業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度におけるヤマトグループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてヤマトグループが判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

ⅰ.財政状態

 総資産は1兆868億54百万円となり、前連結会計年度末に比べ31億36百万円減少しました。

 負債は4,886億21百万円となり、前連結会計年度末に比べ170億82百万円減少しました。

 純資産は5,982億33百万円となり、前連結会計年度末に比べ139億46百万円増加しました。

 

ⅱ.経営成績

 当連結会計年度における経済環境は、新型コロナウイルス感染症に係る緊急事態宣言の全面解除に伴う段階的な経済活動の再開により、景況感が改善する兆しはみられるものの、世界的なサプライチェーンの混乱や円安、原油高の傾向に加え、国際情勢の不安定化による資源価格の上昇など、依然として本格的な景気回復の見通しが不透明な状況にあります。

 また、新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークの推進、診療や教育分野におけるサービスのオンライン化など、消費行動や生活様式が変化し、全産業のEC化が加速しています。このような状況下、ヤマトグループは経営理念に掲げる「豊かな社会の実現への貢献」を通じた持続的な企業価値の向上を実現するため、グループ各社の経営資源を結集した新しいヤマト運輸を中核とする新たなグループ経営体制をスタートさせました。

 そして、2024年3月期を最終年度とする中期経営計画「Oneヤマト2023」に基づき、生活様式の変化と流通構造の変化に対応するサプライチェーンの変革に向けて、お客様や社会のニーズに対し総合的な価値提供に取り組みました。

 当連結会計年度の連結業績は、以下のとおりとなりました。

 

    区分

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

  伸率(%)

営業収益

(百万円)

1,695,867

1,793,618

97,750

5.8

営業利益

(百万円)

92,121

77,199

△14,921

△16.2

経常利益

(百万円)

94,019

84,330

△9,689

△10.3

親会社株主に帰属する当期純利益

(百万円)

56,700

55,956

△744

△1.3

 

 当連結会計年度の営業収益は1兆7,936億18百万円となり、前連結会計年度に比べ977億50百万円の増収となりました。これは、成長が加速するEC領域への対応により荷物の取扱数量が増加したことや、お客様の物流最適化に注力したことによるものです。

 営業費用は1兆7,164億18百万円となり、前連結会計年度に比べ1,126億72百万円増加しました。これは、燃料単価が上昇傾向にあることに加え、拡大するECの需要に対応するために構築しているEC物流ネットワークと既存ネットワークにおけるオペレーションの適正化を進める途上にあることなど、中期経営計画「Oneヤマト2023」の推進に伴う費用が増加したことによるものです。

 この結果、当連結会計年度の営業利益は771億99百万円となり、前連結会計年度に比べ149億21百万円の減益となりました。

 経常利益は、投資事業組合運用益を45億10百万円計上したことなどにより843億30百万円となり、前連結会計年度に比べ96億89百万円の減益となりました。

 親会社株主に帰属する当期純利益は、政策保有株式の売却を進めたことなどにより、投資有価証券売却益153億12百万円を特別利益に計上した一方で、退職給付制度改定費用149億99百万円を特別損失に計上したことに加え、関係会社の事業譲渡に伴う株式売却損により、当連結会計年度の課税所得を縮小させたことなどから559億56百万円となり、前連結会計年度に比べ7億44百万円の減益にとどめることができました。

 

 なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。また、当社および国内連結子会社は、当連結会計年度より有形固定資産の減価償却方法を資産の使用実態をより反映した費用配分を行うため、定率法から定額法へ変更し、あわせて、一部の車両運搬具の耐用年数を変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 Ⅰ 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更等)」に記載のとおりであります。

 

 2022年1月、当社が保有するヤマトホームコンビニエンス株式会社の発行済株式の51%をアート引越センター株式会社に譲渡しました。本株式譲渡に伴い、当社のヤマトホームコンビニエンス株式会社に対する議決権所有割合は100%から49%となり、当連結会計年度末より同社は当社の連結子会社から持分法適用関連会社になりました。

 

