当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日)のわが国経済は、新型コロナウイルス変異株の出現により経済活動の回復が鈍化したほか、ウクライナ情勢の緊迫化、原材料やエネルギー資源の価格が高騰する等、依然として、厳しく不安定な状況で推移しました。
物流業界におきましては、生産関連貨物について、先送りにしていた設備投資の再開等により、持ち直しの動きがみられました。また、建設関連貨物については、公共投資が資材価格の上昇の影響等により減少傾向となり、住宅投資は弱含みとなり弱い荷動きが続きました。
国際貨物輸送につきましては、輸出は、新型コロナウイルス感染症の影響が緩和される中で、緩やかな増加が続きました。輸入は、個人消費が弱含みで推移した一方で、国内産業の緩やかな持ち直しにより総じて回復基調で推移しました。
このような経営環境の下、当社グループは、将来にわたって持続的な成長を遂げるため、『市場と顧客に選ばれる企業』を将来のありたい姿として掲げるとともに、その達成のための長期的な課題として (1) 環境変化への適応、(2) 最新技術の取込み、(3) 事業領域の拡大を示し、事業を展開する市場だけではなく株式市場や労働市場においても、より多くの方々に魅力的であると認識され、選ばれる企業を目指しております。
また、『将来のありたい姿』に向けた第2ステップとして、ESG経営からSDGs達成に貢献するため、将来を見据えた拡大事業を中心に経営資源を集中することで、収益力と資本効率の向上を目指す基本方針に則り、2021年度から2023年度までの3ヵ年を対象期間とする中期経営計画『ステップアップ AZUMA2023』を策定しました。基本戦略として (1) 企業基盤の強化、(2) グループ営業体制の推進、(3) 事業ポートフォリオ別戦略の実行を掲げ、企業価値向上に向けた施策に取り組んでおります。
企業基盤の強化については、アフターコロナを見据え、在宅勤務など勤務制度を見直したほか、女性活躍のための社内研修や意見交換会を開催しました。また、ESG経営を強力に推進するため、2022年4月1日にサステナビリティ推進部を設置しました。
グループ営業体制の推進については、フレキシタンクを用いた液体輸送サービスを開始したほか、新規案件の獲得に努めました。
事業ポートフォリオ別戦略の実行については、拡大事業を中心とした投資計画の検討を進めました。基盤事業においては、安定したサービスの提供と生産性の向上に取り組みました。利益の安定化を目指している最適化事業においては、燃料費の高騰や荷動きの伸び悩みにより、小幅な改善にとどまりました。
これらの結果、当連結会計年度の営業収益は、396億1千3百万円と前連結会計年度に比べ6億1千2百万円(1.6%)の増収となり、営業利益は6億8千4百万円と前連結会計年度に比べ1千6百万円(2.3%)の減益、経常利益は8億8千9百万円と前連結会計年度に比べ1億5千5百万円(21.2%)の増益となりました。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は、6億3千5百万円と前連結会計年度に比べ2億4千1百万円(61.4%)の増益となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等の適用により、営業収益は22億5千9百万円減少しております。
セグメントの経営成績を示すと、次のとおりであります。
① 物流事業
物流事業におきましては、国際貨物について、経済活動の制限と緩和が繰り返される中で、国内外の景気が緩やかに持ち直していることを背景に、輸出入貨物の取扱量は下支えされたものの、海外港湾混雑の影響でコンテナ船の寄港隻数減便により、取扱量は総じて減少しました。また、荷役作業においてはスケジュール遅延により作業費用が嵩んだ一方、コンテナターミナル蔵置量の適正化に努めたことで全体的な費用を抑えることができました。ロシア・中央アジア関連貨物については、新型コロナウイルス感染症等の影響でロシア向けの生産関連貨物の取扱量が減少したほか、中国の越境検疫強化等で物流が停滞したことやコンテナ不足を背景に、中央アジア向けの自動車関連貨物等の取扱量が減少しました。一方で、ロシア向け消費財関連貨物のコンテナ輸送量が堅調に推移したほか、同地域向け貨物輸送に伴う日本国内での付帯作業の取扱量が増加しました。また、液体輸送事業や欧州向けの設備輸送案件が開始したことにより、収益性が向上しました。なお、ロシア等への輸出については、経済産業省発表の輸出入禁止措置に基づき取扱いを行っております。国内貨物については、鋼材をはじめとする資材価格が上昇している影響等により、建材関連貨物の荷動きが低調に推移し、カーフェリー輸送や陸上輸送での取扱量は減少しました。
これらの結果、物流事業の営業収益は、304億2千9百万円と前連結会計年度に比べ22億4千5百万円(8.0%)の増収となり、セグメント利益は、16億1千2百万円と前連結会計年度に比べ1億7千6百万円(12.3%)の増益となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により営業収益は2百万円増加しております。
