(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、長引く新型コロナウイルス感染症の影響の下にありつつも、厳しい行動制限等は徐々に緩和され、経済活動の再開による景気回復の兆しが見えつつあるものの、新たな変異株による感染拡大に対する懸念がいまだ燻り続けており、依然として厳しい状況にあります。今後の先行きについても、国内外の感染症の動向や経済活動・金融資本市場への影響を注視する必要がある等、不透明な状況が続いております。一方で、新型コロナウイルス感染拡大防止によるリモートワークの推進や各企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進は、データ活用による業務効率化やAIアルゴリズム実装に対する需要を高めていると考えております。また、政府が人工知能(AI)など最先端技術を社会課題解決に生かす「Society5.0」の一環として、DX推進を目的としたデジタル庁の創設などもあり、ビッグデータの活用やAIアルゴリズム技術等の社会実装を目指す機運がますます高まっております。そうした流れの中で、当社のデータインフォームド事業が内包されるビッグデータアナリティクス(BDA)・テクノロジー市場、及びそれを含むAI市場は拡大し続けております。この中でも特に関連の深い、国内ビジネスアナリティクス/AIサービス市場は、IT専門調査会社IDC Japan株式会社によると、DX・データ駆動型ビジネスへの取り組み拡大によって部横断・企業全体でのデータ活用支援に関わる案件が増加しており、2025年までの期間にわたり高成長が期待されると予測しております。その結果、2020年~2025年のCAGR(Compound Average Growth Rate:年間平均成長率)は新型コロナウイルス感染症による負の影響を受けながらも11.5%と二桁成長を遂げ、2025年の市場規模は1兆2,080億円になると予測されており、同市場は高い成長ポテンシャルと大きな市場規模を有することが示されております。(出典:2021年10月27日IDC Japan 国内ビジネスアナリティクス/AIサービス市場予測、2020年~2025年)このような環境の下、当社は「あらゆる判断を、Data-Informed(データインフォームド)に。」をパーパスとして掲げ、業績拡大を目指しております。当社の掲げる「データインフォームド」は、データを用いて論理的に考え合理的に判断することで、人間による意思決定の精度を高め、事業運営における再現性を高めることを狙いとしております。当社は、このような“人間が判断の主体となる”ことを前提にしたデータ活用を推進する「データインフォームド市場(DI市場)」をターゲット市場と定義し、クライアント企業のニーズに合わせてDIコンサルティング・DIプラットフォーム・DIプロダクトの3つのサービス(総称:DIサービス)を柔軟に組み合わせて提供しております。昨今の不安定な社会情勢や経済環境においては、データインフォームドに対するニーズは日々高まっております。データインフォームドな判断をクライアント企業の各種業務に組み込むことで、業務における判断の精度が向上し、経営課題解決及び競争力強化が実現されます。
当事業年度も「データインフォームド」の思想に共感する多くのクライアント企業から価値提供の機会を頂戴しました。特に、従前より取引のある大手クライアント企業において、既取引部門・取り組み中の領域におけるDIサービスの利用継続・拡大(縦展開)及び、同社内の未取引部門・新規領域へのDIサービスの提供(横展開)が順調に進展いたしました。それにより、各社におけるデータインフォームドの思想の浸透が進み、多くの案件を受注するに至りました。また、並行して推進しております導入事例の他社への展開(新規顧客開拓)も相まって、前年を上回る売上成長を達成いたしました。売上成長の実現にあたっては、①「データインフォームド」の思想をより効率的に浸透させるためのアセット開発及び先行的なプロダクト開発、②経営課題解決を可能とする人材の育成、③信用力向上と必要な資金を機動的に調達するための上場対応、の3つの領域への投資に注力しました。①の研究開発領域においては、プロジェクトで培った当社独自のノウハウをマニュアル、ツール、プログラム等の形式でアセット化し、再利用可能な状態としました。また、当社が提供するDIプロダクトサービス「マイグル」の導入・運用を効率化するためのプログラム改修も推進し、クライアント企業のユーザビリティ向上を実現しました。②の人材の育成への投資では、従前より蓄積してきた知見やアセットを活用し、当社独自の分析手法を身に着けられる教育システムを構築・運用いたしました。これにより、短期間での即戦力人材の育成が可能となっております。③の上場対応においては、コーポレート・ガバナンス体制の強化などの管理体制強化に向けた投資を行い、2022年3月30日に東京証券取引所マザーズへの上場を果たしました。戦略的な投資を積極的に行った結果、売上高が好調に推移したことに加え、事業運営における効率向上の実現も相まって、各段階利益も前年を上回る成長を達成しております。
以上の結果、当事業年度の売上高は1,057,232千円(前事業年度比46.4%増)、営業利益は99,105千円(同80.9%増)、経常利益は94,019千円(同85.1%増)、当期純利益は72,750千円(同41.4%増)となりました。
なお、当社はData-Informed事業のみの単一セグメントであることから、セグメントごとの記載を省略しております。
(資産)
当事業年度末における流動資産は1,883,660千円となり、前事業年度末に比べ432,010千円増加いたしました。これは主に当社株式の東京証券取引所マザーズ上場に伴う新株式の発行及びオーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資等にともなう現金及び預金が388,589千円増加したこと、売上高の増加に伴い売掛金及び契約資産が42,035千円増加したこと等によるものであります。固定資産は112,198千円となり、前事業年度末に比べ14,010千円増加いたしました。これは主に投資その他の資産が14,766千円増加したこと等によるものであります。
この結果、総資産は、1,995,858千円となり、前事業年度末に比べ446,021千円増加いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は219,568千円となり、前事業年度末に比べ44,881千円増加いたしました。これは主に未払法人税等が27,435千円、未払金が16,588千円増加したこと等によるものであります。固定負債は130,594千円となり、前事業年度末に比べ49,774千円減少いたしました。これは主に長期借入金が50,004千円減少したこと等によるものであります。
この結果、負債合計は、350,163千円となり、前事業年度末に比べ4,892千円減少いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は1,645,695千円となり、前事業年度末に比べ450,913千円増加いたしました。これは主に上述記載の新規株式発行、及び第三者割当増資等により資本金、資本剰余金がそれぞれ190,924千円の増加及び当期純利益72,750千円を計上したことにより利益剰余金が増加したこと等によるものであります。
この結果、自己資本比率は82.5%となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ388,589千円増加
