当連結会計年度末の流動資産につきましては、法人税の支払や本社改装工事に係る固定資産購入等により現金及び預金が減少したものの、受取手形、売掛金及び契約資産の増加やグループ会社の配当に係る源泉所得税を未収入金として計上したことなどにより、前連結会計年度末に比べ834百万円増加し13,433百万円となりました。固定資産につきましては、リモートワークに対応したオフィスファシリティ等への投資による有形固定資産の増加や持分法投資利益を計上したことによる投資有価証券の増加により、前連結会計年度末に比べ456百万円増加し2,299百万円となりました。
流動負債につきましては、買掛金及び未払金等が増加したため、前連結会計年度末に比べて505百万円増加し4,771百万円となりました。固定負債につきましては、約定弁済による長期借入金の減少があったものの、退職給付に係る負債の増加等により、前連結会計年度末に比べ83百万円増加し1,727百万円となりました。
純資産につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により、前連結会計年度末に比べ702百万円増加し9,233百万円となりました。
純資産から非支配株主持分を引いた自己資本は9,227百万円となり、自己資本比率は58.7%と前連結会計年度末比マイナス0.3ポイントとなりました。
(a)IT
当連結会計年度につきましては、増収による売掛金の増加及び余剰資金の当社に対する短期貸付金の増加等により、当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて311百万円増加し、5,197百万円となりました。
(b)音楽
当連結会計年度につきましては、楽器マーケットプレイス「デジマート」における決済代行の拡大による未収入金の増加、増収による売掛金の増加及び余剰資金の当社に対する短期貸付金の増加等により、当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて360百万円増加し、2,012百万円となりました。
また、楽器マーケットプレイス「デジマート」における取扱高は好調に推移しており、より良質なサービスの提供のため引き続き事業投資を行っております。
(c)デザイン
当連結会計年度につきましては、増収による売掛金の増加等により、当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて17百万円増加し、592百万円となりました。
(d)山岳・自然
当連結会計年度につきましては、増収による余剰資金の当社に対する短期貸付金が増加したこと等により、当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べ41百万円増加し、1,237百万円となりました。
(e)航空・鉄道
当連結会計年度につきましては、イカロス出版株式会社の株式の取得による完全子会社化により、売掛金や当社に対する短期貸付金等の各資産が増加しました。当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べ2,013百万円増加し、2,231百万円となりました
(f)モバイルサービス
当連結会計年度につきましては、コンテンツホルダーとの協業によるデジタルコミック等の販売プラットフォームが契約変更による計上方法の変更に伴い大幅な減収により売掛金が減少したこと等により、当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて70百万円減少し、995百万円となりました。
(g)その他
当連結会計年度につきましては、増収による余剰資金の当社に対する短期貸付金が増加したこと等により、当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて69百万円増加し、1,021百万円となりました。
(h)全社
当連結会計年度につきましては、イカロス出版㈱の株式取得に伴う現金及び預金の減少等があったものの、持分法投資損益の計上に伴う関係会社株式の増加やリモートワーク等に対応したオフィスファシリティ等への投資による固定資産の増加等により、当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末と比べて372百万円増加し、8,509百万円となりました。
当連結会計年度におきましては、巣ごもり需要の一巡等による書籍の販売減はあったものの、電子書店の大型キャンペーン等による電子出版の販売増、音楽アーティスト関連の大型ムック本の販売や社会的にDXの潮流が強まる中で、IT分野のデジタル・ターゲットメディアの広告やイベント・セミナーが好調を維持したことに加え、第3四半期以降のイカロス出版の業績を取り込んだことにより、コンテンツ事業の売上高は前期(11,233百万円)に比べ9.7%増加し、12,318百万円となりました。
プラットフォーム事業につきましては、音楽分野の楽器マーケットプレイス「楽器探そう!デジマート」、出版・電子出版・POD等の各プラットフォーム事業が堅調に推移したものの、電子コミックプラットフォーム事業の契約変更による計上方法変更と前期の巣ごもり特需の反動等により大幅な減収となり、売上高が前期(2,617百万円)に比べ6.0%減少し、2,460百万円となりました。
これらの結果、売上高は前期(13,850百万円)に比べ6.7%(928百万円)増加し、14,778百万円となりました。営業利益は、イカロス出版の取得費用と営業損失の計上、リモートワーク等に対応したオフィスファシリティ等への投資があったものの、ITセグメントの好調な推移等で吸収し、前期(822百万円)に比べ26百万円増加し、848百万円となりました。経常利益は、前期(931百万円)に比べ10百万円増加し、941百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、負ののれん発生益等により、前期(676百万円)に比べ199百万円増加し、875百万円となりました。