海運事業におきましては、内航船について、建設現場における人手不足に伴う工期の長期化やコロナ禍での工期遅延、住宅投資の低迷等を背景に、セメント船の取扱量は減少しました。内航貨物船は、一般貨物船において、建設発生土や石膏、スラグ等の需要が堅調に推移し、取扱量は増加しました。一方、燃料価格の高騰により費用が増加しました。粉体船においては、石炭灰発生量増に伴い取扱量は増加しました。外航船については、粉体船が昨年度末に契約終了となり取扱量が減少しました。一般貨物船においては、航海数が減少したことにより取扱量が減少しました。
これらの結果、海運事業の営業収益は、82億9千5百万円と前連結会計年度に比べ16億2千4百万円(16.4%)の減収となり、セグメント利益は、3億4千9百万円と前連結会計年度に比べ1億7千7百万円(33.8%)の減益となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により営業収益は22億6千1百万円減少しております。
不動産事業におきましては、保有資産の適正な維持管理を行いました。
これらの結果、不動産事業の営業収益は、6億5千9百万円と前連結会計年度に比べ1百万円(0.2%)の減収となりましたが、セグメント利益は、5億6千5百万円と前連結会計年度に比べ1千9百万円(3.7%)の増益となりました。
④ その他事業
その他事業におきましては、植物工場のある東海地方において、平年より早く梅雨入りしたことを背景とした天候の影響により、上期の収穫量は減少したものの、苗の植え替え作業を早めたことにより下期での収穫量は増加しました。一方で、人員体制強化により固定費が増加したほか、燃料費が増加しました。
これらの結果、その他事業の営業収益は、2億2千9百万円と前連結会計年度に比べ6百万円(2.7%)の減収となり、セグメント損失は、1千5百万円(前連結会計年度は9百万円のセグメント損失)となりました。
上記セグメント利益又は損失は、セグメント間取引消去前の金額で記載しており、連結損益計算書の営業利益と調整を行っております。
生産、受注及び販売の状況は、次のとおりであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、製造原価によっております。
当社グループの業務形態は物流事業、海運事業、不動産事業、その他事業と多岐にわたっており、受注が各事業にまたがる特質を有し、かつ、浮動的であるため、受注実績を画一的に表示することは困難であります。
よって、受注状況は記載しておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引につきましては、相殺処理をしております。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
資産合計は、前連結会計年度末に比べ 13億5千3百万円増加 の 373億5千3百万円 (3.8%増) となりました。主な要因は、 減価償却等により有形固定資産の船舶が 2億2千万円 、 棚卸資産が 1億1千1百万円 減少したものの、 仮払金の増加等により流動資産のその他 が 4億1千6百万円 、 現金及び預金が 3億6千2百万円 増加したこと等によります。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ6億8千9百万円増加の212億2千万円(3.4%増)となりました。主な要因は、約定返済が進んだこと等により短期借入金が3億1千1百万円、固定負債のリース債務が1億9千1百万円減少したものの、未払金の増加等により流動負債のその他が5億7千5百万円、営業未払金が2億4千2百万円増加したこと等によります。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ6億6千3百万円増加の161億3千3百万円(4.3%増)となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上6億3千5百万円及び配当金の支払い1億9千8百万円等により利益剰余金が4億3千7百万円、その他有価証券評価差額金が1億4千3百万円、為替換算調整勘定が3千万円、退職給付に係る調整累計額が2千6百万円、非支配株主持分が1千9百万円、自己株式が5百万円増加したことによります。
この結果、自己資本比率は43.0%と前連結会計年度末に比べて0.2ポイントの増加となりました。
① キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前年度末から3億6千2百万円増加し54億8千1百万円となりました。
当連結会計年度において営業活動により得られた資金は21億7千3百万円の収入となり、前年同期と比べ22億4千9百万円減少しました。税金等調整前当期純利益は3億8千5百万円増加しましたが、売上債権の増減額が12億7千7百万円減少したこと等が影響しました。
