当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日)は、新型コロナウイルス感染拡大の影響の長期化により、当 社グループが属する航空業界は引き続き厳しい状況におかれました。当社グループでは、感染拡大の影響が長期化す る中、清潔性・非接触性の強化による「安全・安心」の確保を最優先としながら、日本国内および日本と海外を結ぶ 航空輸送ネットワークを維持してまいりました。また、旅客事業の回復に時間を要する中、徹底的なコスト削減の取 り組みと好調な貨物事業における売上最大化により収益の改善に努め、加えて、着陸料や航空機燃料税等の減免を含 む航空業界を対象とした支援策や、雇用調整助成金制度の特例措置拡充等、日本政府による公的なご支援も活用しつ つ、コロナ禍からの早期回復に全力を尽くしました。2022年度以降は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が収束し航空需要が本格的な回復に向かっていく中、当社グループは引き続きこうした努力を継続し、公共交通機関としての社会的使命を果たし、お客さまに安心してご利用いただけるよう努めてまいります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における当社グループを取り巻く経営環境を概括すると、新型コロナウイルス感染拡大の長期化 の影響により、当社グループの属する航空業界にとって昨年度に続いて極めて厳しい状況となりました。原油価格は燃油費、旅客収入ならびに貨物収入に影響を与えるものですが、ロシア・ウクライナ情勢等の地政学リスクやそれに伴う欧米諸国の経済制裁により高騰しており、今後の市況は不透明な状況となっております。
以下、当連結会計年度における当社グループの経営状況につき概括します。当社グループは、このような経営環境の中でも、グループ存立の大前提である「安全」を守り、お客さまと社員の感染防止に努めつつ、国内外の航空ネットワークの維持に努めております。安全に関する取り組みについては、2021年5月に発表した中期経営計画において、「航空事故ゼロ、重大インシデントゼロ」という安全に関する経営目標の達成を目指してまいりました。しかしながら、巡航中の突然の揺れにより2022年2月15日にJL2326便(但馬空港発伊丹空港行)にてお客さま1名が骨折した事象、2022年3月26日に JL669便(羽田空港発大分空港行)にて客室乗務員1名が骨折した事象が国土交通省により航空事故として認定されました。これらの事象を重く受け止め、国土交通省による事故調査に協力するとともに、再発防止の徹底に取り組み、お客さまと社員を守り、経営目標の達成に向け不断の努力を継続してまいります。安心に関する取り組みについては、お客さまと社員の感染防止と航空機利用による感染拡大防止を強化すべく、羽田・新千歳・伊丹・那覇・福岡の各空港において非対面・非接触化を進めた「JAL SMART AIRPORT」を全面オープンしました。2022年4月からは、保安検査の高度化と検査に要する時間の短縮、UV殺菌装置の活用による衛生・清潔性向上を実現する保安検査レーン「JAL SMART SECURITY」の羽田空港国内線への導入を開始しました。また、医療施設などにも感染症対策ソリューションを提供する花王株式会社と連携し、空港や機内における洗浄と除菌による清潔性強化や機内での感染防止手順の改善など、安全・安心な衛生品質の向上に努めております。さらに、各国の定める入国検疫書類を事前登録できるデジタル証明書アプリ「VeriFLY」を導入する等、グローバルな人的交流の再開にあたりコロナ禍においてもお客さまに安心してスムーズにご渡航いただけるよう準備を進めております。このような「JAL FlySafe」の徹底した感染症対策への取り組みが評価され、優れた感染対策を実施しているエアラインに贈られる「COVID-19 Excellence Award」を受賞いたしました。また、2022年3月に東北地方で発生した地震により東北新幹線が不通となった際には、お客さまの移動手段を提供すべく、直ちに東北方面の臨時便の設定や既存便の大型化を行い、社会インフラとしての責務を最大限果たすべく努力いたしました。
新型コロナウイルス感染拡大の影響による需要の減少に対しては、機動的な供給調整を行うことで運航費用などの変動費の抑制に加え、委託業務の内製化やITに係る経費の抑制、役員報酬の減額、社員の賞与減等、固定費の削減に努めました。運航に直接携わる業務量が減少する中で、ワクチン接種関連業務をはじめ、グループ外の企業や自治体等へ1日あたり1,600人程度の出向・派遣を積極的に行いました。同時に、新型コロナウイルス感染拡大収束後の再飛躍に備え、社員一人ひとりの能力向上を図るべく社員教育の充実を図ることで人財の有効活用にも取り組みつつ、需要回復局面において遅滞なく人員配置が行えるよう万全を期しております。また、国際線機内食の販売や様々なテーマでの周遊チャーターフライトの運航、JALふるさとアンバサダー考案のツアーの販売など、社員の創意工夫により増収に努めてまいりました。
