課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営理念及び経営方針

〔経営理念〕

「国内及び国際海上輸送を通して社会に貢献します」

 

〔経営方針〕

当社グループは、以下を経営方針として掲げております。そのうえで所有船舶の安全運航を第一の課題として位置付け、船舶管理を徹底する等、効率的な運行管理に日々努めております。

1.企業は株主・取引先・従業員・地域社会がその存在基盤であるとの認識のもと、調和のとれた経営を行い、社会的に尊敬に値する企業を目指す。

2.永年培った海運技術およびノウハウの蓄積と展開により、様々なニーズに柔軟に対応することで顧客に信頼される特色ある優良企業を目指す。

3.安定的に企業価値を高め、期待される株主利益を創出していくために、外部環境の変化に即応しつつ、投下資本全体に対する効率性を追求していく。

4.法令および社会的規範を遵守し、公正かつ透明な事業活動を行う。広く社会とのコミュニケーションに努め、企業情報を公正に開示する。

5.安全運行の徹底および海洋・地球環境の保全に努める。

 

(2)経営環境

① 海運市況

主に中国の旺盛な経済発展に起因した2002年後半から2008年のリーマンショックまでの継続的な海運市況の高騰に伴いオーダーされた船舶の竣工ラッシュが2008年頃から始まり、2013年頃にようやく収束しましたが、その後2014年からの中国の新常態や新興国の経済停滞に伴う2015年・2016年の貿易量の縮小・停滞等の要因により、海運市況は2012年以降長期に亘り低迷状態を継続し、2016年2月にはBDI始まって以来の最低値を記録しました。

その後2017年からスクラップ量の増大と竣工量の減少による船舶供給量の減少と貿易量の増加による相乗効果により、しばらく市況は回復傾向にありましたが、2019年暮れから新型コロナウイルスの世界的感染拡大に伴う世界経済の停滞が発生したことにより、2020年前半は海運市況は急激に落ち込みました。しかし2020年後半からはコロナ禍のリバウンド、季節的な石炭と穀物輸送の増加による影響等により、海運市況は即座に回復し、その後大幅に上昇しました。今後も船舶と世界トレードの需給バランスから考察すると、市況は堅調に推移することが見込まれますが、2022年となりロシアのウクライナ侵攻等の地政学的問題、中国のゼロコロナ対策の前途等に対する注意が肝要です。

 

② 環境保全の為に求められる対応

  環境への対策として、当社グループは事業による海洋環境及び生態系への影響を認識し、海洋環境への影響を最小化するために最大限の取り組みを行います。内外航船における船舶の安全運航を徹底し海難事故を防止し、環境規制遵守を行い、海洋環境の保護に努めて参ります。

  国際海事機関(IMO)では、大気汚染防止措置としてSOX低減規制を発行しており、燃料油の硫黄分濃度の上限を順次引き下げております。欧州、アメリカ、カナダの指定海域(ECA:Emission Control Area)で使用する燃料油の硫黄分濃度上限は、2015年1月から1.0%から0.1%に引き下げられており、一般海域で使用する燃料油の硫黄分上限は、2020年からは、0.5%となりました。当社グループでは規制適合油を使用し、規制に対応しております。また燃料油を燃焼させると大気汚染の原因となるNOXが生成されますのでNOXの低減させるための規制も発行されており2011年以降の建造船は2次規制に対応しています。今後の建造船については3次規制に対応して参ります。

 

(3)経営戦略

① 外航海運業

現在までと同様、長期に渡り信頼関係を構築し継続してきた顧客各社、日本軽金属株式会社・全国農業協同組合連合会・伊藤忠商事株式会社・Lafarge Holcim Trading Ltd.・吉野石膏株式会社・その他顧客の求める短期ニーズに対してはもちろんのこと、中長期のニーズに対しても連携・協調・対応し、各社との中長期的なコア輸送事業の契約を、効率的かつ安定的に実行して参ります。更には経済的ロスを減少し、環境保護に配慮・適応しつつ事業の継続・拡大を目指し、海運市場に呼応して顧客・時代・社会の要求に適う船舶を建造して参ります。今後も当社船を効率良く配船のうえ、同時に新規カーゴの獲得に努め、またバランスの取れた短・長期用船を計画して参ります。そのうえで当社の事業規模拡大の為、将来を見据えた人材採用・育成を実践して参ります。

 

 

② 内航海運業

  今後も、定期用船している貨物船1隻は、水酸化アルミニウム等の安全輸送・効率輸送に努めて参ります。所有船2隻(第二鶴玉丸 白油 3,767G/T ・ 第二十一いづみ丸 液化ガスばら積み船 748G/T)及び子会社で裸用船しているケミカルタンカー(第七鈴鹿丸 749G/T)の定期貸船の安全運航に努め、安定収益の確保を図って参ります。

 

③ 安全運航と環境保全に対応する設備に関して

  温室効果ガス(GHG)排出の抑制対策は IMO にて規制され、①2030年までにCO2排出量40%以上削減(輸送量あたり、2008年比)、②2050年までにGHG排出量50%以上削減(2008年比)、③今世紀中なるべく早期の排出ゼロ、という目標が設定されております。

