事業等のリスク

2【事業等のリスク】

 当社グループの事業その他に関するリスクについて、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している事項は、以下のとおりであります。必ずしも事業のリスクに該当しない事項についても、投資者の判断上、重要であると考えられる事項については、情報開示の観点から開示しております。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

なお、以下の記載は当社株式への投資に関するリスクをすべて網羅したものではありませんのでご留意ください。

 

<メディア・コンテンツ事業に関するリスク>

(1) 地上波テレビ広告収入への依存と国内景気変動について

当社グループ売上の大きな割合を占める地上波テレビ収入は、広告主である企業の業績やその購買者である消費者心理と強く連動しています。当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症拡大が生活・経済を直撃した2020年度の反動もあり、地上波テレビ広告への出稿も前年度比で大きく伸長しました。

しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大もひとつの契機となり、広告主である企業は、広告費を固定費(半期を契約期間とするタイムセールス)から変動費(タイム単発・スポットセールス)にシフトする動きを加速させています。これにより、広告市況以上にタイムセールスが伸び悩むリスクがあり、変動費の獲得が課題となっています。

また、2019年にインターネット広告費が地上波テレビ広告費を上回って以来、広告主のデジタルシフトも加速しています。こうした環境の変化に対応した、地上波テレビ広告の価値向上を図っていくことが今後の課題であります。

当社は、こうした環境の変化に対応すべく、日付・ポジションがCM1本から指定でき、より柔軟な広告出稿が可能なSAS(スマート・アド・セールス)といった商品の展開を行っている他、SDGsに対する社会的認知等の醸成をパートナー企業と一体となって取り組む「SDGsウィーク」を実施するなど、企業との新しい関係づくりに取り組んでいます。また、クライアントの変動費を獲得できるように、従来のセールス手法にとらわれないセールス方法も取り入れております。

当社は、引き続き、従来のセールス手法の枠を超えて、新しい取り組みを積極的に展開し、売上の拡大を目指してまいりますが、国際情勢の不安定化、原油に代表される資源の高騰、全世界的な半導体不足などに起因して、景気の不透明感が加速しており、今後の経済動向等によって、広告市場、なかでも地上波テレビ広告市場が大幅に縮小した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) メディア間の競争及びコンテンツの獲得について

テレビを中心とした映像・音声の伝送メディアは、従来型の放送、すなわち地上波、衛星(BS及びCS)、ケーブルテレビに加えてインターネット上の配信サービスの普及が進展するなど多様化し、メディア間の競争も本格化しております。こうした中で、当社グループは持続的な成長を促進するべく「TBSグループ VISION2030」・「TBSグループ 中期経営計画2023アップデート」を策定し、競争力の強化に努めておりますが、更なる可処分時間の奪い合いが激しくなることが予想されます。

当社グループでは、無料見逃し配信サービスとして「TBS FREE」、民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」を利用した動画配信を提供しているほか、㈱テレビ東京ホールディングス等と共に、有料動画配信サービス「Paravi」(パラビ)を運営しています。当連結会計年度は、海外プラットフォームにおいても存在感を示すため「Netflix」や「Disney+」へのコンテンツ提供を開始したこともあり、無料動画配信・有料動画配信共に大幅な増収となりました。さらに2022年4月スタートのリアルタイム配信と合わせてコンテンツ供給を促進し、収益の裾野を持続的に広げてまいります。

また、スポーツコンテンツについては、放送権料が高騰する傾向にあり、優良なコンテンツの獲得をめぐるメディア間の獲得競争も激化しております。

配信プラットフォームの急速な多様化を受けてコンテンツ需要が高まるとともに、海外巨大OTT(オーバー・ザ・トップ)へのコンテンツ供給の増加に伴いコンテンツへの投資の速度は早まっております。当社グループは一層強いコンテンツを生み出し、最適なウインドウコントロールを行うことで利益を最大化し、リスクを回避してまいりますが、今後、競争環境が厳しく、事業が計画通りに伸長しない場合など、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 映画、イベント事業について

当社グループは、映画及びアニメの企画製作や出資、そして東京都内に2つの劇場を所有し、演劇などの企画制作や出資を積極的に行っており、これらの製作及び出資は収支のシミュレーションを十分に行った上で実施しております。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大による興業の中止・縮小や国際情勢の不安定化による経済環境の悪化など、予期せぬ社会状況の変化で事業収入が計画を下回る場合もあり、出資に見合う回収が出来ずに、当グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 著作権等の知的財産権について

