(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大と縮小を繰り返す中、厳しい状況から抜け出すことはできませんでした。感染対策に万全を期し、社会経済活動が正常化に向かう中で、政府による各種政策の効果や海外経済の改善もあり景気が持ち直すことが期待されましたが、2022年2月にロシアがウクライナに侵攻したことで世界経済の見通しは一気に不透明感を増し、わが国の経済もグローバルな経済活動の制約や輸入物価の高騰などの悪影響が出始めました。
FX市場におきましては、2021年4月に1米ドル=110円台後半で始まった米ドル/円相場は、9月下旬に開催された米国の連邦公開市場委員会(FOMC)において連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和の段階的な縮小(テーパリング)を開始する可能性を示唆したことなどから米長期金利は上昇し、日米金利差拡大を意識したドル買いが活発化し円安が進行したため、11月に2017年3月以来となる1米ドル=115円台を記録しました。11月後半に「オミクロン株」の感染拡大に対する警戒感から世界の金融市場でリスクオフの動きが加速し1米ドル=112円台まで円高が進みましたが、12月に入り米国FRB高官による早期利上げ発言や「オミクロン株」に対する既存ワクチンの有効性が確認されたことなどから円安に転じました。2022年3月にロシア・ウクライナ情勢が悪化し混沌とする世界情勢の中、米国FRBがゼロ金利政策を2年ぶりに解除し0.25%の利上げに踏み切った一方、日銀総裁が金融緩和政策継続を強調したことで更なる円安が進行し、当連結会計年度末は1米ドル=121円66銭で取引を終了しました。
このような市場環境のもと、当社グループの主力事業であるFX取引事業を中核とする金融商品取引事業は、子会社であるトレイダーズ証券において、『みんなのFX』(FX証拠金取引)、『LIGHT FX』(FX証拠金取引)、『みんなのシストレ』(自動売買ツールを利用したFX証拠金取引)及び『みんなのオプション』(FXオプション取引)『みんなのコイン』(暗号資産証拠金取引)、『LIGHT FX コイン』(暗号資産証拠金取引)のサービスを提供し収益確保を図ってまいりました。収益を確保する上で重要な指標となる顧客からの預り資産は、前期に引き続き好調な伸びを示し、当連結会計年度末において691億29百万円(前連結会計年度末比40億72百万円増、6.3%増)まで増加しました。当連結会計年度のトレーディング損益は、上記の預り資産の増加により65億84百万円(前年同期比2億84百万円増、4.5%増)と昨年度の過去最高収益を更新しました。
また、子会社であるNextop.Asiaが営むシステム開発・システムコンサルティング事業は、トレイダーズ証券向けにFX取引システムの開発及び保守・運用を行うとともに、外部顧客向けにFX取引及び暗号資産取引に関連したシステムの開発及び保守・運用を行い収益の確保を図ってまいりました。当連結会計年度のシステム開発・システムコンサルティング事業における外部顧客に対する営業収益は、4億27百万円(前年同期比57百万円減、11.9%減)と前年同期を下回りました。
以上の結果、営業収益合計は、70億82百万円(前年同期比2億25百万円増、3.3%増)となり、金融費用、原価等を差し引いた純営業収益合計は、65億73百万円(前年同期比1億41百万円増、2.2%増)となりました。
なお、当連結会計年度より「収益認識に関する会計基準」を適用しており、前年同期に広告宣伝費として会計処理したキャッシュバック等の金額を営業収益と相殺しておりますが、前年同期比較において前年同期の当該費用1億76百万円を営業収益と相殺する調整は行っておりません。前年同期の営業収益及び純営業収益を当連結会計年度と同様の収益認識基準を適用した場合の金額と比較すると、営業収益は前年同期比4億2百万円増(6.0%増)、純営業収益は前年同期比3億18百万円増(5.1%増)となります。
一方、販売費及び一般管理費は42億1百万円(前年同期比1億26百万円増、3.1%増)と前年より増加となりましたが、要因は以下のとおりです。金融商品取引事業において広告宣伝費が減少したことから、取引関係費が18億32百万円(前年同期比91百万円減、4.7%減)と減少した一方で、人員増と決算賞与支給により人件費が14億62百万円(前年同期比2億36百万円増、19.3%増)に増加したこと等によります。
なお、上記「収益認識に関する会計基準」を前年同期の広告宣伝費、取引関係費並びに販売費及び一般管理費に関して当連結会計年度と同様の収益認識基準を適用した場合の金額と比較すると、広告宣伝費は前年同期比49百万円増(3.3%増)、取引関係費は前年同期比85百万円増(4.9%増)、販売費及び一般管理費は前年同期比3億2百万円増(7.8%増)となります。
その結果、営業利益は、23億72百万円(前年同期比15百万円増、0.7%増)となりました。