<ヤマトグループ全体としての取組み>

 ヤマトグループは、新型コロナウイルス感染症に対応し、お客様に安心して宅急便をご利用いただくため、引き続き、社員の衛生管理に最大限留意しながら、希望する社員に対してワクチンの職域接種を進めるとともに、非対面での荷物のお届けや接客時の感染防止対策の実施、ホームページを活用した情報発信など宅急便をはじめとする物流サービスの継続に向けた取組みに注力しました。そして、お客様や社会の多様化するニーズに対し総合的な価値提供を目指す中期経営計画「Oneヤマト2023」に基づき、以下の取組みを進めています。

 

イ.グループ全体の生産性向上

変化し多様化するお客様のニーズに応えるため、引き続き、データ分析に基づく需要や業務量予測の精度向上に努めるとともに、グループ経営資源の最適配置に取り組みました。また、リテール部門、法人部門、輸送機能本部、デジタル機能本部が連携し、作業のオペレーション改革や自動化、デジタル化による配送工程の最適化と標準化を推進し、第一線の社員がお客様に向き合う時間と集配対応力の拡大を進めるとともに、安全や品質向上へつなげる取組みを行いました。2021年9月には、ヤマトグループ各社の経理・会計業務や人事業務を受託しているヤマトマネージメントサービス株式会社をヤマト運輸株式会社に吸収合併し、会計・人事業務における専門人材の最適配置を進めました。また、「Oneヤマト体制」のもと、プロフェッショナルサービス機能本部が中心となり、第一線の社員の管理間接業務の削減に向けた業務の標準化や、電子化によるBPR(業務プロセス改革)を推進しました。

ロ.法人領域の成長による営業収益の拡大

新型コロナウイルス感染症の拡大を契機とした消費行動や生活様式の変化への対応を進める法人のお客様に対して、「宅急便」・「EAZY」の輸送モードに法人事業者向けネットワークを加えた輸配送ネットワークの構築、国際輸送ニーズへの対応、海外事業の収益改善など、お客様のサプライチェーン全体に対する総合的な価値提供に取り組みました。また、引き続き、拡大するECの需要に対して、配送パートナーである「EAZY CREW」とセールスドライバーの最適配置、仕分け・輸送からラストマイルまでのオペレーションプロセスを簡素化したEC物流ネットワークの構築を進めるとともに、EC事業者様の調達や在庫流動化など物流の上流領域でのソリューション提案を推進しました。さらに、購入商品の返品手続きをデジタル化し、従来発生していた購入者による電話での返品依頼や伝票作成の手間などを簡便化するとともに、最寄りの営業所や宅配便ロッカー「PUDOステーション」や一部のコンビニエンスストアなどから伝票不要で返送が可能となる「デジタル返品・発送サービス」をEC事業者様に向けて開始するなど、新たな価値提供に注力しました。また、2021年7月から9月に行われた東京2020大会におけるオフィシャル荷物輸送サービスパートナーとして、宅急便に留まらない総合物流を通じて、大会期間中の物流設計と実務の円滑・安全な運営を支援しました。

 

 

ハ.持続的な企業価値向上を実現する戦略の推進

持続的な企業価値向上を実現すべく、中期経営計画「Oneヤマト2023」では、データ戦略とイノベーション戦略の推進、経営体制の刷新とガバナンスの強化、「運創業」を支える人事戦略、資本効率の向上、およびサステナブル経営の強化に取り組んでいます。

データ戦略については、データ活用のさらなる高度化に向けて、デジタルデータの整備とデジタル基盤の強化を進めており、当連結会計年度においては、需要予測の高度化や「EAZY」を支えるリアルタイムコミュニケーション基盤のさらなる拡張を推進しました。また、イノベーション戦略については、スタートアップの発掘と連携、新規事業創出に向けたスタートアップへの投資など、オープンイノベーションに向けた取組みを進めており、当連結会計年度においては、「KURONEKO Innovation Fund」を通じて、越境ファッションECサイトを運営する株式会社シックスティーパーセントや、水を燃料に用いた超小型衛星用の推進機を開発する株式会社Pale Blueなど最先端技術を持つスタートアップ企業に出資しました。

ガバナンスの強化については、経営の監督と執行の分離、経営の透明性の維持、強化など、コーポレート・ガバナンスの強化に継続して取り組むとともに、意思決定のスピードを重視したガバナンスの強化を進めました。

