業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、一時的に持ち直しの動きがみられたものの、新型コロナウイルス感染症の影響により厳しい状況が続きました。また、2022年3月16日に発生した福島県沖地震の影響により、東北新幹線が車両・設備等に被害を受け、一部区間は運転休止を余儀なくされました。皆さまにご不便をおかけしましたが、関係者が一体となり復旧作業を進めた結果、4月14日より全線で運転を再開しています。

このような状況の中、当社グループは、お客さまや社員等の感染防止対策の徹底と、安全・安定輸送およびサービス品質の確保にグループの総力を挙げて取り組みました。また、2020年9月に発表したポストコロナ社会に向けた対応方針である「変革のスピードアップ」のもと、「収益力向上」、「経営体質の抜本的強化」および「ESG経営の実践」に取り組み、グループ経営ビジョン「変革 2027」の実現に向けた歩みを加速しました。

当連結会計年度の決算につきましては、前年度の新型コロナウイルス感染症の影響による減収の反動や、不動産事業における回転型ビジネスモデルによる売上計上で増収となったことなどにより、営業収益は前期比12.1%増の1兆9,789億円となりました。また、これに伴って営業損失は1,539億円(前期は営業損失5,203億円)、経常損失は1,795億円(前期は経常損失5,797億円)、親会社株主に帰属する当期純損失は949億円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失5,779億円)となりました。

 

〇 「安全」がトッププライオリティ

「グループ安全計画2023」のもと、一人ひとりの「安全行動」と「安全マネジメント」の進化・変革や、新たな技術を積極的に活用した安全設備の整備にグループ一体で取り組みました。

(具体的な取組み)

・2021年2月に発生した福島県沖地震の被害状況を踏まえ、新幹線高架橋上コンクリート製電化柱の地震対策をスピードアップ

・新幹線区間の盛土・切取のり面および自然斜面のうち、記録的な大雨などにより土砂災害が発生する恐れのある約200箇所の対策工事を2021年度から2023年度まで実施

・ホームドアの設置工事を推進し、当連結会計年度末までに80駅(線区単位では92駅)の整備を完了

・台車の信頼性確認と耐久性評価のため、2024年夏頃の使用開始に向けて、JR東日本研究開発センターに新たな台車性能・耐久試験装置を導入する準備を推進

・緊急時における駅社員・乗務員等の対応能力向上に向けて、テロ事件や津波等を想定した教育・訓練を実施するとともに、車両に護身用具を搭載

 

〇 収益力向上(成長・イノベーション戦略の再構築)

鉄道事業を取り巻く環境が厳しさを増す一方で、ライフスタイルの多様化を大きなチャンスと捉え、成長・イノベーション戦略を再構築し、グループの強みであるリアルなネットワークとデジタルを掛け合わせ、「新しい暮らしの提案」や「新領域への挑戦」に取り組みました。

(具体的な取組み)

・「東北デスティネーションキャンペーン」を2021年4月から6ヶ月間実施して東北6県の魅力を発信するとともに、キャンペーン終了後の秋冬についてもプロモーションを継続して実施

・2022年1月から「新幹線YEAR2022」キャンペーンを開始し、新幹線の未来感を表現したCG動画などでプロモーションを展開

・㈱総合車両製作所がフィリピン南北通勤鉄道の延伸事業向けに鉄道車両304両を受注し、2022年3月に契約締結

・2021年4月にJR東日本不動産投資顧問㈱を設立し、アセットマネジメント事業を通じて不動産事業を強化

・駅空間に「JRE MALL」のショールーミング拠点を設置するとともに、オンライン接客販売などを実施

・列車による荷物輸送サービスの名称を「はこビュン」と決定し、取扱荷物量を拡大するなど新たなビジネスとして本格的に展開

・シェアオフィス事業「STATION WORK」について、西日本旅客鉄道㈱の駅構内に「STATION BOOTH」を導入するなど、当連結会計年度末までに503箇所へ拡大

・2021年8月に㈱HIKKYとXR(空間拡張技術)領域での業務提携契約を締結し、2022年3月に世界初のメタバース・ステーション「Virtual AKIBA World」をオープン

・ビューカードの利用で、より多く「JRE POINT」が貯まる「VIEWプラス」のサービスを2021年7月に改定し、「えきねっと」等のポイント付与率を向上

 

