課題

1 【経営方針、経営環境および対処すべき課題等】

本項に記載されている将来に関する事項は、当連結会計年度末において入手可能な情報に基づき、判断したものであります。

 

(1)企業価値向上に向けた取り組み

①京急グループの価値創造モデル

 

京急グループは、「都市生活を支える事業を通して、新しい価値を創造し、社会の発展に貢献する」ことをグループ理念としております。この理念のもと、「事業の成長と発展を支える資本と、それが生み出す当社グループの強みを最大限に活かし、総合経営計画の推進を通じて重要課題(マテリアリティ)への対応を図ることで、社会的価値を向上させる」という一連のプロセスを循環させることで、京急グループの持続的発展を実現し、企業価値の最大化を図ってまいります。

 


 

 

②重要課題(マテリアリティ)

 

当社グループでは、価値創造モデルにおいて、対応すべき重要課題(マテリアリティ)として、以下に示す課題を抽出しております。重要課題(マテリアリティ)は、事業環境の変化にあわせて変えていくべきものであると認識しており、今後も幅広い層での議論により、時代に即した課題設定を行い、各課題に対し、適切に対応してまいります。

なお、気候変動への対応について、当社は、2021年11月にTCFD提言への賛同を表明いたしました。気候変動の影響への対応を経営上の重要課題(マテリアリティ)と捉え、鉄道をはじめとする事業におけるCO排出量の削減および脱炭素社会への移行に伴う対応について、各種施策を推進するとともに適切な情報開示を行ってまいります。

重要課題(マテリアリティ)

気候変動への対応

 

・気候変動の緩和に向けた対応(GHG排出量やエネルギー消費量の削減)

・気候変動への適応(水災など気候変動に起因する自然災害への対策)

循環型社会の推進

 

・廃棄物管理(法令順守、廃棄物の削減)

・MaaS推進などを通じた、社会における資源の有効利用

生物多様性の保全

 

・周辺の自然環境と調和した不動産事業などの取り組み

・沿線の豊かな自然環境の保全と観光資源としての活用

魅力的で働きやすい職場環境

 

 

 

・取引先なども含めた従業員の人権の尊重

・労働に関する法令などの順守

・ワークライフバランスに配慮した職場環境の整備

・労働安全衛生の確保

ダイバーシティ&インクルージョン・
人財開発

 

・多様性と人権の尊重

・従業員の潜在的な能力・モチベーションの向上

・女性活躍推進

地域社会との発展と共生

 

 

・地域社会との共生(地域社会との良好な関係の維持とそのための投資を含む社会貢献活動)

・地域社会の発展(経済の発展、雇用の創出への貢献)

安全・安心・快適なサービスの提供

 

 

 

・お客さまの人権の尊重

・安全・安心なサービスの提供

・ユニバーサルなサービスの提供(すべてのお客さまへの安全・安心と快適性の確保)

ビジネスモデルのレジリエンス

 

・経済環境の変化(感染症などの影響や気候変動などによる自然災害の発生など、外部環境変化を捉えた将来のビジネスモデルの計画を含む)

透明性の高い情報開示

 

 

・株主・投資家や顧客、地域社会や従業員などさまざまなステークホルダーからの期待(ニーズ)を踏まえた情報開示

・ニーズを踏まえた財務、非財務情報の開示、統合報告書などレポートの発行

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進

・MaaS推進などにおけるデジタル技術の積極的な活用

・個人情報保護などのための情報セキュリティの確保

 

 

 

③サステナビリティ基本方針

 

当社グループでは、グループ理念に基づき、価値創造モデルを実現するための基本方針として、サステナビリティ基本方針を策定しております。グループ理念の実現が、社会と当社グループの持続可能性を高めるという考えのもと、これを実現するための具体的指針として、3つのサステナビリティ・テーマを設定いたしました。今後も、重要課題(マテリアリティ)に対する取り組みを推進するため、ESG経営の考え方を事業の中心に据え、持続的な企業価値向上を図ってまいります。

 

(グループ理念およびサステナビリティ基本方針)

グループ理念 経営理念

 

■京急グループは、都市生活を支える事業を通して、新しい価値を創造し、社会の発展に貢献する

■京急グループは、伝統のもとに、創意あふれる清新な気風をもって、総合力を発揮し、社業の躍進をめざす

■京急グループは、グループの繁栄と全員の幸福との一致を追求する

 

 

サステナビリティ基本方針

 

京急グループは、グループ理念のもとで、「社会の持続的発展への貢献」と「京急グループの持続的発展」のよりよい循環を目指します。

<テーマ>

■人・社会・地球にやさしく持続可能な都市生活を創造します。

■多様な人財が活躍する企業を実現します。

■全ステークホルダーと適切な協働を図り、コーポレートガバナンスの持続的な強化を図ります。

 