「運創業」を支える人事戦略については、社員が高いパフォーマンスを発揮できるよう、安全指導・企画業務に従事する社員に対する専門職人事制度の導入や、経営層を含めた全社員のデジタルリテラシーの底上げとデジタル人材の早期育成を図る、ヤマトデジタルアカデミーを通じた育成研修などに取り組んでいます。

サステナブル経営の強化については、持続的な成長と持続可能な社会の発展を両立するため「つなぐ、未来を届ける、グリーン物流」「共創による、フェアで、“誰一人取り残さない”社会の実現への貢献」という2つのビジョンのもと、人や資源、情報を高度につなぎ、輸送をより効率化させるなど環境と社会に配慮した経営を推進しています。当連結会計年度においては、グループ全体のサステナビリティ推進を統括する体制整備を進めるとともに、「ヤマトグループ環境方針」(2021年8月)、「ヤマトグループ人権方針」(2021年12月)に続き、2022年1月には「ヤマトグループ 責任ある調達方針」と「ヤマトグループ ビジネスパートナー行動ガイドライン」を制定しました。

 

<セグメント別の概況>

 当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しています。

 

○リテール部門

イ.リテール部門は、宅急便をはじめとする高品質な小口輸送サービスを提供しており、宅急便が持つあらゆるお客様との接点という特性を活かし、お客様のニーズに応える価値提供に取り組んでいます。引き続き、グループ全体のビジネスの起点として、生活様式やビジネス環境に伴うお客様の変化を第一線の社員が汲み取り、法人部門と連携してグループの経営資源を活用したソリューション提案に注力しました。また、プラットフォーム機能本部と連携し、5,000万人以上にご登録いただいている「クロネコメンバーズ」、法人のお客様約130万社以上にご利用いただいている「ヤマトビジネスメンバーズ」を中心に「送る」「受け取る」をより便利にするサービスの提供や、輸送以外の生活・ビジネスに役立つ様々なサービスの拡充に取り組みました。

ロ.当連結会計年度においては、送り状の作成から運賃のお支払いまで、宅急便の発送手続きをスマートフォンの専用サイトで完結できる「宅急便をスマホで送る」の対象商品を、ゴルフ宅急便・スキー宅急便・空港宅急便・往復宅急便などのレジャー向け商品に拡充するとともに、Web領収書ダウンロード機能の追加や、非接触、非対面で宅配便ロッカー「PUDOステーション」からの発送を可能にするなど、お客様の利便性向上を図りました。また、2022年3月には、クロネコメンバーズのアプリ・Webサイト画面の視認性や操作性の向上および、新たなデータ基盤によるお客様と荷物情報のリアルタイム連携や一元化など、クロネコメンバーズの各種提供機能の利便性が向上しました。

ハ.引き続き、輸送機能本部やデジタル機能本部と連携し各地域の需要と業務量予測の精度向上に努めるとともに、適正な人員配置や集配、幹線輸送の効率化により、生産性の向上を図りました。

ニ.外部顧客への営業収益は、多様化するニーズに応じた最適な荷物のお届けに取り組むとともに、法人部門と連携して小規模事業者様からの荷物獲得に注力した結果8,933億96百万円となり、前連結会計年度に比べ1.2%増加しました。なお、前連結会計年度急増したEC事業者様からの荷物を法人部門にシフトした結果、部門全体の営業収益は1兆1,724億14百万円となり、前連結会計年度に比べ2.0%減少しました。営業費用は、燃料単価の上昇や取扱数量増加に伴う輸送費用が増加した一方で、人件費が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ1.5%減少したものの、営業利益は前連結会計年度に比べ12.5%減少しました。

 

○法人部門

イ.法人部門は、ビジネスの中・上流領域を含む企業物流のサプライチェーン全体への価値提供を推進するため、物流オペレーションの改善や効率化に留まらず、お客様の経営判断に資するサプライチェーンマネジメント(SCM)戦略の企画立案、より実効性のあるプロジェクトの構築や管理運営まで担うアカウントマネジメントに取り組んでいます。

