課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループでは、中長期的な経営方針として、次の経営課題に取り組んでいます。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、“Bringing value to life.”という企業理念のもと具体的には、次の4項目を経営方針に掲げて活動しています。

(お客様とともに)

 お客様から選ばれ信頼されるパートナーであり続けるために、現場第一に徹し、創意工夫に努め、新たな価値の創造を追求します。

(株主・投資家の皆様とともに)

 公正かつ透明な経営を実践し、効率的な事業活動を通じて、企業価値の増大を目指します。

(社会とともに)

 良き企業市民として積極的に社会の課題に取り組み、環境の保全をはじめとして、より良い地球社会の実現に貢献します。

(グループ社員とともに)

 グローバル企業として、社員の多様性と挑戦する気概を尊重し、人材育成に力を注ぎ、夢と誇りを持って働ける日本郵船グループを目指します。

 

(2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標

 当社グループは、海運や物流といった「モノ運び」の役割に限定することなく新たなものに挑戦していくという信念のもと、当社の企業理念を構成する基本理念を“Bringing value to life.”と再定義しました。そして、この企業理念に基づき、2018年3月に中期経営計画“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”を策定し、①事業ポートフォリオの最適化(ドライバルク事業の抜本的見直しとコンテナ船統合会社の成功等)、②運賃安定型事業の積み上げ(物流・自動車船・自動車物流事業のシナジー構築等による強化とLNG・海洋事業の強化等)、③効率化、新たな価値創出(Digitalization and Greenへの取り組みを通じた次世代の成長分野の開拓等)を基本戦略として、長期的な企業価値の増大を達成すべく全力で取り組みます。

 

(“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”の利益・財務目標並びに2021年度実績)

 

2021年度実績

中期目標

(2022年目途)

経常損益

10,031億円

700~1,000億円

ROE

86.0%

min 8.0%

自己資本比率

55.6%

min 30.0%

D/Eレシオ

0.47倍

1.50倍以下

 

(キャッシュ・フロー)

営業活動による

キャッシュ・フロー

5,077億円(単年)

5,700億円(5カ年累計)

投資活動による

キャッシュ・フロー

1,485億円(単年)

5,200億円(5カ年累計)

 

(前提)

為替レート

112.06円/US$

105.00円/US$

燃料油価格

US$531.19/MT

HSFO US$320/MT

LSGO US$620/MT

*HSFO = High Sulphur Fuel Oil, LSGO = Low Sulphur Gas Oil

 

(株主還元策)

 当社は、株主の皆様への利益還元を経営上の最重要課題のひとつとして位置づけています。将来の市況変動に耐え得る内部留保の水準にも留意しつつ、業績の見通しや連結配当性向25%を目安に、利益配分を決定する方針です。詳細については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。

 

(3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題

① 安定と成長の戦略

 当社グループは、 “Bringing value to life.” の基本理念のもと、10年後のありたい姿としてのビジョンの実現に向け、2018年度から始めた5カ年の中期経営計画 “Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green” を進めています。

 中期経営計画では、ボラタイルな事業環境や多様に変化する社会に対応すべく、ボラティリティへの耐性強化と事業成長・収益力向上に取り組んでいます。3つの基本戦略である「ポートフォリオの最適化」「運賃安定型事業の積み上げ」及び「効率化と新たな価値創出」に沿った形で、既存事業の拡充に加えて情報技術・環境分野を中心とした新規事業の実現と成長分野への投資を実施してきました。

 「ポートフォリオの最適化」では、市況耐性の高い事業運営を目指しています。ドライバルク輸送部門は、市況耐性への強化のために事業の構造改革を実施し、引き続き徹底した市況エクスポージャー管理を行っています。定期船事業においては、OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.の収支は大幅に改善しましたが、引き続き収益の安定化に取り組みます。

 「運賃安定型事業の積み上げ」では、物流部門・自動車船部門・自動車物流部門において、ネットワークの充実と高品質かつ競争力のあるサービスの強化を図っています。グループの経営基盤であるヒト、モノ、IT、資金を活かした営業力強化とともに、デジタル技術を活用した輸送・荷役の効率化と環境対応に取り組んでいます。また、LNG部門・海洋事業部門では、案件を厳選したうえでの投資を継続しています。