 

 

④総合経営計画(概要)

 

当社グループでは、価値創造モデルにおける事業活動として、総合経営計画を推進しております。

現在、当社グループを取り巻く事業環境は、沿線の人口減少や各事業での競争激化などによって、大きな転換期を迎えております。さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大により、テレワークの普及等のワークスタイルの変化や訪日外国人の減少など、各事業とも、非常に大きな影響を受けております。急激な事業環境の変化への対応を進めるとともに、品川駅周辺開発事業の推進等によって持続的な発展を実現するため、2021年度から2023年度までを中期経営計画期間とした総合経営計画を推進しております。

本計画では、長期ビジョン(当社グループが2035年度に目指すべき将来像)として「日本全国、そして世界とつながり、日本発展の原動力である品川・羽田・横浜を成長トライアングルゾーンと位置付け、国内外の多くの人々の生活と交流を支え、持続的に発展する豊かな沿線を実現する」ことを掲げており、グループ一丸となって実現に向けて邁進しております。

 


 

 

Ⅰ.長期ビジョン(京急グループが2035年度に目指すべき将来像)

当社沿線の京浜臨海・京浜工業エリアは、開国以来日本経済成長の原動力であり、今後も羽田空港の国際化をはじめとする再編整備の進展により、さらなる成長・発展が期待されております。当社グループは、このエリアの発展を支える企業グループとして、品川・羽田・横浜を結ぶエリアを、総合経営計画の最重要拠点「成長トライアングルゾーン」と位置付けております。この「成長トライアングルゾーン」を中心に、横浜以南の沿線地域・浅草線沿線等の各エリアとの相互連携を図りながら移動サービスの提供やまちづくりを推進し、持続的に発展する豊かな沿線の実現を目指しております。

 

Ⅱ.長期経営戦略(2035年度に向けた長期ビジョン実現のための方向性・方法)

長期ビジョンの実現に向け、以下の3つの長期経営戦略に取り組んでおります。

「エリア戦略」においては、品川・羽田・横浜の「成長トライアングルゾーン」の発展を支え、そのポテンシャルを推進力として沿線を活性化することを目指しております。

「事業戦略」においては、人口減少や生活様式の多様化をはじめとした事業環境の変化に対応するための経営基盤強靭化、事業ポートフォリオ変革に取り組んでおります。

「コーポレートサステナブル戦略」においては、地域社会および京急グループの持続的発展に向け、経営のベースと位置付けているESGへの取り組みを推進しております。

 

Ⅲ.中期経営計画(2021~2023年度)

長期ビジョンの実現に向け、2021年度から2023年度までの3年間においては、新型コロナウイルス感染症の影響による急激な事業環境の変化に対応するため、「①京急グループの持続的発展に向けた事業構造変革による経営基盤強靭化」および「②不動産事業強化をはじめとした選択と集中による事業ポートフォリオ変革」を柱に、各種取り組みを推進しております。また、これらと同時に、当社グループの将来の成長に寄与する「③長期経営戦略につながる取り組み」を推進しております。

 

(2)中期経営計画(2021~2023年度)について

①京急グループの持続的発展に向けた事業構造変革による経営基盤強靭化

 

新型コロナウイルス感染症の拡大は、当社グループの事業へ甚大な影響を与えております。また、新型コロナウイルス感染症収束後も事業環境の大きな変化が予測されるため、これらに対応すべく、事業構造を抜本的に見直し、変革することで、経営基盤の強靭化を推進しております。

 

<鉄道、バス、ホテル事業におけるローコストオペレーションへの変革>

すべての事業においてローコストオペレーションに取り組む必要性がありますが、特に、事業構造上、新型コロナウイルス感染症の影響により大きく減益となっている鉄道、バス、ホテル事業において、重点的に、ローコストオペレーションを推進しております。

 

<京急グループ全体の間接部門のダウンサイジング化>

システム化等による業務効率化、グループ全体での適切な人員配置および経費の削減を実施しております。

 

<投資の峻別、保有資産の有効活用等による財務の健全性確保>

品川駅周辺開発事業等の大規模開発に備えた投資の峻別等により、財務の健全性の確保に取り組んでおります。

 

 

②不動産事業強化をはじめとした選択と集中による事業ポートフォリオ変革

 

新型コロナウイルス感染症の拡大により、当社グループの鉄道事業依存のポートフォリオの課題が顕在化しました。前回の総合経営計画以降推進してきた、不動産事業を鉄道事業に並ぶ第2の利益の柱にする、という事業のポートフォリオ変革の必要性が増しているため、不動産事業のさらなる拡大を推進しております。