ロ.また、実店舗とECのオムニチャネルでの販売体制の構築を進める小売業の事業者様に対し、「Oneヤマト体制」として再構築された拠点と輸送ネットワークを組み合わせ、お客様のオムニチャネルでの販売在庫を流動化し、在庫と物流を一元管理して最適化する取組みを推進しています。さらに、店舗向け商品ならびに公式通販サイト向け商品の調達から保管、梱包、配送までのすべての物流業務をヤマトグループにて一括管理を行う総合的な価値提供に資する提案営業に注力しました。

ハ.成長が続くEC領域に対し、購入、配送、受取りの利便性と安全性を向上させる「EAZY」の拡販、仕分け・輸送からラストマイルまでのオペレーションプロセスを簡素化したEC物流ネットワークの構築を推進しています。また、大手EC事業者様との連携のもと、オンラインショッピングモールに出店するEC事業者様の物流最適化に向けて、受注から出荷・配送まで運営に業務の全部または一部機能を代行するサービスの拡販とさらなる利便性の向上に取り組んでいます。さらに、需要が拡大する越境ECにおいては、輸入通関に係わるシステムと国内配送ネットワークを円滑に連携し、お届けまでのリードタイム短縮を実現する取組みを推進しています。

ニ.当連結会計年度においては、事業の領域を広げる法人事業者様の荷物サイズの多様化・大型化に対応し、宅急便の取扱いサイズを拡大することで、従来取り扱えなかった家具・家電や地域のお米・特産品などの商材を取り込むとともに、積極的な深耕営業により新たな宅急便の利用拡大につなげました。また、オートロック式マンションのエントランスをデジタルキーで開錠し、事前に指定をいただいたお客様への「置き配」を実現する機能を拡充しました。

ホ.外部顧客への営業収益は、EC需要拡大への対応や法人顧客の物流最適化の推進、新型コロナウイルス感染症の影響で停滞していた輸出入の荷動きの回復への機動的な対応などにより8,121億85百万円となり、前連結会計年度に比べ10.8%増加しました。一方、取扱数量の増加に伴う輸送費用の増加や中期経営計画「Oneヤマト2023」の推進に伴う費用が増加したことなどにより、営業利益は前連結会計年度に比べ57.4%減少しました。

(参考)

    区分

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

  伸率(%)

宅配便

(宅急便・宅急便コンパクト・EAZY・ネコポス)

(百万個)

2,096

2,275

178

8.5

クロネコDM便

(百万冊)

826

824

△1

△0.2

 

○その他

イ.当連結会計年度においては、複数の企業グループのネットワークを用いたボックス輸送や車両整備サービスの拡販に取り組みました。

ロ.外部顧客への営業収益は880億35百万円となり、前連結会計年度に比べ9.9%増加しました。営業利益は165億59百万円となり、前連結会計年度に比べ95億70百万円増加しました。

 

<ESGの取組み>

イ.ヤマトグループは、人命の尊重を最優先とし、安全に対する様々な取組みを実施しており、輸送を主な事業とするグループ各社を中心に、安全管理規程の策定および管理体制の構築、年度計画の策定など、運輸安全マネジメントに取り組んでいます。当連結会計年度においては、全国10地域において、永年無事故運転者に対する表彰式を開催し、安全意識の醸成を図りました。なお、子どもたちに交通安全の大切さを伝えることを目的として、1998年より継続して全国の保育所・幼稚園・小学校などで実施している「こども交通安全教室」については、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて開催を見送りました。

ロ.ヤマトグループは、企業価値の最大化を図ることを経営上の最重要課題の一つとして位置付け、コーポレート・ガバナンスの取組みの中で、経営体制の強化に向けた施策を実践しています。そして、グループ企業理念に基づき、法と社会的規範に則った事業活動を展開するとともに、コンプライアンス経営を推進しています。当連結会計年度においては、グループ全体のサステナビリティ推進を統括する体制の整備を進めるとともに、「ヤマトグループ環境方針」(2021年8月)、「ヤマトグループ人権方針」(2021年12月)に続き、2022年1月には「ヤマトグループ 責任ある調達方針」と「ヤマトグループ ビジネスパートナー行動ガイドライン」を制定しました。

