文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、中長期的な成長及び企業価値の向上を図るべく、書籍、実写映像、アニメ、ゲーム、及びUGC(User Generated Content)プラットフォーム等を通じて多彩なポートフォリオから成るIP(Intellectual Property)を安定的に創出し、それらを世界に広く展開することを中核とする「グローバル・メディアミックス」の推進を基本戦略としております。
当連結会計年度における業績は、売上高2,212億8百万円(前年同期比5.4%増)、営業利益185億19百万円(前年同期比35.9%増)、経常利益202億13百万円(前年同期比40.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益140億78百万円(前年同期比46.9%増)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しており、従来の方法に比べて、当連結会計年度の売上高は104億56百万円減少しております。なお、営業利益、経常利益、税金等調整前当期純利益に与える影響は軽微であります。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
また、文中の前年同期比較については、収益認識会計基準等の適用前の前年同期実績を用いております。
当連結会計年度における各セグメントの業績は、以下のとおりです。
[出版事業]
出版事業では、書籍、雑誌及び電子書籍・電子雑誌の販売、雑誌広告・Web広告の販売、権利許諾等を行っております。当事業においては、メディアミックス展開の重要な源泉として年間約5,000タイトルにおよぶ新作を継続的に発行しており、蓄積された豊富な作品アーカイブが当社グループ成長の原動力となっております。
当期は、北米の戦略子会社であるYEN PRESS, LLCを中心とした海外事業の高成長、権利許諾収入の伸長が収益貢献しました。また、直木三十五賞を受賞した『テスカトリポカ』、『黒牢城』(文芸単行本)をはじめ、『聖域』(ノンフィクション)、『パンどろぼう』(児童書)、『ファイブスター物語(16)』(コミック)等の販売が好調に推移しました。
電子書籍・電子雑誌は、市場全体の成長が継続していることに加え、当社が得意とする異世界ジャンルのコミック等が好調に推移していることや自社ストアであるBOOK☆WALKERにおけるユーザー数の増加、海外向け売上の順調な伸長により好調に推移しました。
この結果、当事業の売上高は1,329億72百万円(前年同期比2.6%増)、セグメント利益(営業利益)は173億70百万円(前年同期比35.3%増)となりました。
なお、更なる返品削減、製造コスト削減、利益率の向上に向け、埼玉県所沢市において2021年4月に書籍製造ラインの稼働を一部開始し、文庫やライトノベル、新書、コミック等のデジタル印刷による小ロット・適時製造を行っております。現在、製造ラインの拡張を進めていることに加え、物流設備についても将来の稼働に向け、準備を進めております。
[映像事業]
映像事業では、実写映像及びアニメの企画・製作・配給、映像配信権等の権利許諾、パッケージソフトの販売等を行っております。
『世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する』、『盾の勇者の成り上がり』等のアニメや、映画『ヤクザと家族 The Family』、『ファーストラヴ』等の実写映像の配信収入が伸長しました。また、デジタル映画鑑賞券「ムビチケ」やスタジオ事業等でも売上が伸長しました。
一方で、人気タイトルが権利許諾収入や海外売上の伸長をけん引した前期からは減益となりました。
この結果、当事業の売上高は331億12百万円(前年同期比5.7%増)、セグメント利益(営業利益)は13億41百万円(前年同期比41.0%減)となりました。
[ゲーム事業]
ゲーム事業では、ゲームソフトウエア及びネットワークゲームの企画・開発・販売、権利許諾等を行っております。
当期においては、新作『ELDEN RING』の販売が好調に推移し、増収増益に大きく貢献しました。同作は2022年2月25日の発売から3月末までで全世界の累計出荷本数が1,340万本を超える記録的大ヒットとなりました。旧作のリピート販売や共同・受託開発事業は前期からの反動で減収となりました。
この結果、当事業の売上高は194億90百万円(前年同期比17.2%増)、セグメント利益(営業利益)は52億円(前年同期比89.5%増)となりました。
[Webサービス事業]
Webサービス事業では、動画コミュニティサービスの運営、各種イベントの企画・運営、モバイルコンテンツの配信等を行っております。
動画コミュニティサービスでは、動画配信サービス「ニコニコ」の月額有料会員(プレミアム会員)が3月末には140万人となり、前年3月末からは減少となっております。しかしながら、生放送番組・動画にアイテムを贈る「ギフト」や広告等が伸長し、収益源の多様化による業績の安定化が進んでおります。各種イベントの企画・運営では、「Animelo Summer Live 2021」や「The VOCALOID Collection ~2021 Autumn~」を開催し、売上に貢献しました。
この結果、当事業の売上高は213億42百万円(前年同期比3.0%減)、セグメント利益(営業利益)は20億13百万円(前年同期比3.9%減)となりました。
[その他事業]
その他事業では、教育事業、IP体験施設を運営するコトビジネス、キャラクターグッズ等の企画・販売を行うMD事業等を行っております。
教育事業においては、インターネットによる通信制高校であるN高等学校・S高等学校で生徒数が順調に増加しており、同校等に教育コンテンツの提供を行う㈱ドワンゴの収益貢献により、引き続き好調に推移しました。また、クリエイティブ分野の人材育成スクールを運営する㈱バンタンでも新たに名古屋校を開校する等の積極的な投資の中で、売上、利益ともに引き続き成長しております。IP体験施設においては、角川武蔵野ミュージアム、アニメホテル、イベントホール、飲食店などの商業施設を展開するところざわサクラタウンが前期に新規開業し、増収に寄与しました。
この結果、当事業の売上高は222億83百万円(前年同期比27.6%増)、セグメント損失(営業損失)は41億84百万円(前年同期 営業損失44億91百万円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上等により、217億8百万円の収入(前年同期は155億86百万円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形固定資産の取得や定期預金の預け入れ等により、79億40百万円の支出(前年同期は59億31百万円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い(1株当たり20円増配)があった一方、株式の発行による収入298億67百万円等により、266億90百万円の収入(前年同期は79億33百万円の収入)となりました。
以上の結果、為替換算差額も含めて416億91百万円の収入となり、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、975億79百万円となりました。
当社グループの短期運転資金は基本的に自己資金より充当し、設備投資資金や長期運転資金につきましては、事
業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境を勘案の上、金融機関からの長期借入や社債発行及び株式発行に
より適宜調達を行っております。
また、複数の金融機関と総額150億円のコミットメントライン契約を締結し、流動性を補完しております。な