当社グループの制作するテレビ番組等のコンテンツは、原作者、脚本家、音楽の作詞・作曲家、レコード製作者、実演家等多くの著作権者等の方々の知的創作活動の成果として著作権や著作隣接権が密接に組み合わされた創造物であります。当社グループはコンテンツを地上波放送以外にも、BS・CS等の衛星放送はじめ配信やパッケージなどにマルチユース展開しております。この際には、様々な著作権者等の権利に十分配慮しながら展開しておりますが、権利者からの使用許諾が得られなかった場合や、万一、著作権者等に対して不適切な対応を取った場合には、放送の差し止めや損害賠償請求などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 設備投資について

当社放送事業・配信事業を支える基幹設備につきまして、従来の特定用途に限定される専用の機器から汎用装置へ転換を進めています。これはコストの低廉化が見込める一方で、基幹となる機器のライフサイクルの短期化及びソフトウェア開発を基軸とした機能確保を必要としています。このため、ハードディスク等の記憶媒体の破損による重要なデータの喪失、あるいは開発したソフトウェアの予期せぬ障害による業務の中断等の可能性があります。

また、規模が大きいソフトウェアの開発は精緻な仕様の確定が必要となり、開発コストの予期せぬ増大につながるリスクが想定されます。さらに、重要かつ不可欠なシステムの開発が大幅に遅延すること、場合によっては中止することで、事業継続にも影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) テクノロジー、システム、セキュリティについて

当社グループは、地上波及び衛星放送事業における基幹システムの更新・改修に加え、動画配信事業に対応する新システムの開発、第5世代移動通信システムなどの新しいテクノロジーへの対応や、次世代技術を含めた開発・新規投資を行っています。

近年の技術革新のスピードや消費者ニーズの変化はとても速く、開発・投資した技術やシステムが当初の予想を超えて陳腐化する等、当初計画値以上の再投資が必要になる場合、さらに投資額に見合った増収あるいは業務の効率化が見込めない場合には、固定資産の減損及び減価償却費の増加等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

新型コロナウイルス感染症拡大によりテレワークが一般的となり、これまでオンプレミスで社内限りのアクセスであったシステムにも外部から接続する必要性が生じ、各業務システムのインターネット接続やクラウド化が進んでいます。このような変化に適切に対応するため、当社グループは専門のセキュリティ対応チーム(TBS-CSIRT)を強化し、様々なセキュリティ対策を講じています。

しかし、近年はサイバー攻撃の手口が高度化・巧妙化していることから、各種システムのセキュリティリスクは年々高まっています。ランサムウェアや最先端の技術による想定を超えるような新たなセキュリティ上の脅威が発覚し、対策として多額の投資が必要になるケースや、個人情報の漏洩などで多額の補償金が発生するケースなど、万一の事態に備え、サイバーセキュリティ保険加入などの対応を取っているものの、規模によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 

<ライフスタイル事業に関するリスク>

(7) 消費者のライフスタイルの変化とコスト構造について

ライフスタイル事業については、生活に密着した化粧品、雑貨小物、衣料、食料品などを、店舗、カタログ通販などを通して、調達から販売までを担って、消費者に届けるビジネスを行っております。消費者の嗜好や購買行動の変化、流通コストや生産コストの高騰等に加えて、新型コロナウイルス感染症の長期化の中、緊急事態宣言発出等による店舗の休業や営業時間の短縮、人流の抑制による来店客の減少、インバウンド需要の消失、サプライチェーンの不安定化と混乱などにより収益機会を逃し、当社グループの経営成績や財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

<不動産・その他事業に関するリスク>

(8) 賃貸等不動産市況について

当社グループは港区赤坂を中心に不動産開発を行い、賃貸等不動産を保有しております。新型コロナウイルス感染症拡大により、保有施設の休館や営業時間の短縮に伴うテナント家賃減免等の影響が生じ、収益性の悪化が現実となっております。今後、テナントたる企業の収益悪化やテレワークはじめ勤務形態の変化によるオフィスの縮小や退去、それに伴う空室リスクが顕在化することにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

<その他の事業リスク>

(9) 投資有価証券の時価評価について

当連結会計年度の純資産の部におけるその他有価証券評価差額金は、時価の変動などにより、前連結会計年度より約578億円増加いたしました。投資有価証券の時価評価額の増減はキャッシュ・フローに直接影響するものではありませんが、その増減に大きな変動があった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態を示す指標に影響を及ぼす可能性があります。

また、M&Aやスタートアップ企業への投資など、保有する時価の無い投資有価証券は連結会計年度末に適切な評価を行っておりますが、投資企業の業績悪化や伸長が計画通りに進まない場合には、減損処理などによって当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 個人情報等の取り扱いについて

