課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、その達成等を保証するものではありません。

 

(1) 会社経営の基本方針

アニコムグループは、社名に掲げた「ani(命)+communication(相互理解)=∞(無限大)」を企業活動の根源にすえています。これは、命のあるものすべてがお互いに理解し、尊重し合い、ともに一つの目的に向かって力を合わせることで、これまで不可能と思われていたことが可能になると考えているからです。

 こうした考えのもと、私たちアニコムでは、ペット保険事業を柱に、この無限大の価値創造力を活かし、世界中に「ありがとう」を拡大することを、グループの経営理念として掲げています。

 

(2) アニコムグループの理念体系


<中長期的な経営戦略>

これまで、当社グループは、anicomの名に込められた「全ての生命が、その違いを乗り越え相互に協力し合うことで無限の価値を産み出す」を経営理念とし、全ての生命が苦しみ等を受けることなく、光り輝く中でそのものの生を全うしていける社会を作ることを目指してまいりました。

そして、2000年の創業以来注力してきた「予防型ペット保険の確立」において、加入動物100万頭超、日々1万件以上の診療データと紐づく遺伝子情報、フード、腸内細菌等の予防や健康増進実現に向けた多面的な解析を可能とするデータ群を得られるようになりました。これにより、傷病原因が生命の設計図でありかつ生物学的遺伝産物である遺伝子起因なのか、フード起因なのか等について、統計的に明らかにしていくことで、新たな価値創出が可能な「データの量が質に変化する」局面に遷移できました。また、当社グループの事業領域も、保険事業を中心としつつ、川上の「ブリーディング・子犬猫のマッチングサポート」、川中の「健診付き保険・従来とは異なる個体に合わせたオーダーメイドフードの提供」、川下の「医療の提供」等と、新たな健康増進施策の機動的な投入を可能にすると共に、これまで当社グループを率いてきた保険事業にも好影響を与えあう有機的ポートフォリオを形成するに至りました。

これらの中で、当社グループは、激変する経営環境変化を受け、本年5月に「中期経営計画2022-2024」を新たに策定し、以下の3つの使命を掲げることといたしました。

①戦争抑止、平和の回復・維持発展に資する行動をペット業界として行う使命

②社会発展とペット業界発展が同調したサステナブルな業界へ変革させる使命

③高齢者・障がい者・子ども・社会をサポートする使命

 

これらの使命を果たすため、「世界中に無償の愛を伝え、平和を取り戻し、維持発展させること」を当社グループのパーパス(存在意義)として再定義し、社会的課題の解決に貢献しながら、経済的価値と社会的価値を創造するサステナビリティ経営(CSV経営)を志向していくとした中期経営計画を着実に実行してまいります。

 

<ペット保険事業とその他の事業のシナジー>


 

 (川上から川中の施策)

アニコム先進医療研究所株式会社等で実施している遺伝子検査事業においては、検査体制を強化し、この3年間で遺伝子検査検体数が累計35.7万件を超えるなど、事業の拡充を進めてきました。性格(行動)、品種、毛色、体質、親子判定などを一度に測定可能にする技術も実装予定で、今後も引き続き事業拡大を進めていく予定です。

当社グループ全体で進めているブリーディングサポート事業においては、出産効率を上げるための技術開発(幹細胞の活用や凍結精子利用技術等)、ブリーディング時の医療を支援するための往診サービス、生体販売を支援するための生体引き渡しセンター(こうのとり)の開設、繁殖管理システムの開発、ブリーディング場の賃貸提供など、ブリーダーを支援するための施策を拡充・進化させてきました。今後も引き続き当事業を重点施策と位置づけ、積極的なブリーダー支援策を講じることでペット業界の発展に寄与していきたいと考えています。

 

 (川中から川下の施策)

アニコム パフェ株式会社で実施しているフード事業において、遺伝子検査や腸内フローラ検査で発見されたリスクに対し、エビデンスのある有効成分を配合したOneToOneフード「きみのごはん」シリーズの販売を開始しました。今後も、ブリーダーへの販売強化等を通じて、引き続きフード事業を拡大させていきたいと考えています。

アニコム先進医療研究所株式会社の動物病院事業については、現在、57病院にまで拡大しています。これらの病院では、予防診療から再生医療まで、様々な診療を行っており、動物病院事業を展開・拡大していく中で、当社グループの強みであるカルテ管理システムの利用病院を広げ、そこから得られる医療データや保険金データを活用し、次世代の予防法の確立を目指していきたいと考えています。また、再生医療の普及のためにアニコムグループが中心となって「動物再生医療技術研究組合」を立ち上げました。2022年3月末時点で430の動物病院が加入し、2021年度で200投与を超える幹細胞投与実績を達成しています。今後も再生医療の対象疾患の拡大と、新たな技術の投入を目指していきたいと考えています。

 

