当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在における判断です。
当社グループを取り巻く事業環境は、政府が主導する「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」により、道路、河川、砂防分野における3次元地形データの計測、データの加工・処理・解析、データ活用のためのマネジメント技術の需要が高い水準を維持しております。2021年10月に発足した新内閣においても、災害に強い地域づくり・国土強靱化を一層推進することのほか、デジタル田園都市国家構想の具体化による地方活性化などが打ち出され、当社の技術力を発揮できる領域が拡大しております。一方、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は先行き不透明な状況が継続しております。
このような事業環境下において当社グループは、「地球をはかり、未来を創る ~人と自然の共生にむけて~」を経営ビジョンに掲げ、企業活動の持続可能性(サステナビリティ)を維持・発展させるために、企業の社会的責任(CSR)を包含したESG(Environment:環境/Social:社会/Governance:企業統治)に配慮した経営のもと、空間情報事業を通して国際的な持続可能な開発目標(SDGs)の幅広い目標の達成を目指しております。
(当期の具体的な活動)
「パスコグループ中期経営計画2018-2022」の4年目となる当期は、目標に掲げる「持続的な企業成長に向けた利益体質への変革」の達成に向けて、継続して取り組んでまいりました。そして当期は、①公共・民間・海外・衛星事業ドメインの相互連携による新たな事業展開、②事業の開拓や創発による新領域や新事業への挑戦、③高頻度・高精度な空間情報処理技術への挑戦、④働き方改革の推進、の4つのテーマに注力しました。
具体的には、海外市場における衛星活用をはじめとする事業戦略の検討、自律型ドローンによるインフラ監視の事業化検討、ドローンや車両を活用した新たな計測技術の実稼働のほか、人事制度の改革、AI人材の育成などに取り組んでまいりました。
各部門の事業活動の状況につきましては、以下の通りです。
国内公共部門においては、道路、河川、砂防、森林などの分野を中心とした調査業務、3次元地形データの計測業務、分析・解析業務、管理・対策強化などのデータ利活用業務が堅調に推移しました。また、グリーン政策にもとづく洋上風力発電事業の調査・計画業務、デジタル田園都市国家構想にもとづく3次元都市モデルの構築業務なども拡大しました。
国内民間部門においては、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響が残るものの、復調の兆しが見えております。具体的には、物流ソリューション、エリアマーケティングソリューションのほか、不動産や鉄道事業者向けの情報システムサービスが堅調に推移しました。このほか、高精度3次元道路地図データ整備のための計測業務も拡大しました。
海外部門においては、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域に所在する海外子会社の事業活動に新型コロナウイルス感染症拡大の影響が残るものの、開発途上国や新興国向けの政府開発援助(ODA)事業につきましては復調の兆しが見えております。
(当期の経営成績)
当期および前期の連結経営成績は下記のとおりであります。
連結経営成績
受注高、売上高等の損益の状況を四半期ごとに示すと下記のとおりであります。
当社グループは、主要顧客である官公庁からの受注が第1四半期に集中し、収益は年度末の納期に向けて増加する傾向にあります。
当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日)
前連結会計年度(2020年4月1日~2021年3月31日)
受注高、売上高の状況をセグメントごとに示すと下記のとおりであります。
当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日)
(注) 1 前連結会計年度末受注残高の上段( )内表示額は、前連結会計年度における年度末受注残高であり、下段は当連結会計年度の外国為替相場の変動を反映させたものであります。
2 「収益認識に関する会計基準」等を当連結会計年度の期首から適用しており、前連結会計年度末受注残高については、当該会計基準等を適用した後の受注残高としております。
<国内部門>(公共部門・民間部門)
国内公共部門の受注高は、航空レーザーによる測量業務の受注が堅調に推移したことに加え、土地区画整理や気象海象解析等の調査業務および衛星データ受信業務で大型受注があったため、前期比7,260百万円増加(前期比15.5%増)の54,064百万円となりました。売上高は、航空レーザーによる測量業務等が増加したことにより前期比1,586百万円増加(同3.3%増)の49,043百万円となりました。受注残高は前期比5,021百万円増加(同34.3%増)の19,656百万円となりました。
国内民間部門の受注高は、不動産業界向けクラウドサービスや地図ライセンス販売が増加しており、前期比786百万円増加(同15.2%増)の5,977百万円となりました。売上高は前期比113百万円増加(同2.0%増)の5,734百万円となりました。受注残高は前期比243百万円増加(同4.2%増)の6,094百万円となりました。
この結果、国内部門(公共部門・民間部門)合計では、受注高が前期比8,047百万円増加(同15.5%増)の60,042百万円、売上高は前期比1,699百万円増加(同3.2%増)の54,777百万円、受注残高は前期比5,264百万円増加(同25.7%増)の25,750百万円となりました。
<海外部門>
海外部門の受注高は、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じた調査業務の受注が増加したことなどにより、前期比527百万円増加(同38.8%増)の1,889百万円となりました。売上高は、前期に大型案件の完了に伴う売上計上があったことにより、前期比163百万円減少(同8.4%減)の1,787百万円、受注残高は前期比21百万円増加(同2.3%増)の938百万円となりました。
この結果、国内部門および海外部門の合計では、受注高合計は前期比8,575百万円増加(同16.1%増)の61,931百万円、売上高は前期比1,536百万円増加(同2.8%増)の56,565百万円、受注残高は前期比5,285百万円増加(同24.7%増)の26,689百万円となりました。
利益面につきましては、売上総利益は、国内部門の売上高が増加し生産効率を向上させたことにより増益となった一方、海外部門は前期に大型案件の完了に伴う売上計上および同案件の工事損失引当金の戻入が発生し473百万円の利益計上があった影響で減益となり、全体では前期比94百万円増益(同0.7%増)の14,507百万円の売上総利益となりました。
営業利益は、前述の前期の海外部門大型案件の影響に加え、本社移転による移転費用の計上および人員増加に伴う人件費増加の影響で販売費及び一般管理費が前期比723百万円増加(同7.4%増)したことにより前期比629百万円減少し、4,069百万円の営業利益となりました。
