課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループは、「ずっと先まで、明るくしたい。」をブランド・メッセージとする「九電グループの思い」のもと、「低廉で良質なエネルギーをお客さまにお届けすることを通じて、お客さまや地域社会の生活や経済活動を支える」ことを使命に、事業活動を進めている。

① 経営環境

一般送配電事業等の分社化や小売競争の激化など電力システム改革の進展に加え、脱炭素の潮流や新型コロナウイルス感染拡大、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速など、社会構造も変容しており、大きな転換期にある。

特に、脱炭素の潮流については、日本政府の方針である「2050年カーボンニュートラル」や「2030年温室効果ガス排出削減目標」の実現に向け、エネルギー事業者としての積極的な貢献が期待されている。

また、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、社会生活の維持に不可欠なエネルギーの安定供給を担う責務は更に大きくなっており、事業運営に支障を来すことのないよう感染予防・拡大防止対策に万全を期すことが求められている。

加えて、世界情勢が不安定さを増す中、エネルギー資源の価格高騰等の動向を注視し、リスクを踏まえたサプライチェーンマネジメントを徹底する必要がある。

② 中長期的な経営戦略

当社グループは、変化する経営環境に対応し、地域・社会とともに持続的成長を果たしていくため、事業を通じて「社会価値」と「経済価値」を同時創出するサステナビリティ経営を一層推進し、「九電グループ経営ビジョン2030」の着実な実現を図り、お客さまから信頼され、選ばれ続ける企業グループを目指していく。

 

サステナビリティ経営の推進

 

〇 サステナビリティの推進体制及び方針の整備

カーボンニュートラルをはじめとするESG(環境、社会、ガバナンス)諸課題に戦略的かつスピーディーに取り組むため、2021年7月、取締役会の監督下に「サステナビリティ推進委員会(委員長:社長)」を設置するなど、推進体制を整備した。

また、2021年12月に、基本的姿勢を示す「九電グループサステナビリティ基本方針」を制定するとともに、2022年4月には、社会と当社グループのサステナビリティ実現に向けた経営上の重要課題として「マテリアリティ」を設定した。

これらの推進体制及び方針のもと、課題解決に向けたグループ一体での取組みを加速させ、持続可能な社会の実現と企業の中長期的な成長の両立を図っていく。

 

 

[マテリアリティ(サステナビリティ実現に向けた経営上の重要課題)]


 

〇 カーボンニュートラルの実現に向けた取組み

サステナビリティの実現に向けては、責任あるエネルギー事業者として、気候変動をはじめとした社会課題の解決に貢献することが極めて重要であると考え、2021年4月に、「九電グループ カーボンニュートラルビジョン2050」を策定し、エネルギー供給面での「電源の低・脱炭素化」と需要面での「電化の推進」に取り組んでいく方針を示した。

また、2021年11月には、「九電グループ カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」を策定し、2030年の経営目標(環境目標)や、その達成に向けたKPI(重要業績評価指標)を設定するなど、カーボンニュートラル実現への道筋を示した。

その実現に向けたエネルギー需給両面の取組みとして、「電源の低・脱炭素化」については、再生可能エネルギーの主力電源化や原子力の最大限の活用、火力発電の低炭素化等に積極的に取り組んでいく。

「電化の推進」については、家庭部門でのオール電化の更なる推進や、業務・産業部門での電気式空調・給湯・厨房設備等の普及拡大、運輸部門での電気自動車の普及促進など、あらゆる部門で最大限の電化に挑戦し、九州の電化率向上に貢献していく。

これらの取組みを通じて、当社グループは、自らの温室効果ガス(GHG)排出量を上回る削減効果を社会全体で創出し、事業活動によるGHG排出量を実質マイナスにする「カーボンマイナス」を2050年よりできるだけ早期に実現する。

 

[カーボンニュートラルの実現]

○ 九電グループが目指す姿


 

○ 2030年の環境目標


 

○ 2030年の環境目標の達成に向けたKPI(2030年度)