非航空事業領域の拡大に向けては、当社グループの強みである人財と顧客基盤に先進的なテクノロジーを融合させることでイノベーションを実現し、航空運送事業により培われたノウハウを活かした新たな商品・サービスやビジネスの創造に取り組んでおります。 マイレージ・ライフスタイル事業領域においては、JALマイレージバンク会員向けに「JAL住宅ローン」や電力販売サービス「JALでんき」を日本全国で開始したほか、非航空領域の中核会社となる株式会社JALUX(以下、JALUX)を2022年3月より当社グループの連結子会社とするなど、顧客基盤を活用した事業領域の拡大と、日常・ライフステージにおける新たな価値提供に努めました。地域事業領域においては、ポストコロナにおける訪日誘客に向け、中国最大のSNSアプリ「WeChat」内に越境EC向けのミニプログラムを開設し日本産品の販売や各地域の文化・観光情報を発信したほか、地域と連携した様々な誘客プログラムを実施し、地域の皆さまとともに持続可能な地域活性化の実現を目指し活動を展開してまいりました。さらに、ヤマトホールディングス株式会社と共に2024年4月より貨物専用機を運航し、地方発の D to B/C 市場の形成、新たなビジネスチャンスの創出や地域産業の活性化に向けた取り組みを進めることを発表し、準備を開始しました。次世代エアモビリティ事業領域においては、ドローンの社会インフラ化を目指し、東京都内での医薬品配送の実証実験を実施したほか、運航体制構築に向けてKDDI株式会社との協業を発表するなど、航空安全技術と運航管理の知見を活かしたビジネスモデルの構築に努めました。さらに、空を基軸としたシームレスな移動の実現に向けてMaaS (Mobility as a Service)の取り組みを推進しており、その一環として空の便と地上交通を組み合わせたリアルタイムな経路検索を可能とし、空港を中心とした移動の検索・手配をサポートする「JAL MaaS」のサービスを開始いたしました。また、2021年4月よりサービス教育事業「JALビジネスキャリアサポート」において、安全運航の中で培われた豊富な経験やコミュニケーションスキル、リスクマネジメントなどのノウハウを活かしたパイロットによる教育を開始し、サービス業務を含め乗務を通じて得た経験を活かした客室乗務員によるコンサルティング等のコンテンツも展開しております。今後も社員一人ひとりの知恵を結集し、当社グループならではの新たな商品・サービスの提供および価値創造に努めてまいります。
ESGに関する取り組みについては、公共交通インフラとして持続可能な航空ネットワークを提供する社会的使命を果たしながら、航空業界の最重要課題の一つであるCO2排出量実質ゼロを達成すべく取り組んでおります。CO2削減に関する取り組みとしては、省燃費機材への更新とSAFの活用を2つの柱として取り組みました。コロナ禍の長期化で厳しい事業環境が続く中でもボーイング787型機やエアバスA350型機といった省燃費機材の導入を着実に進め、国内線大型機についてはエアバスA350型機への更新をほぼ完了しました。また、もう一つの柱であるSAFについては、2021年11月にAemetis Inc.社(米国)から当社の属するワンワールドアライアンスメンバーが共同でSAFを購入する意思を表明しておりますが、2022年3月に新たにGevo Inc.社(米国)から共同調達を実施することを発表いたしました。日本国内においては、全日本空輸株式会社とSAF活用促進に関する市場調査を行い、考察をまとめた共同レポートを策定したことに加え、SAFの国内商用化および普及・拡大に取り組む有志団体「ACT FOR SKY」を設立しました。また、排出権取引を活用したCO2削減プログラムをリニューアルし、企業向けCO2排出量の可視化・オフセットのためのサービスの提供も開始しております。今後もSAFの認知度向上と航空セクターの脱炭素化に向け、産業界を横断した取り組みを進めてまいります。D&Iの観点では、女性活躍を推進し、当社グループにおける女性管理職比率を前年より2.4pt増の21.9%としたことに加え、外国人執行役員を初めて任用するなど、多様な人財の活躍を推進してまいりました。健康経営にも積極的に取り組んだ結果、当社が「健康経営銘柄2022」に選定、当社グループ20社が「健康経営優良法人2022」に認定されたほか、航空業界におけるバリアフリー化の推進において、全日本空輸株式会社とともに会社の垣根を越えて連携を強化し取り組んだことが評価され、第15回「国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰」を共同受賞しました。また、投資家を含む幅広いステークホルダーの皆さまにとってわかりやすい情報開示を行った点が評価され、当社グループの統合報告書が日本経済新聞社主催「日経統合報告書アワード2021」において優秀賞を受賞しました。サステナビリティにおけるリーディングエアライングループを目指し、今後もESG戦略におけるあらゆる取り組みを加速してまいります。
財務戦略においては、これまで培ってきた強固な財務体質を活かし、コロナ禍においても資金面で万全を期すべく機動的な資金調達を実施いたしました。コロナ禍を耐え抜くために必要な手元流動性の確保のみならず、今後の資金調達能力の維持・向上に向けて財務体質を更に強化すると同時に、ポストコロナにおける経営環境の変化に対応し持続的な成長を実現するための投資資金を前広に確保していくという「攻め」と「守り」の2つの目的を達成すべく、総額3,500億円のハイブリッド・ファイナンスによる資金調達を含め、総額4,419億円の負債調達を実施いたしました。加えて、3,000億円の未使用のコミットメントラインも確保しており、手元流動性の確保には万全を期しております。また、脱炭素化推進に向けた移行期間における省燃費性能の高い最新鋭機材への更新を着実に進めるため、2022年3月には世界的な評価機関から認証を取得し、航空会社として世界初となるトランジションボンドを発行し100億円の資金調達を実施しております。また、当社グループのディスクロージャーに対する姿勢が高く評価され、日本証券アナリスト協会より「ディスクロージャー優良企業」として運輸部門で2018年以来過去4年間で3回目となる第1位を獲得いたしました。今後も皆さまとのより良い対話の実現に向けて、さらなる情報開示の充実と質の向上に努めてまいります。
