「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用している。また、当該会計基準等の適用等を踏まえ「電気事業会計規則」が改正されたため、再生可能エネルギー固定価格買取制度に係る再エネ特措法賦課金及び再エネ特措法交付金の会計処理については、売上高(営業収益)には計上せず、対応する営業費用から控除する方法に変更している。なお、本改正において検針日基準の取扱いに変更はないため、当社及び連結子会社である九州電力送配電株式会社は、引き続き検針日基準により収益計上している。これらに伴い、前連結会計年度との比較・分析については、これらを遡及適用した後の数値で行っている。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度のわが国経済は、新型コロナウイルスの影響により厳しい状況にあるなか、その影響は徐々に緩和され、持ち直しの動きが続いてきたが、年明けからの感染再拡大により個人消費に弱さが見られる。九州経済も引き続き厳しい状況にあるなか、輸出・生産を中心に持ち直しつつあるものの、そのペースが鈍化している。
当社グループにおいては、「九電グループ経営ビジョン2030」の実現に向けた中間目標である2025年度の財務目標の達成に向け、国内電気事業では、電化の推進による需要創出に加え、お客さまニーズに応える料金プラン・サービスの充実などにより、成長事業では、九電グループの強みやノウハウを活かしたプロジェクトの検討や事業化の推進などにより、収益拡大に向けた取組みを推進するとともに、事業活動全般にわたる徹底した効率化に、グループ一体となって取り組んできた。
当連結会計年度の業績については、総販売電力量の増加や原子力発電所の稼働増などはあったが、燃料価格の上昇により燃料費調整の期ずれ影響が前連結会計年度の差益から差損に転じたことなどから、前連結会計年度に比べ減益となった。
当連結会計年度の小売販売電力量については、グループ一体となった営業活動による増加や、前連結会計年度が新型コロナウイルス感染症の影響で減少したことによる反動増などにより、前連結会計年度に比べ5.7%増の794億kWhとなった。また、卸売販売電力量については、相対卸の積極的な販売拡大に努めたことに加え、送配電事業における再エネ電源からの買取増に伴う増加などもあり、67.4%増の178億kWhとなった。この結果、総販売電力量は13.3%増の973億kWhとなった。
小売・卸売に対する供給面については、原子力をはじめ、火力・揚水等発電設備の総合的な運用等により、また、エリア需給については、調整力電源の運用及び国のルールに基づく再エネ出力制御の実施等により、安定して電力を供給することができた。
当連結会計年度の連結収支については、収入面では、国内電気事業において、小売販売収入が小売販売電力量の増や燃料価格上昇に伴う燃料費調整の影響などにより増加したことに加え、卸売販売収入やLNG転売益が増加したことなどから、売上高(営業収益)は前連結会計年度に比べ2,213億円増(+14.5%)の1兆7,433億円、経常収益は2,241億円増(+14.6%)の1兆7,627億円となった。
支出面では、国内電気事業において、修繕費の減少などはあったが、原子力発電所の稼働増はあるものの燃料価格上昇の影響などにより燃料費が増加したことに加え、購入電力料や原子力バックエンド費用が増加したことなどから、経常費用は2,469億円増(+16.6%)の1兆7,303億円となった。
以上により、経常利益は227億円減(△41.3%)の323億円、親会社株主に帰属する当期純利益はインバランス収支還元損失や減損損失を特別損失に計上したことなどから249億円減(△78.4%)の68億円となり、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益ともに前連結会計年度に比べ減益となった。
報告セグメントの業績(セグメント間の内部取引消去前)は、次のとおりである。
[参考]国内電気事業再掲
(注) 「発電・販売事業」と「送配電事業」との内部取引消去後の数値を記載している。
② 資産、負債及び純資産の状況
資産は、原子力安全性向上対策工事等に伴う固定資産の増加に加え、棚卸資産などの流動資産が増加したことから、前連結会計年度末に比べ2,137億円増(+4.2%)の5兆3,423億円となった。
負債は、有利子負債の増加に加え、買掛金が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ2,189億円増(+4.9%)の4兆6,660億円となった。有利子負債残高は、前連結会計年度末に比べ1,154億円増(+3.3%)の3兆6,380億円となった。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加はあったが、配当金の支払による減少などにより、前連結会計年度末に比べ51億円減(△0.8%)の6,763億円となった。