投資活動による支出は5億7千6百万円(前年同期は4億8千2百万円の収入)となりました。無形固定資産の取得による支出は1千2百万円減少しましたが、有形固定資産の取得による支出が4億4千3百万円増加したことや投資有価証券の売却による収入が2億1千9百万円減少したこと等が影響しました。
財務活動による支出は12億4千8百万円となり、前年同期と比べ22億2千5百万円減少しました。シンジケーション方式によるコミットメントライン契約を効果的に運用した結果、短期借入金による収入は9億1千万円、長期借入金による収入は11億3千万円それぞれ増加しました。
キャッシュ・フロー関連指標のトレンド
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注) 1 いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
2 株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しています。
3 キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを使用しています。
4 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、リース債務を除く利息を支払っている負債を対象としています。
② 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの資金需要のうち営業活動による主な支出は、仕入債務や販売費及び一般管理費のほか、借入金利息、法人税等の支払による支出であります。投資活動による主な支出は、将来の成長に必要な新規設備投資や投融資であります。また、財務活動による主な支出は、借入金、リース債務、長期未払金の返済等による支出であります。
資金需要のための所要資金については、主に借入金によって調達しており、一部は自己資金にて賄っております。また、緊急時の資金調達方法として合計30億円のコミットメントライン契約を主要金融機関と締結しており、資金の流動性を確保しております。
なお、当社グループでは、適正な現預金水準について検証を行っており、安定した経営が可能である必要運転資金を売上高の約1ヶ月分以上としております。これを超える分については、緊急の資金需要のために確保して十分な水準の手元流動性を確保いたします。
当社グループの資本政策につきましては、将来の成長に必要な内部留保資金の充実と株主の皆様への還元とのバランスを最大限考慮することを基本方針としております。将来の成長に必要な内部留保については、拡大注力事業と位置付けている倉庫・不動産事業、海外事業の収益拡大に資源を優先的に充当するほか、成長育成事業と位置付けている環境関連事業や新規事業において、M&Aも視野に積極的な投資を行う方針であります。また、株主の皆様への還元方針につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載をしております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
市場価格又は合理的に算定された価額のある有価証券については、50%以上下落した場合に減損損失を計上しております。また30%以上50%未満の場合には、当該会社の経営成績及び財政状態で判断いたします。
市場価格のない有価証券については、実質価額が帳簿価額と比較して、50%以上下落した場合、当該会社の財政状態及び将来の展望を考慮した結果、回復不能と判断した場合には、減損損失を計上しております。
将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の帳簿価額に反映されていない損失又は帳簿価額の回収不能が発生した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。減損損失の認識におきましては、将来キャッシュ・フローの見積り及び割引率の見積り等が必要になります。市場環境の悪化により固定資産の収益性が見積りより低下した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
当社グループにおける退職給付費用の計算は、その計算の際に使われた仮定により異なります。この仮定は割引率、発生した給付額、利息費用、年金資産の期待収益率、死亡率などの要因が含まれております。これらの仮定と実際の結果との差額は累計され、将来の会計期間にわたって償却するため、原則として将来の会計期間に費用化されます。
実際との差異又は仮定自体の変更により、退職給付の費用に影響を与える可能性があります。
当社グループは、顧客の支払不能時に発生する見積額について、貸倒引当金を計上しております。顧客の財政状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。同様に顧客の財政状態が改善し、その支払能力が回復した場合や見積り以上の回収があった場合、引当の戻し入れが生じる可能性があります。
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