新型コロナウイルス感染拡大から2年が経ちましたが、今もなお完全な収束には至っておらず、2021年度はオミクロン変異株の感染急拡大に加え、ロシア・ウクライナ情勢という地政学リスクの顕在化にも見舞われました。未だ経営環境は不透明感が残るものの、2022年度は航空需要の回復が本格化し、国内外において人々の自由な往来が再開することを見込んでおります。また、事業環境が大きく変化する中で事業構造改革を進め、サステナブルな成長・発展へと着実に進んでいくために、当社グループでは採用再開を決定し、2022年度経験者採用および2023年度新卒採用を実施することといたしました。JALグループは昨年5月に「2021-2025年度 JALグループ 中期経営計画」をお示ししましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響が長期化し、欧州を中心に世界情勢は混迷を深めており、経営環境の不透明さが増す状況となりました。こうしたなか、当社グループはレジリエンスを高めて足許の困難な状況を乗り越え、サステナブルな成長・発展へと着実に進んでいくために、「2021-2025年度JALグループ 中期経営計画ローリングプラン2022」を策定いたしました。航空輸送には、分断を乗り越えて人・モノ・コトをつなぎ、豊かさと希望をもたらす力があります。JALグループは、社会インフラ・ライフラインとしての責務を果たし、「安全・安心」と「サステナビリティ」を未来への成長のエンジンとして、「確かな安全といつも心地よい安心を感じられる社会」と「誰もが豊かさと希望を感じられる未来」という「JAL Vision 2030」の実現に向け、事業構造改革と事業活動を通じた社会課題の解決を加速し、財務体質の再構築を進めることで、経営目標の達成を目指します。
a.財政状態
当連結会計年度末における資産については、前連結会計年度末に比べ2,643億円増加し、2兆3,716億円となりました。負債については、前連結会計年度末に比べ4,017億円増加の1兆5,275億円となりました。資本については、前連結会計年度末に比べ1,373億円減少の8,441億円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度における売上収益は6,827億円(前年同期比41.9%増加)、営業費用は9,402億円(前年同期比6.2%増加)となり、財務・法人所得税前利益(△は損失)(当社は、当期利益から法人所得税費用、利息およびその他の財務収益・費用を除いた「財務・法人所得税前利益」をEBITと定義しております。以下「EBIT」という。)は△2,394億円(前年同期は△3,983億円)、親会社の所有者に帰属する当期利益(△は損失)は△1,775億円(前年同期は△2,866億円)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりです。
<航空運送事業セグメント>
当連結会計年度における航空運送事業セグメントの経営成績については、売上収益は6,425億円(前年同期比 48.8%増加)、投資・財務・法人所得税前利益(△は損失)(以下「セグメント利益(△は損失)」という。)は、△2,501億円(前年同期は△4,033億円)となりました。(売上収益及びセグメント利益(△は損失)はセグメント間連結消去前数値です。)
フルサービスキャリアにおける国際旅客収入は687億円(前年同期比146.4%増加)、国内旅客収入は2,351億円(前年同期比35.1%増加)、貨物郵便収入は2,183億円(前年同期比69.5%増加)、LCCにおける国際旅客収入は21億円、国内旅客収入は6億円でした。なお、スプリング・ジャパンについては取得日から6月末までの業績に重要性がないため、同社の7月以降の旅客収入をLCCにおける旅客収入として含めております。
部門別売上収益は次のとおりです。
科目 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
構成比 (%) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
構成比 (%) |
対前年 同期比 (%) |
国際線 (フルサービスキャリア) |
|
|
|
|
|
旅客収入 (百万円) |
27,917 |
6.5 |
68,785 |
10.7 |
246.4 |
貨物収入 (百万円) |
96,553 |
22.4 |
182,877 |
28.5 |
189.4 |
郵便収入 (百万円) |
7,344 |
1.7 |
11,089 |
1.7 |
151.0 |
手荷物収入 (百万円) |
333 |
0.1 |
746 |
0.1 |
223.8 |
小計 (百万円) |
132,149 |
30.6 |
263,499 |
41.0 |
199.4 |
国内線 (フルサービスキャリア) |
|
|
|
|
|
旅客収入 (百万円) |
174,006 |
40.3 |
235,100 |
36.6 |
135.1 |
貨物収入 (百万円) |
21,735 |
5.0 |
20,751 |
3.2 |
95.5 |
郵便収入 (百万円) |
3,192 |
0.7 |
3,653 |
0.6 |
114.4 |
手荷物収入 (百万円) |
219 |
0.1 |
312 |
0.0 |
142.2 |
小計 (百万円) |
199,154 |
46.1 |
259,817 |
40.4 |
130.5 |
国際線・国内線合計 (百万円) |
331,304 |
76.7 |
523,316 |
81.4 |
158.0 |
その他の収入 (LCCの旅客収入を含む) (百万円) |
100,517 |
23.3 |
119,248 |
18.6 |
118.6 |
合計 (百万円) |
431,821 |
100.0 |
642,565 |
100.0 |
148.8 |
(注)1 金額については切捨処理、各比率については四捨五入処理しております。
2 スプリング・ジャパンについては取得日から6月末までの業績に重要性がないため、同社の7月以降
の旅客収入をLCCの旅客収入として含めております。
輸送実績(フルサービスキャリア)は次のとおりです。
項目 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