し、当事業年度末には1,623,400千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において、営業活動の結果得られた資金は68,737千円となりました。これは主に、税引前当期純利益が99,817千円、売掛金及び契約資産が40,604千円増加したこと及び法人税等の支払額26,870千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において、投資活動の結果使用した資金は8,055千円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出8,065千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において、財務活動の結果獲得した資金は327,908千円となりました。これは、株式発行による収入377,912千円、長期借入金の返済による支出50,004千円によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社はData-Informed事業を営んでおり、該当事項はありません。
b.受注実績
当事業年度の受注実績を示すと、次のとおりであります。なお、当社はData-Informed事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
当事業年度 (自 2021年7月1日 至 2022年6月30日) |
|||
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
1,150,153 |
159.2 |
299,780 |
144.9 |
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.「収益認識に関する会計基準」等を当事業年度の期首から適用しており、受注残高の前年同期比については、当該会計基準等を適用した後の期首の受注残高と比較しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績を示すと、次のとおりであります。なお、当社はData-Informed事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
当事業年度 (自2021年7月1日 至2022年6月30日) |
|
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
1,057,232 |
146.4 |
(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前事業年度 (自2020年7月1日 至2021年6月30日) |
当事業年度 (自2021年7月1日 至2022年6月30日) |
||
金額 (千円) |
割合 (%) |
金額 (千円) |
割合 (%) |
|
西日本旅客鉄道㈱ |
205,907 |
28.5 |
353,619 |
33.4 |
アサヒグループジャパン㈱ |
142,947 |
19.8 |
353,570 |
33.4 |
㈱三菱UFJ銀行 |
101,000 |
14.0 |
63,439 |
6.0 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
③資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社は、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状況を目指し、安定的なキャッシュ・フローの創出に努めております。運転資金需要のうち主なものは、当社サービス提供のための人件費や外注費等の営業費用によるものの他、納税資金等であります。運転資金は、手持資金、銀行借入及び新株発行により資金調達を行っております。今後も事業活動を支える資金調達については、低コストかつ安定的・機動的な資金の確保を主眼にして多様な資金調達方法に取り組んでまいります。なお、事業拡大に伴う研究開発投資の増大や人件費投資の増大といった多額の先行投資が見込まれる場合、これら資金需要に対応するため、自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で調達することを予定しております。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠し作成しております。この財務諸表作成における見積りにつきましては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で行われている部分があります。これらの見積りにつきましては、継続して検証し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがあります。なお、この財務諸表の作成に関する重要な会計方針につきましては「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。
⑤経営成績に重要な影響を与える要因について
「2 事業等のリスク」に記載のとおりです。
⑥経営者の問題意識と今後の方針について
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。
⑦経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、より高い成長性及び収益性を確保する観点から、売上高成長率及び売上高営業利益率を重要な経営指標と捉えております。また、当社は少数精鋭の優秀なコンサルタントにより、クライアント企業へ高い付加価値を提供することを目標としていることから、「従業員一人当たり売上高」の増加を挙げております。これらの指標の推移は以下の通りです。
決算情報等 |
前事業年度 (自2020年7月1日 至2021年6月30日) |
当事業年度 (自2021年7月1日 至2022年6月30日) |
売上高(千円) |
722,275 |
1,057,232 |
営業利益(千円) |
54,774 |
99,105 |
従業員数(人) |
28 |
33 |
各種指標 |
前事業年度 (自2020年7月1日 至2021年6月30日) |
当事業年度 (自2021年7月1日 至2022年6月30日) |
前期比売上高成長率(%) |
116.9 |
146.4 |
売上高営業利益率(%) |
7.6 |
9.4 |
従業員一人当たり売上高(千円) |
25,795 |
32,037 |
当社は創業から現在に至るまで売上高は順調に拡大し、安定的ではないものの一定の成長率を実現しております。一方、当社の成長過程において必要な人件費投資、研究開発投資が生じた期において、その原価や諸経費が利益を下げる要因となっております。「従業員一人当たり売上高」は前事業年度において前期比で減少しているものの、これは上場に伴う社内管理体制強化に伴う管理本部人員の採用等が生じたためであり、一時的な水準低下はあったとしても今後の事業拡大に伴い、増加していくものと想定しております。なお、当指標の目標数値は設けておらず、また、各指標が前期比を上回ることに関して当社として約束する趣旨のものではございません。なお、当該指標に関する有限責任監査法人トーマツの監査及びレビューを受けておりません。
前期比売上高成長率(%)・・・売上高÷前年同期売上高×100
売上高営業利益率(%)・・・営業利益÷売上高×100
従業員一人当たり売上高(千円)・・・売上高÷期末時点従業員数
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