項 目

KPI(重要業績評価指標)

電源の

低・脱炭素化

(供給側)

再エネの主力電源化

再エネ開発量 500万kW(国内外)

火力発電の低炭素化

省エネ法 ベンチマーク指標の達成

水素1%・アンモニア20%混焼に向けた技術確立

電化の推進

(需要側)

九州の電化率向上

への貢献

[家庭部門]増分電力量15億kWh(2021-2030年合計)

[業務部門]増分電力量16億kWh(2021-2030年合計)

[運輸部門]社有車100%EV化(特殊車両を除く)

 

 

「九電グループ経営ビジョン2030」の実現に向けた取組み

 

2019年6月、「九電グループ経営ビジョン2030」を策定し、2030年のありたい姿の実現に向けた戦略Ⅰ・Ⅱ・Ⅲを掲げている。

また、2021年4月には、経営ビジョンの実現に向けた中間目標として、2025年度を対象に、財務目標(連結経常利益・自己資本比率)を策定した。

経営ビジョンに掲げる3つの戦略(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)をグループ一体で加速させ、財務目標の達成を図り、その先にある経営ビジョンの実現をより確かなものとしていく。

 

[九電グループ経営ビジョン2030]

○ 2030年のありたい姿


 

○ 経営目標(2030年度)


 

[財務目標(2025年度)]

○「九電グループ経営ビジョン2030」の実現に向けた中間目標

 

項 目

目 標

   〇連結経常利益 

1,250億円以上

     ・国内電気事業

750億円

      ・成長事業

500億円

    〇自己資本比率

20%程度※3

 

                              ※3 ハイブリッド社債の資本性を考慮

 

戦略Ⅰ エネルギーサービス事業の進化

エネルギー情勢やお客さまニーズの多様化など、環境変化を先取りし、エネルギーサービスを進化させ、環境に優しく、低廉なエネルギーを安定的にお届けし続ける。

 

○ 発電・販売事業については、S(安全)+3E(エネルギーの安定供給、環境保全、経済性)の観点から、容量市場など新たな電力取引市場も最大限活用しつつ、最適なエネルギーミックスを追求していく。

再生可能エネルギーについては、地熱や水力に加え、洋上風力やバイオマス等について、地域との共生や収益性等を勘案しながら、国内外で開発を推進し、主力電源化を図る。

原子力発電については、CO排出抑制面やエネルギーセキュリティ面等で総合的に優れた電源であり、安全の確保を大前提として最大限活用していく。玄海原子力発電所3、4号機の特定重大事故等対処施設については、安全最優先で設置工事を進めるとともに、川内原子力発電所の40年超運転可否の判断材料となる特別点検の実施等についても、着実に対応していく。また、地域の皆さまの安心と信頼を高めていくため、分かりやすい情報発信やフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーション活動を継続していく。

火力発電については、電力の需給調整に不可欠な電源であり、最新鋭のLNG火力発電所の開発や、非効率石炭火力のフェードアウト対応など、環境面やコスト競争力、供給安定性のバランスを追求しつつ活用していく。

また、電力の安定供給については、電力需給変動リスクや燃料価格変動リスク等を踏まえた供給力の確保や燃料調達等を徹底しつつ、適切に対応していく。

さらに、電力販売については、競争環境が厳しさを増し、社会全体の環境意識も高まる中、引き続きお客さまにお選びいただけるよう、法人お客さま向けの再エネ・COフリープランである「再エネECO極」のほか、「再エネECOプラス」、「CO削減プラン」やご家庭向けの「まるごと再エネプラン」など、お客さまニーズに沿った料金プラン・サービスの提案や、グループ会社商材との一体販売など、エネルギーサービスの充実を図っていく。

 

○ 送配電事業については、九州電力送配電株式会社を中心に、一層の公平性・透明性・中立性を確保しつつ、安定供給とコスト低減の両立を実現する。

再生可能エネルギーの最大限の受入れや効率的な設備運用等を目指し、送配電ネットワークの次世代化を推進していく。

 