対前年同期比 (利用率は ポイント差) |
|
国際線 |
|
|
|
|
有償旅客数 |
(人) |
357,519 |
892,471 |
249.6% |
有償旅客キロ |
(千人・キロ) |
2,196,423 |
6,027,871 |
274.4% |
有効座席キロ |
(千席・キロ) |
11,918,047 |
22,780,657 |
191.1% |
有償座席利用率 |
(%) |
18.4 |
26.5 |
8.0 |
有償貨物トン・キロ |
(千トン・キロ) |
1,948,205 |
3,113,671 |
159.8% |
郵便トン・キロ |
(千トン・キロ) |
155,413 |
160,474 |
103.3% |
国内線 |
|
|
|
|
有償旅客数 |
(人) |
12,212,131 |
16,238,833 |
133.0% |
有償旅客キロ |
(千人・キロ) |
9,282,122 |
12,089,054 |
130.2% |
有効座席キロ |
(千席・キロ) |
19,452,985 |
24,535,597 |
126.1% |
有償座席利用率 |
(%) |
47.7 |
49.3 |
1.6 |
有償貨物トン・キロ |
(千トン・キロ) |
237,874 |
231,515 |
97.3% |
郵便トン・キロ |
(千トン・キロ) |
20,675 |
22,689 |
109.7% |
合計 |
|
|
|
|
有償旅客数 |
(人) |
12,569,650 |
17,131,304 |
136.3% |
有償旅客キロ |
(千人・キロ) |
11,478,546 |
18,116,925 |
157.8% |
有効座席キロ |
(千席・キロ) |
31,371,033 |
47,316,254 |
150.8% |
有償座席利用率 |
(%) |
36.6 |
38.3 |
1.7 |
有償貨物トン・キロ |
(千トン・キロ) |
2,186,079 |
3,345,186 |
153.0% |
郵便トン・キロ |
(千トン・キロ) |
176,088 |
183,164 |
104.0% |
(注)1.旅客キロは、各区間有償旅客数(人)に当該区間距離(キロ)を乗じたものであり、座席キロは、各区間有効座席数(席)に当該区間距離(キロ)を乗じたものです。
輸送量(トン・キロ)は、各区間輸送量(トン)に当該区間距離(キロ)を乗じたものです。
2.区間距離は、IATA(国際航空運送協会)、ICAO(国際民間航空機構)の統計資料に準じた算出基準の大圏距離方式で算出しております。
3.国際線:日本航空(株)
国内線:日本航空(株)、日本トランスオーシャン航空(株)、日本エアコミューター(株)、
(株)ジェイエア、琉球エアーコミューター(株)、(株)北海道エアシステム
4.LCCであるZIPAIRおよびスプリング・ジャパンによる輸送実績は上記輸送実績からは除いております。
当連結会計年度のLCCにおける国際線輸送実績は、有償旅客数38,320(人)、有償旅客キロ120,889
(千人キロ)、有効座席キロ1,829,817(千座席キロ)、有償座席利用率は6.6%、国内線輸送実績は、
有償旅客数70,259(人)、有償旅客キロ55,012(千人キロ)、有効座席キロ125,332(千座席キロ)、
有償座席利用率は43.9%でした。なお、スプリング・ジャパンについては取得日から6月末までの業績に
重要性がないため、同社の7月以降の輸送実績をLCCにおける輸送実績として含めております。
5.数字については切捨処理、比率については四捨五入処理しております。
<その他>
株式会社ジャルパックと株式会社ジャルカードの概況は、次のとおりです。
株式会社ジャルパック
項目 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
対前年 同期比 (%) |
海外旅行取扱人数(万人) |
0.0 |
0.0 |
151.1% |
国内旅行取扱人数(万人) |
114.1 |
100.4 |
88.0% |
売上収益 (億円)(連結消去前) |
555 |
458 |
82.4% |
株式会社ジャルカード
項目 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
対前年 同期比 (%) |
カード会員数 (万人) |
358.0 |
346.1 |
96.7% |
売上収益 (億円)(連結消去前) |
186 |
185 |
99.3% |
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ858億円増加し、4,942億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税引前損失△2,466億円に減価償却費等の非資金項目、退職給付に係る負債及び営業活動に係る債権・債務の加減算等を行った結果、営業活動によるキャッシュ・フロー(アウトフロー)は△1,035億円(前年同期は△2,195億円のキャッシュ・アウトフロー)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
固定資産の取得による支出を主因として、投資活動によるキャッシュ・フロー(アウトフロー)は△1,737億円(前年同期は△910億円のキャッシュ・アウトフロー)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