文中の事業セグメントの売上高は、セグメント間の内部振替高を含んでおり、セグメント利益は、営業利益をベースとしております。
当社グループは、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
この結果、遡及適用を行う前と比べて、前連結会計年度の売上高は199,182千円、売上原価は772千円、販売費及び一般管理費は184,296千円、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益は14,114千円それぞれ減少しております。前連結会計年度の期首の純資産に累積的影響額が反映されたことにより、利益剰余金の前期首残高は10,213千円減少しております。
また、当社は、2021年10月26日開催の取締役会において、経営管理区分を見直すことといたしました。
具体的には、新たに「航空・鉄道」セグメントを設けることとし、これまで「その他」として管理していた株式会社天夢人と第2四半期連結会計期間末から連結子会社としたイカロス出版株式会社を、当連結会計年度より「航空・鉄道」セグメントとして管理しております。これに伴い、報告セグメントを「IT」「音楽」「デザイン」「山岳・自然」「航空・鉄道」及び「モバイルサービス」の6区分に変更しております。
なお、前連結会計年度のセグメント情報については、変更後の算定方法及び区分により作成したものを記載しております。
ITセグメントにつきましては、ムックの刊行減やテレワーク需要等の一巡により書籍の出荷は減少したものの、電子書店の大型キャンペーン等による電子出版の販売が好調に推移したことにより、出版・電子出版は前年同期(2,972百万円)に比べ2.2%増加し3,038百万円となりました。また、デジタル総合ニュースサービス「Impress Watch」(https://www.watch.impress.co.jp/)のデジタル広告・アフィリエイト等の収入の増加により、ネットメディア・サービスは前年同期(1,362百万円)に比べ20.6%増加し1,643百万円となりました。加えて、ターゲットメディアは、ターゲット広告が好調を持続し、イベント収入も規模拡大等により増収となったことで、前年同期(989百万円)に比べ22.3%増加し1,210百万円となりました。ソリューション事業においては、国内受託案件の減少等により、前年同期(519百万円)に比べ12.9%減少し451百万円となりました。これらの結果、コンテンツ事業の売上高は前年同期(5,843百万円)に比べ8.6%増加し6,344百万円となりました。
プラットフォーム事業につきましては、パートナー出版社の電子書籍の販売が好調だったことにより、売上高は前期(220百万円)に比べ24.2%増加し、273百万円となりました。
以上により、「IT」の売上高は、前期(6,106百万円)比9.0%増の6,654百万円となりました。セグメント利益では、大幅な増収と収益性の改善に加えて販売管理費の減少により、前期(752百万円)と比べ391百万円利益が増加し、1,144百万円となりました。
(b)音楽
音楽セグメントにつきましては、書籍や雑誌広告は減収となったものの、音楽アーティスト関連の大型ムック本の販売が好調であったことや、ギターマガジン等雑誌ブランドのWEB展開によりデジタル広告が好調に推移したこととパートナー出版社の書籍制作受託で補い、コンテンツ事業の売上高は前年同期(1,371百万円)に比べ7.7%増加し、1,476百万円となりました。
プラットフォーム事業につきましては、楽器マーケットプレイス「楽器探そう!デジマート」(https:// www.digimart.net/)における楽器店からの決済サービス収入の増加に加えてパートナー出版社の刊行が好調に推移したことにより、売上高は前期(376百万円)に比べ23.5%増加し、465百万円となりました。
以上により、「音楽」の売上高は、前期(1,762百万円)比11.0%増の1,957百万円となりました。セグメント利益では、増収と収益性の改善に加えて販売管理費の減少により、前期(25百万円)と比べ89百万円利益が増加し、114百万円となりました。
(c)デザイン
デザインセグメントにつきましては、前期の既刊書籍好調の反動等で書籍の出荷が大幅に減少したものの、Impress Business Development(同)から書籍レーベル「立東舎」の事業移管や、WEBセミナー等の新規事業により売上が増加したことにより、コンテンツ事業は増収となりました。
以上により、「デザイン」の売上高は、前期(1,054百万円)比0.2%増の1,057百万円となりました。セグメント利益は、増収したものの、事業開発投資による収益性の悪化と販売管理費の増加により、前期(81百万円)と比べ96百万円利益が減少し、14百万円の損失となりました。
山岳・自然セグメントにつきましては、大型の季節商品は好調であった前期並みの水準となったことに加え、ムックの刊行増による増収、キャンペーン等により電子出版の販売が好調に推移したほか、コロナ禍で落ち込んだ広告も回復基調となり、コンテンツ事業は増収となりました。
以上により、「山岳・自然」の売上高は、前期(1,806百万円)比0.8%増の1,821百万円となりました。セグメント利益では、増収及び収益性の改善はあったものの、販売管理費の増加により、前期(54百万円)と比べ3百万円利益が減少し、51百万円となりました。
(e)航空・鉄道
航空・鉄道セグメントにつきましては、パートワーク受託案件の減収があったものの、書籍の出荷増に加え、第3四半期からイカロス出版の業績を取り込んだことにより、コンテンツ事業は大幅な増収となりました。
以上により、「航空・鉄道」の売上高は、前年同期(356百万円)比132.9%増の830百万円となりました。セグメント利益では、増収したものの、収益構造の見直し過程にあるイカロス出版が営業損失を計上したこと等も影響し、前年同期(18百万円)と比べ124百万円減少し、105百万円の損失となりました。