営業外収益は、受取利息及び配当金11百万円等により17百万円(前年同期比1百万円減、8.7%減)となり、営業外費用は、為替差損16百万円及び支払利息13百万円等により、29百万円(前年同期比73百万円減、71.5%減)となりました。
その結果、経常利益は23億60百万円(前年同期比87百万円増、3.8%増)となりました。
特別利益は、子会社であるトレイダーズインベストメントが保有する投資有価証券償還益76百万円の計上等により76百万円、特別損失は子会社であるインドネシア法人PJBの清算のための事業整理損32百万円の計上等により59百万円となりました。
以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は21億89百万円(前年同期比3億95百万円増、22.1%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、以下のとおりです。
(金融商品取引事業)
トレイダーズ証券が営む当セグメントの営業収益は66億45百万円(前年同期比2億94百万円増、4.6%増)、セグメント利益は19億15百万円(前年同期比32百万円増、1.7%増)となりました。
なお、FX取引事業・暗号資産証拠金取引事業の当連結会計年度末における顧客口座数、預り資産は以下のとおりとなりました。
顧客口座数 463,758口座(前連結会計年度末比 31,704口座増)
預り資産 691億29百万円(前連結会計年度末比 40億72百万円増)
(システム開発・システムコンサルティング事業)
Nextop.Asiaが営む当セグメントの営業収益は21億82百万円(前年同期比1億96百万円増、9.9%増)となりました。同収益の内訳は、グループ会社であるトレイダーズ証券に対するFX取引システムの開発・保守運用等の内部売上が17億55百万円(前年同期比2億54百万円増、17.0%増)、外部顧客に対する売上が4億27百万円(前年同期比57百万円減、11.9%減)であります。セグメント利益は5億95百万円(前年同期比1億2百万円減、14.7%減)となりました。
② 当期の財政状態の概況
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比較して55億52百万円増加し、740億99百万円となりました。これは主に、現金及び預金が8億6百万円増加したこと、FX取引にかかる顧客分別金信託が29億84百万円増加したこと、FX取引カバー先に対する評価益等の未収債権であるトレーディング商品が4億53百万円増加したこと及び外国為替差入証拠金が11億50百万円増加したこと等によるものです。
負債合計は、前連結会計年度末と比較して36億22百万円増加し、648億49百万円となりました。これは主に、受入保証金が27億64百万円増加したこと等によります。
純資産は、前連結会計年度末と比較して19億29百万円増加し、92億50百万円となりました。これは主に、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益が21億89百万円となったこと、剰余金の配当2億91百万円を行ったこと等によるものです。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、営業活動により8億49百万円増加、投資活動により1億46百万円減少、財務活動により73百万円増加しました。この結果、資金は、前連結会計年度末と比較して8億6百万円増加し、52億27百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況及び当該増減の要因は、以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金は、8億49百万円の収入超過(前年同期は17億27百万円の収入超過)となりました。これは主に、顧客分別金信託の増加による29億84百万円の支出、FX証拠金取引等にかかる短期差入保証金の増加による13億68百万円の支出、といった資金減少要因があったものの、預り金及び受入保証金の増加による27億65百万円の収入、税金等調整前当期純利益23億77百万円等の資金増加要因により資金が増加したものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金は、1億46百万円の支出超過(前年同期は5億10百万円の支出超過)となりました。これは主に、投資有価証券の償還による76百万円の収入があったものの、無形固定資産の取得による2億50百万円の支出により資金が減少したものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金は、73百万円の収入超過(前年同期は1億51百万円の支出超過)となりました。これは主に、配当金の支払による2億91百万円の支出、社債償還による支出4億円があった一方で社債発行による6億円の収入、長期借入れによる収入2億円等により資金が増加したものです。