長期借入れによる収入および社債の発行による収入を主因として、財務活動によるキャッシュ・フロー(インフロー)は3,592億円(前年同期は3,886億円のキャッシュ・インフロー)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産、受注及び販売に該当する業種・業態がほとんどないため、「① 財政状態及び経営成績の状況」に含めて記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、IFRSに基づき作成しております。連結財務諸表の作成に当たり、経営者の判断に基づく会計方針の選択と適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となりますが、その判断及び見積りに関しては連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しております。しかしながら、実際の結果は、見積り特有の不確実性が伴うことから、これら見積りと異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財
務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
経営者が行った連結財務諸表の金額に重要な影響を与える見積りは次のとおりです。
・収益認識
航空輸送に係る収益は、航空輸送役務の完了時に認識しております。
航空輸送に使用される予定のない航空券販売(失効見込の未使用航空券)は、航空券の条件や過去の傾向に基づく金額および認識のタイミングを見積り、収益認識しております。
・航空機等の減価償却費
航空機、航空機エンジン部品および客室関連資産等の各構成要素の耐用年数決定にあたり、将来の経済的使用可能予測期間を考慮して、減価償却費を算定しております。
・固定資産の減損
当社グループは、期末日現在の対象資産について、減損が生じている可能性を示す事象があるかを検討し、減損の兆候が存在する場合には減損損失の計上要否の検討を行っております。当期において新型コロナウイルス感染拡大の影響により、減損の兆候があると判断し減損損失計上要否について検討を行いましたが、回収可能価額が固定資産の帳簿価額を超えると判断されたため減損損失は計上しておりません。
なお、当連結会計年度の減損損失は、主に退役が決定した航空機に係る部品について、資金生成単位を変更し、
見積回収可能価額まで減額したものです。
・繰延税金資産の認識
当社グループは、将来減算一時差異、未使用の繰越税額控除および繰越欠損金を利用できる課税所得が生じる可能性が高い範囲内で繰延税金資産を認識しております。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたっての見積りに関しては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等連
結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末における資産については、現金及び現金同等物や繰延税金資産の増加などを主因として前連結会計年度末に比べ2,643億円増加し、2兆3,716億円となりました。
(負債合計)
当連結会計年度末における負債については、主に財務体質の更なる強化と長期性の投資資金の確保を同時に行うためのハイブリッド・ファイナンスなどにより、前連結会計年度末に比べ4,017億円増加し、1兆5,275億円となりました。
(資本合計)
当連結会計年度末における資本については、主に親会社の所有者に帰属する当期損失を主因として、前連結会計年度末に比べ1,373億円減少の8,441億円となりました。
2)経営成績
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、収入面では、国際旅客収入はコロナ禍以降低迷しておりましたが、日本への入国に関する規制の緩和の進展により、前年対比429億円の増収となりました。国内旅客収入は緊急事態宣言の発出等で需要が一進一退を繰り返すも、選好性の向上や生産体制が整っていることで、前年対比617億円の増収となり、売上収益は6,827億円(前年同期比41.9%増加)となりました。
費用面では、燃油費は復便による使用量の増加や燃油市況上昇による燃油単価の増加等により486億円の増加、整備費はエンジン整備の増加等により109億円増加しました。人件費は、役員報酬の減額や業績に連動した賞与の減少などにより90億円減少しました。コスト削減の努力は着実に成果を上げており、実質固定費の圧縮と、需要に応じた柔軟な供給調整による運航費用など変動費の抑制に努めた結果、営業費用全体としては9,402億円(前年同期比6.2%増加)となりました。
以上の結果、EBITは△2,394億円(前年同期は△3,983億円)となりました。また、当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益(△は損失)は、繰延税金資産の計上に伴い法人所得税費用がマイナスとなった結果、△1,775億円(前年同期は△2,866億円)となりました。
セグメント別の分析は次のとおりです。
<航空運送事業>
(国際線 フルサービスキャリア)
国際旅客事業においては、日本を含む各国での入国制限により国境を跨ぐ需要は限定されましたが、諸外国での渡航者の隔離免除やワクチン接種率の向上、社会経済活動の再開に伴い、アジア・北米間の通過需要を含めた基礎需要が徐々に回復基調に転じました。ただし、日本における厳格な入国規制の継続により、日本発着需要は帰国者や海外拠点への赴任等に限定されました。また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は無観客開催となりましたが、万全な感染対策を講じて出場選手および大会関係者の安全・安心な移動をお手伝いすることで大会の成功に貢献いたしました。当連結会計年度の有償旅客数は前年同期比 149.6%増、有償旅客キロは前年同期比174.4%増、有効座席キロは前年同期比91.1%増、有償座席利用率26.5%となりました。
(国内線 フルサービスキャリア)
