(1) 経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大、二度におよぶ政府による緊急事態宣言の発令等を受け、長期に亘り、企業活動や個人行動に大きな制約が課されました。多くの企業において既存のビジネスモデルの継続が困難となり、ニューノーマルに向けた対応力が、大きく試される1年となりました。
オフィスビル業界におきましては、新型コロナウイルス感染症への対応策として、テレワークやオンライン会議などの新しい働き方が急速に普及し、企業がオフィスの在り方を見直す機運が高まりました。東京・大阪ともにビジネス地区では、年度後半頃より空室率が上昇し、賃料水準も弱含み傾向となっております。
こうした状況の下、当社グループは、お客様の安心・安全を第一に、新型コロナウイルス感染症対策等を木目細かく行いながら、ビル管理品質向上活動にも継続して取り組み、競合ビルとの差別化を図ってまいりました。こうした顧客目線に立ったテナントサービスを提供し続けることで、高水準の入居状況を維持すると共に、賃料水準の適正化を図り、営業収益の拡大に努めました。一方で、新型コロナウイルス感染症により、営業活動に多大な影響を受けた一部商業テナントに対しては、賃料の支払い猶予、減免等を行いました。
中期経営計画の進捗については、重点施策のうち、「海外事業の推進」において、豪州シドニー中心地区のオフィスビル開発プロジェクト「275 George Street」(地上15階、地下3階、貸床面積7,298㎡)が2020年12月に竣工いたしました。また、「既存アセットの競争力維持・強化」では、「御堂筋ダイビル」の建替計画が順調に進捗し、2021年3月から解体工事に着手しております。更に「ビル管理事業の強化・拡大」では、グループ会社である商船三井興産㈱が、㈱ノワテックを2020年8月に買収し事業の拡大を図るとともに、同社のノウハウを生かした次なるステップへの布石といたしました。
当連結会計年度の経営成績につきましては、営業収益は42,909百万円と前連結会計年度に比べ92百万円(0.2%)の増収、営業利益は12,101百万円と前連結会計年度に比べ540百万円(4.7%)の増益となりました。
営業外損益では受取配当金は減少いたしましたが、社債発行費と支払利息の減少及び営業利益の増益を受け、 経常利益は11,672百万円 と 前連結会計年度に比べ813百万円 (7.5%)の増益 となりました。
特別損益につきましては、当連結会計年度は特別利益として投資有価証券売却益707百万円、特別損失として建替関連損失114百万円、固定資産除却損25百万円を計上いたしました。一方、前連結会計年度は特別利益として投資有価証券売却益842百万円、特別損失として建替関連損失204百万円、固定資産除却損27百万円を計上いたしました。
この結果、 親会社株主に帰属する当期純利益は8,437百万円 と 前連結会計年度に比べ505百万円 (6.4%)の増益 となりました。
セグメントごとの業績は次のとおりであります。
連結売上高の78.2%を占める当セグメントでは、「BiTO AKIBA」や「ダイビルPIVOT」等の収益寄与等により、営業収益は33,544百万円と前連結会計年度に比べ716百万円(2.2%)の増収となりました。修繕費、管理委託料、固定資産税及び減価償却費の増加等により営業費用が増加しましたが、営業利益は13,268百万円と前連結会計年度に比べ638百万円(5.1%)の増益となりました。
連結売上高の20.2%を占める当セグメントでは、新型コロナウイルス感染症拡大を受け一部の物件を営業休止又は縮小したこと等により、営業収益は8,661百万円と前連結会計年度に比べ485百万円(5.3%)の減収となり、営業利益は522百万円と前連結会計年度に比べ9百万円(1.7%)の減益となりました。
連結売上高の1.6%を占める当セグメントでは、工事請負高の減少等により、営業収益は703百万円と前連結会計年度に比べ138百万円(16.4%)の減収となり、営業利益は149百万円と前連結会計年度に比べ36百万円(19.8%)の減益となりました。
(注)1 セグメントごとの業績の営業収益については、セグメント間の内部取引を含んでおりません。
2 「その他」の区分は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、工事請負、工事管理、不動産仲介等を含んでおります。
当連結会計年度末の財政状態につきましては、資産合計は前連結会計年度末に比べ10,501百万円増加し、393,928百万円となりました。負債合計は前連結会計年度末に比べ983百万円増加し、226,581百万円となりました。純資産合計は前連結会計年度末に比べ9,518百万円増加し、167,346百万円となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は17,889百万円となり、前連結会計年度末に比べて1,552百万円増加いたしました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動により得られた資金は13,659百万円となりました。未払又は未収消費税等の増減額等が増加しましたが、預り敷金及び保証金の減少等により、得られた資金は前連結会計年度に比べて911百万円減少いたしました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動により使用した資金は3,845百万円となりました。これは主に、「275 George Street」の竣工に伴う有形固定資産の取得による支出等であり、使用した資金は前連結会計年度に比べて23,457百万円減少いたしました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動により使用した資金は8,387百万円となりました。これは主に、長期借入れによる収入、社債の償還による支出等によるものであります。なお、前連結会計年度は社債の償還による支出、社債の発行による収入等により、得られた資金は13,685百万円でした。
a セグメントごとの営業収益
当連結会計年度における営業収益をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