モバイルサービスセグメントにつきましては、電子出版は堅調に推移したものの、英語関連事業のデザインセグメントへの移管による減収等により、コンテンツ事業の売上高は前期(237百万円)と比べ18.3%減少し、193百万円となりました。
プラットフォーム事業につきましては、コンテンツホルダーとの協業によるデジタルコミック等の販売プラットフォームが契約変更による計上方法の変更と前期の巣ごもり特需の反動等により大幅な減収となり、売上高は前期(1,842百万円)と比べ18.6%減少し1,499百万円となりました。
以上により、「モバイルサービス」の売上高は、前期(2,084百万円)比18.5%減の1,699百万円となりました。セグメント利益では、収益性の改善に加えて販売管理費が減少したものの、大幅な減収により、前期(375百万円)と比べ66百万円利益が減少し、308百万円となりました。
その他セグメントにつきましては、デザインセグメントへの事業移管による出版事業の減収があったものの、著者向けPOD出版プラットフォームサービスの販売増加やWeb開発案件の受託等が好調に推移したこと等により、売上高は前期(860百万円)比8.0%増の929百万円となりました。セグメント利益では、販売管理費が増加したものの、増収に加えて収益性が改善したことにより、前期(26百万円の損失)と比べ36百万円利益が増加し、10百万円の利益となりました。
全社区分につきましては、純粋持株会社である当社と、グループの経営管理及び販売・物流管理機能を担う㈱Impress Professional Worksで構成されており、グループ会社からの配当、情報システム等の経営インフラの使用料及びグループ会社や出版社を中心とするパートナー会社の物流・販売管理に伴う手数料収入を売上高として計上し、経営インフラ等の運営に係る費用を負担しております。
全社区分の売上高は、グループ運営費やグループ受取手数料、経営指導料の増加により、前期(1,817百万円)比12.8%増の2,049百万円となりました。全社セグメントの利益は、販売管理費が増加したものの増収に加えて収益性の改善により、前期(33百万円の損失)から132百万円利益が増加し、99百万円の利益となりました。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
また、「その他」の金額には、報告セグメントの合計額と連結財務諸表計上額との差異調整が含まれております。
(注) 金額は当期製品製造原価により記載しており、セグメント間取引については相殺消去しております。
商品仕入実績については、全ての事業セグメントにおいて重要性が乏しいため、記載を省略しております。
受注実績については、全ての事業セグメントにおいて売上に対する受注高の割合が低いため、記載を省略しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
当連結会計年度末におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、法人税等の支払(799百万円/前期比574百万円の増加)や棚卸資産の増加(169百万円/前期比134百万円の増加)、非現金収入収益の負ののれん発生益(187百万円/前期なし)や為替換算調整勘定取崩益(50百万円/前期なし)等の資金の減少要因がありましたが、税金等調整前当期純利益1,150百万円(前期比251百万円の増加)を計上したこと等により、営業活動によるキャッシュ・フローは58百万円の資金の獲得となっております。(前期比1,272百万円の減少)
投資活動によるキャッシュ・フローは、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入(61百万円)があったものの、有形固定資産および無形固定資産の取得による支出(382百万円)や投資有価証券取得による支出(70百万円)があり、369百万円の支出となっております。(前期比852百万円の支出増加)
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払133百万円(前期比51百万円の増加)や長期借入金の約定弁済による支払125百万円(前期比25百万円の増加)等により259百万円の支出となっております。(前期比280百円の支出増加)
以上により、当連結会計年度末の資金残高は、前連結会計年度末と比べ567百万円減少し、6,316百万円となりました。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
自己資本比率、時価ベースの自己資本比率、債務償還比率、インタレスト・カバレッジ・レシオの推移
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
※各指標はいずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
※営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象にしております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
※算出の結果、数値がマイナスとなる場合は「-」で表記しております。
(4) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況につきましては、「(3)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
当社は、グループ全体の資金効率を高めることを目的にCMSを導入し、資金の一元管理を行っており、事業リスクに対する迅速な意思決定を可能としています。
また、運転資金の一部については銀行等の金融機関からの借入金で賄っており、手元資金と安全性の高い運用資金から有利子負債を差し引いたネット・キャッシュの当連結会計年度末の残高は5,704百万円であり、前連結会計年度末から442百万円減少しております。主な減少要因は、当連結会計年度においてイカロス出版株式会社の全株式の取得を自己資金により賄ったこととによるものであります。
