以外にも不良債権市場のシェア拡大を目指し安定的な債権の取得を継続しております。前期比で営業収益は減少したものの、収益性の高い債権からの回収が堅調に進捗したこと、それに伴う訴訟費用の圧縮、貸倒引当金の算出プロセスの変更により、営業利益は増加しました。特に、貸倒引当金の算出プロセスの変更により営業利益は492百万円増加しております。詳細は、連結財務諸表に関する注記事項(会計上の見積りの変更)をご参照ください。
結果として、当連結会計年度の営業収益は29億53百万円(前期比18億14百万円減)、営業利益は5億10百万円(前期比2億40百万円増)となりました。
d)その他事業
当社及び上記のセグメントに分類されていない連結子会社及び持分法適用関連会社は、その他事業に分類しております。なお、持分法適用関連会社の業績は、持分法による投資損益に反映されます。
当社(単体)の営業収益は、主に関係会社からの配当金及び経営管理料で構成され、当連結会計年度においては、子会社からの配当金の増加により大幅な増収増益となりました。なお、この子会社からの受取配当金は、連結上は相殺消去されるため連結業績には影響を与えません。
その他事業の当連結会計年度の営業収益は99億1百万円(前期比96億57百万円増)、営業利益は94億36百万円(前期は営業損失69百万円)となりました。
e)持分法による投資損益
持分法適用関連会社である株式会社外為どっとコム及びソリッド銀行の業績は、持分法による投資損益に反映されます。
株式会社外為どっとコムにつきましては、新興国通貨ペアにおいてスワップ収益が改善したこと、また、年度末にかけてボラティリティ拡大により取引数量が増加したことにより、当連結会計年度の業績は増収増益となりました。
結果として、当連結会計年度の持分法による投資利益は11億72百万円(前期比4億84百万円増)となりました。
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末の資産合計につきましては、5,774億49百万円となり、前期比778億58百万円増加しました。
これは主に、「貸出金」が932億12百万円、「投資有価証券」が84億32百万円増加し、一方で「預託金」が197億35百万円、「信用取引資産」が89億10百万円減少したことによるものであります。
主な増減要因は、「貸出金」はハーン銀行から顧客への貸出金の増加、「投資有価証券」はハーン銀行における資金運用に伴う増加、「預託金」「信用取引資産」はエイチ・エス証券の連結除外に伴う減少によるものであります。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計につきましては、5,030億22百万円となり、前期比747億74百万円増加しました。
これは主に、「預金」が769億67百万円、「売現先勘定」が70億83百万円、「長期借入金」が147億86百万円増加し、一方で「預り金」が120億38百万円、「受入保証金」が63億6百万円減少したことによるものであります。
主な増減要因は、「預金」はハーン銀行が顧客から預かる預金の増加、「売現先勘定」はハーン銀行における売現先取引により発生した金銭債務の増加、「長期借入金」はハーン銀行における長期借入金の増加、「預り金」「受入保証金」はエイチ・エス証券の連結除外に伴う減少によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産合計につきましては、744億27百万円となり、前期比30億83百万円増加しました。
これは主に、「利益剰余金」が60億69百万円、「為替換算調整勘定」が29億35百万円、「非支配株主持分」が51億25百万円、「自己株式」が96億20百万円増加したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、1,910億71百万円(前期比56億58百万円増)となりました。なお、当連結会計年度においては、営業活動、投資活動、財務活動のいずれのキャッシュ・フローも資金減少となりましたが、現金及び現金同等物に係る換算差額の影響により当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は前期比で増加しております。なお、現金及び現金同等物に係る換算差額は、主に、在外子会社の現金及び現金同等物の換算手続の結果生じた円貨による差額であります。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、47億85百万円の資金減少(前期は776億37百万円の資金増加)となりました。
これは主に、「税金等調整前当期純利益」181億71百万円、「売現先勘定の純増減(△)」64億32百万円、「預金の純増減(△)」363億5百万円の資金が増加した一方、「貸出金の純増(△)減」677億90百万円の資金が減少したことによるものであります。
主な増減要因は、ハーン銀行が顧客から預かる預金の増加、ハーン銀行における売現先取引により発生した金銭債務の増加、ハーン銀行から顧客への貸出金の増加によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、76億56百万円の資金減少(前期比10億47百万円増)となりました。
これは主に、「投資有価証券の売却及び償還による収入」73億35百万円の資金が増加した一方、「投資有価証券の取得による支出」143億10百万円の資金が減少したことによるものであります。
主な増減要因は、ハーン銀行における投資有価証券の売却及び償還または取得によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、17億19百万円の資金減少(前期比130億30百万円増)となりました。