経常利益は、前期の為替差損81百万円から当期は為替差益21百万円に転じたものの、営業利益が減少したことにより前期比530百万円減少し、4,113百万円の経常利益となりました。
税金等調整前当期純利益は、前期に関係会社株式売却損199百万円の計上がありましたが、当期は投資有価証券評価損461百万円の計上があったことに加え、経常利益が減少したことにより前期比796百万円減少し、3,624百万円の税金等調整前当期純利益となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、税金等調整前当期純利益の減少により前期比798百万円減少し、2,459百万円の親会社株主に帰属する当期純利益となりました。
当社グループは、納品後の入金が年度明けの4、5月に集中することから、「受取手形、売掛金及び契約資産」および「短期借入金」が年度末にかけて増加していき、第1四半期で減少する傾向があります。「受取手形、売掛金及び契約資産」および「短期借入金」の推移を四半期ごとに示すと下記のとおりであります。
当連結会計年度
前連結会計年度
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末(以下「前期末」)より2,604百万円増加し69,742百万円となりました。その主な要因は、前期末営業債権の回収により「現金及び預金」が前期末より2,981百万円増加したことによるものです。
負債合計は前期末より626百万円増加し45,920百万円となりました。その主な要因は、「未払法人税等」が前期末より674百万円増加したことによるものです。
純資産合計は、前期末より1,978百万円増加し23,822百万円となりました。その主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益2,459百万円により「利益剰余金」が増加したことによるものです。
当連結会計年度末における「現金及び現金同等物」(以下「資金」)は、前連結会計年度末に比べ2,981百万円増加し19,145百万円となりました。
当期におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは6,321百万円の資金の増加(前期は4,674百万円の資金の増加)となりました。主な資金の増加要因は、税金等調整前当期純利益3,624百万円、固定資産の減価償却費1,764百万円です。また、主な資金の減少要因は、退職給付に係る資産及び負債の減少額305百万円、法人税等の支払額430百万円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは2,153百万円の資金の減少(前期は2,827百万円の資金の減少)となりました。主な資金の減少要因は、生産機材・ツール等の有形・無形固定資産の取得による支出2,550百万円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは1,334百万円の資金の減少(前期は722百万円の資金の増加)となりました。主な資金の減少要因は、長期借入金の返済による支出800百万円、配当金の支払額504百万円です。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(貸倒引当金)
債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額について貸倒引当金を計上しております。
経済状況、販売先の財務状況、支払能力および支払状況、担保の処分可能見込額等の前提条件に重要な変動が生じた場合、これらの貸倒引当金の見積りに重要な影響を及ぼす可能性があります。
(固定資産の減損)
当社グループは、事業用資産については管理会計上の区分に基づいて、賃貸用資産および遊休資産については個別物件単位でグルーピングを行っております。収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しております。
回収可能価額は、将来キャッシュ・フローを割り引いた使用価値または不動産鑑定評価額等より処分費用見込額を控除した正味売却価額により算定しております。将来キャッシュ・フローは、中期経営計画の前提となった数値を、経営環境等の外部要因に関する情報や当社グループが用いている内部の情報(過去における経営計画の達成状況・予算等)と整合的に修正し、各資産グループの現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮して見積っております。
将来キャッシュ・フロー、割引率および不動産鑑定評価額等の前提条件に重要な変動が生じた場合、固定資産の減損の見積りに重要な影響を及ぼす可能性があります。
(繰延税金資産)
繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性および将来加算一時差異の十分性のいずれかを満たしているかどうかにより判断しております。
収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたっては、一時差異等の解消見込年度および繰戻・繰越期間における課税所得を見積っております。課税所得は、中期経営計画の前提となった数値を、経営環境等の外部要因に関する情報や当社グループが用いている内部の情報(過去における経営計画の達成状況、予算等)と整合的に修正し見積っております。
当該見積りおよび当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産および法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(工事原価総額の見積り)
請負業務に関する工事収益の計上に際して、一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度に基づいて収益を一定の期間にわたって認識しております。当該収益認識に係る進捗度は、発生した原価の累計額が工事原価総額に占める割合で算定しております。
工事原価総額の見積り時に想定していなかった原価の発生等により工事原価総額を見直した場合は、工事進捗度が変動するため、売上高および売上原価の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(工事損失引当金)
将来損失が発生すると見込まれ、かつ、連結会計年度末時点で当該損失額を合理的に見積ることが可能な請負業務について、翌連結会計年度以降の損失見積額を引当計上しております。
受注規模の大きい請負業務において、想定していなかった原価の発生や工期の延長等により見積りを超えた原価が発生する場合は、工事損失引当金の見積りに重要な影響を及ぼす可能性があります。
(退職給付に係る負債)
確定給付制度の退職給付債務および関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、期待運用収益率等の様々な計算基礎があります。
当該見積りおよび当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債および退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 追加情報」に記載のとおりであります。
お知らせ