(5) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。当社はこの連結財務諸表の作成にあたり、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。当社グループでは、過去の実績や将来予測される状況を踏まえ、合理的と判断される前提に基づき、継続してこの見積りの評価を実施しておりますが、実際の結果は、前提条件の相違等によりこの見積り及び仮定に基づく数値と異なる場合があります。
当社グループの財政状態又は経営成績に対して重要な影響を与え得る会計上の見積り、判断並びに仮定は以下のとおりです。
①投資有価証券の減損
当社は、パートナー企業との協業体制の強化による当社グループの中長期的な事業価値向上及び取引関係の維持に限定した目的で、特定の取引先の株式を保有しております。これらの株式には、時価があり価格変動性の高い上場会社と、市場価格のない非上場会社の株式が含まれております。時価のある株式につきましては、決算日の市場価格に基づく時価により評価しており、時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合にはその回収可能性等を勘案し必要と認められる額について減損処理を行うこととしております。市場価格のない株式等につきましては、それらの会社の純資産額が帳簿価額を50%以上下回った場合に減損処理を行うこととしております。
当社は、これまで必要な減損処理を行っておりますが、将来の市況悪化または投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は回収不能が発生し、減損処理を行うことにより、経営成績に影響を与える可能性があります。
②貸倒引当金
当社グループは、貸倒れが懸念される特定の債権については、個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額に基づき貸倒引当金を計上しております。また、その他の一般債権については、過去3年間の貸倒損失発生額に基づく実績繰入率を乗じて算出し、貸倒引当金を計上しております。なお、将来相手先の財務状況が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。また、貸倒損失の発生により、貸倒実績率が上昇し、一般債権に係る貸倒引当金の追加計上の可能性があります。
③繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰越欠損金や税務上と会計上の取扱いの違いにより生じる一時差異について、税効果会計を適用し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しております。繰延税金資産の計上にあたり、将来の収益力に基づく課税所得及びタックス・プランニングに基づき、繰延税金資産の回収可能性を判断しております。その結果、実現が困難であると判断される繰延税金資産については、評価性引当額を計上しております。
なお、事業計画に基づく課税所得の見積りは、事業区分毎の事業環境や各セグメントの事業計画の変動リスクを分析し、より確実性の高い課税所得の見積りによる回収可能性の判断を実施しております。当該事業計画には、紙の出版市場及び電子出版市場のそれぞれの過去からのトレンドを基礎として、当社グループが取扱う製品の需要予測に加え、さらに原材料価格や配送価格等の製造から販売に至るコスト上昇リスクを加味しております。
経営者は、当該回収可能性の評価は合理的であると判断しておりますが、将来の業績及び課税時期に関する判断が変動する場合、繰延税金資産の計上金額に影響を及ぼす可能性があります。
④返品資産及び返金負債
当社グループの出版・電子出版事業においては、各種専門書籍や雑誌、電子書籍、季節商品(年賀状ムック、カレンダー、手帳)等、出版物の販売に加え、雑誌への広告掲載も行っております。書籍及び雑誌の販売については、当該製品を納品した時点で履行義務が充足されたと判断し、収益を認識しております。ただし、当社グループは、出版業界の慣行に従い、原則として出版取次経由で書店に配本した書籍及び雑誌等については、配本後、約定期間(委託期間)内に限り、返品を受け入れることを販売条件とする委託販売制度を採用しております。そのため、将来返品が見込まれる額を変動対価として販売時に収益を認識せず、返品資産および返金負債を計上する方法を採用しております。返金負債の見積りについては、直近の販売額に過去の返品実績に基づいた率を乗じて算出し、返品資産は、返金負債をもとに書籍及び雑誌(一部ムック含)について、回収すると見込める金額を見積もって計上しております。また、返品抑制のため、販売予測の精査による製造・出荷部数の適正化、マーケティングデータに基づいた書店への配本調整等行っておりますが、返品率の悪化により返品資産及び返金負債の追加計上が必要となる可能性や経営成績に影響を与える可能性があります。
⑤退職給付に係る負債
当社グループは、退職給付債務の算定にあたり、予想昇給率及び退職率を見積り、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率及び国債市場利回りを勘案した割引率を使用して退職給付見込額を算出し、給付算定式基準により当連結会計年度末までの期間に帰属させております。退職給付見込み額の算出に用いたこれらの仮定や国債市場利回りの変化により実際の結果が異なる場合や変更となる場合には、その影響は累積され、将来にわたって認識されるため、将来期間において認識される費用及び債務に影響を与える可能性があります。なお、当社グループは、将来にわたって認識される数理計算上の差異を、発生時における従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(7年)による定額法により按分し、発生の翌連結会計年度から費用処理することとしております。
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