④生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
システム開発・システムコンサルティング事業(百万円) |
427 |
△11.9 |
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.「金融商品取引事業」及び「その他」事業につきましては、生産活動を行っていないため記載を省略しております。
b. 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
システム開発・システムコンサルティング事業 |
700 |
△13.9% |
273 |
△16.8 |
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.「金融商品取引事業」事業及び「その他」事業につきましては、受注生産形態をとっていないため、記載を省略しております。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
システム開発・システムコンサルティング事業(百万円) |
427 |
△11.9 |
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.「金融商品取引事業」事業及び「その他」事業につきましては、受注生産形態をとっていないため、記載を省略しております。
⑤金融商品取引事業の業務の状況
a. FX取引の売買等の状況
(a) FX証拠金取引
区 分 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比 (%) |
|
米ドル |
(百万ドル) |
1,096,144 |
1,139,425 |
3.9 |
メキシコペソ |
(百万ペソ) |
826,100 |
542,905 |
△34.3 |
豪ドル |
(百万ドル) |
366,662 |
366,085 |
△0.2 |
英ポンド |
(百万ポンド) |
424,911 |
287,618 |
△32.3 |
ユーロ |
(百万ユーロ) |
333,931 |
285,518 |
△14.5 |
南アフリカランド |
(百万ランド) |
118,987 |
161,427 |
35.7 |
トルコリラ |
(百万リラ) |
135,228 |
139,803 |
3.4 |
ニュージーランドドル |
(百万ドル) |
30,327 |
36,681 |
21.0 |
ロシア |
(ルーブル) |
- |
18,890 |
- |
人民元 |
(百万元) |
3,229 |
5,264 |
63.0 |
カナダドル |
(百万ドル) |
2,826 |
4,801 |
69.9 |
スイスフラン |
(百万フラン) |
1,790 |
2,498 |
39.5 |
ポーランド |
(百万ズロチ) |
733 |
1,023 |
39.5 |
ノルウェー |
(百万クローネ) |
1,298 |
606 |
△53.3 |
スウェーデン |
(百万クローナ) |
488 |
439 |
△10.1 |
香港ドル |
(百万ドル) |
373 |
325 |
△12.9 |
シンガポールドル |
(百万ドル) |
101 |
74 |
△25.9 |
(b) FXオプション取引
区 分 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比 (%) |
|
米ドル |
(百万ドル) |
1 |
1 |
△39.9 |
ユーロ |
(百万ユーロ) |
1 |
0 |
△27.9 |
英ポンド |
(百万ポンド) |
0 |
0 |
△42.1 |
(c) 暗号資産証拠金取引
区 分 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比 (%) |
|
BTCJPY |
(0.01BTC) |
- |
82.16 |
- |
ETHJPY |
(0.1ETHJPY) |
- |
2,116.40 |
- |
b. 自己資本規制比率
(単位:百万円) |
|
前連結会計年度 2021年3月31日 |
当連結会計年度 2022年3月31日 |
||
基本的項目 |
(A) |
5,404 |
6,687 |
|
補完的項目 |
その他有価証券評価差額金等 |
|
- |
- |
金融商品取引責任準備金等 |
|
- |
- |
|
一般貸倒引当金 |
|
13 |
22 |
|
長期劣後債務 |
|
- |
- |
|
短期劣後債務 |
|
100 |
100 |
|
計 |
(B) |
113 |
122 |
|
控除資産計 |
(C) |
482 |
525 |
|
固定化されていない自己資本の額 (A)+(B)-(C) |