国内旅客事業においては、感染者数の増加や緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置の発出、オミクロン変異株の感染拡大の影響により国内旅客需要は一進一退を繰り返してきましたが、3月21日にまん延防止等重点措置が全国で解除されて以降、回復基調に転じました。商品・サービスの向上において、混雑する時期でもマイルで予約できる新サービス「いつでも特典航空券」を導入したほか、国内線運賃をシンプルでわかりやすいものとすべく、2023年4月12日搭乗分よりリニューアルすることを発表いたしました。なお、新型コロナウイルス感染拡大の影響の長期化や燃油価格の高騰の中、当社ではコスト削減等の自助努力を重ねてまいりましたが、2022年度の国内線運賃を一部変更することを決定いたしました。当連結会計年度の有償旅客数は前年同期比33.0%増、有償旅客キロは前年同期比30.2%増、有効座席キロは前年同期比26.1%増、有償座席利用率は49.3%となりました。
(貨物)
貨物事業においては、海上物流の混乱が長期化する中、航空貨物需要は自動車関連や半導体関連部品等の北米向けの輸送を中心に引き続き好調に推移しました。国際旅客便の大幅な減便に伴い供給が限られる中、当社は自社旅客機および他社貨物機を利用した貨物便を積極的に運航し、旺盛な貨物需要に対応し増収を図ってまいりました。なお、ロシア・ウクライナ情勢の影響により、ロシア領内への離着陸および上空の飛行を中止しておりますが、日本=欧州間の国際旅客・貨物需要に最大限対応すべく、代替飛行ルートの設定等により運航維持に努めております。こうした状況下において、貨物収入は前年同期比72.1%増となりました。
(LCC)
LCC事業領域においては、国際線中長距離LCCである株式会社ZIPAIR Tokyo(以下、ZIPAIR)が太平洋横断世界初のLCCとしてロサンゼルス線を就航し、国際旅客需要の回復に備えネットワークの拡充を進めました。また、2021年6月に連結子会社化したスプリング・ジャパン株式会社(春秋航空日本株式会社から2021年11月1日に社名変更、以下、スプリング・ジャパン)とジェットスター・ジャパン株式会社も含め、特徴の異なるLCC3社による成田空港をハブとした利便性の高いネットワーク構築に努め、航空需要の本格的な回復に備えております。
なお、ポストコロナにおける旅客需要構造の変化を見据え、国際線における機材戦略の見直しを進めております。リモート会議の定着等により、業務渡航需要はコロナ前の水準に戻るまで時間を要する見通しであることを踏まえ、国際線を中心にフルサービスキャリアの航空機数を2019年度末の241機から2023年度末までに12機減らすことを決定し、2021年度末時点では217機(稼働機ベース)としております。一方で、早期の需要回復が見込まれるLCCにおける機材数は、ZIPAIRの就航やスプリング・ジャパンの連結化により2021年度末には10機となっております。
当連結会計年度のLCCにおける国際旅客事業は、有償旅客数は38,320(人)、有償旅客キロは120,889(千人キロ)、有効座席キロは1,829,817(千座席キロ)、国内旅客事業は、有償旅客数は70,259(人)、有償旅客キロは55,012(千人キロ)、有効座席キロは125,332(千座席キロ)となりました。
(今後の見通し)
新型コロナウイルス感染拡大の長期化、ロシア・ウクライナ情勢の影響、燃油価格をはじめとする原材料費の上昇等、JALグループを取り巻く経営環境は不透明さを増しております。しかしながら、新型コロナウイルス感染の影響は着実に収束に向かっており、新たな変異種の発生等による感染再拡大等の不確実性は残るものの、国内外における航空旅客需要は回復に向かうものと思われます。今後の航空旅客需要動向は不透明且つ流動的なものの、国内旅客需要は、通年でコロナ前対比(注)90%程度まで回復するものと見込んでおります。一方、国際旅客需要は、各国の感染状況や出入国規制により本格的な回復までには暫く時間を要すると見込んでおり、通年でコロナ前対比(注)45%程度の回復に留まると見込んでおります。また、国際貨物需要については、引き続き今期も旺盛な需要が持続するものと見ております。上記需要想定から、フルサービスキャリアおよびLCCの航空運送事業については前年度比で大幅な改善を見込んでおります。
航空運送事業以外の事業領域においては、連結子会社化したJALUXを中核会社とし、JALグループの顧客基盤を活用した事業領域の拡大と、日常・ライフステージビジネス、マイルビジネスを強化してまいります。
一方、費用については燃油価格高騰等の原材料価格の上昇を見込むものの、燃油サーチャージによる増収、燃油ヘッジ取引を活用して影響の極小化に努めるとともに、効率化の推進と固定費を中心としたコスト削減努力を継続いたします。
以上の結果、2023年3月期の通期連結業績予想は、連結売上収益1兆3,900億円、EBIT800億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は450億円と予想いたします。
なお、算出にあたり、米ドル円為替レートは120円、航空燃油費の一指標であるシンガポール・ケロシンの市場価格を1バレルあたり120米ドルとしています。
(注)2019年度の旅客・貨物需要との比較、但し1-3月の旅客需要はFY19Q3決算発表時に開示した業績予想値の 前提となる需要予想値
3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループを取り巻く環境は、2020年1月以降の新型コロナ影響の長期化に加え、世界情勢の不安定化、市況の変動等も加わることで、不透明が増す状況が続いております。しかし、当社グループが主たる事業領域としている航空市場については、地域により若干の違いはあるものの、総じて需要は回復基調にあると言えます。一方、SDGs達成に向けた社会の意識は日増しに高まり、企業はその活動の中でESGを強く意識した判断を行うことが求められております。