〇 経営体質の抜本的強化(構造改革)

新技術を活用し、スマートメンテナンスをはじめとしたデジタルトランスフォーメーション(DX)をさらに加速させ、生産性向上に取り組むとともに、グループ全社員の働きがいの創出に向け、「業務改革」、「働き方改革」、「職場改革」の3つの改革を進めました。

(具体的な取組み)

・2021年11月に相模線、2022年3月に宇都宮線、日光線に新型車両E131系を投入し、八高線、川越線とともに2022年3月からワンマン運転を開始

・電気・軌道総合検測車(East-i)に搭載したカメラとAIを活用して、2021年11月から架線設備の良否を自動判定する「架線設備モニタリング」、12月から上越新幹線の散水消雪設備の残雪を画像解析により検知する「残雪検知システム」を導入

・気仙沼線BRT(柳津~陸前横山間)で自動運転レベル3をめざして実証実験を実施し、2021年9月に自動運転を体験できる試乗会を開催

・2021年10月に上越新幹線(新潟駅〜新潟新幹線車両センター間)、2022年2月に山手線の営業時間帯において、自動運転導入に向けた試験を実施

・小型ドローンを用いて点群データ等を取得し建設工事や設備の維持管理に活用することをめざして、2021年7月にJR東日本スタートアップ㈱およびJR東日本コンサルタンツ㈱等でCalTa㈱を設立

・ソナス㈱と協業して、2021年11月から鉄道インフラ向け電化柱傾斜監視システムを導入

・駅の価値最大化を目的に、2021年4月に㈱JR東日本リテールネット、㈱JR東日本フーズ、㈱JR東日本ウォータービジネスおよび㈱鉄道会館を合併し、㈱JR東日本クロスステーションを設立

・新型コロナウイルスワクチン職域接種を2021年6月から開始

・グループ会社における副業を2021年7月から開始

 

〇 ESG経営の実践

2050年度までに当社グループ全体のCO₂排出量「実質ゼロ」に向けて、省エネ設備の導入や再生可能エネルギー開発を推進しました。また、地域との共創を通じた地方創生の実現をめざすとともに、「東京2020オフィシャルパートナー(旅客鉄道輸送サービス)」として大会期間を通して安全・安定輸送を提供しました。

(具体的な取組み)

・JR東日本グループ「ゼロカーボン・チャレンジ2050」について、新たに2030年度までの当社グループ全体のCO₂排出量削減目標を2013年度比△50%に設定するとともに、社内炭素価格(インターナルカーボンプライシング)の適用範囲を拡大

・再生可能エネルギーの開発を推進し、2021年4月に市貝太陽光発電所(栃木)、11月に大子太陽光発電所(茨城)および2022年3月に野辺地柴崎風力発電所(青森)を稼働

・川崎火力発電所1号機の更新工事が完了し2021年6月から運転開始となり、天然ガスを燃料とした高効率な設備によりCO₂排出量を低減

・2022年3月より、南武線(川崎~登戸間)、鶴見線および南武線尻手支線において、水素をエネルギー源とした水素ハイブリッド電車「HYBARI」の実証試験を開始

・古民家を活用した「沿線まるごとホテル」の事業展開に向けて、2021年12月に沿線まるごと㈱に出資

・東京2020大会中における鉄道のセキュリティ強化に向け、危険物探知犬や不審者・不審物検知機能を有した防犯カメラを活用した手荷物検査を実施したほか、警備業務にウェアラブルカメラを導入

・2021年6月の東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コード改訂に伴い、11月に当社のコーポレートガバナンス・ガイドラインを改訂

・2022年4月から開始する東京証券取引所における新市場区分において、2021年11月に「プライム市場」を選択申請し、「プライム市場」への移行が決定

 

セグメントの業績は次のとおりであります。

 

a 運輸事業

運輸事業では、新型コロナウイルスの感染防止対策の徹底と、安全・安定輸送およびサービス品質の確保にグループの総力を挙げて取り組みました。

(具体的な取組み)

・2021年6月に「えきねっと」をリニューアルし、「JRE POINT」との連携や割引きっぷの予約・購入への対応などを実施するとともに、2022年3月から「Googleマップ」に「えきねっと」へのリンクが表示されるサービスを開始

