文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、オフィスビルの賃貸を主な事業とし、「ビルを造り、街を創り、時代を拓く」という経営理念のもと、誠実を旨に顧客重視の良質なオフィススペースを提供し、経済社会の発展に貢献するとともに、収益の向上に努め企業価値を高めていくことを目指しております。上記の理念の具現化に向け、「ミッションステートメント」、「グループメッセージ」、「グループ行動規準」を制定し、グループ社員全員が掲げる使命及び行動指針を明確にしています。
当社グループは、2018年度を初年度とする中期経営計画「“Design 100” プロジェクト Phase-Ⅱ」(2018年度~2022年度)を推進中です。本中計では、当社グループの更なる飛躍に向けて、以下の施策を掲げております。
●5つの重点施策(5年間投資額 1,200億円)
(成長投資)
<国内>(650億円)
①都心大型オフィスビルの取得
②投資対象の拡充
都心中小オフィス/商業ビル、地方都市
<海外>(400億円)
③海外事業の推進
ベトナム事業拡大、豪州他への展開
(事業基盤強化)
④既存アセットの競争力維持・強化(150億円)
八重洲ダイビル・御堂筋ダイビル建替推進、既存ビル大規模改修 他
⑤ビル管理事業の強化・拡大(ノンアセット型事業)
●計画を支えるプラットフォーム
(組織改編)
・営業企画部、海外事業部の設置、不動産開発室の要員増強
(人材・システム戦略)
・働き方改革、ICT戦略による生産性向上と成果創出
(財務戦略)
・D/Eレシオ1倍近傍を維持するスタンスは継続し、低利での資金調達力を堅持
●株主還元他
(株主還元の基本方針)
・配当性向30~35%を目安として、安定的に配当
(ESGへの取り組み強化)
・安全・健康・環境負荷軽減につながる技術投資拡大
・取締役会の任意の諮問機関としてガバナンス諮問委員会(委員長は独立社外取締役。社外取締役が過半を占める)を設置し、取締役及び執行役員の選解任、取締役及び執行役員の報酬等の決定、社長執行役員の後継等に関して取締役会に助言
(3) 目標とする経営指標
上記戦略を推進する上で不可欠な物件取得機会を逸することがないよう、機動的な資金調達を可能とする一定の財務規律を維持しつつ、中長期的視点に基づくキャッシュ・フロー拡大と資産効率向上を通じ、更なる業績拡大を目指してまいります。中期経営計画におきましては以下の経営指標を目標に掲げております。
(4) 優先的に対処すべき課題
●目下の経営環境についての認識
わが国経済は、2020年初からの新型コロナウイルス感染症の世界的拡大が続く中、緊急事態宣言の発出等による経済活動への影響が大きく、ワクチン接種の開始や各国の各種経済対策実施による景気回復が期待されるものの、依然として先行きの不透明感の強い状況が続いています。
オフィスビル業界におきましては、国内における不動産価格の高騰や少子化によるオフィスワーカーの減少懸念といった予てからの認識に加え、新型コロナウイルス感染拡大による人々の価値観や行動の変容、DXの進展、テレワークの普及等の働き方の多様化等を踏まえ、ポストコロナ時代の顧客ニーズを捉えたオフィスを提供していくことが更に重要になってまいります。また、投資においてもこれまで以上に今後の環境変化やニーズの動向を見据えた的確な判断が求められます。
かかる環境下にあるものの、当社が今後も成長し企業価値を向上させていくためには、適切な投資を継続することが不可欠であり、現中計で掲げる各施策につき、慎重を期しつつ着実に進めてまいります。
●優先的に対処すべき課題
以上のような経営環境の認識にたち、足下、新型コロナウイルス感染症が及ぼす影響を注視しつつ、中期経営計画において掲げた施策の遂行のため、以下①~⑤を特に優先的に対処すべき課題ととらえ、取り組みに注力しております。
①国内における新規物件の取得
当社グループの国内における保有アセットは東京・大阪に集中し、また、大半が大型のオフィス用途となっております。しかしながら東京・大阪中心部の大型オフィスビルの取得機会は限られ、また売買が行われる場合でも近年の低金利を背景に物件価格が高騰し、長期保有を前提とした当社の取得基準には合致せず、取得が困難な環境が継続しています。
こうした現状を踏まえ、現中計では、規模・用途・地域について投資対象を広げることにより、投資の実現性を向上させるとともに、取得・開発した物件の収益性を最大限に高めることを重点施策の一つに据えています。本施策に則り、2019年度には「日本橋三丁目ビル」及び「ダイビルPIVOT」(札幌市)を取得するとともに、当社グループ初の全館商業ビル開発案件である「BiTO AKIBA」を竣工・稼働させました。また、大型オフィスビルのマイナーシェアでの取得など、従来とは異なる形での投資も行いました。中期経営計画の残る2年間においても、引き続きこうした対象の拡充により投資を実現してまいりたいと考えております。
②海外事業の推進
国内においては上記①のとおり、対象を拡充することで投資実現性を高める戦略を掲げる一方で、海外においては成長都市に投資対象を見出すことによる成長戦略を描いております。
アジアの成長国であるベトナムにおいては、2012年にホーチミン市中心部にて1棟、また2014年にハノイ市中心部にて1棟の計2棟、優良オフィスビルを取得のうえ運営し、これまで順調に収益を得ております。
豪州は、安定した成長性に加え、先進国としてのマーケットの透明性や流動性を兼ね備えており、投資対象国に加えたものです。こうした視点で優良物件の取得を模索した結果、2018年にシドニー市中心部におけるオフィスビル開発プロジェクト「275 George Street」を取得いたしました。
当社グループではベトナムに続き、2019年12月より豪州にも駐在員を派遣しており、引き続き両地において現地駐在員による情報収集に努め、優良物件取得の機会を窺いたいと考えております。
③既存アセットの競争力維持・強化
築年数を経たオフィスビルは、貸室内に構造壁や柱が存在するなどしてレイアウト上の制約になる他、電気容量や空調能力、OA対応等において、現代の高度なオフィスニーズを満たすことが困難になってきております。
これらの課題を解決するため、御堂筋ダイビル(大阪市中央区)及び八重洲ダイビル(東京都中央区)の建替事業を推進しております。建替プランには、最新の機能と、当社グループが長年のオフィスビル運営で培ったノウハウを設計に盛り込み、今後、長きにわたって収益に寄与する優良ビルにしたいと考えております。
④ビル管理事業の強化・拡大
当社グループが長年にわたって培ってきたビル管理ノウハウを一層収益化するべく、当社グループ以外のオーナーが保有する物件についてビル管理を受託する事業の強化・拡大を図っております。
ビル管理事業は、設備投資を伴うことなく収益を得られるビジネス(ノンアセット型事業)であることから、資本効率性の改善にも寄与しますが、受託に際しては競合との価格競争が激しく、他方、コストの大半を占める人件費が人材確保難もあって上昇しており、厳しい収益環境にあります。
当社グループは、テナントリーシングのノウハウを生かしたプロパティマネジメントの強化や、技術者を抱える設備管理会社のМ&A等により、物件オーナーから直接、建物の総合管理を受託することで利益面を含めた収益力の向上を図ります。
⑤人材確保
少子化の進行により、ビル運営を担う人材の確保が一層重要性を増しております。働きやすい就業環境の整備に加え、トレーニングセンターの開設など研修体制の充実に努めているほか、外国人人材の活用や人材を有するビル管理会社の買収も含め、人材確保を図ってまいります。また、経験豊富な人材を育成指導担当者に任じ、円滑な世代交代、次代の幹部社員育成を図っております。
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