b 土地建物賃貸事業による営業収益
営業用の建物及び土地の利用状況は、次のとおりであります。
(注) 1 貸室収益(総額)は、当連結会計年度中に発生した室料のほか、貸室附帯収益として借室者の負担に属する電気料、冷暖房料、清掃料等を含んでおります。
2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(注) 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(注) 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
c ビル管理事業による営業収益
(注) 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
d その他による営業収益
(注) 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 経営成績等
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて10,501百万円増加し、393,928百万円となりました。流動資産は、前連結会計年度末に比べて809百万円増加し、21,844百万円になりました。これは主として、現金及び預金が増加したこと等によるものであります。固定資産は、前連結会計年度末に比べ9,692百万円増加し、372,083百万円になりました。これは主として、「275 George Street」の竣工に伴う有形固定資産及び株価の回復に伴う投資有価証券の増加等によるものであります。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べて983百万円増加し、226,581百万円となりました。流動負債は、前連結会計年度末に比べ4,043百万円減少し、27,625百万円になりました。これは主として、1年内返済予定の長期借入金の増加と1年内償還予定の社債の減少等により、差引で減少したこと等によるものであります。固定負債は、前連結会計年度末に比べて5,027百万円増加し、198,956百万円になりました。これは主として、長期借入金及び繰延税金負債が増加したこと等によるものであります。なお、有利子負債の合計額は、前連結会計年度末に比べ3,324百万円減少し166,408百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ9,518百万円増加し167,346百万円となりました。これは主として、利益剰余金及びその他有価証券評価差額金が増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度の営業収益は42,909百万円と前連結会計年度に比べ92百万円(0.2%)の増収となりました。
営業収益の78.2%を占める土地建物賃貸事業セグメントは、33,544百万円と716百万円(2.2%)の増収となりました。2021年3月末の当社東阪平均空室率(建替え予定ビルの八重洲ダイビルを除く)は、大阪0.8%、東京1.8%、大阪・東京合計1.2%であります。営業収益の20.2%を占めるビル管理事業セグメントは、新型コロナウイルス感染症拡大を受け一部の物件を営業休止又は縮小したこと等により、8,661百万円と前連結会計年度に比べ485百万円(5.3%)の減収となりました。営業収益の1.6%を占めるその他セグメントは、工事請負高の減少等により、703百万円と前連結会計年度に比べ138百万円(16.4%)の減収となりました。
当連結会計年度の営業原価は、土地建物賃貸事業セグメントにかかる修繕費、管理委託料、固定資産税及び減価償却費等は増加しましたが、ビル管理事業セグメントで営業収益の減少に伴う営業原価の減少により26,643百万円と前連結会計年度に比べ615百万円(2.3%)減少しました。また、営業収益に対する営業原価の比率は62.1%と前連結会計年度に比べ1.6%減少しました。
当社グループの販売費及び一般管理費は、大部分が一般管理費に属する費用でありますが、当連結会計年度は4,164百万円と前連結会計年度に比べ167百万円(4.2%)増加しました。また、営業収益に対する販売費及び一般管理費の比率は9.7%と前連結会計年度に比べ0.4%増加しました。
当連結会計年度の営業利益は12,101百万円と前連結会計年度に比べ540百万円(4.7%)の増益となりました。また、営業収益に対する営業利益の比率は28.2%と前連結会計年度に比べ1.2%増加しました。
なお、土地建物賃貸事業セグメントの営業利益は、13,268百万円と638百万円(5.1%)の増益となりました。ビル管理事業セグメントの営業利益は522百万円と前連結会計年度に比べ9百万円(1.7%)の減益、その他セグメントの営業利益は149百万円と前連結会計年度に比べ36百万円(19.8%)の減益となりました。
営業外損益は、前連結会計年度の702百万円の費用(純額)から、当連結会計年度は429百万円の費用(純額)となり、費用(純額)が273百万円減少しました。このうち、金融収支は、前連結会計年度の492百万円の費用(純額)に対し、399百万円の費用(純額)と93百万円減少しました。また、金融収支以外の営業外損益は、前連結会計年度の210百万円の費用(純額)に対し、29百万円の費用(純額)と180百万円減少しました。
当連結会計年度の経常利益は11,672百万円と前連結会計年度に比べ813百万円(7.5%)の増益となりました。また、営業収益に対する経常利益の比率は27.2%と前連結会計年度に比べ1.8%増加しました。
前連結会計年度は、特別利益として投資有価証券売却益842百万円、特別損失として建替関連損失204百万円、固定資産除却損27百万円を計上しましたが、当連結会計年度においては、特別利益として投資有価証券売却益707 百万円、特別損失として建替関連損失114百万円、固定資産除却損25百万円を計上しました。この結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、12,240百万円と770百万円(6.7%)の増益となりました。
