事業等のリスク

2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)当社グループのリスク管理体制

当社では、取締役会の監督の下、社長を委員長とし、事業部門を始め各部門を統括するチーフオフィサーほかを委員とするリスク管理委員会(年2回)を設置し、全社的リスク管理体制を構築しております。リスク管理委員会では、リスクの発生懸念、発生状況を始め、当社グループを取り巻くリスクに関する情報の収集分析を行い、毎年、重点対応すべきリスクを選定し、対応を実施することで、リスクのコントロールを進めております。

 

(2)当社グループの主要なリスク

当事業年度において重点対応すべきリスクと位置付けたもののうち、主なものを記載しておりますが、その他のリスクについても、それぞれ対応を進めております。

 

社会環境に関するリスク

① 新型コロナウイルス感染症に伴うリスク

新型コロナウイルス感染症の全世界的な流行は、およそ事業活動を行う企業の全てにおいて、少なからぬ影響が生じており、当社グループにおいても同様です。

小売店舗等の営業縮小又は休止による販売機会の縮小、イベント等の開催中止などの問題が発生しております。

一方で、消費動向の変化により、電子書籍を始めとする電子配信事業は拡大しております。

業務環境においては、当社グループでは、早くから働き方改革を推進してきたことにより、在宅勤務への移行がスムーズに進んでおり、当社グループのIP創出活動においては、現在のところ、大きな影響は出ておりません。

今後、コロナ禍の沈静化後も人々の生活スタイルの変化、消費動向の変化は続くものと考えられます。

当社グループとしては、IP創出活動を軸に、DX推進と働き方改革を進めつつ、コロナ禍後(アフターコロナ)における事業の在り方を検討、推進してまいります。

 

② 気候変動に伴うリスク

気候変動の影響は年々深刻さを増しており、経済・社会・環境に大きな影響を及ぼしています。

当社グループにおいても、将来、気候変動による電力、原材料などのコスト増や異常気象の激甚化などのリスク懸念があることに加え、社会の一員として持続可能な社会の実現に向けた責任を果たすことが求められております。

当社グループでは、気候変動への対応が社会の喫緊の課題であると認識し、温室効果ガス削減や省エネルギー化に取り組むなど、気候変動リスクへの対応を進めてまいります。また、当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言にて例示されているリスク・機会をもとにシナリオ分析を実施して気候変動がもたらす影響を評価するとともに、SBT(Science Based Targets)として求められるCO2排出削減レベルを考慮して、Scope1(事業による直接排出)、Scope2(電力消費による間接排出)について、「2030年度に2020年度比50%削減」「2050年度に実質ゼロ」の目標を設定しました。GHG(温室効果ガス)排出量の削減にあたっては、社内の省エネルギー化、節電を心掛けるとともに、化石燃料を用いない再生可能エネルギーの導入や国が認証するJ-クレジット制度を積極的に活用し脱炭素社会の実現を目指していきます。

 

企業運営に関するリスク

③ 法令違反のリスク

当社グループが行う事業では、様々な法の適用を受けており、法令違反が生じるリスクがあります。

当社グループでは、コンプライアンス(法令遵守)を重要な経営方針と位置づけ、コンプライアンス規程を制定するとともに、従業員啓発の研修等を通じたコンプライアンスの推進により、贈収賄・インサイダー取引等を含む従業員の法令違反や社会規範に反した行為等の発生可能性を低減するよう努めています。

 

④ 業務環境におけるリスク

当社グループのDX推進、働き方改革において、インフラとしてのIT環境に対しては、これまで以上に依存度が高まってきており、業務に使用するサーバやネットワークの不良・事故・故障によるリスク、またサイバーテロによるデータの改ざん・搾取などによる情報漏洩のリスクがあります。