お、当連結会計年度末の借入実行残高はありません。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
出版事業 |
(百万円) |
82,392 |
105.98 |
映像事業 |
(百万円) |
24,957 |
111.88 |
ゲーム事業 |
(百万円) |
10,940 |
105.35 |
Webサービス事業 |
(百万円) |
12,997 |
96.78 |
その他 |
(百万円) |
15,093 |
127.33 |
合計 |
(百万円) |
146,382 |
107.86 |
(注)1.金額には、セグメント間の内部取引高を含んでおります。
2.金額は、製造原価によっております。
b.仕入実績
当連結会計年度における仕入実績については、金額的重要性が乏しいため、記載を省略しております。
c.受注実績
当連結会計年度における受注実績については、受注高の販売高に対する割合が僅少であることから、記載を省略しております。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
出版事業 |
(百万円) |
132,972 |
102.62 |
映像事業 |
(百万円) |
33,112 |
105.74 |
ゲーム事業 |
(百万円) |
19,490 |
117.15 |
Webサービス事業 |
(百万円) |
21,342 |
96.97 |
その他 |
(百万円) |
22,283 |
127.60 |
合計 |
(百万円) |
229,201 |
105.62 |
(注)1.金額には、セグメント間の内部取引高を含んでおります。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がいないため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①重要な会計方針及び当該見積に用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、会計上の見積りが必要となる事項については、過去の実績や将来計画等を考慮し、「棚卸資産の評価に関する会計基準」「金融商品に関する会計基準」「固定資産の減損に係る会計基準」「資産除去債務に関する会計基準」「退職給付に関する会計基準」「税効果会計に係る会計基準」「収益認識に関する会計基準」等の会計基準に基づいて会計処理を実施しております。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報) 新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積り」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照下さい。
b.財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて556億70百万円増加し、3,253億19百万円となりました。これは主に第三者割当増資等により現金及び預金が増加したことや、保有株式の株価上昇により投資有価証券が増加したことによるものであります。
負債は、前連結会計年度末に比べて94億54百万円増加し、1,495億78百万円となりました。これは主に預り金、支払手形及び買掛金等が増加したことによるものであります。
純資産は、前連結会計年度末に比べて462億16百万円増加し、1,757億40百万円となりました。これは主に配当金の支払いがあった一方で、親会社株主に帰属する当期純利益の計上及び第三者割当増資等により株主資本が増加し、保有株式の株価上昇によりその他有価証券評価差額金が増加したことによるものであります。
c.資本の財源及び資金の流動性
(a)キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
また、キャッシュ・フロー関連指標の推移は、以下のとおりであります。
キャッシュ・フロー関連指標の推移
|
2018年 3月期 |
2019年 3月期 |
2020年 3月期 |
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
自己資本比率 |
44.7% |
42.2% |
43.3% |
47.2% |
52.8% |
時価ベースの自己資本比率 |
30.0% |
30.7% |
34.5% |
102.7% |
137.8% |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 |
40.7年 |
11.2年 |
4.0年 |
4.2年 |
3.0年 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ |
16.2倍 |
59.0倍 |
167.4倍 |
161.6倍 |
211.5倍 |
(注)1.各指標の算出は、以下の算式を使用しております。
自己資本比率 |
:自己資本 ÷ 総資産 |
時価ベースの自己資本比率 |
:株式時価総額 ÷ 総資産 |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 |
:有利子負債 ÷ 営業キャッシュ・フロー |
インタレスト・カバレッジ・レシオ |
:営業キャッシュ・フロー ÷ 利払い |
2.上記各指標は、連結ベースの財務数値により計算しております。
3.株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
4.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
5.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。また、利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
(b)資金需要
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、製品の製造費や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、設備投資を目的とした資金需要の主なものは、出版事業における製造・物流拠点の建設費、自社電子書籍サイトの機能拡張等によるものであります。
(c)財務政策
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は基本的に自己資金より充当し、設備投資資金や長期運転資金につきましては、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境を勘案の上、金融機関からの長期借入や社債発行及び株式発行により適宜調達を行っております。
また、新たに策定した2023年3月期より始まる3か年の中期経営方針において、原則として自己資本比率50%以上を維持すること、ROE(自己資本利益率)は中長期的に10%以上を目指すことを財務基本方針として掲げております。
なお、現金及び預金と有利子負債の推移は、以下のとおりであります。
|
2018年 3月期 |
2019年 3月期 |
2020年 3月期 |
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
現金及び預金 (百万円) |
85,962 |
73,597 |
74,880 |
79,042 |
123,931 |
有利子負債 (百万円) |
65,527 |
65,640 |
65,822 |
65,669 |
65,701 |
(注)有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
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