当連結会計年度の法人税等調整額を含めた税効果計算後の法人税等合計は、3,698百万円と前連結会計年度に比べ233百万円(6.7%)増加しました。
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は8,437百万円と前連結会計年度に比べ505百万円(6.4%)の増益となりました。また、1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の68円02銭に対し、当連結会計年度は73円08銭となりました。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの中期経営計画「“Design 100” プロジェクト Phase-Ⅱ」(2018年度~2022年度)の3年目である当連結会計年度は、オフィスビル業界におきましては、新型コロナウイルス感染症への対応策として、テレワークやオンライン会議などの新しい働き方が急速に普及し、企業がオフィスの在り方を見直す機運が高まりました。東京・大阪ともにビジネス地区では、年度後半頃より空室率が上昇し、賃料水準も弱含み傾向となっております。
こうした状況の下、当社グループは、お客様の安心・安全を第一に、新型コロナウイルス感染症対策等を木目細かく実施するなど、顧客目線に立ったテナントサービスを提供し続けることで、高水準の入居状況を維持すると共に、賃料水準の適正化を図り、営業収益の拡大に努めました。新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、一部商業テナントやビル管理事業などにおいて影響を受けましたが、当社グループ主力のオフィスビルへの影響は限定的であり、また、2020年3月期に取得・稼働開始した「BiTO AKIBA」や「ダイビルPIVOT」他の通期寄与等により、営業収益約429億円、営業利益約121億円、親会社株主に帰属する当期純利益約84億円といずれも過去最高を更新し、総資産営業利益率は3.1%、自己資本利益率は5.3%、D/Eレシオは1.0倍となりました。
当社グループは、中期経営計画においては、重点施策として「都心大型オフィスビルの取得」「投資対象の拡充」「海外事業の推進」「既存アセットの競争力維持・強化」「ビル管理事業の強化・拡大(ノンアセット型事業)」の5つを掲げております。当連結会計年度においては、「海外事業の推進」としては、豪州シドニー中心地区のオフィスビル開発プロジェクト「275 George Street」が2020年12月に竣工いたしました。また、「既存アセットの競争力維持・強化」としては、「御堂筋ダイビル」の建替計画が順調に進捗し、2021年3月から解体工事に着手しております。さらに「ビル管理事業の強化・拡大」では、㈱ノワテックを2020年8月に商船三井興産㈱を通じて買収しました。
今後のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種の開始や、一旦落ち込んだ企業業績の一部持ち直し等から、緩やかな景気回復への期待が高まりつつありますが、感染の再拡大による経済停滞の長期化懸念は未だ拭いきれず、当面、先行き不透明な状況が続くものと予想されます。オフィスビル業界におきましては、コロナ禍がもたらすテナントニーズの変化に、適切に対応することが、喫緊の課題として求められております。当社グループといたしましては、経営環境の変化を見極めつつ、中期経営計画の重点施策を推し進め、業容の拡大に努めてまいります。特に「投資対象の拡充」では、札幌市の「ダイビルPIVOT」等について、引き続き再開発を検討してまいります。「海外事業の推進」では、2020年12月に竣工した豪州シドニーの「275 George Street」の安定稼働を図ると共に、既にオフィスビル2棟を運営するベトナムにおいても、次なる新規案件の検討を進めてまいります。「既存アセットの競争力維持・強化」では、解体工事に着手した「御堂筋ダイビル」と並行して、「八重洲ダイビル」につきましても、建替に向けた準備を計画通り進めてまいります。また、この他にも当社グループは、ESGへの取り組みでは、従来より都市部における緑地帯の整備や既存ビルの照明設備を順次LED化するなど環境配慮の取り組みを進めてまいりましたが、ますます社会的要請が高まるESG分野の取り組みを一層強化すると共に、働き方改革、ICT戦略による生産性向上と成果創出、資金力を堅持する財務戦略などにも引き続き取り組んでまいります。
a キャッシュ・フロー関連指標の推移
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(補足)
1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しております。
3 キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
4 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
当社グループの資金需要の主なものは、新規ビルの取得、開発費及び既存ビルの改修工事代等の設備資金であります。これらの資金は、自己資金または借入により調達することとしております。このうち、借入による資金については、2021年3月31日現在長期の借入金等(1年以内返済含む)の残高は166,408百万円で、金融機関からの借入金71,408百万円、社債95,000百万円で構成されており、この大半は固定金利であります。また、当社の事業は資金回収に長期間を要するため、返済・償還期限を比較的長めに設定しております。
上記以外の運転資金は、コマーシャル・ペーパー及び金融機関からの短期借入金で調達しておりますが、コマーシャル・ペーパーについては、20,000百万円の発行枠を設定し、その範囲内で運用しております。
当社グループは、健全な財政状態を維持しながらキャッシュ・フローの拡大を目指すため、有利子負債営業キャッシュ・フロー倍率及びデット・エクイティ・レシオの中長期的見通しを重視して資金調達を考えております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
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