・車いす用フリースペースを設置した北陸新幹線E7系を、2021年7月から導入

・Suica定期券でオフピーク通勤されるお客さま向けの「オフピークポイントサービス」について、利用のさらなる拡大に向けた取組みを推進

・スノーレジャーの需要を喚起するため、「JR SKISKI」30周年を記念したキャンペーンを実施

・2021年12月に品川駅山手線外回りと京浜東北線北行を同一ホーム化し、乗換利便性の向上を図るとともに山手線ホームの混雑を緩和

・2022年3月に新幹線・特急列車のグリーン料金を改定するとともに、山形新幹線を全車指定席化

・2022年3月から仙石線、磐越西線、小海線などの一部の駅で、乗務員が携帯スロープを用いて、車いすをご利用のお客さまの乗降をお手伝いする取組みを実施

この結果、前年度の新型コロナウイルス感染症の影響による減収の反動で、運輸収入が増加したことなどにより、売上高は前期比15.8%増の1兆3,328億円となり、営業損失は2,853億円(前期は営業損失5,485億円)となりました。

 

b 流通・サービス事業

流通・サービス事業では、駅を交通の拠点からヒト・モノ・コトがつながる暮らしのプラットフォームへと転換する「Beyond Stations構想」などを推進しました。

(具体的な取組み)

・「KINOKUNIYA」の新店舗を、2021年5月に広島、11月に名古屋および2022年3月に大阪で開業

・「エキュートエディション」の新店舗を、2021年7月に飯田橋駅、2022年3月に新橋駅で全面開業

・コーヒー、駅そばおよびシェアオフィスをサブスクリプション方式で利用できる「JREパスポート」のトライアルを2021年7月から9月まで実施し、2022年4月からの本格展開に向けた準備を推進

・2021年10月から「JRE MALL」において、地域での飲食や買い物等に利用できる電子チケット「エキトマチケット」を販売

・対面(リアル)および非対面(オンライン)で複数の診療科による総合的な受診ができるハイブリッドクリニックを、2022年4月に中央線西国分寺駅ホーム上で開業する準備を推進

この結果、前年度の新型コロナウイルス感染症の影響による減収の反動で、駅構内店舗の売上が増加したものの、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日、以下「収益認識会計基準」という。)の適用の影響などにより、売上高は前期比17.8%減の3,122億円となり、営業利益は前期比440.3%増の141億円となりました。

 

 

c 不動産・ホテル事業

不動産・ホテル事業では、大規模ターミナル駅開発や沿線開発など「くらしづくり(まちづくり)」を推進し、地域とともに街の魅力を高めました。

(具体的な取組み)

・2021年5月に、オフィス・商業・ホテルからなる大規模複合開発ビル「KAWASAKI DELTA」(神奈川)を全面開業

・2021年5月に、「ホテルメトロポリタン 秋田 ノースウイング」を開業

・2021年8月に、JR東日本グループとしてホテルの海外初出店となる「ホテルメトロポリタン プレミア 台北」(台湾)を開業

・ワクチン接種済証の提示で「ホテル共通利用券」をプレゼントするキャンペーンを、2021年7月から日本ホテル㈱で実施

・2021年12月に不動産事業における回転型ビジネスモデルを開始し、当社が保有する不動産の流動化を実施

・㈱西武ホールディングスとの包括的連携の一環として、日本ホテル㈱が「横浜・八景島シーパラダイス」および「西武園ゆうえんち」の入園チケット付き宿泊プランを販売

・賃貸住宅・分譲住宅・オフィスの3棟からなる複合型まちづくり街区「MEGURO MARC」(東京)において、オフィス棟「JR目黒MARCビル」が2022年3月に竣工

この結果、前年度の新型コロナウイルス感染症の影響による減収の反動で駅ビルの売上が増加したことや、オフィスビルの賃貸収入が増加したことに加え、不動産事業における回転型ビジネスモデルによる売上を計上したことなどにより、売上高は前期比28.9%増の3,756億円となり、営業利益は前期比611.3%増の1,078億円となりました。

 

d その他

その他の事業では、Suicaの利用シーンのさらなる拡大と、シームレスでストレスフリーな移動を実現する「MaaSプラットフォーム」の拡充などに取り組みました。

(具体的な取組み)

