業績

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度(2021年4月1日から2022年3月31日まで)において、ロシアウクライナ問題が最大の懸念材料となりました。インフレ、配送コスト高などが、企業が収益本格回復を目指すうえで重しとなっています。

国内株式市場では、2021年の日経平均株価は企業の業績は堅調に推移するなか、コロナ変異株の出現や自動車産業を中心に半導体不足の影響により上値が重い展開が続いています。2022年に入ると原油など資源価格の上昇やロシアによるウクライナ侵攻により3月9日には昨年来安値となる24,681.74円をつけましたが、堅調な企業業績は円安ドル高が好感されて3月末の日経平均は27,821.43円で終えています。

米国では、FRBの金融政策、インフレの加速、ロシア問題と、不安要素が重なりました。経済分野で特に問題視されているのが、インフレの加速で、3月に発表された2月のCPIは約40年ぶりのインフレ状況となって、景気の重しとなっています。

アジア株式市場は、欧米先進国に比べてインフレ率が比較的低く、新型コロナ禍後の景気回復期待も高まっているため、東南アジア諸国を中心に株価が堅調に推移しました。その中で特に好調だったのはインドネシアで、資源価格の上昇や銀行貸出の増加を背景に主要指数であるジャカルタ総合指数は堅調に推移しました。また、ベトナムの主要指数であるVN指数は高値圏でほぼ横ばいに推移したものの、ウィズコロナ政策で国内景気が持ち直しており、輸出や製造業を中心に好調な企業業績が目立っています。

一方、中国本土と香港市場は、ロシア制裁を巡る米中間の政治リスクが高まり、3月から新型コロナの国内感染が広がったことで、上海総合指数と香港ハンセン指数は下落しました。中国政府は3月の全人代で経済の安定を最優先する姿勢を見せており、今後金融緩和や財政効果が経済全体に浸透すれば株式市場も安定を取り戻すことが予想されます。

このような状況のもと、当社グループは「より多くの人に証券投資を通じ より豊かな生活を提供する」という経営理念の下、資産形成を通じて、資産形成層の方々を生活の不安から解放し、希望にあふれるこの国の未来を彼らが創造するための後押しをすることをミッションとしています。

 

持株会社体制に移行した当社グループは、祖業である金融商品取引事業(証券事業)を中心とし、上場株式の他、ベンチャーキャピタル、バイアウト、プライベートデット等のファンドや不動産に対し投資を行う投資事業、機関投資家向けにヘッジファンドやセカンダリーファンド等のオルタナティブ運用商品を提供し、新たな収益基盤の構築を進める運用事業、外部人材の獲得ならびに社員の働き方の多様化を進める金融商品仲介事業、ベトナムにおける唯一の日系証券会社として、注文の取次ぎ、現地情報発信を行うベトナム証券事業を展開しております。

収束しないコロナ禍において当社グループでは、引き続き、在宅勤務やテレワーク、時差出勤等の感染予防対策を継続し、オンライン会議や室内換気の徹底など、感染拡大防止に努めております。

アイザワ証券では、2月に包括的業務提携先である西京銀行と4店舗目の銀証共同店舗・山口支店(旧山口コンサルティングプラザ)を開設いたしました。山口エリアのお客様に「銀証共同店舗」ならではの預金や株式投資等の複合サービスを提供し、多くのお客様からご好評を頂くとともに地域経済の活性化に取組んでおります。

商品サービスではアジア株式の取引拡充に伴い、上海・香港ストックコネクトと直結した取引システムを構築しました。これにより「上海A株」ではインターネット取引画面から発注が可能となると同時に、約定返送時間の短縮やお客様の手数料負担が軽減され、お客様にとって格段に利便性が向上されます。なお、当社では、お客様によりよい投資環境を提供するため、香港・上海・深圳・台湾・韓国・シンガポール・タイ・マレーシア・インドネシア・ベトナム・フィリピン各市場において、お客様に国内株感覚のリアルタイム取引を提供しております。

また、今期より注力していますIFAビジネスにおいては、契約IFA業者数44社、預り資産791億円、15,898口座(2022年3月末時点)まで伸ばし、プラットフォームビジネスの構築を進めています。当社グループが推し進める資産形成ビジネスの一翼を担っております。

なお、昨年3月より実施してきました自己株式取得(取得総数:150万株)は2022年1月14日に終了し、本年2月からは新たな自己株式取得(取得総数:100万株、予定期間:2022年2月~2023年1月)を開始しております。

これからも当社グループは、持株会社体制によりグループ各社がそれぞれの強みを発揮し、連携した活動により金融総合サービスグループへ邁進してまいります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下の通りとなりました。

a. 財政状態

当連結会計年度末の資産合計は1,047億23百万円と、前連結会計年度末に比べ24億3百万円の減少となりました。

当連結会計年度末の負債合計は466億93百万円と、前連結会計年度末に比べ20億87百万円の減少となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は580億29百万円と前連結会計年度末に比べ3億16百万円の減少となりました。

