業績等の概要
(1)業績
当連結会計年度の日本株式市場は、米国の雇用統計の改善とバイデン大統領による500億ドル規模の半導体生産支援策などによる米国市場の上昇を受け、小幅な上昇で始まった後、米国の長期金利や米国株市場の先行きに警戒感が高まり下落基調となりました。その後世界的な景気回復期待や国内企業の好調な決算、国内での新型コロナワクチン接種の進展期待に伴い上昇する場面もあったものの上値が限定的となっていましたが、9月に菅自民党総裁の次期自民党総裁選不出馬の表明を受け、閉塞感の強かった政局の変化が好感され9月中旬には日経平均株価は3万円台を回復いたしました。しかしながら、中国の大手不動産開発企業の信用不安から株式市場の警戒感が高まり下落し、その後は衆議院議員選挙で与党が大方の予想よりも議席を多く獲得したことなどで上昇しましたが、感染力の強い新型コロナウイルスの変異種(オミクロン株)が確認されたことで経済活動再開への期待が後退したことなどにより日経平均株価は急落するなど一進一退を繰り返しました。2022年に入りウクライナでの地政学リスクの高まりにより日本株式市場は下落し、ロシア軍によるウクライナの首都や原子力発電所への攻撃を受けて市場の警戒感の高まりや、日銀が金融緩和政策を維持するなか円安が進行したことなどにより、日経平均株価は前期末に比べ4.7%下落し27,821.43円で取引を終えました。
このような市場環境のもと、当社グループの当連結会計年度末運用資産残高は、1兆5,557億円(注1)と前期末に比して1.3%増加しました。
上記の結果、当連結会計年度における残高報酬(注2)は前期比15.2%増の125億77百万円となりました。さらに、成功報酬(注3)は、前期比61.8%減の12億8百万円となり、営業収益は前期比1.8%減の140億43百万円となりました。
営業費用及び一般管理費は、前期比4.6%減の75億78百万円となりました。これは主にオフィス関連費用及びESOP関連費用が減少したこと等により費用が減少したものです。
これらの結果、営業利益は前期比1.8%増の64億64百万円、経常利益は前期比0.8%増の62億41百万円となりました。また、当社が保有する投資有価証券の一部売却による投資有価証券売却益6億63百万円を特別利益に、投資有価証券評価損5億60百万円を特別損失に計上し、税金等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比17.4%増の40億70百万円となりました。
なお、事業の持続的かつ安定的な基盤となる収益力を示す指標である基礎収益(注4)は残高報酬の増加等により前期比38.5%増の61億57百万円(前期は44億44百万円)となっており、実質的な収益体質は着実に強化されております。
(注1)当連結会計年度末(2022年3月末)運用資産残高は速報値であります。
(注2)残高報酬には、日本再生可能エネルギー投資戦略に関連する発電所等の管理報酬を含んでおります。
(注3)成功報酬には、株式運用実績から発生する報酬の他に、日本不動産投資戦略に関連する不動産購入・売却に対して当社グループがファンドから受ける一時的な報酬や、日本再生可能エネルギー投資戦略に関連する発電所スキームの組成の対価等として受ける一時的な報酬(アクイジションフィー)及び再生可能エネルギーファンドが、投資対象である発電所を売却して譲渡益が発生する場合に受領する報酬を含んでおります。
(注4)基礎収益とは、経常的に発生する残高報酬(手数料控除後)の金額から経常的経費を差し引いた金額であり、当社グループの最も重要な経営指標のひとつであります。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ7億35百万円減少し、当連結会計年度末は191億99百万円(前期比3.7%減)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主たる要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは26億61百万円の収入(前期は61億18百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益63億45百万円、法人税等の支払額36億27百万円の計上等があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは11億80百万円の支出(前期は29億円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出40億74百万円、投資有価証券の売却及び償還による収入25億71百万円の計上等があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは24億80百万円の支出(前期は18億44百万円の支出)となりました。これは主に配当金の支払い22億28百万円、自己株式の取得による支出2億52百万円の計上があったことによるものです。
営業の実績
(1)営業収益の実績
当社グループの連結営業収益の項目別内訳は以下のとおりです。
項目 |
前連結会計年度(2021年3月期) |
当連結会計年度(2022年3月期) |
||
金額 |
構成比(%) |
金額 |
構成比(%) |
|
残高報酬 |
10,922 |
76.4% |
12,577 |
89.6% |
成功報酬(注) |
3,166 |
22.1% |
1,208 |
8.6% |
その他 |
206 |
1.5% |
258 |
1.8% |
営業収益合計 |
14,295 |