・Suicaの共通基盤化を推進した結果、当連結会計年度末までにSuicaの発行枚数は約8,964万枚、「モバイルSuica」の発行数は約1,661万枚、Suica電子マネーの利用可能店舗数は約132万店に到達

・Suicaサービス開始20周年にあわせて、2021年11月から記念キャンペーンを実施

・地方におけるSuicaの利用基盤拡大に向けて、バス定期券等の地域独自サービスとSuicaサービスを1枚でご利用いただける地域連携ICカードを、当連結会計年度末までに9エリアに拡大

・まちづくりや地域活性化への活用をめざして、Suica統計情報の定型レポート「駅カルテ」を作成し、2022年5月から販売開始する準備を推進

・東北6県や軽井沢で地域・観光型MaaSを展開するとともに、2021年11月から当社外でも活用可能な地域・観光型MaaSパッケージ「Tabi-CONNECT」を稼働

・通信事業者向けインフラシェアビジネスの拡大を図るため、駅構内などに5G基地局の整備を推進し、当連結会計年度末までに累計19箇所に設置

しかしながら、ICカード事業関連の売上の減少や、収益認識会計基準の適用の影響などにより、売上高は前期比14.4%減の2,084億円となり、営業利益は前期比21.1%減の116億円となりました。

 

(注) 当社は、「セグメント情報等の開示に関する会計基準」(企業会計基準第17号 平成22年6月30日)および「セグメント情報等の開示に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第20号 平成20年3月21日)におけるセグメント利益又は損失について、各セグメントの営業利益又は営業損失としております。

 

 

(参考)

当社の鉄道事業の営業実績

当社の鉄道事業の最近の営業実績は次のとおりであります。

 

 輸送実績

 

区分

単位

第34期

(自  2020年4月1日

至  2021年3月31日)

第35期

(自  2021年4月1日

至  2022年3月31日)

営業日数

365

365

営業キロ

新幹線

キロ

1,194.2

1,194.2

在来線

6,108.5

6,108.5

7,302.7

7,302.7

客車走行キロ

新幹線

千キロ

538,179

506,386

在来線

1,766,616

1,743,028

2,304,796

2,249,414

輸送人員

定期

千人

3,082,203

3,044,111

定期外

1,454,393

1,749,643

4,536,596

4,793,755

輸送人キロ

新幹線

定期

千人キロ

1,531,636

1,473,564

定期外

6,419,277

8,910,940

7,950,913

10,384,504

在来線

関東圏

定期

52,995,115

52,049,846

定期外

19,800,417

24,733,231

72,795,533

76,783,077

その他

定期

2,614,077

2,655,981

定期外

1,190,373

1,427,040

3,804,451

4,083,022

定期

55,609,193

54,705,828

定期外

20,990,790

26,160,271

76,599,984

80,866,100

合計

定期

57,140,829

56,179,392

定期外

27,410,068

35,071,211

84,550,898

91,250,604

乗車効率

新幹線

20.6

29.5

在来線

31.1

33.2

29.7

32.8

 

(注) 1 乗車効率は次の方法により算出しております。

乗車効率=

輸送人キロ

×100

客車走行キロ×客車平均定員

 

2 「関東圏」とは、当社東京支社、横浜支社、八王子支社、大宮支社、高崎支社、水戸支社および千葉支社管内の範囲であります。

 

 

  収入実績

 

区分

単位

第34期

(自  2020年4月1日

至  2021年3月31日)

第35期

(自  2021年4月1日

至  2022年3月31日)

旅客運輸収入

新幹線

定期

百万円

20,929

20,283

定期外

168,699

237,805

189,629

258,088

在来線

関東圏

定期

342,873

341,719

定期外

383,716

470,373

726,590

812,093

その他

定期

15,446

16,009

定期外

22,636

27,031

38,082

43,040

定期

358,320

357,728

定期外

406,353

497,404

764,673

855,133

合計

定期

379,249

378,012

定期外

575,052

735,210

954,302

1,113,222

荷物収入

41

23

合計

954,344

1,113,245

鉄道線路使用料収入

6,503

6,243

運輸雑収

129,659

135,234

収入合計

1,090,506

1,254,724

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローについては、税金等調整前当期純損失の減少などにより、前連結会計年度の流出額に比べ3,804億円増となり、1,905億円の流入額となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローについては、有形及び無形固定資産の取得による支出が減少したことなどにより、流出額は前連結会計年度に比べ2,230億円減の5,263億円となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローについては、有利子負債の調達が減少したことなどにより、流入額は前連結会計年度に比べ6,787億円減の3,046億円となりました。