 

b. 経営成績

当連結会計年度の経営成績は、営業収益は160億50百万円(前連結会計年度比2.3%減)、営業損失は5億33百万円、経常利益は14億29百万円(同7.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は29億1百万円(同36.1%減)となりました。

 

c.セグメント毎の経営成績

なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいて記載しております。

証券事業の営業収益は148億10百万円(前連結会計年度年度比8.3%減)、セグメント損失は4億70百万円となりました。

運用事業の営業収益は6億35百万円(同205.5%増)、セグメント利益は21百万円となりました。

投資事業の営業収益は6億81百万円(同561.7%増)、セグメント利益は1億37百万円となりました。

上記のセグメント別営業収益には、セグメント間の内部営業収益又は振替高が含まれており、セグメント利益は連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は前連結会計年度末に比べ24億34百万円増加し、186億66百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果支出した資金は39億30百万円となりました。これは主に預り金の減少によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果獲得した資金は47億49百万円となりました。これは主に投資有価証券の取得、投資有価証券の売却によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果獲得した資金は9億59百万円となりました。これは主に長期借入金の借入れ、自己株式の取得によるものです。

 

③ トレーディング業務の概要

トレーディング商品:当連結会計年度末のトレーディング商品の残高は以下のとおりです。

 

前連結会計年度
(2021年3月31日)

当連結会計年度
(2022年3月31日)

資産の部のトレーディング商品(百万円)

244

361

 

商品有価証券等(百万円)

244

361

 

 

株式・ワラント(百万円)

59

203

債券(百万円)

184

157

受益証券等(百万円)

0

0

負債の部のトレーディング商品(百万円)

94

117

 

商品有価証券等(百万円)

85

117

 

 

株式・ワラント(百万円)

85

117

為替予約取引(百万円)

9

0

 

トレーディングのリスク管理:

トレーディング業務は、市況の変化に影響を受けやすく、取引商品の多様化並びにマーケットリスクが複雑化しておりますので、リスク管理は極めて重要と認識しております。当社グループのリスク管理の基本は、財務状況に合せたリスクを適切にコントロールすることであります。このため当社の連結子会社であるアイザワ証券株式会社では「自己計算による売買取引の実施権限に関する規程」を定め、ポジション枠、ロスカットルール、与信枠等の設定をしております。また、リスク管理は、商品部門、営業部門から独立したコンプライアンス部が掌握し、トレーディングポジションの状況は経営者に毎日報告されており、損益と合わせて報告書が月例取締役会に提出され分析・検討が行われております。

また、自己売買に関するポジション管理を目的とした、リスク管理委員会において、多様な取引手法やポジション枠の増加につきリスクをより正確に把握、監視する体制としております。

④ 生産、受注及び販売の実績

当社グループは、金融商品取引業を営む会社を中核とする企業集団であるため、「生産、受注及び販売の実績」に該当する事項はありません。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績等
(イ)財政状態

(資産合計)

当連結会計年度末の資産合計は1,047億23百万円と、前連結会計年度末に比べ24億3百万円の減少となりました。
 主な要因は、現金24億18百万円の増加、預託金43億20百万円の減少によるものです。

(負債合計)

当連結会計年度末の負債合計は466億93百万円と、前連結会計年度末に比べ20億87百万円の減少となりました。
 主な要因は、預り金44億67百万円の減少、長期借入金21億2百万円の増加によるものです。

(純資産合計)

当連結会計年度末の純資産合計は580億29百万円と前連結会計年度末に比べ3億16百万円の減少となりました。
 主な要因は、利益剰余金15億33百万円の増加、自己株式の増加に伴う純資産14億42百万円の減少、その他有価証券評価差額金22億16百万円の減少、非支配株主持分17億82百万円の増加によるものです。

 

(ロ)経営成績

(営業収益)

当連結会計年度の営業収益は160億50百万円(前年度比2.3%減)となりました。営業収益のおもな内訳は次のとおりです。

1)受入手数料

当連結会計年度の受入手数料は、101億76百万円(同2.2%減)となりました。科目別の概況は以下のとおりです。

ⅰ)委託手数料

委託手数料は外国株式委託取引の減少により、55億71百万円(同29.2%減)となりました。

ⅱ)引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料

引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料は、国内株式の引受額の増加により25百万円(同415.5%増)となりました。

ⅲ)募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料

募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料は、投資信託の販売の増加により17億5百万円(同106.6%増)となりました。

ⅳ)その他の受入手数料

その他の受入手数料は、ファンドラップ取扱いの好調に伴う投資顧問報酬の増加により、28億73百万円(同68.9%増)となりました。

2)トレーディング損益

当連結会計年度のトレーディング損益は、47億51百万円(同14.4%減)となりました。科目別の概況は以下のとおりです。

ⅰ)株券

外国株国内店頭取引売買代金の減少により、40億31百万円(同13.2%減)となりました。

ⅱ)債券

外国債券の取扱いの減少により、1億1百万円(同61.0%減)となりました。

 

