課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

以下に記載の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社が判断したものであります。

 

(1)東北電力グループ中長期ビジョン「よりそうnext」

当社企業グループは、東北電力グループ中長期ビジョン「よりそうnext」において、電力供給事業(発電・卸、送配電)の構造改革とスマート社会実現事業(電力小売含む)の早期収益化によるビジネスモデルの転換を通じ、「東北発の新たな時代のスマート社会の実現」に貢献していくことを2030年代のありたい姿として掲げております。

 

2020年2月の「よりそうnext」の公表以降、電力供給事業においては、再生可能エネルギー新規開発持分の積上げや原子力発電所の安全対策工事、燃料調達から発電・卸売のバリューチェーン最適化、「カイゼン」を通じた送配電部門の効率化・生産性向上等を進めております。また、スマート社会実現事業においては、お客さまニーズを捉えた電気料金プランのご提案や生活・産業関連サービスを拡充している他、東北電力フロンティア株式会社や東北電力ソーラーeチャージ株式会社が事業を開始いたしました。

 

ビジネスモデル転換の取り組みには一定の進捗があるところですが、足もとでは、国際情勢の緊迫化に伴う燃料価格の高止まりが電力販売の収益性に大きな影響を及ぼし、この先の事業環境の不確実性も増しております。また、電気事業を構成する各事業・機能について、直面する市場構造や規制環境に応じ機会やリスクが多様化するとともに、2050年カーボンニュートラル実現に向けた社会潮流が加速し、お客さまのニーズや当社グループへの期待も変化しつつあります。このような事業環境において持続的な成長を遂げるためには、さらなる成果を積み上げていくことが必要と考えております。

 

(2)  2022年度東北電力グループ中期計画の力点とそれに基づく取り組み

当社グループでは、上記のような認識に基づき将来に向けて安定的に収益を確保し成長していくため、グループスローガン「より、そう、ちから。」の下、電力供給事業の構造改革とスマート社会実現事業の早期収益化を進める「よりそうnext」実現の方向性を堅持しながら、3つの力点に基づき取り組みの水準やスピードを一層上げていくこととしております。

《3つの力点》

力点1“Change” 電力供給事業の抜本的変革による競争力の徹底強化

 構造変化する市場環境においても持続的に利益を創出できる事業構造への転換を進め、電力供給事業を構成する各機能が、各々のミッション遂行と利益最大化を両立させる。

力点2“Challenge” スマート社会実現事業の早期収益化への挑戦

 電力小売を切り口とする付加価値の高いサービスパッケージのご提案により競争に打ち勝ち、利益を積み上げるとともに、サービス開発~販売開始のサイクルの高速回転により独自のサービスプラットフォームの構築を加速する。

力点3“Create” 企業価値創造を支える経営基盤の進化

 社会要請やステークホルダーからの期待の変化への感度を高め、グループをあげてESGを中心としたサステナビリティの取り組みを積極的に進める。

 


 

《力点に基づく取り組み》

[発電・販売事業]

再生可能エネルギーの開発については、スマート社会実現事業との連携も視野に再エネ電源全体(風力・太陽光・バイオマス・水力・地熱)を俯瞰した戦略立案・計画策定を行い、開発から運営までを一貫して推進します。200万kWの新規開発目標に向け、他社との協業による開発に加え、これまで蓄積したノウハウを活用し、自社開発の強化や開発エリア拡大等を進め、開発案件を積み上げるとともに、水力・地熱の経年設備の抜本改修等による発電量の維持・拡大及び東北電力リニューアブルエナジー・サービス株式会社を通じた運用・保守事業を展開してまいります。

 