 

<保有資産の組み換え等による不動産事業の強化推進>

当社が保有している不動産の流動化をはじめとする資産の組み換え等を実施することで、不動産事業のさらなる成長を推進し、収益性の向上を図っております。また、将来の安定的な収益基盤となる品川駅周辺開発事業については、財務の健全性の観点からも、様々な手法を検討し、安定的な開発の実現を目指しております。

 

<取り組むべき事業への経営資源集中による収益構造の変革>

収益構造の変革に向け、各事業を「移動プラットフォーム」と「まち創造プラットフォーム」に分類し、各プラットフォームの方針に則り、「ヒト」「モノ」「カネ」といった経営資源の集中および事業の方向性を定め、両プラットフォームを連携させることにより、「収益」「利益」の早期回復を目指しております。

・移動プラットフォームの方針

鉄道・バス・タクシーなどの交通事業を中心に「成長トライアングルゾーン」を支える沿線地域や国内外拠点のつなぎ役として、快適でシームレスな移動サービスを創造するローカル移動プラットフォーマーを目指しております。

・まち創造プラットフォームの方針

不動産・レジャー・流通・生活サポートの各事業をベースに、「移動プラットフォーム」の拠点や周辺地域の魅力づくりを通じて人や物の流れを創造するまちづくりを推進しております。

 

③長期経営戦略につながる取り組み

 

<「成長トライアングルゾーン」を沿線活性化の推進力とする取り組み>

新型コロナウイルス感染症の影響による事業環境の変化においても、「品川」「羽田」「横浜」の中長期的な成長性は不変であるという認識のもと、当社の最重要拠点として注力しております。品川駅周辺開発事業において、当社は「これからの日本の成長を牽引する国際交流拠点・品川」の実現を担う事業者として、行政や地元関係者、周辺事業者と連携し、まちづくりの形成に向け、積極的な事業の推進に取り組んでおります。この品川プロジェクトを筆頭に、「成長トライアングルゾーン」における沿線各駅を中心に、それぞれの地域特性に応じたまちづくりを推進していくとともに、横浜以南や浅草線沿線等の各エリアとの相互連携により、沿線の発展・活性化を目指しております。

 

●品川エリア

「品川の顔となるまちづくり」、「沿線にシナジー効果を波及させるまちづくり」、「交通結節点を活かした新たな交流を生むまちづくり」を目指して、品川駅周辺開発事業を推進しております。

 

●羽田エリア

羽田空港の一層の機能拡張と国際化の進展に合わせ、空港機能の下支えを担うとともに、羽田周辺地域と空港の発展とのつなぎ役となることを目指しております。

 

●横浜・川崎エリア

横浜・川崎にまたがる京浜臨海部再編整備やエンターテインメント機能の集積により発展するベイエリアと周辺地域との共生を目指したまちづくりを推進しております。

 

 

<郊外における居住・レジャーに対する価値観の変化に合わせた「都市近郊リゾートみうらの創生」の推進>

「テレワーク・ワーケーション」や「都市近郊レジャー・住宅需要」の増加等といった働き方・生活様式の変化の加速により、郊外における居住・レジャーに対する価値観の変化が生じております。これを新たな事業機会と認識し、三浦半島各エリアを総合的に捉え、各方面との連携・施策の強化、観光型MaaS構築などを通じた魅力向上を図ることで、都市近郊リゾートとしての三浦半島の価値向上を推進しております。また、行政・企業・大学・地元をつなげる「コミュニケーションハブ」の役割を担い、三浦半島における課題の解決、価値向上に取り組んでおります。

 

<お客さま満足度向上に努め、お客さまに選ばれる京急グループの実現>

お客さま満足度調査等を通じて、お客さまの顕在・潜在ニーズを分析し、満足度の向上およびお客さまに選ばれるための取り組みを推進しております。また、お客さまに選ばれる京急グループ実現のため、すべての社員が活躍できる就業環境の充実、働き方改革を推進しております。

 

<経営に重大な影響を及ぼすリスクに対するリスクマネジメントの徹底>

経営に重大な影響を及ぼす恐れのあるリスクを把握し、分析・管理することで、その影響を事前に回避もしくは最小限に留めるとともに、リスクが顕在化した場合に影響を最小化するためのリスク管理体制を整備し、その推進に努めております。

 

<地域社会および企業価値向上のため、事業を通じたESG経営の徹底>

鉄道・バスなどをはじめとした、社会生活のインフラを支える当社グループの事業は、ESGの考え方に合致していると認識しております。ESG経営をベースとして、グループ全体で長期ビジョン達成に向けて事業を推進することで、地域と一体となった当社グループの持続的な成長を目指しております。

 

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