顕在可能性や発生時期については、予測できるものではありませんが、可能性としては起こり得るものです。

これらの事態が生じた場合には、業務の中断などの事態が生じ、回復までの期間が長期間に及ぶことになった場合には、当社グループの収益に影響が出てくる可能性があります。

対応策としては、IT環境の整備は、当社グループのDX推進、働き方改革において、必須の装備であり、今後の当社グループの継続的な成長のために必要なものとして、適切な規模・品質を確保しつつ、適時に投入していくよう努めてまいります。

 

特定の事業に関するリスク

⑤ 新規事業におけるリスク

当社は、新たな収益機会の創造と持続的な成長を実現していくため、未来に向けたコンテンツの創造・文化の発信拠点として、埼玉県所沢市に書籍製造・物流工場、オフィス、ユーザーに新たなIP体験を提供するコトビジネス関連施設等から構成される複合拠点「ところざわサクラタウン」への投資を行っております。

しかし、新規事業の立上げにあたっては、設備費等の先行投資が発生し利益率が低下する可能性があり、新規事業が安定して収益を生み出すまでには一定の期間を要することも想定されます。

また、事業環境の急激な変化や不測の事態等により、想定した収益が見込めない、又は想定していなかった多額の費用が発生する等、当初の計画どおりに進捗しない場合には、投資の回収が遅れる、又は回収できない等の要因により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

新型コロナウイルス感染症の全世界的な流行により、デジタル製造・物流工場の本格稼働のタイミングが当初想定より遅れており、また、リアルイベントの中止・延期やインバウンド需要の減少等の影響は生じておりますが、現時点において重要なリスクが顕在化する可能性は高くないものと考えており、基本的な投資回収計画に大きな変更はありません。

当社では、当該事業に関する計画の進捗や需要予測を含む事業計画の見直し等について、適宜経営会議、取締役会での議論を重ねることにより、リスクの顕在化の可能性の低減を図っております。

 

⑥ 出版流通におけるリスク

ア.当社グループが製作・販売している紙の書籍、雑誌等の著作物は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(以下「独占禁止法」という)第23条の規定により、再販売価格維持契約制度(以下「再販制度」という)が認められております。再販制度とは、一般的にはメーカーが自社の製品を販売する際に、「卸売業者がその商品を小売業者に販売する価格」「小売業者が消費者に販売する価格」を指定し、その価格(「再販売価格」という)を卸売業者、小売業者にそれぞれ遵守させる制度であります。独占禁止法は、再販制度を不公正な取引方法の1つであるとして原則禁止しておりますが、著作物については独占禁止法の特例として再販制度が認められており、この再販制度が廃止されるリスクがあります。

顕在可能性や発生時期については、公正取引委員会は2001年3月23日付「著作物再販制度の取扱いについて」において、「競争政策の観点からは同制度を廃止し、著作物の流通において競争が促進されるべき」としながらも、「同制度の廃止について国民的合意が形成されるに至っていない」と指摘しており、当面、当該再販制度が維持されることとなっております。

影響度としては、当該制度が廃止された場合、出版業界全体への影響は大きく、当社グループの業績も大きな影響を受ける可能性があります。

対応策としては、再販制度に関する公正取引委員会の動向を注視し、また出版事業においては、再販制度の対象外である電子書籍事業の拡大を推進するとともに、映像事業、ゲーム事業を始めとする複数の事業領域を横断するビジネスを推進し、収益の最大化を目指してまいります。

 

イ.法的規制等には該当いたしませんが、再販制度と並んで出版業界における特殊な慣行として返品条件付販売制度があります。返品条件付販売制度とは、当社グループが取次及び書店に配本した出版物について、返品を受け入れることを条件とする販売制度であります。

当社グループではそのような返品に備えるため、過去の返品実績等に基づく将来返品見込額を返金負債として計上しております。ただし、この場合であっても、返品見込額と実際の返品受入額に乖離が生じた場合、当社グループの業績が影響を受けるリスクがあります。

顕在可能性や発生時期については、出荷額及び返品率が一定ではないため、常に発生し得ます。

対応策として、返品率そのものの低減を目指し、市場需要予測の精度向上や、計画刊行の推進に努めております。また、製造・物流を一体で行う最適な生産プロセス、物流システムの構築により、小ロット・適時製造・適時配送を本格稼働させ、返品率を改善させてまいります。