このような環境の変化を踏まえ、当社は、昨年「2021~2025年度 JALグループ中期経営計画」で定めた戦略・目標の達成に向けた取組みを具体化・加速させることを目的に、「2021-2025年度JALグループ 中期ローリングプラン2022」を策定いたしました。このローリングプランでは、経営目標達成と更なる事業拡大の実現に向けた成長戦略として、「ESG戦略を経営戦略の軸に据えること」および「事業構造改革の更なる加速」に重点を置き、各事業領域での取組みを推進してまいります。
当社グループは、社会インフラ・ライフラインとしての責務を果たし、「安全・安心」と「サステナビリティ」を成長のエンジンとして、「JAL Vision 2030」の実現を目指して全社員一丸となって進んでまいります。
c.資本の財源及び資金の流動性
1)財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、強固な財務体質と高い資本効率を両立しつつ、企業価値向上のために戦略的に経営資源を配分することを財務戦略の基本方針としております。
強固な財務体質の維持に関しては、格付評価上の自己資本比率の水準を50%程度に保ち、「シングルAフラット」以上の信用格付(日本の格付機関)の取得・維持を目指し、リスク耐性の強化を図ります。なお、新型コロナウイルス感染拡大の長期化により、この2年間で有利子負債残高が増加しましたが、今期以降は強固な財務体質の再構築を進め、2025年度末には純有利子負債残高ゼロを目指します。
設備投資に関しては、当社グループの全ての投資はESG戦略を推進するためと位置付け、CO2排出量削減に寄与する省燃費性能に優れた航空機の導入(E)、安全・安心の強化や顧客利便性を向上させるための施設設備・ITへの投資(S)、BCP対応やITセキュリティ強化(G)等、企業価値の向上に資するための投資を着実に実施してまいります。財務基盤の再構築の進展に応じて徐々に投資額を増加させE・S・Gそれぞれの領域でESG戦略を推進します。
2)経営資源の配分に関する考え方
当社グループは、新型コロナウイルス感染拡大により甚大なる影響を受けた経験を踏まえ、適正な手元現預金の水準について検証を実施した結果、イベントリスク発生時に大きな影響を受ける旅客収入規模に応じ、航空券払戻リスクにも一定程度耐えうる水準を新たに設定いたしました。リスク耐性の強化および資産効率の両立を図るべく、コミットメントラインの活用も含め、旅客収入の5.0~5.6か月分(毎月末)を安定的な経営に必要な手元現預金水準として確保してまいります。
財務再構築フェーズでは投資の厳選により債務返済と適正な手元現預金水準の実現に努め、それ以降は持続的成長フェーズとして株主還元を積極的に行い、持続的成長に向けた投資を実施することで、企業価値向上に資する経営資源の配分に取り組みます。
3)資金需要の主な内容
当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では、航空運送事業に関わる燃油費、運航施設利用費、整備費、航空販売手数料、機材費(航空機に関わる償却費、賃借料、保険料など)、サービス費(機内・ラウンジ・貨物などのサービスに関わる費用)、人件費などがあります。
また、投資活動に係る資金支出は、全てESG戦略を推進し企業価値向上に資する目的としております。CO2排出量削減に寄与する省燃費性能に優れた航空機の導入(E)、安全・安心の強化や顧客利便性を向上させるための施設設備・ITへの投資(S)、BCP対応やITセキュリティ強化(G)等に関する投資などがあります。
4)資金調達
当社グループは、事業活動の維持および将来の成長のために必要な資金について、安定的かつ機動的に確保することに努めております。
設備投資は、内部資金および外部資金を有効に活用して実施してまいります。設備投資額は営業キャッシュ・フローの範囲内とすることを原則としておりますが、十分な手元流動性の確保、資金調達手段の多様化、資本効率の向上を企図し、主要な事業資産である航空機などの調達に当たっては、金融機関からの借入、社債の発行、航空機リース等の有利子負債を一部活用しております。また、今後のESG投資の推進に向けては、2022年3月に航空業界として世界初となるトランジションボンドを発行するなど、今後もESGファイナンスを積極的に活用してまいります。
当社は従前から、安定的な外部資金調達能力の維持向上は重要な経営課題と認識しており、資金調達能力の源泉である強固な財務体質の維持向上に努めてまいります。また、当社は国内2社の格付機関から信用格付を取得しております。本報告書提出時点において、日本格付研究所の格付は「シングルA(ネガティブ)」、格付投資情報センターの格付は「シングルAマイナス(ネガティブ)」となっております。また、主要な取引先金融機関とは良好な取引関係を維持しており、健全な財務体質を有していることから、必要な運転資金、投資資金の調達に関しては問題ないと認識しています。
財務戦略においては、これまで培ってきた強固な財務体質を活かし、コロナ禍においても資金面で万全を期すべ く機動的な資金調達を実施いたしました。コロナ禍を耐え抜くために必要な手元流動性の確保のみならず、今後の 資金調達能力の維持・向上に向けて財務体質を更に強化すると同時に、ポストコロナにおける経営環境の変化に対 応し持続的な成長を実現するための投資資金を前広に確保していくという、「攻め」と「守り」の2つの目的を実現する資金調達を実施いたしました。有利子負債残高はこの2年間で大幅に増加しましたが、2022年3月末時点においても、格付評価上の自己資本比率は41.1%、ネットD/Eレシオは0.3倍と、航空業界においては世界最高レベルの強固な財務基盤を維持できております。
d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「2021~2025年度JALグループ中期経営計画」において、以下を経営目標としており、経営目標の達成に向け取り組んでまいります。