なお、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ269億円減の1,710億円となりました。

また、当連結会計年度末のネット有利子負債残高は4兆5,327億円となりました。なお、「ネット有利子負債」とは、連結有利子負債残高から連結現金及び現金同等物の期末残高を差し引いた数値であります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社および当社の連結子会社の大多数は、受注生産形態をとらない業態であります。

なお、販売の実績については、「(1) 経営成績等の状況の概要」におけるセグメントの業績に関連づけて示しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a 経営成績

○ 営業収益

当連結会計年度の営業収益は、前年度の新型コロナウイルス感染症の影響による減収の反動や、不動産事業における回転型ビジネスモデルによる売上計上で増収となったことなどにより、前期比12.1%増の1兆9,789億円(対10月業績予想780億円減)となりました。

 

運輸事業の外部顧客への売上高は、前期比16.5%増の1兆2,770億円(対10月業績予想589億円減)となりました。

これは、当社の鉄道事業における旅客運輸収入が、前年度の新型コロナウイルス感染症の影響による減収の反動で、新幹線・在来線ともに増加したことなどにより、前期比16.7%増の1兆1,132億円となったことなどによるものであります。

新幹線に関しては、前年度の新型コロナウイルス感染症の影響の反動で、輸送人キロは前期比30.6%増の103億人キロとなりました。定期収入は前期比3.1%減の202億円、定期外収入は前期比41.0%増の2,378億円となり、全体では前期比36.1%増の2,580億円となりました。

関東圏の在来線に関しては、前年度の新型コロナウイルス感染症の影響の反動で、輸送人キロは前期比5.5%増の767億人キロとなりました。定期収入は前期比0.3%減の3,417億円、定期外収入は前期比22.6%増の4,703億円となり、全体では前期比11.8%増の8,120億円となりました。

関東圏以外の在来線に関しては、前年度の新型コロナウイルス感染症の影響の反動で、輸送人キロは前期比7.3%増の40億人キロとなりました。定期収入は前期比3.6%増の160億円、定期外収入は前期比19.4%増の270億円となり、全体では前期比13.0%増の430億円となりました。

 

運輸事業以外の事業の外部顧客への売上高については、以下のとおりであります。

流通・サービス事業では、前年度の新型コロナウイルス感染症の影響による減収の反動で、駅構内店舗の売上が増加したものの、収益認識会計基準の適用の影響などにより、前期比12.5%減の2,781億円(対10月業績予想118億円減)となりました。

不動産・ホテル事業では、前年度の新型コロナウイルス感染症の影響による減収の反動で駅ビルの売上が増加したことや、オフィスビルの賃貸収入が増加したことに加え、不動産事業における回転型ビジネスモデルによる売上を計上したことなどにより、前期比30.0%増の3,526億円(対10月業績予想83億円減)となりました。

その他の事業では、ICカード事業関連の売上の減少や、収益認識会計基準の適用の影響などにより、前期比10.6%減の710億円(対10月業績予想10億円増)となりました。

 

○ 営業費用

営業費用は、前期比6.7%減の2兆1,329億円となりました。営業収益に対する営業費用の比率は、前連結会計年度の129.5%に対して、当連結会計年度は107.8%となりました。

運輸業等営業費及び売上原価は、前期比7.5%減の1兆5,960億円となりました。これは、物件費が減少したことなどによるものであります。

  販売費及び一般管理費は、前期比4.2%減の5,368億円となりました。これは、物件費が減少したことなどによるものであります。

 

○ 営業損失

営業損失は、1,539億円(対10月業績予想389億円悪化)となりました。前連結会計年度は、営業損失5,203億円でありました。

 

○ 営業外損益

営業外収益は、前期比96.9%増の442億円となりました。これは、持分法による投資利益を計上したことなどによるものであります。

営業外費用は、前期比14.8%減の698億円となりました。これは、持分法による投資損失が減少したことなどによるものであります。

 

○ 経常損失

経常損失は、1,795億円(対10月業績予想195億円悪化)となりました。前連結会計年度は、経常損失5,797億円でありました。

 