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題

<経営環境等>

2021年度のペット業界全般は、コロナ禍で堅調だったペット飼育需要に一部落ち着きが見え始めるも、新たにペットを家族に迎える人が増加し、新規飼育頭数が前年比約1万頭増の約88万頭となりました。また、国内のペット産業全体の市場規模についても、ペットの家族化の進展により健康管理を意識する飼い主が増えたことなどから、約1.6兆円にまで伸長するとともに、国内のペット保険市場の普及率も約16.4%にまで伸長しています。

 

[犬・猫の飼育頭数の推移及びペット産業の市場規模]


※ペットフード協会 全国犬猫飼育実態調査 の推計方法変更により、過去公表の推計値と差異がございます。

 

 

また、その他の特筆すべき経営環境の変化として、改正動物愛護法が施行されたことによる規制の強化等によりペット業界構造自体が変革していく状況になったことが挙げられます。当該法改正は、繁殖・販売を含めたペット業界全体に大幅な改善を求めるものであり、関係する事業者の経営目線においては短期的に大きなコスト負担を強いるものとなっています。当社グループでは、この法改正を単にリスクと考えるのではなく最大のチャンスと捉え、これまで培ってきたグループ全体のリソース全てを用いて、ペット業界全体の経営効率向上を目指していきたいと考えています。

 


 

 

<中期経営計画2019-2021>

当社グループでは、「中期経営計画2019-2021」において、ペット保険事業の持続的成長に加え、財務の健全性と資本効率を両立させることを重視するとしていました。その最終年である2021年の実績は次の通りです。

 

 

<成長性>

ペット保険市場の伸長を受けて、アニコム損保の新規の保険契約件数は過去最高の22.9万件(前期比7.4%増)となり、保有契約件数は102.8万件(前期末比11.6%増)と100万件を突破しました。また、株式会社シムネットによる飼い主とブリーダーとのマッチングサイト事業や、アニコム先進医療研究所の動物病院事業等によるその他経常収益も順調に増加し、当社グループの経常収益は530億円、経常利益は31.6億円となり、共に過去最高となりました。また、経常収益は3年平均成長率14%で着地し、計画の3年平均成長率10%以上を大幅に上回る高成長を達成しております。一方で、経常利益は3年平均成長率12%で着地し、計画の3年平均成長率20%以上を下回る結果となりました。経常利益が未達であったことの大きな要因は、①ペット飼育需要の高まりによる新規契約の獲得を優先した結果、未経過保険料や代理店手数料等が増加したこと、②コロナ禍で通院頻度と保険金単価が増加したことによる発生保険金の増加が重なり、利益伸長が抑制されたことによるものと認識しています。この結果を踏まえ、「中期経営計画2022-2024」では、規模と収益のバランスを重視する成長を目指していきたいと考えています。

 

 

<安全性>

ソルベンシー・マージン比率は334.6%で着地し、目標の380%程度を下回る結果となりました。これは、コロナ禍におけるペット飼育需要の高まりの中で積極的に新規契約の獲得を実施したことによる既経過保険料の増加に伴う「一般保険リスク」が増加したことに加え、資産運用総額の拡大による「資産運用リスク」の増加等によるものと認識しています。「中期経営計画2022-2024」では、中期的な保険の健全性に係る資本規制(リスク係数等)見直しの議論が規制当局で進んでいることから、今後新たに創出されるリスク量を勘案しながら目標値の再設定を検討していくと同時に、引き続き保険金の削減や損害率の低減に努め、ペット保険事業等の強化に取り組んでいきたいと考えています。

 

 

<効率性>

ROEについては8.0%で着地し、目標の10~12%程度を下回る結果となりました。当連結会計年度のROEについては、2018年度に実施した資金調達の影響等で、6.5%まで低下した前期から、収益性と資本効率の向上により、8.0%まで改善しましたが、依然として目標には達しておりません。「中期経営計画2022-2024」では、2024年度目標として新たにROE10%水準を掲げており、ペット保険事業に加え、保険以外の事業の収益性や投資効率の改善を図ることで資本効率の向上を図り、エクイティ・スプレッドの拡大を目指していきたいと考えています。

 

 

<中期経営計画2022-2024>

2022年から2024年までの3年間については、2030年度の第二期創業期完了を見据えた経営ビジョン実現に向けた基盤を構築する第1フェーズと位置付け、資本・リスク・リターンのバランスを取りながら、株主還元の目線も重視するフェーズに転換します。経営指標としては、2024年度のアニコム損保単体のソルベンシー・マージン比率300~320%、ROE10%水準、配当性向20%水準を目指します。これらの指標は、中期経営計画にも掲げており、こうした目標を達成することを通じて、企業価値の向上を目指していきます。

 

 2022年度においては、ペット保険の更なる普及と進化、および保険事業とのシナジー創出事業(保険事業の支援とスタビライザー機能の強化)の拡大を通じて、ペット業界の発展と社会発展が同調するサステナブルな業界へ変革させ、同時に当社グループの着実な利益成長と資本効率の向上を進めてまいります。また、これらを支えるデータ収集基盤の活用と、特許を含めた知財化をより一層推進し、中・長期的な持続的成長を目指していきます。その実現に向けて、2022年度の重点施策を策定し、着実に対応してまいります。


 


 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得