(D) |
5,035 |
6,284 |
|
リスク相当額 |
市場リスク相当額 |
|
9 |
2 |
取引先リスク相当額 |
|
187 |
181 |
|
基礎的リスク相当額 |
|
1,068 |
1,163 |
|
控除前リスク相当額 |
(F) |
1,265 |
1,348 |
|
暗号資産等による控除額 (第17条関係) |
(G) |
- |
- |
|
計 (F)-(G) |
(E) |
1,265 |
1,348 |
|
自己資本規制比率 (D) / (E) × 100 |
|
397.8% |
466.1% |
(注)上記は金融商品取引法第46条の6第1項の規定に基づき、「金融商品取引業等に関する内閣府令」で定められた計算方法により算出しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たっては、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績や状況等を勘案して合理的と考えられる様々な要因に基づき判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
a. 繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金について繰延税金資産を計上しております。将来の課税所得の見積り及び繰延税金資産の回収可能性の判断等に当たっては、連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、課税所得の見積りは将来の経営環境の変化や当社グループの事業活動の推移、その他の要因により変化します。なお、将来、課税所得の予測に影響を与える諸要因に変化があり、当社が繰延税金資産の回収可能性がないと判断した場合には繰延税金資産を取り崩す処理を行うため、連結損益計算書の法人税等調整額が増加し、親会社株主に帰属する当期純利益が減少する可能性があります。
b. 貸倒引当金の計上基準
当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を検討して回収不能見込額を計上しております。なお、将来、相手先の財政状態が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
c. 固定資産の減損処理
当社グループは、主にインターネットを通じた金融商品取引事業を営んでおり、これらの事業に関する取引システム等については当社グループで開発しているため、多くの固定資産を保有しております。これらの保有する固定資産について、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損の兆候があり、減損損失を認識すべきであると判断した場合には、固定資産の減損処理を行っております。なお、将来、営む事業の収益性の悪化や経営環境の変化等により、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
d. 投資有価証券の減損処理
当社グループは、投資有価証券を保有しており、市場価格のない株式等以外のものについては時価法で、市場価格のない株式等については主として移動平均法による原価法で評価しております。保有する投資有価証券につき、市場価格のない株式等以外のものは株式市場の価格変動リスクを負っていること、市場価格のない株式等は投資先の業績状況等が悪化する可能性があること等から、実質価額が著しく下落し、その回復可能性が見込めないと判断した場合には、投資有価証券の減損処理を行っております。なお、将来、投資先の業績不振等により、減損損失の追加計上が必要となる可能性があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、以下のとおりです。
a.営業収益
当連結会計年度の営業収益は、前連結会計年度に続き2期連続で過去最高収益を更新しました。好調を維持した主な理由は、金融商品取引事業において顧客預り資産の増加率が直近3期に比べ低下したものの、顧客預り資産金額が引き続き増加を遂げたことにより、FX相場の変動率が低い状況においても一定のトレーディング損益を計上できる態勢を整備できたことが最大の要因であると認識しております。当連結会計年度のFX市場は第1四半期及び第2四半期は比較的穏やかな相場環境となったため前連結会計年度の収益水準を確保することに専念する状況でした。第3四半期に新興国通貨トルコリラ/円のフラッシュ・クラッシュと呼ばれる短時間で相場が急変動したこと等もあり営業収益は増加しました。第4四半期後半にロシアがウクライナに軍事進攻し世界情勢が混沌とする中、米国FRBのゼロ金利政策の解除も相まってFX市場が大きく変動したことで、より一層の営業収益の増加を達成し2期連続で最高営業収益を更新することができました。営業収益の好調を維持できたことは、顧客預り資産の増加を第一の目標にかかげ、様々な施策を実行してきた当社の成果が実ったものと認識しております。