100.0% |
14,043 |
100.0% |
(注)成功報酬には、上場株式投資戦略605百万円(前期は1,621百万円)、再生可能エネルギー投資戦略からのアクイジションフィー356百万円(前期は1,064百万円)、再生可能エネルギーファンドが、投資対象である発電所を売却して譲渡益が発生する場合に受領する報酬246百万円(前期は470百万円)が含まれております。
・残高報酬
残高報酬料率(ネット・ベース)の推移は以下のとおりです。
区分 |
前連結会計年度 (2021年3月期) |
当連結会計年度 (2022年3月期) |
当社グループ残高報酬料率 |
0.69% |
0.69% |
(注) 残高報酬料率(ネット・ベース)=(残高報酬-残高報酬に係る支払手数料)÷ 期中平均運用資産残高
・成功報酬
(株式運用ファンド関連)
成功報酬は、単純なケースでは過去のファンド計算期間末日の「一口当たり純資産価額」=「Net Asset Value Per Share」(以下、「NAVPS」と言います。)の最高値を、今ファンド計算期間末日のNAVPSと比較して、今ファンド計算期間末日のNAVPSの方が高かった場合に、値上がり部分に一定料率をかけて計算します(これを「ハイ・ウォーター・マーク方式」といいます)。
また、契約によっては、ベンチマークを一定以上上回った部分に一定料率をかけて計算するものもあります。
(再生可能エネルギーファンド関連)
事業計画を策定、工事業者の選定・管理、固定価格買取制度の認定手続き、資金調達など、一連の発電所開発プロセスが成就した場合に、プロジェクトコストに一定料率を乗じた成功報酬(アクイジションフィー)を受領する場合があります。
また、当社子会社が運用する再生可能エネルギーファンド(グリーン・フィールド投資ファンド(*))が投資対象である発電所を売却して譲渡益が発生する場合には、その売却益に一定料率を乗じた成功報酬を受領する場合があります。
なお、この売却に際しては、上記とは別の当社子会社が運営する再生可能エネルギーファンド(ブラウン・フィールド投資ファンド(*))も売却先候補となりますが、その場合であっても、双方のファンドを運用する両子会社は、それぞれ適切な利益相反管理のもとで独立した意思決定を行っており、双方のファンドの投資家にとって、それぞれが最良の条件で譲渡取引を執行しております。譲渡価格の決定に際して外部評価機関の評価を利用しております。
(*)グリーン・フィールド投資ファンドとは、発電所の開発段階から運転開始までのフェーズに投資するファンドであります。また、ブラウン・フィールド投資ファンドとは、発電所の運転開始後のフェーズに投資するファンドであります。
絶対リターン追求型の運用に多いハイ・ウォーター・マーク(HWM)方式の成功報酬の仕組み
(注)1.上記の図は成功報酬の仕組みを簡便に説明したもので、実際の成功報酬の体系及びファンドの基準価格の
計算方法を厳密に説明しているものではありません。
(注)2.上記では、説明の都合上、成功報酬の料率を便宜的に20%として計算しております。
(2)運用資産残高の実績
以下の表は、当社グループの当期の運用資産残高の実績を示したものです。なお、日本円建て以外の運用資産残高を日本円に換算する際には、それぞれの時点における月末為替レートを用いております。
当社グループは、市場に影響されない安定的な投資戦略と収益性の高い投資戦略によるハイブリッドのビジネスモデルを強化・拡大して成長することを目指しており、現在「日本株式」、「OneAsia」、「実物資産」及び「プライベート・エクイティ」の投資戦略を4本の柱としております。
① 投資戦略別の四半期運用資産残高の推移 (単位:億円)
投資戦略 |
2021年6月 |
2021年9月 |
2021年12月 |
2022年3月 |
日本株式 |
10,460 |
11,307 |
11,326 |
10,210 |
OneAsia |
1,366 |
1,171 |
1,180 |
1,050 |
実物資産 |
2,538 |
2,538 |
2,543 |
2,564 |
プライベート・エクイティ |
1,162 |
1,174 |
1,457 |
1,731 |
合計 |
15,528 |
16,191 |
16,507 |
15,557 |
(注) 1.金額は、時価純資産額であり、表示単位未満を切り捨てて表示しております。
2.2022年3月末運用資産残高は速報値となっております。
② 平均運用資産残高 (単位:億円)
|
2021年3月期 連結会計年度 |
2022年3月期 連結会計年度 |
当社グループ合計 |
13,438 |
15,719 |
(注) 1.各期の月末運用資産残高の単純平均であります。
2.金額は、時価純資産額であり、表示単位未満を切り捨てて表示しております。
3.2022年3月末運用資産残高は速報値となっております。
③ 成功報酬付運用資産残高及び比率
会社名 |
|
2021年3月 |
2022年3月 |
当社グループ合計 |
残高(億円) |
4,987 |
5,710 |
比率(%) |
32.5 |
36.7 |
(注) 1.金額は、時価純資産額であり、表示単位未満を切り捨てて表示しております。
2. 2022年3月末運用資産残高は速報値となっております。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、後述の「第5経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」をご参照ください。
(2)当連結会計年度の経営成績の分析