原子力発電に関しては、女川原子力発電所2号機について、“安全対策等のハード対策”と“運転に必要な技術力向上等のソフト対策”による安全性の更なる向上に向けて、2023年11月までの安全対策工事完了に取り組んでまいります。女川原子力発電所3号機については、引き続き適合性審査に向けた検討を進めるととともに、女川原子力発電所1号機については、安全確保を最優先に廃止措置に取り組んでまいります。また、東通原子力発電所1号機については、引き続き、適合性審査に的確に対応してまいります。さらに、設備利用率の更なる向上を目指し、再稼働後の安定運転や定検期間効率化を追求するとともに、停止号機も含めた調達改革や点検数・頻度の見直し、グループ力を活用した業務の内製化等によるコスト低減の実現にも取り組んでまいります。

原子力発電所の運転には、地域社会から信頼をいただくことが不可欠であることから、地域社会等との丁寧な双方向コミュニケーションを通じた情報発信を行い、安全性向上の取り組み等についてご理解いただけるよう取り組んでまいります。

 

火力発電については、厳しい燃料市況でも経済性を確保すべく、効率化施策の深掘りによる調達コスト低減や、需要変動等に応じた燃料調達の弾力性向上に努めます。また、2022年12月の営業運転開始を予定している上越火力発電所1号機による高効率化、既設火力発電所の運用高度化及び経年火力発電所の休廃止を着実に推進することで、火力電源の低炭素化・競争力強化に取り組んでまいります。加えて、火力脱炭素化実証や実装を見据えた事業性評価等のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを着実に展開いたします。

発電・電力卸売としての全体利益の最大化に向けては、トレーディングの活用による市場変化に即応した最適な燃料・電力の取引、市況やお客さま目線を踏まえたご提案、市場別のきめ細かな対応等を進めてまいります。

 

スマート社会実現事業展開の切り口となる電力小売については、市況変化を考慮したきめ細やかな販売・価格戦略の実行と最適なソリューションサービスの展開、お客さまニーズや電気の使い方を起点とした最適な電気料金プランの提案等により、グループの電力小売利益を最大化してまいります。また、お客さまとの接点の拡大・強化や最適メニューの提案力強化につなげるべく、「よりそうeねっと」会員の増加にも取り組むほか、再エネ(環境価値)メニューや電化等の施策を強化するとともに、デジタルマーケティングの活用と対面営業や地元企業との協業などの効果的な組み合わせにより、市場競争を勝ち抜くための販売力・提案力を強化してまいります。

 

個人向けサービスでは、電力小売を切り口とする付加価値の高いサービスパッケージをご提案し、サービスプラットフォームの構築を加速すべく、東北電力本体と東北電力フロンティア株式会社の両社が一体となり、それぞれの強みを最大限に発揮しながら、商品・サービスを拡大するとともに、お客さまとの接点強化を図り、段階的に自社開発サービスを充実してまいります。また、個別サービスとして、暮らしの困りごとをワンストップで解決するサービスやお客さまご自身の時間やご家族との時間を楽しむサービス等を提供し、競合に先駆けてお客さまの快適・安全・安心に貢献するパッケージサービスを拡大させ、サービス提供基盤の構築につなげてまいります。

 

次世代エネルギーサービスでは、VPP事業の取り組みを加速するとともに、カーボンニュートラルの実現に向けた情勢を踏まえて、太陽光発電や蓄電池等の分散電源ビジネスの拡大、オール電化と蓄エネルギー・創エネルギー・エネルギーマネジメント等を組み合わせたスマートライフ電化の提案を強化してまいります。また、スマートシティ等の地域プロジェクトへの参画等、エネルギーに関する地域の課題解決力の拡充にも取り組んでまいります。 

 

 

[送配電事業]

送配電については、送配電網の的確な設備形成・運用を継続するとともに、カーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギー大量導入を見据え、大規模系統整備、既存系統の有効活用の推進、系統・需給運用技術の高度化等による電力の安定供給と電力品質維持の確保に的確に対応してまいります。また、2023年度からの新託送料金制度のもとでも安定的な利益を創出するために、デジタル技術の活用、他社での取組事例の導入、業務プロセスの抜本的な見直しや最適な業務運営体制構築など効率化の取り組みを継続・深掘りするとともに、「カイゼン」を企業文化に根付かせ、持続的な効率化・生産性向上に取り組んでまいります。加えて、東北電力ネットワーク株式会社の資産や運用ノウハウ等を活用した新規事業創出による収益の獲得に挑戦するとともに、電化への取り組みを推進してまいります。