ハ.ヤマトグループは、中長期の経営のグランドデザインである経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」で掲げた2つのビジョン「つなぐ、未来を届ける、グリーン物流」と「共創による、フェアで、“誰一人取り残さない”社会の実現への貢献」のもと、「サステナブル中期計画2023[環境・社会]」を策定し、サステナブル経営の強化に取り組んでいます。

ニ.このうち「環境」の分野では、事業活動の環境負荷を減らすため総量目標を定めるとともに、資材や車など、物流業界として革新的な技術の普及に貢献できる分野についても目標を定めました。さらに、多様なパートナーと協働したグリーン物流への取組みや環境負荷が少ない商品やサービスの提供も目標とし、環境価値の創出に取り組んでいます。当連結会計年度においては、環境に配慮しながらドライバーにとって実用性の高い低炭素車両の導入を推進するため、超低床でウォークスルータイプの小型バッテリー型EVトラックを用いた集配業務の実証実験を開始しました。また、台車、自転車など、温室効果ガス(GHG)を排出しない集配方法の導入、再生可能エネルギー由来の電力の利用など、長期目標として設定した2050年の温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロ(自社排出)の実現に向けた取組みを推進しました。なお、次世代を担う子どもたちへの環境教育をサポートすることを目的として2005年より継続して全国各地で実施している「クロネコヤマト環境教室」については、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて開催を見送りました。

ホ.また、「社会」の分野では引き続き、人材の多様性を尊重し、社員が活躍できる職場環境を整備するとともに、社会の課題に向き合い、共創による地域づくりを推進するなど、豊かな社会の実現に取り組んでいます。当連結会計年度においては、持続的な医薬品ネットワークの構築に向けて、岡山県和気町ならびに医薬品メーカー卸様などと連携し、地域の医療機関が必要としている医薬商材や個人宅までの処方薬などの輸送における無人航空機(ドローン)の経済的実現性を検証する実証実験を開始しました。また、トラックドライバー不足による幹線輸送力の維持が今後の課題となる中、持続的かつ強靭な物流ネットワークの構築に向けて、2024年4月から貨物専用機(フレイター)の運航を開始することを2022年1月に発表しました。

ヘ.ヤマトグループは、より持続的な社会的価値の創造に向けて、社会と価値を共有するCSV(クリエーティング・シェアード・バリュー=共有価値の創造)という概念に基づいた取組みを推進しています。引き続き、地域社会の健全で持続的な発展と地域の皆様の安心・快適な生活をサポートする地域密着のコミュニティ拠点として「ネコサポステーション」を運営し、家事サポートサービスをはじめ、IoT電球「HelloLight」を活用した見守りサービスや生活全般に関わる相談窓口の設置、地域の皆様が交流できるイベントの開催などに取り組んでいます。

ト.ヤマトグループは、社会とともに持続的に発展する企業を目指し、公益財団法人ヤマト福祉財団を中心に、障がい者が自主的に働く喜びを実感できる社会の実現に向けて様々な活動を行っています。具体的には、パン製造・販売を営むスワンベーカリーにおける積極的な雇用や、クロネコDM便の委託配達を通じた働く場の提供、就労に必要な技術や知識の訓練を行う就労支援施設の運営など、障がい者の経済的な自立支援を継続的に行っています。

 

② キャッシュ・フローの状況

○営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動によるキャッシュ・フローは520億16百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ収入が719億4百万円減少しました。これは主に、税金等調整前当期純利益が810億40百万円となり、収入が107億19百万円減少したこと、未払消費税等の増減額が259億59百万円の支出増加となったことおよび法人税等の支払額が213億48百万円の支出増加となったことによるものであります。

○投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動によるキャッシュ・フローは589億43百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ収支が1,030億21百万円減少しました。これは主に、貸付金の回収による収入が912億62百万円減少したことによるものであります。

○財務活動によるキャッシュ・フロー

 財務活動によるキャッシュ・フローは544億56百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ支出が687億91百万円減少しました。これは主に、借入金の収支が365億円増加したことおよび自己株式の取得による支出が256億50百万円減少したことによるものであります。

 以上により、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,806億3百万円となり、前連結会計年度末に比べ606億81百万円減少しました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 セグメントごとの営業収益は次のとおりであります。