当社グループは、番組の出演者、観覧者、雑貨販売業者、通信販売事業、インターネット上の会員サービスなどにおいて個人情報を保有し、その他各種データを含めて、社内のデータベースや外部のクラウドサービスを利用して保管しております。2022年4月1日に改正個人情報保護法が施行され、個人情報取扱事業者の義務が強化されたことをふまえて、これら個人情報等の取り扱いにつきましては、十分な注意を払い、また、高度なセキュリティ対策を講じておりますが、昨今のサイバー攻撃は高度化・巧妙化しており、万が一個人情報の漏洩や不正アクセス、不正利用、ランサムウェアによる情報漏洩・システム破壊などの事態が発生した場合は、当社グループに対する信頼性の低下や損害賠償の責任により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 法的規制の影響について

当社は、放送法が定める認定放送持株会社として放送法ならびに関係の法令に規制されております。また、当社グループの主たる事業であるテレビ放送事業は、電波法、放送法等の法令に規制されております。放送法は放送の健全な発達を図ることを目的とし、番組編集の自由や放送番組審議会の設置などを定めています。また、電波法は、電波の公平かつ能率的な利用を確保し、公共の福祉を増進することを目的とし、無線局の免許制度を定め、放送局の免許の有効期間も定めています。当社グループの地上テレビ放送については、1955年1月に免許を受けて以来、同法による免許の有効期間である5年毎に免許の更新を続け、その後、2009年4月1日に認定放送持株会社化した当社に代わって、子会社である㈱TBSテレビが同日免許を承継して現在に至っております。ラジオ放送の免許については、1951年12月に免許を受けて以来同様に更新を続け、2001年10月に子会社である㈱TBSラジオ&コミュニケーションズ(現 ㈱TBSラジオ)がこれを承継して現在に至っております。また、㈱BS-TBS、㈱CS-TBSは衛星基幹放送の業務の認定を受けて現在に至っております。

いずれの会社も、電波法、放送法等の法令による規制等に将来重大な変更があった場合や、それら法令に抵触する決定を受けた場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。なお、放送法に定める外国人等が直接間接に占める議決権の割合が当社の議決権の5分の1以上を占めることとなるときは、放送法の規定に従い、外国人等が取得した当社株式について、株主名簿に記載または記録することを拒むことができるとされております。また、放送法及び放送法施行規則の規定により、一の者が有し、または有するものとみなされる当社株式の保有割合の合計が、当社総株主の議決権に占める割合の33%を超えることとなるときは、当該超過部分の議決権を有しないとされております。

その他、当社グループは、放送関連及び放送外の不動産賃貸事業、雑貨販売事業、通信販売事業、ビューティ&ウェルネス事業を含む多様な企業群からなり、それぞれ、大規模小売店舗立地法、薬機法、特定商取引法、個人情報保護法などの関係法令や、表示、品質に関する基準、環境に関する基準、会計基準や税法など、事業ごとにさまざまな法規制を受けております。当社グループではコンプライアンス(法令遵守)と倫理的行動に万全を期しておりますが、法制度の改廃などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 新型コロナウイルス感染症拡大の影響について

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大による厳しい状況が徐々に緩和される中で、持ち直しの動きがみられました。当社グループの各セグメントの事業活動においても、メディア・コンテンツ事業セグメントは、テレビ広告市況の回復に伴い増収増益となったほか、ライフスタイル事業セグメントも、店舗への来客数の増加に伴い増収増益となりました。

当社グループでは当該感染症の影響については、事業遂行上の大きなリスクとして認識しており、感染防止策の徹底など、その影響を最小限にとどめるよう取り組みを続けます。しかしながら、新たな変異株の流行などにより、予想以上に感染症の影響が長期化または更に拡大した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 気候変動・災害等の影響について

放送事業者は、放送法により災害が発生した場合またはそのおそれがある場合には、その発生の予防または被害軽減のための放送を行うことが義務付けられております。気候変動の影響が懸念される大規模な災害等が発生した場合には緊急に報道特別番組を放送することにより、事前に予定されているCM放送の休止などにより収入が減少することがあります。それ以外にも自然災害や大規模災害等が発生した場合には、景気動向と連動した広告収入の中長期的な減少、放送設備等の被災による放送運行への影響などにより十分な収入が得られず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Climate-Related Financial Disclosures)の提言に賛同し、現在、気候変動が事業に与えるリスク・機会の両面について分析を進めております。

 

 (14) 雑貨小売販売事業に関するのれんについて

当社連結貸借対照表において、のれん96億円が計上されております。これには、ライフスタイル事業セグメントにおける株式会社スタイリングライフ・ホールディングスの雑貨小売販売事業に関するのれん40億円が含まれています。雑貨小売販売事業においては、新型コロナウイルス感染症拡大による来店客数の減少などに起因し、当該事業から生ずる営業損益が継続してマイナスとなる見込みがある場合、減損の兆候に該当し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

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