○ 特別損益

特別利益は、前期比47.5%増の641億円となりました。これは、投資有価証券売却益が増加したことなどによるものであります。

特別損失は、前期比61.1%減の651億円となりました。これは、減損損失が減少したことなどによるものであります。

 

○ 税金等調整前当期純損失

税金等調整前当期純損失は、1,805億円となりました。前連結会計年度は、税金等調整前当期純損失7,035億円でありました。

 

○ 親会社株主に帰属する当期純損失

親会社株主に帰属する当期純損失は、税金等調整前当期純損失の計上などにより、949億円(対10月業績予想650億円改善)となりました。前連結会計年度は、親会社株主に帰属する当期純損失5,779億円でありました。前連結会計年度の1株当たり当期純損失1,531.91円に対し、当連結会計年度は1株当たり当期純損失251.69円となりました。

 

b 財政状態

当連結会計年度末の資産残高は前連結会計年度末に比べ1,750億円増の9兆914億円、負債残高は前連結会計年度末に比べ3,142億円増の6兆6,733億円、純資産残高は前連結会計年度末に比べ1,392億円減の2兆4,181億円となりました。

運輸事業においては、安全・安定輸送対策や大規模地震対策、ホームドア整備、車両新造などに3,526億円の投資を行ったことなどにより、当連結会計年度末の資産残高は6兆9,137億円となりました。

流通・サービス事業においては、新潟駅高架下開発など、新規店舗の展開や既存店舗の改良などに184億円の投資を行ったことなどにより、当連結会計年度末の資産残高は3,407億円となりました。

不動産・ホテル事業においては、「KAWASAKI DELTA」や「ホテルメトロポリタン 秋田 ノースウイング」、「MEGURO MARC」など、ショッピングセンターやオフィスビル、ホテルの建設などに1,074億円の投資を行ったことなどにより、当連結会計年度末の資産残高は1兆7,661億円となりました。

その他の事業においては、システム開発などに414億円の投資を行ったことなどにより、当連結会計年度末の資産残高は9,917億円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a キャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度より3,804億円増加し、1,905億円の流入となりました。これは、税金等調整前当期純損失が減少したことなどによるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度より2,230億円減少し、5,263億円の流出となりました。これは、有形及び無形固定資産の取得による支出が減少したことなどによるものであります。

なお、設備投資の概要は以下のとおりです。

運輸事業に関しては、安全・安定輸送対策や大規模地震対策、ホームドア整備、車両新造などの設備投資を実施しました。流通・サービス事業に関しては、新潟駅高架下開発など、新規店舗の展開や既存店舗の改良などを行いました。不動産・ホテル事業に関しては、「KAWASAKI DELTA」や「ホテルメトロポリタン 秋田 ノースウイング」、「MEGURO MARC」などの設備投資を実施しました。その他の事業においては、システム開発などの設備投資を実施しました。

また、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度より6,035億円増加したものの、3,358億円の流出となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度より6,787億円減少し、3,046億円の流入となりました。これは、有利子負債の調達が減少したことなどによるものであります。

なお、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末の1,979億円から269億円減少し、1,710億円となりました。

 

b 財務政策

グループ経営ビジョン「変革 2027」の早期実現に向けて、設備投資に関しては、将来の収益力向上に資する成長投資を積極的に実施し、業務改革等に資する重点枠投資についても着実に実施するほか、維持更新投資については、安全の確保を前提に投資規模を見直します。2021年度から2025年度まで総額3兆8,880億円の投資を計画しています。また、株主還元については、中長期的に総還元性向40%を目標とし、配当性向は30%をめざすこととしております。このために必要な資金については、営業キャッシュ・フローによるほか、社債の発行や金融機関からの借入等による資金調達を行っており、連結有利子負債残高は、連結営業収益、利益に応じた水準とすることを中長期的な考え方としております。具体的には、ネット有利子負債/EBITDAを3.5倍程度とすることをめざしております。また、2021年1月に、ネット有利子負債/EBITDAを2025年度までに5倍以下へ改善し、その後も財務健全性の確保に努めることを公表しております。