これは主に、「長期借入による収入」376億36百万円の資金が増加した一方、「長期借入金の返済による支出」279億43百万円、「自己株式の取得による支出」96億20百万円、「非支配株主への配当金の支払額」30億88百万円の資金が減少したことによるものであります。
主な増減要因は、ハーン銀行における長期借入金の借入または返済、当社における自己株式の取得、ハーン銀行における非支配株主持分への配当金の支払いによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
該当事項はありません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、営業収益は615億66百万円(前期比38億11百万円増)、経常利益は178億13百万円(前期比80億90百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は65億45百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失30億15百万円)となりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、ハーン銀行の業績は当社グループの経営成績の主たる割合を占めており、その業績の変動が当社グループに重要な影響を及ぼすことになります。また、当社グループには海外の関係会社が複数存在するため、海外の経済情勢や政治情勢から大きな影響を受けております。さらに、国内の関係会社においても、国内の景気動向、金利や為替等の市況環境に影響を受けるため、当社グループの経営成績が変動する要因となります。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、資本の効率性を示すROE(株主資本当期純利益率)を連結ベースで10%以上を安定的に維持していくことを中期的な経営目標としておりますが、当連結会計年度においては主に銀行関連事業の大幅な増収増益により12.2%となりました。
セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
a)銀行関連事業
銀行関連事業の当連結会計年度における営業収益は551億62百万円(前期比60億45百万円増)、営業利益は150億49百万円(前期比70億31百万円増)となりました。
ハーン銀行においては、現地通貨ベースでの資金運用収益や当期純利益は前期比で大幅な増収増益となり、融資残高や預金残高も前期比で増加しました。
ハーン銀行の業績は、モンゴル国において、10兆トゥグルグ規模の景気対策が実施されたことなどが影響し大幅な増収増益となっております。ハーン銀行の業績に影響を与えた景気対策の主な内容としては、低金利融資や普通預金と当座預金の金利免除などがあります。低金利融資により法人向けを中心に融資残高、ひいては資金運用収益が増加し、また、預金金利の免除により資金調達費用が大幅に減少しました。
モンゴル国内においては、新型コロナウイルス感染症は縮小傾向にありますが、世界的なインフレ率の上昇や中国主要都市でのロックダウンなど、モンゴル経済の先行きは依然として不透明な状況であり、また、ハーン銀行は国の景気対策に協力する形で、低金利の融資や融資の返済猶予等を実施しております。このため、来期以降、この信用リスクが顕在化し、貸倒引当金繰入額が増加する可能性もあります。さらには、普通預金と当座預金に対する金利免除の施策が終了すると、資金調達費用が増加し、ハーン銀行の業績に影響を与えます。
ハーン銀行は、現在、モンゴル国の政策に基づきモンゴル証券取引所への新規株式公開(IPO)を計画しております。現時点での計画は、2022年4月21日付でお知らせいたしましたとおり、新株発行によるIPOを予定しており、この結果、当社が保有するハーン銀行株式の持分比率が過半数を下回り、持分法適用関連会社となる予定です。
ハーン銀行ではお客様満足度の向上のため、顧客のセグメンテーションを推進し、お客様それぞれに合ったサービスの提供に努めております。顧客の利便性を図るため、パソコンやスマートフォンからのインターネット取引を推進しており、支店における取引の8割程度がデジタルバンキングでの取引となっております。また、本社ビルを新築し、窓口業務と本社機能の効率化を図っております。今後、ハーン銀行は個人向け・法人向け融資に注力しつつ、カード事業やデジタルバンキングサービス等を含めた手数料収入の増加にも注力いたします。
キルギスコメルツ銀行においては、融資残高の増加により金利収入は増加しましたが、キルギス国の金融引き締め政策の影響から預金コストが増加した結果、純金利収入は減少しました。一方で、デジタルバンキングやカード事業の推進により手数料収入が増加しております。以上の結果、現地通貨基準、国際会計基準の双方において金額的には僅少ではありますが黒字を達成しております。
キルギス国内では、銀行は飽和状態であることから、サービス面を改善することで他社との差別化を図り、収益の獲得に努めてまいります。新決済システムの導入によるデジタルバンキングの推進、キルギス国内唯一のクレジットカードのプロセシングセンターを設立するなど、キルギスにおける「最も便利で信頼できる先進的な銀行」に成長することを目指し、銀行業務だけでなく幅広い金融サービスの展開に向けて、個人向けのカード事業とオンラインサービスを強化しております。
ソリッド銀行においては、法人向けを中心とした融資残高の増加、不採算店舗の閉鎖などによるコスト削減を進めた結果、増収増益、黒字となっております。ロシアは現在、ウクライナ問題に起因する幅広い経済制裁を受けており、今後のロシア経済の悪化がソリッド銀行の業績にも影響を与える可能性があります。そのような環境のなかで、ソリッド銀行は貸出業務の改善と強化を図り、融資審査体制を本部に集中化させ、リスク管理を大幅に厳格化するとともに、組織の再構築や継続的なコスト削減等を実行しております。さらに、非金利収入の増加に向けたサービスの拡大に取り組み、ロシア極東地域における存在感のある銀行を目指してまいります。