 

[サステナビリティ]

社会要請やステークホルダーからの期待の変化への感度を高め、グループをあげてESGを中心としたサステナビリティの取り組みを積極的に進めることとし、サステナビリティ方針、及びサステナビリティ推進会議の下、ステークホルダーの期待に応える事業基盤を整えながら、電力供給事業・スマート社会実現事業を通じて社会課題を解決する、東北電力グループならではのサステナビリティを推進いたします。

 

このうち、環境面(E)では特にカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みを強化し、「東北電力グループカーボンニュートラルチャレンジ2050」のもと、「再生可能エネルギーと原子力発電の最大限活用」(再エネ200万kWの新規開発に向けた案件積み上げ、原子力発電所の早期再稼働と再稼働後の安定運転等)、「火力電源の脱炭素化」(新潟火力発電所における水素・アンモニア混焼実証、能代火力発電所におけるブラックペレット混焼実証、発電所遊休地でのバイオマス原料の試験栽培等)、「電化とスマート社会実現」(熱源転換など電化導入のご提案と分散型電源による事業拡大、再生可能エネルギーアグリゲーション事業の推進、EV普及に向けた社用車電動化の推進等)の3つの柱を中心にCO2排出削減を加速してまいります。

 


 

 

社会面(S)では、人財ポートフォリオを活用した人材の相互融通や人材発掘等、事業戦略に応じたグループワイドの人財戦略を実行し、事業体制・運営との連動を図ってまいります。

 

 


また、一人ひとりの意識・行動変革と、ICTツールの活用によるテレワークの本格展開等により、最適な働き方を自律的に追求し、働きがいと生産性を向上するとともに、性別、年齢、経歴、障がいの有無等にかかわらず、多様な人材が能力を最大限発揮できる職場づくりを推進し、お客さまニーズの多様化への対応力も強化してまいります。さらに、安全最優先の文化の構築や、地域ニーズや地域課題解決の芽の発掘につなげる地域との積極的なコミュニケーション、グループの各事業(者)・機能が各々の役割を的確に果たすことによるエネルギーの安定供給の確保にも努めてまいります。

 

ガバナンス(G)に関しては、機動性と的確な経営管理に配慮したガバナンス体制を構築するとともに、自然災害・設備事故リスク、市場リスク(燃料・電力等)、気候変動リスク、情報リスク等の各種リスクに対し、「統合リスクマネジメント会議」の下、「統合リスク管理方針」を策定し、関係会議体と連携を取りつつ、リスク抽出・評価・対策等のリスク管理サイクルを展開しながら、的確なリスク管理を実施してまいります。

 

 

(3)財務目標達成に向けた取り組みについて

当社企業グループは、「よりそうnext」において、現下の需給・収支の構造変化に伴う収益低下を抑止し、成長のための資源投入を加速するため、“キャッシュ創出力”に着目した指標として「連結キャッシュ利益」を財務目標に採用するとともに、達成すべき最低限の水準として「2024年度に3,200億円以上」を設定しており、引き続き、電力供給事業の構造改革などを通じて、財務目標の達成に取り組んでまいります。

なお、燃料価格及び為替レートの著しい変動は、当社企業グループの中核である電力供給事業に大きな影響を及ぼすことから、今後のエネルギー市場の動向が当社の事業環境に与える影響を見定める必要があると考えております。

 

※連結キャッシュ利益=営業利益+減価償却費+核燃料減損額+持分法投資損益(営業利益は、燃料費調整制度のタイムラグ影響を除く。)

 

 


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