文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
① グループ長期ビジョン及び中期経営計画
当社グループは、企業理念「信頼を未来へ」のもと、持続的成長と中長期的な企業価値の向上を目指すため、2030年頃を見据えた長期ビジョン「次世代デベロッパーへ」及び2020~2024年度を対象としたグループ中期経営計画を策定しております。長期ビジョンでは、「社会課題の解決」と「企業としての成長」をより高い次元で両立していくことで、2030年頃に連結事業利益1,200億円を達成するとともに、SDGs達成への貢献を果たすことを掲げております。グループ中期経営計画(2020~2024年度)では、長期ビジョン実現に向けて、以下の「5つの重点戦略」と「ESG経営の高度化」を着実に推進することにより、後記「(2)目標とする経営指標」に示す経営指標に係る目標数値等の達成を目指すこととしております。
〈当社グループ長期ビジョン〉
イ.重点戦略① 「大規模再開発の推進」
・環境負荷の低減、自然災害への対策強化、賑わい拠点の創出、豊かなコミュニティの形成及び多様なパートナーとの協働と先進的なテクノロジーの活用による新たな価値の創出等によって、社会課題解決に貢献するまちづくりを実現し、オフィスビルポートフォリオの価値向上を目指します。
・東京駅前の旧本社ビルを含む再開発プロジェクトをはじめとする複数の大規模再開発プロジェクトを推進することで、安定的な賃貸利益の拡大を図ります。
ロ.重点戦略② 「分譲マンション事業の更なる強化」
・競争力の高いマンションの開発機会を継続的に獲得し、社会変化に対応した良質な住まいを提供することで、分譲マンション事業の更なる強化を図ります。
・大規模な再開発や建替えプロジェクトを継続的に展開し、安定的な利益の確保を目指します。
ハ.重点戦略③ 「投資家向け物件売却の拡大」
・不動産投資ニーズを捉えた多様なアセットの開発機会の積極的な獲得及び戦略的投資・売却の推進により、継続的な利益成長と資本効率の向上を目指します。
・資本効率の観点から固定資産についても収益性・将来性等を考慮し、ポートフォリオを見直します。
ニ.重点戦略④ 「仲介・ファンド・駐車場事業の強化」
・不動産ストックの増加に着目した仲介事業並びに不動産の有効活用ニーズを捉えた駐車場事業を強化し、グループ関与アセットの拡大を目指します。
・開発・保有物件を当社がスポンサーを務めるREIT等へ売却することで、グループAUMを拡大し、ファンド事業の成長を図ります。
ホ.重点戦略⑤ 「海外事業の成長」
・長期にわたり展開している中国での事業及び他のアジア諸国での開発を継続して推進します。
・現地有力パートナーとの協業を通じて新規の事業機会を獲得することにより、利益の拡大を目指します。
ヘ.「ESG経営の高度化」
・サステナビリティ施策をグループ全社で横断的に推進するため、サステナビリティ委員会等を通じて、ESGに関する重要事項の審議や目標の設定、進捗状況のモニタリング、達成内容の評価等を行うことで、サステナビリティ施策を継続的に展開します。
・ESG格付機関等による評価項目をベンチマークツールとして活用し、ESGインデックスへの組み入れを目指します。
② マテリアリティ
当社グループは、長期ビジョンの達成に向けて、事業を通じて社会と共有する価値を意識した取り組むべき14の重要課題を特定しております。事業を通じて重要課題に取り組み、社会価値を創出することで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
〈当社グループマテリアリティ〉
③ 気候変動への対応
当社グループは、気候変動は最も重要な社会課題の一つであり、脱炭素社会の実現に貢献することは社会的使命であるとの認識のもと、グループ全体の温室効果ガス排出量を2030年度までに40%削減(2019年度比)、2050年度までにネットゼロとする中長期目標を設定するとともに、当該目標がパリ協定の求める水準(注)1に整合していることを示す「SBT(Science Based Targets)」認定を取得しております。また、2050年までに事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目指す国際的な環境イニシアチブである「RE100」に参加している他、投資家等に適切な投資判断を促すために有用となる気候変動関連情報のグローバルな開示フレームワークを示す提言「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」への賛同も表明しております。
当社グループは、長期ビジョン及び中期経営計画の達成に向けて、ZEB(注)2・ZEH(注)3の開発や、再生可能エネルギー(注)4の導入、グリーンビルディング認証(注)5の取得といった脱炭素社会の実現に向けた具体的な取り組みを加速し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
(注)1.世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準に抑え、また1.5℃に抑えることを目指すもの。
2.「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」の略称で、先進的な技術の採用による大幅な省エネ化、再生可能エネルギーを導入することにより、エネルギー自立度を極力高め、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物。
3.「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称で、断熱や省エネルギーなどのエネルギー消費低減と発電によるエネルギー創出を総合して、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した住宅。
4.再生可能エネルギーに分類される非化石証書の活用を含む。
5.建設や運営にかかるエネルギーや水使用量の削減、施設の緑化など、建物全体の環境性能が高まるよう最大限配慮して設計された建築物を客観的に評価する指標。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、グループ中期経営計画(2020~2024年度)において、連結営業利益に持分法投資損益を加えた「連結事業利益」を目標とする利益指標として採用し、最終年度である2024年度については「連結事業利益750億円」を目標として掲げております。
また併せて、2024年度における資本効率の指標として「ROE8~10%」、財務指針として「D/Eレシオ2.4倍程度」、「有利子負債/EBITDA倍率12倍程度」を掲げており、財務健全性の維持と資本効率の向上を図りながら利益目標の達成を目指すとともに、事業ポートフォリオ及び資産構成の最適化に取り組みます。
(3)経営環境及び対処すべき課題
今後のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの追加接種、治療薬の普及等により、経済活動が正常化に向かうことが期待されるものの、引き続き感染症による影響への対応を余儀なくされるとともに、供給面の制約、原材料価格の動向、金融資本市場の変動、国際情勢等の影響を注視する必要があり、先行き不透明な状況が続くものと見込まれます。
当不動産業界におきましては、コロナ禍による人々の価値観・行動様式の変容、デジタル化の加速といった事業環境の変化に対応するとともに、気候変動、災害への対応など様々な社会課題への取り組みが求められています。オフィスには、多様な働き方を可能としイノベーションを促進する「場の価値」が、住宅には、在宅勤務を含む多様な使い方やライフスタイルを実現できる「場の価値」が求められ、あらゆる事業において、デジタル化の進展等により多様化・高度化する顧客ニーズに応える「体験価値」の提供が必要とされるものと考えます。
このような認識のもと、当社グループは、グループ中期経営計画(2020〜2024年度)の着実な達成に向けて、5つの重点戦略である「大規模再開発の推進」、「分譲マンション事業の更なる強化」、「投資家向け物件売却の拡大」、「仲介・ファンド・駐車場事業の強化」、「海外事業の成長」の推進と「ESG経営の高度化」に努めてまいります。そのなかで、顧客の価値観・ニーズの変化に的確に対応した商品・サービスの提供や事業におけるデジタルトランスフォーメーションに注力することにより、「場の価値」と「体験価値」の創出を通じて、人々の心豊かな暮らしに貢献してまいります。さらに、当連結会計年度に設定した温室効果ガス削減の中長期目標の達成に向けて、ZEB・ZEHの開発、再生可能エネルギーの導入等の取り組みを加速させるなど、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
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