○ 海外事業については、リスク評価や収益性評価などのリスク管理機能を強化しつつ、当社がこれまで蓄積したノウハウやネットワークを活かして、一層の収益拡大を目指す。

再生可能エネルギー・火力発電事業、送配電事業、マイクログリッド事業等に取り組み、これまでのアジア・中東・米州に加え、欧州・アフリカ地域など、進出エリアや事業領域の更なる拡大を図っていく。

 

戦略Ⅱ 持続可能なコミュニティの共創

地域・社会の課題解決に向けて、グループの強みやエネルギーサービス事業とのシナジー等を発揮できる都市開発やICTサービス等の事業を中心に取り組んでいく。

 

○ 都市開発事業については、大型都市開発プロジェクトへの参画や、オフィス・住宅・物流施設の開発など、九州をはじめ国内外の案件を開拓し、収益拡大を図るとともに、交流人口拡大や地域の賑わい創出など地域の発展・活性化にも貢献していく。

 

○ ICTサービス事業については、DXが進展する中、光ブロードバンド事業やモバイルサービス事業、データセンター事業等の既存事業に加え、ドローンサービスや地域情報プラットフォームサービスなど、地域・社会のニーズにお応えする新たなサービス創出にグループを挙げて取り組んでいく。

 

○ また、自治体向けのカーボンニュートラル支援や森林資源を活用したJ-クレジット事業など、当社グループのソリューションの提供等を通じて、地域・社会の課題解決に貢献していく。

 

○ さらに、イノベーションの取組みである「KYUDEN i-PROJECT」を推進し、多岐にわたる領域での新規事業・サービスの創出に挑戦していく。

 

戦略Ⅲ 経営基盤の強化

持続的成長と中長期の企業価値向上に向けたグループ一体の挑戦により、経営を支える基盤を強化していく。

 

○ 安全・健康・ダイバーシティを重視した組織風土をつくる。

「九電グループ安全行動憲章」に基づき、事業に関わる全ての人たちの安全を守り、その先にある安心と信頼につなげていくため、「九州電力安全推進委員会(委員長:社長)」を設置し、安全を最優先する風土・文化の醸成に努めている。重大災害を撲滅するという強い決意のもと、当社グループ、委託・請負先一体となって災害防止に向けた先取り型の安全諸活動を一層強化していく。

また、従業員の活力・生産性向上に向け、「九州電力健康宣言」のもと、従業員の健康保持・増進に取り組んでいく。

さらに、変革や新たな事業展開を担う多様な人材の確保・育成、これらの人材が活躍できる組織風土づくりに取り組んでいく。

併せて、事業活動に関わる全ての人々の人権を尊重するとともに、新たな価値を創出するため、女性活躍をはじめとした多様な個性を活かすダイバーシティを推進する。

 

○ DXによる業務改革、働き方改革により、生産性の向上と新たな付加価値創造の強固な基盤を創っていく。

ICTを用いた業務効率化・高度化などDXの取組みを進めており、デジタルを起点とした業務の抜本的改革や新たなビジネスの展開を更に加速するとともに、生産性・収益性の向上や、社会への新たな価値提供等に取り組んでいく。

また、リモートワークの活用をはじめ場所や時間に捉われない、柔軟に働ける環境整備を進め、生産性が高く、働きがいが実感できる働き方の改革を推進する。

 

○ ステークホルダーからの信頼向上に継続的に取り組む。

当社グループの持続的成長と企業価値の向上に向け、コーポレート・ガバナンスの充実や、コンプライアンス経営の推進、情報セキュリティの確保、迅速で分かりやすい情報発信の徹底を図る。

さらに、株主価値向上に向け、財務体質を改善し、株主還元の更なる充実に取り組んでいく。

 

 当社グループとしては、これらの取組みを通じて、ステークホルダーの皆さまへの価値提供を果たしていく。

 

(文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したもの)

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