「ネット有利子負債」とは、連結有利子負債残高から連結現金及び現金同等物の期末残高を差し引いた数値であり、当連結会計年度末のネット有利子負債残高は4兆5,327億円となりました(なお、当連結会計年度末の有利子負債残高は4兆7,037億円であります)。また、「EBITDA」とは、連結営業利益に連結減価償却費を加えた数値であり、当連結会計年度のEBITDAは2,386億円となりました。

当社グループはキャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入しており、CMS参加各社の余裕資金の運用と資金調達の管理を一括して行い、連結ベースでの資金効率の向上に努めております。また、グループ間決済の相殺やグループ内の支払業務を集約する支払代行制度などの資金管理手法を採用しております。

当社は、健全な財務体質の維持・向上および十分な手元流動性の確保を基本方針に置き、社債の発行や金融機関からの借入等により資金調達を行っております。また、金利上昇リスクの抑制を目的とし、支払金利の固定化や、調達年限の長期化による支払金利の長期固定化を行っております。さらに、年度ごとの債務償還額の抑制および平準化に資する年限選択を行うことで、将来の借換リスク抑制を図っております。

当社は、当連結会計年度に国内において償還期限を2024年から2071年の間とする17本の無担保普通社債を総額4,100億円発行いたしました。これらの社債は、㈱格付投資情報センターよりAA+の格付けを取得しております。また、海外において償還期限を2028年から2039年の間とする3本の無担保普通社債を総額3億ポンド(456億円)および総額12億ユーロ(1,566億円)発行いたしました。これらの社債は、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱よりA+、ムーディーズ・ジャパン㈱よりA1の長期債格付けを取得しております。その他、金融機関から2,986億円の長期資金を借り入れました。

新幹線鉄道施設に関連する鉄道施設購入長期未払金は、元利均等半年賦支払であり、年利6.55%の固定利率により2051年9月30日までに支払われる3,184億円であります。

このほか、当連結会計年度末現在、東京モノレール㈱が4億円の鉄道施設購入長期未払金を有しております。

短期資金の需要に対応するため、当連結会計年度末現在、主要な銀行に総額5,800億円の当座借越枠を設定しております。なお、当連結会計年度末における当座借越残高は600億円であります。また、コマーシャル・ペーパーについては、当連結会計年度末現在、㈱格付投資情報センターよりa-1+、㈱日本格付研究所よりJ-1+の短期債(CP)格付けを取得しております。なお、当連結会計年度末におけるコマーシャル・ペーパーの発行残高は3,300億円であります。さらに、銀行からのコミットメント・ライン(一定条件のもと契約内での借入れが自由にできる融資枠)を3,000億円設定しておりますが、当連結会計年度末におけるコミットメント・ラインの使用残高はありません。

新型コロナウイルス感染症による影響に備えた資金確保および有利子負債の償還等を目的として、以下の対応を行っております。

2022年4月14日に国内において償還期限を2027年から2072年の間とする3本の無担保普通社債を総額450億円発行いたしました。これらの社債は、㈱格付投資情報センターよりAA+の格付けを取得しております。また、2022年4月13日に海外において償還期限を2033年とする無担保普通社債を総額6.5億ユーロ(877億円)発行いたしました。これらの社債は、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱よりA+、ムーディーズ・ジャパン㈱よりA1の長期債格付けを取得しております。

コマーシャル・ペーパーについては、㈱格付投資情報センターよりa-1+、㈱日本格付研究所よりJ-1+の短期債(CP)格付けを取得しております。なお、有価証券報告書提出日の属する月の前月末現在におけるコマーシャル・ペーパーの発行残高は4,800億円であります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されており、連結財務諸表の作成に当たっては、連結決算日における資産・負債および当連結会計年度における収益・費用の数値に影響を与える事項について、過去の実績や現在の状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積りを行った上で、継続して評価を行っております。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた見積りや仮定のうち、財政状態および経営成績に重要な影響を与える可能性がある項目は以下のとおりです。

 

a 繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産の回収可能性に関する仮定に関しては、「第5 経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。

 

b 固定資産の減損

固定資産の減損に関する仮定に関しては、「第5 経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。

 

c 退職給付債務の見積り

従業員の退職給付債務は、割引率、昇給率、退職率、死亡率等の数理計算上の前提条件を用いて見積りを行っております。数理計算上の前提条件と実績が異なる場合または前提条件の変更があった場合は、翌連結会計年度の退職給付債務の見積りに影響を与える可能性があります。

 

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