(安全・安心)
不安全な事象の発生を防ぐための安全の層を厚くするとともに、経営目標である「航空事故(注1)ゼロ・重大インシデント(注2)ゼロ」を達成し、安全のリーディングカンパニーを目指します。目標達成に向けて、安全・安心を最優先に考える文化・意識の継承と継続的な浸透を更に進めるとともに安全・安心を取り巻く社内外の環境変化に対応するために、以下に取り組んでまいります。
航空安全の高度化
・デジタル技術の活用 ・乗務員の健康管理
多様化するリスクへの対応
・保安対策の強化 ・感染症対策(衛生・清潔の向上)
・サイバーセキュリティの強化 ・災害時・緊急時のネットワーク維持
次世代の安全創造
・エアモビリティ分野への展開 ・持続性のある安全文化の確立
2021年度は目標未達成となっておりますが、発生した事案を踏まえて再発防止策を強化し、安全で安心できる社会の実現に向けて取り組んでまいります。
指標 |
2025年度までの目標 |
2021年度実績 |
航空事故 |
0件 |
2件(注3) |
重大インシデント |
0件 |
0件 |
(注1)航空機の運航によって発生した人の死傷(重傷以上)、航空機の墜落、衝突または火災、航行中の航空機の損傷(大修理相当)等
(注2)航空事故には至らないものの、その恐れがあったと認められる事態。滑走路からの逸脱、非常脱出等
(注3)航空事故 :2022年2月15日、日本航空2326便(コウノトリ但馬空港発 大阪国際空港行)において、巡航中の突然の揺れに伴いお客さまが骨折した事案、および2022年3月26日、日本航空669便(東京国際空港発 大分空港行)において、客室乗務員が骨折した事案。
安全運航の堅持とともに、世界トップレベルの顧客体験を実現することを目指しており、顧客満足評価指標はNPS(Net Promoter Score)を引き続き採用しています。
2021年度も国内線・国際線ともに新型コロナウイルスの影響を大きく受けながら、2020年度に続きJALの徹底した感染症対策「JAL FlySafeの取り組み」を推進し、安全・安心且つ高品質な商品・サービスを提供してまいりました。2021年12月には、それらに加えて、2050年のCO2排出量実質ゼロに向けた対応をはじめとしたサステナビリティに関する取り組みが評価され、日本の航空会社として唯一、APEX(注1)の「WORLD CLASS」(注2)に選ばれました。今後旅客需要が回復しても目標値を達成できるよう社会やお客さまのニーズの変化を敏感にとらえ、心地よい安心を感じられるサービスをお届けいたします。
指標 |
2025年度までの目標 (2021年度期初対比) |
2021年度実績 (2021年度期初対比) |
NPS 国内線 |
+4.0ポイント |
+7.1ポイント |
NPS 国際線 |
+4.0ポイント |
+7.4ポイント |
(注1)APEX:お客さまの搭乗体験向上のために航空会社や航空関連メーカー、旅行関連企業などで構成する米国を拠点とする非営利団体。
(注2)ポストコロナ時代に航空会社へ求められる最も重要な価値を「高いサービス品質」、「安全・安心」、「サステナビリティ」と定め、世界トップレベルの評価を認定するものとして2021年度に新設されたアワードで、JALを含め世界で7社のみが認定されました。
(財務)
これまで築き上げた高い収益性と強固な財務安定性を兼ね備えつつ、成長に向けた積極的な投資および経営資源の有効活用により常に成長し続けるために、「EBITマージン(売上高利益率)2023年度に10%以上を達成(以降向上)、ROIC(投資利益率)2023年度に9%を達成(以降維持・向上)、EPS(1株当たり純利益)2023年度 260円(コロナ禍以前の水準)、2025年度 約290円レベル」を目指します。
2021年度は未達成となっておりますが、高い収益性と強固な財務安定性を目指してまいります。
指標 |
2025年度までの目標 |
EBITマージン(売上高利益率)(注1) |
2023年度に10%以上を達成(以降向上) |
ROIC(投資利益率)(注2) |
2023年度に9%を達成(以降維持・向上) |
EPS(1株当たり純利益) |
2023年度 260円(コロナ禍以前の水準) 2025年度 約290円レベル |
(注1)EBITマージン=EBIT / 売上収益
(注2)投資利益率(ROIC)=EBIT(税引後)/ 期首・期末固定資産平均
(サステナビリティ)
環境目標について、「省燃費機材への更新」「運航の工夫」「持続可能な代替航空燃料(SAF)の活用」によるCO2排出量削減と、客室・ラウンジでの新規石油由来プラスチック全廃、および貨物・空港での環境配慮素材配合への置き換えによる使い捨てプラスチック削減に取り組んでまいります。
地域社会目標について、地域に関する取り組みの事業化を図り、多くの人々やさまざまな物の流動を創出し、航空会社の根源的な価値である輸送力を活かして、地域活性化に貢献してまいります。
D&I推進目標について、女性社員の意思決定への参画をさらに促すほか、多様な人財の登用と活躍を推進し、会社の持続的な成長と発展に向けて努めてまいります。
|
指標 |
2025年度までの目標 |
2021年度実績 |
環境 |
CO2削減 |
総排出量909万トン未満 (2019年度実績) |
620万トン |
使い捨てプラスチック削減 |
新規石油由来全廃 環境配慮素材へ100%変更 |
新規石油由来を25%廃止 環境配慮素材へ90%変更 |
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地域社会 |
国内の旅客(注1)・貨物輸送量 |
2019年度対比+10% |
旅客△59% 貨物△34% |
人 |
グループ内女性管理職比率 |
30% |
21.9% |
(注1)観光需要喚起や新規流動の創造による旅客数の増
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