この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ0.6ポイント低下し12.1%となった。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、国内電気事業において購入電力料支出の増加はあったが、小売販売収入や卸売販売収入の増加などにより、前連結会計年度に比べ43億円収入増(+1.7%)の2,578億円の収入となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投融資の回収による収入の減少はあったが、設備投資による支出の減少などにより、前連結会計年度に比べ97億円支出減(△2.9%)の3,208億円の支出となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行・償還による収入の増加はあったが、長期借入金の返済による支出の増加などにより、前連結会計年度に比べ161億円収入減(△16.9%)の794億円の収入となった。
以上により、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ178億円増加し、2,417億円となった。
当社グループの事業内容は、国内電気事業(発電・販売事業及び送配電事業)が大部分を占め、国内電気事業以外の事業の生産、受注及び販売の状況は、グループ全体からみて重要性が小さい。また、国内電気事業以外の事業については、受注生産形態をとらない業種が多いため、生産及び受注の状況を金額あるいは数量で示すことはしていない。このため、以下では、生産及び販売の状況を、国内電気事業における実績によって示している。
(注) 1 百万kWh未満は四捨五入のため、合計の数値が一致しない場合がある。
2 当社及び連結子会社(九州電力送配電株式会社、九電みらいエナジー株式会社)の合計値(内部取引消去後)を記載している。
3 発電電力量は、送電端の数値を記載している。
4 「新エネルギー等」は、太陽光、風力、バイオマス、廃棄物及び地熱の総称である。
5 揚水発電所の揚水用電力量等は、貯水池運営のための揚水用に使用する電力量及び自己託送の電力量である。
6 出水率は、当社の自流式水力発電電力量の1990年度から2019年度までの30か年平均に対する比である。
(注) 1 販売電力量の百万kWh未満は四捨五入のため、合計の数値が一致しない場合がある。
2 当社及び連結子会社(九州電力送配電株式会社、九電みらいエナジー株式会社)の合計値(内部取引消去後)を記載している。
3 小売販売収入は小売販売電力量、卸売販売収入は卸売販売電力量に対応する料金収入である。
4 小売販売電力量における新型コロナウイルス影響は△5億kWh程度である。
5 卸売販売電力量には間接オークションに伴う自己約定を含んでいる。
石炭、重油、原油、LNGの受払状況
(注) 当社及び連結子会社(九州電力送配電株式会社)の合計値を記載している。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
ア 売上高(営業収益)及び経常利益
売上高(営業収益)は、前連結会計年度に比べ2,213億円増(+14.5%)の1兆7,433億円、経常収益は2,241億円増(+14.6%)の1兆7,627億円となった。一方、経常費用は2,469億円増(+16.6%)の1兆7,303億円となった。以上により、経常利益は227億円減(△41.3%)の323億円となった。
報告セグメントの業績(セグメント間の内部取引消去前)は、次のとおりである。
[発電・販売事業]
発電・販売事業は、国内における発電・小売電気事業等を展開している。
売上高は、小売販売収入がグループ一体となった営業活動などによる小売販売電力量の増や燃料価格上昇に伴う燃料費調整の影響などにより増加したことに加え、卸売販売収入やLNG転売益が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ1,936億円増(+14.6%)の1兆5,158億円となった。
経常損益は、総販売電力量の増加や当連結会計年度に開設された需給調整市場からの収入増、原子力発電所の稼働増などはあったが、燃料価格の上昇により燃料費調整の期ずれ影響が前連結会計年度の差益から差損に転じたことなどから、赤字幅が53億円拡大し59億円の損失となった。
[送配電事業]
送配電事業は、九州域内における一般送配電事業等を展開している。
売上高は、卸売販売収入が再生可能エネルギー電源からの買取増に伴う卸売販売電力量の増により増加したことなどから、前連結会計年度に比べ390億円増(+7.0%)の5,983億円となった。
経常利益は、売上高の増加はあったが、購入電力料が再生可能エネルギー電源からの買取額及び当連結会計年度に開設された需給調整市場からの調達費用の増加等により増加したことなどから、219億円減(△75.3%)の71億円となった。
[その他エネルギーサービス事業]