金融商品取引事業においては、戦略的なマーケティングによる費用対効果の向上を図るとともに、お客様目線に立った魅力ある施策の実行及びお客様に継続して取引を行っていただけるサービスの提供を心掛け事業を推進してまいりました。今後も、お客様に安全で快適な取引を行っていただけるよう最新のシステム環境の整備充実を図るとともに、継続して当社でお取引いただけるようカスタマーサービス体制のさらなる充実及び魅力ある商品の提供を実現するよう同事業を営むトレイダーズ証券に求めていくことが重要であると認識しております。
システム開発・システムコンサルティング事業においては、外部からの大型システム開発案件の受注が無かったことから、外部への売上は前連結会計年度以前に納品した暗号資産システム等にかかる運用・保守に関する収益が中心となり前連結会計年度に比べ減少しました。当連結会計年度における外部売上減少の要因は、Nextop.Asiaがトレイダーズ証券向けのオンラインFX取引システムの追加開発を行い機能・安全性の強化に努めるとともに、トレイダーズ証券向けの暗号資産CFDアプリケーションの開発に注力したことに起因するものと考えております。
今後も品質の高いシステムをお客様に提供できるように、Nextop.Asiaには、同社の海外子会社を含めてシステム開発・運用管理体制のより一層の整備・強化に努めるよう求めていくとともに、トレイダーズ証券向けのデリバティブ商品の多様化を早期に実現するため商品開発のスピード向上に向けた対応を求めていくことが重要であると認識しております。
b. 純営業収益
当連結会計年度の純営業収益は、前連結会計年度に比べ増加しました。増加の主な理由は、上記 a.と同様の理由により営業収益が増加したことによるものです。
c. 営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度と同水準になりました。上記 b.純営業収益が増加したものの販売費及び一般管理費が同程度増加したことによります。
当連結会計年度の販売費及び一般管理費が増加した第1の理由は人件費の増加です。人件費増加の主な理由は、人員増による給与の増加及び決算賞与支給対象者の枠を海外従業員に広げ支給したことによります。その結果、販売費及び一般管理費合計は前連結会計年度と比較しますと約3%増加しました。
販売費及び一般管理費については、費用が適正に配分されているか、支出金額は適正な水準となっているか等を継続して注視してまいります。
d. 経常利益
当連結会計年度の経常利益は前連結会計年度に比べ増益となりました。増益の主な理由は、上記 c.営業利益までの利益が増加したこと及び営業外費用が前連結会計年度に比べ減少したことによります。営業外費用減少の主な理由は、前連結会計年度は株式会社ZEエナジー(以下、「ZEエナジー」といいます。)へ融資した金額を持分法投資損失として計上しておりましたが、ZEエナジーは当期中に持分法適用関連会社から除外し同損失の計上がなくなったことによります。
e. 親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ増益となりました。増益の主な理由は、上記 d.経常利益までの利益が増加したこと、特別損失が減少したこと及び法人税等が減少したことによります。
特別損失減少の主な理由は、前連結会計年度に計上したトレイダーズ証券のFX顧客立替金に対する貸倒引当金繰入額及びトレイダーズインベストメントが保有していた海外発行の転換社債型新株予約権付社債の評価損等の損失が当連結会計年度では発生しなかったことによります。また、2022年4月に海外子会社PJBの清算が結了したことで、前連結会計年度より当社が進めてまいりました「過去に投資を実行し成果が出なかった不採算事業の整理」(ZEエナジーが営む再生可能エネルギー関連事業、PJBが営む海外金融商品取引事業、トレイダーズインベストメントの海外投資案件等)を当連結会計年度においてほぼ終えることができました。今後これらの事業に関して多額の特別損失を計上することはないと考えております。
法人税等が減少した主な理由は、当連結会計年度の連結課税所得が前連結会計年度の課税所得を上回り法人税、住民税及び事業税は増加したものの、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 重要な会計方針及び見積り a. 繰延税金資産の回収可能性」に基づき算出した当連結会計年度における繰延税金資産が前連結会計年度末に比べ増加したこと等により、法人税等調整額が益となったことによります。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。
(金融商品取引事業)