 なお、ヤマトグループは、貨物運送事業を中心とするサービスを主要な商品としているため、生産および受注の実績は記載を省略しております。

 また、当連結会計年度から経営体制を移行したことに伴い、前連結会計年度まで開示していた事業別営業収益に替えて、セグメント別営業収益の内容を開示しております。

 セグメントの名称

 前連結会計年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

 当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

 比 較

 増減率

 (%)

 

収入

金額

(百万円)

構成比

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

リテール部門

運送収入

1,158,221

68.3

1,144,359

63.8

△1.2

物流支援収入

10,801

0.6

3,587

0.2

△66.8

その他

34,949

2.1

28,183

1.6

△19.4

内部売上消去

△321,435

△19.0

△282,733

△15.8

△12.0

882,536

52.0

893,396

49.8

1.2

法人部門

運送収入

639,269

37.7

598,306

33.4

△6.4

物流支援収入

218,320

12.9

249,637

13.9

14.3

その他

26,116

1.5

33,022

1.8

26.4

内部売上消去

△150,514

△8.9

△68,780

△3.8

△54.3

733,190

43.2

812,185

45.3

10.8

その他

運送収入

46,940

2.8

50,967

2.8

8.6

その他

166,817

9.8

176,558

9.8

5.8

内部売上消去

△133,618

△7.9

△139,490

△7.8

4.4

80,139

4.7

88,035

4.9

9.9

合   計

1,695,867

100.0

1,793,618

100.0

5.8

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点によるヤマトグループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてヤマトグループが判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

ⅰ.財政状態

 総資産は1兆868億54百万円となり、前連結会計年度末に比べ31億36百万円減少しました。これは主に、現金及び預金が588億78百万円減少した一方で、リテール部門を中心に車両運搬具やソフトウェアを取得したことで固定資産が443億98百万円増加したことによるものであります。

 負債は4,886億21百万円となり、前連結会計年度末に比べ170億82百万円減少しました。これは主に、短期借入金が190億円および未払法人税等が177億3百万円減少した一方で、退職金制度の改定などにより退職給付に係る負債が223億7百万円増加したことによるものであります。

 純資産は5,982億33百万円となり、前連結会計年度末に比べ139億46百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益が559億56百万円となった一方で、剰余金の配当を196億89百万円実施したことおよび自己株式を100億2百万円取得したことなどによるものであります。

 以上により、自己資本比率は前連結会計年度の52.9%から54.3%となりました。

 

ⅱ.経営成績

 営業収益は1兆7,936億18百万円となり、前連結会計年度に比べ977億50百万円の増収となりました。これは、成長が加速するEC領域への対応により荷物の取扱数量が増加したことや、お客様の物流最適化に注力したことによるものです。

 営業費用は1兆7,164億18百万円となり、前連結会計年度に比べ1,126億72百万円増加しました。これは、燃料単価が上昇傾向にあることに加え、拡大するECの需要に対応するために構築しているEC物流ネットワークと既存ネットワークにおけるオペレーションの適正化を進める途上にあることなど、中期経営計画「Oneヤマト2023」の推進に伴う費用が増加したことによるものです。

 この結果、当連結会計年度の営業利益は771億99百万円となり、前連結会計年度に比べ149億21百万円の減益となりました。

 経常利益は、投資事業組合運用益を45億10百万円計上したことなどにより843億30百万円となり、前連結会計年度に比べ96億89百万円の減益となりました。

 親会社株主に帰属する当期純利益は、政策保有株式の売却を進めたことなどにより、投資有価証券売却益153億12百万円を特別利益に計上した一方で、退職給付制度改定費用149億99百万円を特別損失に計上したことに加え、関係会社の事業譲渡に伴う株式売却損により、当連結会計年度の課税所得を縮小させたことなどから559億56百万円となり、前連結会計年度に比べ7億44百万円の減益にとどめることができました。

 1株当たり当期純利益は151.03円となり、前連結会計年度に比べ0.52円減少しました。

 