 「効率化と新たな価値創出」としては、“Digitalization and Green” の取り組みを積極的に推し進め、技術力・情報力・ネットワーク力にさらに磨きをかけ、次世代の成長分野を切り拓いています。サプライチェーン全体の最適化や、船上キャッシュレス事業を展開するMarCoPayなど、最新のデジタル技術を駆使した効率性の追求により新たな価値創出を図ります。また、環境問題への対応が、当社グループの最重要課題の一つと認識しており、環境規制強化に着実に対応し、輸送におけるCO₂排出の削減及び再生可能エネルギーをテーマに次世代に向け、多様なグリーンビジネスの実現に取り組んでいます。

 これらの事業戦略の遂行や次世代の成長分野への積極的な取組みに加え、ESG経営を成長戦略と位置づけ、環境問題を始めとする社会の課題の解決にも貢献することで、将来の収益力の最大化を図るとともに、資本効率とROE(自己資本利益率)を向上させ、企業価値・社会価値の持続的な創出に全力で取り組みます。

 また、次期中期経営計画の策定に向けて、2050年の事業環境を予想し、リスクと機会を見極めたうえで、「当社のありたい姿」を議論しました。その成果として2022年3月に長期事業投資計画と船舶脱炭素化ロードマップを公表し、あわせて持続的成長に向けた5つの戦略「ABCDE-X」を策定しました。

 [基軸戦略]

  AX(Ambidexterity): 既存中核事業深化 と 新規成長事業投資 の両立

  BX(Business Transformation):将来の戦略的成長事業への挑戦

 [支えの戦略]

  CX(Corporate Transformation):人材・組織改革

  DX(Digital Transformation):船舶自動運航化、ソリューション型ビジネス拡大

  EX(Energy Transformation):船舶ゼロエミッション化、グリーンビジネス拡大

 当社グループは、2021年9月に外航海運事業におけるGHG削減長期目標を「2050年までのネット・ゼロエミッション達成」とすることに決定しました。その達成に向け、LNG燃料船及び次世代燃料船等の投入による船舶からのGHG排出量削減対応やLNG輸送船等への既存事業更新投資からなる「強化投資」、グリーンビジネスや新規成長事業への投資からなる「成長投資」を行い、環境関連分野を中心に戦略的投資を推進していきます。

 なお、当社物流部門の中核を担う郵船ロジスティクスグループでも、 環境目標として2050年までにお客様へ提供する全サービスのネット・ゼロエミッション化を目指すことを2022年1月に公表しました。今後も持続可能な長期的視点に基づいた取り組みを推進していきます。

 

② ESG(環境・社会・ガバナンス)への取組み

 当社グループでは、2018年3月に発表した中期経営計画 “Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green” の中でESGの経営戦略への統合を取締役会にて策定、開示しました。従来の企業価値向上のための経済性や規模の追求といった「Economy」のモノサシだけではなく、長期的な視点で、社会・環境課題の解決に貢献する「ESG」のモノサシも判断に加えながら、「ESG経営」を推進しています。

 2021年2月に発表した「NYKグループESGストーリー」で当社が目指す姿は、収益最大化と社会・環境のサステナビリティの両立を図り、新たな価値を創造するSustainable Solution Providerです。経営の根幹にあるマテリアリティ(重要課題)として、「安全」、「環境」、「人材」の3つを掲げ、様々な施策に取り組んでいます。

 「NYKグループESGストーリー」発表1年後の進捗報告として、2022年3月に「NYKグループESGストーリー 2022」を発表しました。「NYKグループESGストーリー 2022」では、「NYKグループESGストーリー」で掲げたESGの経営戦略への統合に向けた具体的な取り組みと施策を紹介しています。また、2023年の発表を予定する次期中期経営計画策定の一環として検討を行っている超長期視点での持続可能な成長戦略に関しても一部説明しています。詳細については、NYKグループESGストーリーをご参照ください。

https://www.nyk.com/esg/esg-story/

 

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