その他エネルギーサービス事業は、電気設備の建設・保守など電力の安定供給に資する事業、お客さまのエネルギーに関する様々な思いにお応えするため、ガス・LNG販売、再生可能エネルギー事業等を展開している。また、九電グループが培ってきた技術・ノウハウを活かし、海外事業の強化などにも取り組んでいる。
売上高は、ガス・LNG販売価格の上昇などにより、前連結会計年度に比べ181億円増(+10.1%)の1,986億円、経常利益は48億円増(+27.2%)の224億円となった。
[ICTサービス事業]
ICTサービス事業は、保有する光ファイバ網やデータセンターなどの情報通信事業基盤や事業ノウハウを活用し、データ通信、光ブロードバンド、電気通信工事・保守、情報システム開発、データセンター事業等を展開している。
売上高は、情報システム開発受託の減少などにより、前連結会計年度に比べ5億円減(△0.4%)の1,124億円、経常利益は、光ブロードバンドサービスに係る設備の減価償却費の増加などもあり、2億円減(△3.8%)の61億円となった。
[その他の事業]
その他の事業は、不動産、有料老人ホーム、事務業務受託、人材派遣事業等を展開している。
売上高は、オール電化マンションの分譲販売などにより、前連結会計年度に比べ38億円増(+12.9%)の333億円、経常利益は18億円増(+42.2%)の61億円となった。
イ 渇水準備金引当又は取崩し
当連結会計年度は、出水率が87.8%と平水(100%)を下回ったことから、渇水準備引当金を6億円取り崩した。
ウ 特別損失
当連結会計年度は、インバランス収支還元損失や減損損失により74億円を特別損失に計上した。
エ 法人税等
法人税等は、当連結会計年度の課税所得の減少等に伴う法人税、住民税及び事業税の減少などから、前連結会計年度に比べ52億円減(△23.8%)の167億円となった。
オ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ249億円減(△78.4%)の68億円となった。1株当たり当期純利益は52.77円減の10.09円となった。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
ア キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当社グループのキャッシュ・フローの状況については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載している。
イ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、燃料代などの支払いや設備投資及び投融資、並びに借入金の返済及び社債の償還などに資金を充当している。
これらの資金需要に対して、自己資金に加え、社債や借入金により資金調達を行うとともに、一時的な資金需要の変動に対しては、コマーシャル・ペーパーなどにより機動的な対応を行っている。
また、流動性リスクについては、月次での資金繰により資金需要を的確に把握するよう努めるとともに、コミットメントラインや当座貸越、及びキャッシュ・マネジメント・サービスなどを活用することとしている。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。重要な会計方針については、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載している。
当社グループは、連結財務諸表を作成するにあたり、固定資産の減損、繰延税金資産の回収可能性、海外発電事業への投資の評価、貸倒引当金、退職給付に係る負債及び資産、資産除去債務などに関して、過去の実績等を勘案し、合理的と考えられる見積り、判断を行っているが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。このうち、特に重要なものは繰延税金資産の回収可能性と海外発電事業への投資の評価であり、詳細については、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。
④ 目標とする経営指標の達成状況等
当社グループは、「九電グループ経営ビジョン2030」に向けた中間目標として、「連結経常利益1,250億円以上(2025年度)」「自己資本比率20%程度(2025年度末)」の財務目標を設定しており、当連結会計年度においては、燃料価格上昇に伴う燃料費調整制度の一時的な期ずれ影響等により、経常利益323億円、自己資本比率12.1%となった。
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載した財務目標及び経営目標の実現に向けて、カーボンニュートラルに貢献する電化の推進などによる国内電気事業の収益拡大に加え、再生可能エネルギー事業や海外事業をはじめとする成長事業への投資による収益拡大などの取組みを引き続き推進していく。
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