b)証券関連事業
証券関連事業の当連結会計年度における営業収益は34億79百万円(前期比2億67百万円減)、営業利益は4億72百万円(前期比89百万円減)となりました。
エイチ・エス証券株式会社においては、主に期末にかけて、世界的なインフレ率の上昇やロシア・ウクライナ問題などによる市況悪化の影響を受け、減収減益となりました。
なお、同社は、2022年3月31日付で、当社が保有する全株式を譲渡したことにより連結の範囲から除外されております。
c)債権管理回収関連事業
債権管理回収関連事業の当連結会計年度における営業収益は29億53百万円(前期比18億14百万円減)、営業利益は5億10百万円(前期比2億40百万円増)となりました。
エイチ・エス債権回収株式会社においては、各金融機関における不良債権保有率の減少に伴いサービサー間での競争が激化している中、取引先金融機関等の拡充を図り継続的な債権の仕入れを目指すことで、安定的な収益の確保に努めております。当連結会計年度では、新型コロナウイルス感染症の影響により各金融機関が制度融資や緊急融資などを積極的に行った結果、不良債権の発生が抑えられたことから、同社が保有する不良債権残高が減少傾向にあり、減収となりました。このような市場環境は、コロナ禍における各金融機関の返済猶予措置等が終わることにより、再度、活発化される見込みとなっております。一方で、営業利益は、貸倒引当金の算出プロセスの変更により大幅に増加しております。これは、債権の自己査定に関するデータの蓄積が相当程度進んだために行われた会計上の見積りの変更に該当します。
同社は、着実な取引金融機関の増加を目指した営業活動から取引数を増加していますが、そのような過去の営業活動は、不良債権市場が活発になった際に不良債権を取捨選択し、利益率の高い不良債権を獲得するための素地となるため、引き続き、取引金融機関のシェアを広げつつ、景気の転換期を迎えた際には収益性のある不良債権の獲得を目指してまいります。
d)その他事業
その他事業の当連結会計年度における営業収益は99億1百万円(前期比96億57百万円増)、営業利益は94億36百万円(前期は営業損失69百万円)となりました。
当社単体においては、グループ各社における適切な会社運営に加え、グループ間でのシナジー効果を高めるべく適切な管理や助言を行っております。当社単体の営業収益は、主に関係会社からの配当金及び経営管理料で構成されており、当連結会計年度においては、子会社からの配当金の増加により大幅な増収となりました。投資事業については、国内における独自性や特長のある事業のみならず、主にアジア圏における将来性のある国や地域での事業に対しても積極的な投資を展開しております。さらに、投資事業の一環として、企業の再生についても国内外問わず行っております。また、M&A仲介・コンサルティング事業は、対応が困難とされる短期的な案件や小規模な案件に対しても積極的に取り組み、徐々に実績を重ねてきております。今後もグループの拡大に向け、更なる発展を続けてまいります。
e)持分法による投資損益
当連結会計年度における持分法による投資利益は11億72百万円(前期比4億84百万円増)となりました。
株式会社外為どっとコムにおいては、FX業界の市場規模は緩やかながらも拡大傾向を維持しており、異業種企業の参入も落ち着いている一方で、既存企業間での顧客獲得競争は依然として厳しい状況にあります。
当連結会計年度では、主にトルコリラ円など新興国通貨ペアにおけるスワップ収益が改善したこと、期末にかけてボラティリティが拡大したことにより取引数量が増加したことにより、増収増益となりました。また、新商品「らくらくFX積立」やスマートフォン用取引アプリ「外貨ネクストネオ『GFX』」をリリースいたしました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a)キャッシュ・フロー
「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b)資本の財源及び資金の流動性
当社グループにおける資金需要のうち主なものは、顧客への貸出金、人件費や不動産賃借料等の販売費及び一般管理費によるものであります。設備投資を目的とした資金需要は、デジタルバンキングサービスなどの情報システムの構築、ATM増設及び支店開設、改築等によるものであります。
また、当社グループにおける必要な運転資金、投資資金及び融資資金は、自己資金、金融機関からの借入、顧客からの預り金により調達しております。当連結会計年度末における主な有利子負債残高は、長期借入金(1年内含む)608億42百万円、短期借入金23億6百万円となっております。また、現金及び現金同等物の残高は1,910億71百万円となっております。主な借入先として、ハーン銀行においてモンゴル中央銀行から262億80百万円、オランダ開発金融公庫から146億44百万円、Blue Orchardから27億14百万円、Symbiotics SAから26億73百万円、エイチ・エス債権回収株式会社において株式会社きらぼし銀行から20億69百万円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、当連結会計年度末における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に影響を与えるような見積り及び予測が必要となります。当社グループは、過去の実績値や状況に応じて、合理的かつ妥当な判断により、見積り及び予測を行っておりますが、当該見積り及び予測については、不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
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