ⅲ)その他

外国為替取引から生じる損益の減少等により、6億17百万円(同4.3%減)となりました。

3)金融収益

金融収益は信用取引収益の増加等により4億21百万円(同3.4%増)となりました。

なお、金融費用は信用取引費用の減少等により86百万円(同5.2%減)となりました。これにより、金融収支は3億35百万円(同5.8%増)となりました。

4)その他の営業収益

その他の営業収益は営業投資有価証券売上高及び不動産賃貸収入の増加等により7億1百万円(同850.7%増)となりました。
 なお、その他の営業費用は営業投資有価証券売上原価及び不動産売上原価の増加等により3億45百万円となりました。

 

(販売費・一般管理費)

販売費・一般管理費は、不動産関係費及び事務費の増加等により、161億53百万円(同5.0%増)となりました。

(営業外損益)

営業外収益は受取配当金14億90百万円、収益分配金4億63百万円等により20億58百万円となりました。営業外費用は投資事業組合運用損69百万円等により95百万円となりました。これにより営業外損益は19億62百万円の利益となりました。

(特別損益)

特別利益は投資有価証券売却益33億66百万円等により33億67百万円となりました。特別損失は固定資産売却損69百万円、投資有価証券売却損53百万円等により1億23百万円となりました。これにより特別損益は32億43百万円の利益となりました。

 

b. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

現在、当社グループの収益は主に、株式・投資信託等の約定に伴う受入手数料及び米国株式国内店頭取引、外国債券の販売、主にアジア株式取引の際に発生する外国為替取引等のトレーディング損益に依存しております。そのため、株式・債券相場が下落又は低迷すると、流通市場の市場参加者が減少し、売買高が縮小することから当社グループの受入手数料およびトレーディング損益が減少する可能性があります。また、自己勘定で市場リスクを内包するトレーディングを行っておりますので、株価・債券価格・金利・為替その他市場価格等の変動によりトレーディング損益に影響を及ぼす可能性があります。

証券会社は経済情勢及び市況環境の変動による影響を受けやすく、その中でも当社グループは営業収益に占める株式関連収益の割合が高いことから、株式市況の影響を大きく受けております。この状況に対応するため、預り資産の増加及び安定収益(ストック収益)の増加を当社の課題としており、持続的な高収益体制の構築のため、投資一任運用サービス「ブルーラップ」、「アイザワ ファンドラップ」、投資信託の販売及び残高の純増を強化しております。

特に、当連結会計年度においては「アイザワ ファンドラップ」を戦略的な中核商品とし、契約金額の積み上げを行ってまいりました。その結果、当連結会計年度末の契約金額残高は前年同期比38.0%増の605億51百万円となりました。引き続き契約金額の積み上げを行ってまいります。

 

c. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、2022年4月に策定した中期経営計画に基づき「より多くの人に証券投資を通じより豊かな生活を提供する」という経営理念のもと、資産形成を通じて、資産形成層の方々を生活の不安から解放し、希望にあふれるこの国の未来を彼らが創造するための後押しをすることをミッションとしています。

具体的には、2025年3月末までに、ROE(自己資本利益率)目標を8%以上、金融商品取引事業において、固定費カバー率を50%以上、グループ預り資産を2兆円以上とする目標を掲げております。

今後、資産形成ビジネスの確立に向け、アジア株営業の強化や地域金融機関との販売連携、IFAビジネスによるプラットフォームビジネスの構築等、他社との差別化を明確にして取組むとともに、持株会社体制による当社グループ各社が連携し、それぞれの強みを生かすことで、早期の達成を目指してまいります。

 

d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

証券事業は外国株委託取引及び外国株国内店頭取引の減少等により受入手数料及びトレーディング損益が減少し、営業収益は148億10百万円(前連結会計年度年度比8.3%減)、セグメント損失は4億70百万円となりました。

運用事業は堅調に推移し、運用報酬の増加に伴い、営業収益は6億35百万円(同205.5%増)、セグメント利益は21百万円となりました。

投資事業は賃貸不動産取得に伴う不動産賃貸収入の増加により、営業収益は6億81百万円(同561.7%増)、セグメント利益は1億37百万円となりました。

 

② キャッシュフローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

b. 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、信用取引買付代金の顧客への貸付であります。信用取引買付代金は株式市況の変動の影響を受けますが、当社グループは主に日本証券金融株式会社の貸借取引により調達しております。また、不測の事態に備え、安定的かつ機動的な財務運営を行うため、三井住友信託銀行株式会社と総額7億50百万円のコミットメントラインを設定しております。

なお、当連結会計年度における当社グループの借入金の総額は79億47百万円です。借入の内訳は金融機関等からの短期借入金37億95百万円、証券金融会社からの信用取引借入金11億15百万円、金融機関からの長期借入金30億36百万円です。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積に用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

この連結財務諸表の作成に当たりまして、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主に固定資産の減損会計、税効果会計、貸倒引当金、賞与引当金、役員賞与引当金、退職給付に係る資産、退職給付に係る負債及び法人税等であり、継続して評価を行っております。当社グループの採用した重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(追加情報)に記載しております。

なお、見積り及び判断・評価については、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

 

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