当社グループは、有史に残るであろうパンデミックや地政学リスクが顕在化する中においても、引き続き安定した運用実績を維持し、コストコントロールも続けた結果、安定的に稼ぐ力である基礎収益を過去最高にまで増加させています。
当連結会計年度は、営業収益は主に成功報酬の減少により1.8%減少し140億43百万円となりましたが、運用資産残高(AUM)の平均は前期に比べ2,281億円高い水準となっており、残高報酬は15.2%増加して125億77百万円となっております。コスト面において主にオフィス関連費用が減少したことで経常的経費は47億62百万円となり、結果として基礎収益は61億57百万円と2007年3月期以来過去最高を更新しており、収益力が着実に強くなっていると考えています。なお、営業利益は1.8%増加し64億64百万円、特別利益の計上もあり親会社株主に帰属する当期純利益は17.4%増加し40億70百万円となりました。
当連結会計年度末(2022年3月末)のAUMは、前期末(2021年3月末)に比べて1.3%増加し1兆5,557億円となりました。AUMを2026年3月末までに2倍の3兆円に増加させることを当面の目標としております。私たちの厚い人財力、投資力によって運用パフォーマンスの質を維持しながら、AUM3兆円の実現を目指していきます。
現在AUM1兆5,557億円のうち1兆210億円は日本株式の投資戦略です。これは創業から32年間、こつこつと積み上げてきたスパークスの投資力と運用実績の賜物です。ハイブリッド型収益モデルにおいて成功報酬を計上できる戦略のひとつがロング・ショート戦略となり、前期目標としていたAUM1,000億円を達成しています。このような成功報酬が付帯する運用戦略のAUMを維持・増加することは、スパークスの強みであり、他社の追随を許さないスパークスのユニークさの土台をなすものです。ESGの投資についても、早い時期からESGに関する分析・勉強を積み重ねてきています。現在、世界の投資家から日本のESG投資について興味をもってアプローチしていいただいており、今後スパークスがESG投資の先鞭を切って世界に発信していく土台ができたと考えております。
アジアの上場株式に投資するOneAsia投資戦略も、アジア人としてアジアのために投資する会社でありたいという思いから、立ち上げております。ここから3年、5年を見据えて、スパークスのアジア株投資を日本株投資と肩を並べる、もしくはそれ以上のAUMを運用するファンドに成長させることが私の目標であります。
再生可能エネルギー発電所への投資については、スパークスがすでに投資・管理している日本全国30カ所以上の再生可能エネルギー発電所をネットワーク化して新たな価値を生んでいくことも含めて、再生可能エネルギー、気候変動といった時代の大きなテーマに投資会社として取り組んでいくことが、この戦略の大きなステップであり大きな可能性があると考えております。
プライベートエクイティの戦略については、未来創生2号ファンドも順調に投資が進み、前期は3号ファンドを設立し、3号ファンドのAUMは前期末で515億円となりました。規模・質ともに日本で最大級のベンチャー投資の運用機関になることができたと思います。
「世界で最も信頼・尊敬されるインベストメント・カンパニーになる」というビジョンを持ち続けながら、投資家の皆様に支持される会社であり続けるよう努力精進してまいります。
なお、経営成績の分析については、「第2事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況の分析(1)業績」に含めて記載しております。
(次期の見通し)
当社グループの主たる事業である投信投資顧問業は、業績が経済情勢や相場環境によって大きな影響を受けるため将来の業績予想は難しいと認識しており、次期の見通しについての具体的な公表は差し控えさせていただきます。
(3)当連結会計年度の財政状態の分析
<資産の部>
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ8億45百万円減少し、371億41百万円となりました。主な増減内訳は、現金及び預金が7億35百万円の減少、投資有価証券が2億7百万円の増加、長期貸付金が1億の減少となっております。
<負債の部・純資産の部>
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ18億93百万円減少し、128億16百万円となりました。主な増減内訳は、未払法人税等が14億66百万円の減少となっております。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ10億48百万円増加し、243億24百万円となりました。主な増減内訳は、利益剰余金が16億71百万円の増加、その他有価証券評価差額金が6億26百万円の減少となっております。
(4)資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの投資を目的とした主な資金需要につきましては、シードマネー投資等によるものであります。
短期運転資金は自己資金を基本としており、シードマネー投資等につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金等の有利子負債の残高は91億36百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は191億99百万円となっております。
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