なお、返金負債の算出方法及び算出に用いた主要な仮定並びに翌年度の財務諸表に与える影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り) 返金負債」に記載しております。

 

ウ.紙の出版市場が縮小を続ける状況下、業界を構成する企業や小売店舗において、信用力の低下リスクがあります。

顕在可能性や発生時期については、紙の出版市場が縮小を続けている中、常に発生し得ます。

影響度としては、顕在化した場合に、物流システムへの影響や、返品の増加などが発生する可能性があります。

対応策としては、こまめな与信管理の実施、また製造・物流を一体で行う最適な生産プロセス、物流システムの構築により、当社から小売店への直送を可能とする、自律的な物流配送システムの構築、拡大に努めております。

 

⑦ Webサービスにおけるリスク

Webサービス事業における動画コミュニティサービスでは、同様の動画投稿サイトやライブ映像配信サイトの参入、また映像コンテンツ権利元の動画配信サービスの参入など、今後も国内事業者及び海外事業者から多くの新規参入が予想され、激しい競争におかれるものと思われます。これら競合他社との競争において、サービス自体がユーザーのニーズに対応できず、利用者の増加が見込めない場合、当社グループの業績が影響を受けるリスクがあります。

現在、「niconico」においては、月額有料会員(プレミアム会員)の減少が続いております。Webサービス事業では、引き続き斬新なアイデアや高いネットワーク技術力による他にはない魅力あるサービス・コンテンツの提供に努めてまいります。

 

⑧ 出版・映像・ゲーム等のIP創出・展開におけるリスク

ア.当社グループは、IPを安定的に創出し、それらを世界に広く展開することを中核とする「グローバル・メディアミックス」の推進を基本戦略としております。出版事業、映像事業、ゲーム事業において、製品化、映像化にかかる過程でスケジュールの変動が生じることにより、市場への適切な投入時期を逸することや、製作コストが増加することで収益が悪化するリスク、また製品、作品が消費者のニーズに合致せずに売上が想定通りあげられないリスクがあります。

顕在化可能性や発生時期については、恒常的にIP創出活動を行っており、個々の製品、作品毎に常に生じる可能性があります。

影響度については、特に映像作品、ゲーム作品については、製作に時間、コストがかかることから、作品1点あたりの影響度は、出版物に比べると相対的に高くなります。

対応策として、マーケットリサーチ、綿密な刊行計画のトレースや適切なプロジェクト管理に努めております。

 

イ.IP創出に際しては、制作作業の一部又は全部を外注する場合がありますが、成果物の納入が完了する前に、外注先が倒産するリスクがあります。

顕在化可能性や発生時期については、当社グループのIP創出活動において、外注は恒常的に発生することから、常に生じる可能性があります。

顕在化した場合、他社へ発注し直すことなどにより制作費が増額となることで収益が悪化したり、また制作が遅延することにより、市場への適切な投入時期を逸するといった影響が生じる可能性があります。

対応策として、外注先への発注の際に、適切な与信を設定し、継続的に与信管理を行うことにより、外注先の管理に努めております。

 

ウ.当社は、「グローバル・メディアミックス」の推進を基本戦略としており、国内のみならず海外の企業に対してもIPのライセンス許諾を行っております。これら海外へのライセンス許諾に際しては、許諾先の地域での規制の変化や対日感情の変化などが生じた場合、想定どおりの収益が上げられないリスクがあります。

顕在化可能性や発生時期については、該当地域における法規制の制定や、社会情勢の変化により生じてきます。

影響度としては、対象となる地域単位で発生することとなるため、特定の地域に対する依存度が高い場合には、影響度も高くなります。

対応策として、各地域の状況の早期把握に努めていくとともに、IPを様々なメディアを駆使して展開し、複数の事業領域を横断するビジネスを推進して、収益最大化を目指してまいります。

 

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