課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 経営の基本方針(グループ理念)

 私たちは「究極の安全」を第一に行動し、グループ一体でお客さまの信頼に応えます。

 技術と情報を中心にネットワークの力を高め、すべての人の心豊かな生活を実現します。

 

(2) 今後の経営環境の変化

わが国の経済情勢は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けており、今後、お客さまのご利用は着実に回復していくと想定していますが、ライフスタイルの変容により、その水準は感染症拡大以前には戻らないと考えられます。また、ウクライナ情勢等による不透明感がみられる中で、原材料価格の上昇や金融資本市場の変動等のリスクが懸念されます。

中長期的には、より一層の人口減少や高齢化の進展が見込まれるとともに、自動運転等の技術革新やグローバル化の変容など、経営環境が大きく変化していくことが想定されます。

加えて、当社グループは、会社発足から30年以上が経過し、鉄道のシステムチェンジや社員の急速な世代交代など、様々な変革課題に直面しております。

 

(3) 中期的な会社の経営戦略

グループ経営ビジョン「変革 2027」において、将来の環境変化を先取りした経営を進めてきましたが、今後もお客さまのご利用は以前の水準には戻らないという考えのもと、2020年9月にポストコロナ社会に向けた対応方針である「変革のスピードアップ」を発表しました。今後、様々な取組みのレベルとスピードを上げ、「変革 2027」の実現に向けた歩みを加速させていきます。

私たちの強みであるリアルなネットワークとデジタルを掛け合わせ、「ヒト起点」の発想で鉄道を中心としたビジネスモデルを進化させ、構造改革を推進することにより、サステナブルなJR東日本グループをめざします。

輸送サービス、生活サービス、IT・Suicaサービスの3つのサービスの融合により、グループの力を最大化し新たな価値を生み出すことで、2025年度には運輸事業セグメントとそれ以外のセグメントの営業収益の比率を「6:4」にしていきます。引き続き、成長分野に経営資源を重点的に振り向け、「5:5」の早期実現をめざします。

 

(4) 目標とする経営数値

経営環境の急激な変化を踏まえ、2021年1月に第39期(2025年度)をターゲットとした数値目標を設定しており、今後も目標達成に向けてグループ一体となって取り組んでまいります。

 

 

第39期(2025年度)

数値目標

第35期(2021年度)

10月計画

第35期(2021年度)

実績

第35期(2021年度)

計画対比

連結営業収益

3兆900億円

2兆570億円

1兆9,789億円

96.2

セグメント別

運輸事業

1兆9 ,700 億円

1兆3,360億円

1兆2,770億円

95.6%

流通・サービス事業

5,500 億円

2,900億円

2,781億円

95.9%

不動産・ホテル事業

4,800 億円

3,610億円

3,526億円

97.7%

その他

900 億円

700億円

710億円

101.5%

連結営業利益

4,500 億円

△1,150億円

△1,539億円

セグメント別

運輸事業

2,520 億円

△2,570億円

△2,853億円

流通・サービス事業

570 億円

240億円

141億円

58.8%

不動産・ホテル事業

1,130 億円

1,060億円

1,078億円

101.7%

その他

300億円

140億円

116億円

83.2%

調整額

△20億円

△20億円

△21億円

連結営業キャッシュ・フロー

(5年間総額※1 )

3兆6 ,930 億円

1,905億円

(進捗率)

5.2%

連結ROA

4.5 %程度

△1.7%

(※2)

ネット有利子負債/EBITDA

5倍以下

19.0倍

 

※1 第35期(2021年度)から第39期(2025年度)までの総額を記載

※2 ネット有利子負債=連結有利子負債残高-連結現金及び現金同等物残高

EBITDA=連結営業利益+連結減価償却費

 

(5) 対処すべき課題

グループ経営ビジョン「変革 2027」の実現に向けて、「安全」を引き続き経営のトッププライオリティと位置づけ、「収益力向上(成長・イノベーション戦略の再構築)」、「経営体質の抜本的強化(構造改革)」および「ESG経営の実践」に取り組んでまいります。

 

○ 「安全」がトッププライオリティ

安全・安定輸送に磨きをかけ、当社グループのすべての基盤であるお客さまや地域の皆さまからの「信頼」を高めます。また、社員一人ひとりが仕事の本質を理解してリスクに対して主体的に対処するとともに、昨今の自然災害の激甚化も踏まえた災害リスクの減少に取り組みます。これにより、重大事故に至るリスクを極小化し、「お客さまの死傷事故ゼロ、社員の死亡事故ゼロ」の実現をめざします。

また、今後は、国により創設された鉄道駅バリアフリー料金制度を活用し、ホームドア等の整備を拡大・加速していきます。

 

○  収益力向上(成長・イノベーション戦略の再構築)

旅行気運・移動需要を喚起して鉄道事業のご利用を回復させるとともに、ライフスタイルの変化に対応した新しい商品・サービスを展開し、当社グループの持つ強みを活かして積極的に新領域へ挑戦します。 

グループ一体となった「鉄道開業150年」事業の展開、「Beyond Stations構想」として駅のショールーミング化や「JRE MALL」商品の受取拠点化等の推進に取り組みます。また、「高輪ゲートウェイシティ(仮称)」の2025年度中の全面開業に向けてまちづくりを推進するとともに、グループの総合力を発揮して持続可能な国際事業の展開などに取り組みます。

 

○  経営体質の抜本的強化(構造改革)

鉄道事業のオペレーションコスト削減を推進するなど、柔軟なコスト構造をめざすとともに、新技術の活用、設備のスリム化、仕事の仕組みの見直しを徹底し、構造改革に取り組みます。

運賃制度や列車ダイヤといった事業運営の基本となる事項について、ご利用状況等を踏まえ、より柔軟な運用に向けて検討を行うとともに、地方ローカル線については、沿線自治体等と持続可能な交通体系の構築に向けた協議を進めます。

また、急速なスピードで変化する経営環境に柔軟に対応し、一人ひとりの社員の働きがいの向上と生産性向上による経営体質の強化を図るため、2022年6月以降、当社の組織を改正します。権限移譲および系統間や現業機関と企画部門の融合を進め、お客さまに近い場所でスピーディーな価値創造・課題解決に取り組みます。

 

○  「ESG経営」の実践

環境、社会、企業統治の観点から「ESG経営」を実践し、事業を通じて社会的な課題を解決することで、地域社会の持続的な発展に貢献するとともに、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取組みを推進します。

環境については、JR東日本グループ「ゼロカーボン・チャレンジ2050」に向けて、2030年度までに東北エリアにおけるCO₂排出量「実質ゼロ」をめざします。また、地方創生については、新駅開業や地方中核駅を中心としたまちづくり、6次産業化による地域経済の活性化などに取り組みます。さらに、内部統制については、グループの価値を向上させる観点での幅広いリスクマネジメントの考え方をとり入れ、社員の成長に向けた果敢なチャレンジを支援・促進していきます。

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