○リテール部門

 営業収益は、多様化するニーズに応じた最適な荷物のお届けに取り組むとともに、法人部門と連携して小規模事業者様からの荷物獲得に注力した結果8,933億96百万円となり、前連結会計年度に比べ1.2%増加しました。なお、前連結会計年度急増したEC事業者様からの荷物を法人部門にシフトした結果、部門全体の営業収益は1兆1,724億14百万円となり、前連結会計年度に比べ2.0%減少しました。営業費用は、燃料単価の上昇や取扱数量増加に伴う輸送費用が増加した一方で、人件費が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ1.5%減少したものの、営業利益は前連結会計年度に比べ12.5%減少しました。

 

○法人部門

 営業収益は、EC需要拡大への対応や法人顧客の物流最適化の推進、新型コロナウイルス感染症の影響で停滞していた輸出入の荷動きの回復への機動的な対応などにより8,121億85百万円となり、前連結会計年度に比べ10.8%増加しました。一方、取扱数量の増加に伴う輸送費用の増加や中期経営計画「Oneヤマト2023」の推進に伴う費用が増加したことなどにより、営業利益は前連結会計年度に比べ57.4%減少しました。

 

○その他

 営業収益は880億35百万円となり、前連結会計年度に比べ9.9%増加しました。営業利益は165億59百万円となり、前連結会計年度に比べ95億70百万円増加しました。

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報

ⅰ.キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。

 

ⅱ.資本の財源及び資金の流動性

 ヤマトグループは、ネットワーク構築、デジタル・イノベーション関連などの事業継続および事業成長に対する投資計画に照らし、キャッシュ創出状況、保有現預金や自己資本比率水準等の財務の健全性と効率性を意識しながら、必要資金についてはグループ資金を活用するとともに、金融機関からの借入および社債発行により対応しております。

 なお、財務の健全性の観点から自己資本比率は50%前後を意識し、格付け水準(R&I格付投資情報センター/AA-)の維持に努めてまいります。株主還元については、親会社株主に帰属する当期純利益を基準とする配当性向30%、総還元性向50%を目安とし実施してまいります。

 

③ 目標とする指標の達成状況等

 ヤマトグループは、サプライチェーン全体の変革を支援することで、個人、法人のお客様、そして社会全体に対する価値提供を目指す中期経営計画「Oneヤマト2023」の最終年度となる2024年3月期において、連結営業収益2兆円、連結営業利益1,200億円(連結営業利益率6.0%)、ROE10.0%の達成を目標としております。

 当連結会計年度の連結営業収益は、成長が加速するEC領域への対応により荷物の取扱数量が増加したことや、お客様の物流最適化に注力したことなどにより1兆7,936億18百万円となり、前連結会計年度に比べ977億50百万円の増収となりました。

 連結営業利益は、燃料単価が上昇傾向にあることに加え、拡大するECの需要に対応するために構築しているEC物流ネットワークと既存ネットワークにおけるオペレーションの適正化を進める途上にあることなど、中期経営計画「Oneヤマト2023」の推進に伴う費用が増加したことなどにより771億99百万円(連結営業利益率4.3%)となり、前連結会計年度に比べ149億21百万円の減益となりました。

 連結経常利益は、投資事業組合運用益を45億10百万円計上したことなどにより843億30百万円となり、前連結会計年度に比べ96億89百万円の減益となりました。

 親会社株主に帰属する当期純利益は、政策保有株式の売却を進めたことなどにより、投資有価証券売却益153億12百万円を特別利益に計上した一方で、退職給付制度改定費用149億99百万円を特別損失に計上したことに加え、関係会社の事業譲渡に伴う株式売却損により、当期の課税所得を縮小させたことなどから559億56百万円となり、前連結会計年度に比べ7億44百万円の減益にとどめることできました。その結果、当連結会計年度のROEは9.6%となりました。

 これは、当連結会計年度よりスタートさせたグループ各社の経営資源を結集した新しいヤマト運輸を中核とする新たなグループ経営体制の下、中期経営計画「Oneヤマト2023」の推進により一定の成果が見え始めたことによるものと認識しております。

 今後も持続的な成長に向けた基盤を構築するため、本計画に基づく収益構造改革およびコスト構造改革を着実に推進してまいります。

 

④ 重要な会計上の見積り及び見積りに用いた仮定

 ヤマトグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。

 重要な会計上の見積り及び見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

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