  2013年にEEDI(エネルギー効率設計指標:Energy Efficiency Designed Ship Index新造船に対する指標)が施行され、また2023年より「EEXI(既存船燃費規制: Energy Efficiency Existing Ship Index)・燃費実績(CII: Carbon Intensity Indicator)格付け制度」が施行されます。EEXI規則に適合させるために機関出力制限(Engine Power Limitation、EPL)を設置し規則に対応して参ります。また、CO2排出量の削減について、保有船舶に対して下記の対策を行い環境保護の推進に努めております。

  減速による燃料消費の削減、PBCF(Propeller Boss Cap Fin: プロペラハブ渦により失われるエネルギーを回収しプロペラ効率を向上させる設備)の設置、燃費の低減を図り環境に優しい船体塗料を使用、電子機関の設置等順次CO2の排出削減を行っております。

 

以上から、当社グループは、主力である外航海運業・内航海運業、また不動産賃貸業含め全ての業務において、無駄を省いた組織の構築化を進めており、全体としての行動を迅速・正確に進め、効率化を図り、安全と経済性への意識をより一層充実することを心掛けたうえで企業価値向上に努めて参ります。

 

(4)対処すべき課題

① 新型コロナウイルス感染症の影響に対する対応

上記(2)経営環境 ①海運市況に記載した状況の中、当社グループは、役職員及び乗組員の安全を第一に考え同感染症の関連情報の収集を行いつつ、外航海運業・内航海運業共に、今後の経済回復に向けての輸送需要がどのように推移するかを注視しながら、以下の施策を実行して参ります。

また、運航船舶に関しては、日本船主協会、IMO等が作成した同感染症の対応ガイダンスを基に船内の安全確保と安全運航維持の為の措置を講じております。万全を期す為、当社社員はPCR検査を実施のうえ各船へ訪船しております。また乗組員についても、ガイダンスに従い船内感染予防対策の徹底、必要物資の供給、乗組員の安全確保を確認したうえでの交代を行っておりますが、各国における人の移動に関する規制が非常に厳しく、自由に交代が行える状況にありません。交代可能な港が限られており、乗下船の費用は増加している状況にあります

陸上社員に関しては、在宅勤務及び交代勤務・時差通勤・必要時以外の出張の自粛等の対策を継続しており、同感染症の予防・回避に努めております。

 

② 外航海運業

1.当社支配船(長期用船)の隻数に見合う、中長期安定的な輸送契約の獲得に努め、市場の上下に拘らず安定的な収益をあげられる様努力します。

2.上記の結果、顧客のニーズにより、年間輸送量よりも貨物量増となりバランスが取れなくなった場合には、当初は市場からの短期用船の輸送契約として対応し、更なる輸送の拡大と長期化を図る為、その市場に応じた長期用船、または買船・新造船計画を立案し、安定収益の拡大を図って参ります。

3.長期的な視野に立ち、社員のOJTを充実させ、国際的な人材を育成し、新規カーゴの国際間輸送契約の獲得を目指して参ります。

4.可能な限り、顧客との交流を図り、相互の信頼関係を構築し、新規カーゴの獲得に努めて参ります。

5.世界の日々の変化に対応すべく、あらゆる情報網を駆使して情報収集し、中長期視点で海運市況を分析・勘案し、業務を遂行することで、安定的な収益の向上に繋げて参ります。

 

当社グループの主力である外航海運業のドライバルク市況は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により大きく変動しており、当社グループは外航海運業の営業施策として、コスト競争力のある船舶を市場に投入することにより、収益基盤を確立する必要があると考えております。

また、主要設備である4隻の外航船舶を中心に、スラグ等の往航貨物の獲得に努力することによって、営業収益の多くの部分を占める、復航貨物である南米から日本向けの水酸化アルミニウム輸送や主に北米から日本向けの穀物輸送の採算向上と1航海当たりのCO2排出量の減少を図る為、最善と思慮される輸送契約(COA 数量積輸送契約)の長期的・安定的な確保と、タイムリーなスポット貨物の獲得に注力いたします。

 

 

③ 内航海運業

現在船員の高齢化及び急激な船員不足に陥っている内航海運業界において、平均年齢34歳の有望な船員を保有する当社子会社の優位性を最大限に生かしつつ、更に国土交通省認定の「日本船舶・船員確保計画」に基づいて若年船員を計画的に雇用、教育訓練を重ね積極的に船員派遣を行い、安定収益の確保に繋げて参ります。

また、2022年4月施行の海事産業基盤強化法における「船員の働き方改革」を着実に実現し、労働環境の改善を図り、若年船員の定着率上昇に繋げます。

 

④ 公的規制への対応

当社グループの主要業務である海運業では、設備の安全性や安全運航のために、国際機関及び各国政府の法令、船級協会の規則等の公的規制を受けております。当社グループでは、これらの規制が変更された場合に遵守するための費用、設備費・船員教育費等が増加する可能性があります。遵守出来なかった場合には事業活動が制限される可能性があります。

 

⑤ コスト削減

船費については、安全運航と環境保全を中心とした船舶の整備を基本とし、船舶毎の損益管理を徹底し船舶の維持管理に必要な経費の支出の見直しを行う他、船用品費・入渠費用を含めた船舶修繕費等の節減、乗組員の効率的な配乗等によるコスト削減を図って参ります。また当社グループ全体としての経費削減策として、一般管理費をはじめとして、金額の多寡にかかわらず不要な経費の節減を引き続き行います。

 

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