トレイダーズ証券が営む当セグメントの営業収益は、「② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 a. 営業収益」に記載したとおりです。営業収益が前連結会計年度に比べ2億94百万円増加しましたが、販売費及び一般管理費が、Nextop.Asiaへのレベニューシェア型のシステム利用料及び人件費等の増加で前連結会計年度に比べ2億61百万円増加したことで、セグメント利益は前連結会計年度を32百万円上回りました。
トレーディング損益増加の源泉となる顧客預り資産の当連結会計年度末残高は、691億29百万円となり、前連結会計年度末に比べ40億72百万円増加しました。
証券会社の財務指標となる自己資本規制比率は当連結会計年度末 466.1%(前連結会計年度末 397.8%)となり、財務の健全性を維持しております。
(システム開発・システムコンサルティング事業)
Nextop.Asiaが営む当セグメントの営業収益は、トレイダーズ証券からのFX取引システムの利用料及び外部へのシステム等に係る保守運用収入及び販売収入からなります。当連結会計年度における外部売上は、当連結会計年度以前に納品した暗号資産システム等の保守運用収入が増加したものの、システム開発等の販売収入が減少し、前連結会計年度を57百万円下回りました。一方、内部売上はトレイダーズ証券のトレーディング損益が増加したことから、レベニューシェア型である同システム利用料収入等が前連結会計年度に比べ2億54百万円増加しました。その結果、当セグメントの営業収益は、前連結会計年度を1億96百万円上回りました。販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ、人件費、サーバー費用、減価償却費(ソフトウエア)等の増加により2億57百万円増加しました。その結果、セグメント利益は、前連結会計年度を1億2百万円下回りました。
Nextop.AsiaではFX取引システム及び暗号資産CFDアプリケーション等の金融商品取引システムの開発を中心に行っており、優秀な開発人員の確保を含め、システム開発・運用管理体制を整備・強化し、当グループ内外へのシステムの安定的な提供を可能とする体制構築を図っております。
翌連結会計年度においては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ③地政学的リスクへの対応」に記載しましたとおり、国内拠点における中長期的に安定したシステム開発体制の整備・拡充と専門要員の確保によるシステム品質の向上に向けて取り組むことで、中国・ベトナム・日本の3拠点における金融取引システムの開発・運用監視業務のバランスを重視した相互補完体制の構築を推進するために一定の投資を行ってまいります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、当社グループを取り巻く経営環境・事業環境・システム環境等の面から業績に影響を及ぼす事項について記載している「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記述したとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりです。
a. キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b. 財務政策
当社グループが注力するFX取引事業は、カバー先金融機関に預託する証拠金や日々の取引損益の値洗いに伴う決済金、顧客区分管理信託の受払に伴う立替資金等多額の運転資金が必要となるため、事業を安定化させるためには多額の長期安定資金の確保が必要となります。資金繰りにおいては顧客の取引損益の増減により生じる日々のカバー先金融機関との決済、顧客区分管理信託の受払に関する必要額が予見しづらく、時として多額に上ることも想定されるため、手許の待機資金を十分厚く保持することが必要になります。とりわけ、海外カバー先金融機関からの資金の受取は1~2営業日の日数を要するため、トレイダーズ証券が一時的に多額の資金を立替えなくてはならない可能性があります。
当社グループの財務基盤は、業績の回復とともに改善してきており、利益の積み上げで資金が増加するとともに、金融機関からの融資の取り組みも徐々に増えてきております。しかしながら、当社の資金は、上記の資金需要をまだ十分に満たすには至っていないため、今後も金融機関に対する融資の交渉を続けるとともに、事業運営上の安定化を促進させるための取組みを行ってまいります。また、万が一、将来において業績が悪化する等の状況に陥り、資金調達が必要と判断した場合には、金融機関等からの借入だけにとどまらず、第三者割当増資又は新株予約権等のエクイティ・ファイナンス及び社債等のデット・ファイナンス等、可能な限りの資金調達方法を検討し、実行することを考えております。
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