当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されている。経営者の視点による当連結会計年度の経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に関する分析等は次のとおりである。
本項に記載した将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
1.経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が通期にわたり継続するなか、政府による各種政策の効果や海外経済の改善もあって、企業収益や設備投資が徐々に改善するなど、景気の一部に弱さがみられるなかでも、おおむね持ち直しの動きが見られた。一方、足元では、感染対策に万全を期し経済社会活動が正常化に向かいつつも、ウクライナ情勢等による原材料価格の上昇や供給面での制約等による下振れリスク、また、変異株をはじめ感染症による内外経済への影響などにより、先行きは依然として不透明な状況のなかで推移した。
このような状況において、当社グループは、2021年4月から始動したホールディングス体制のもと、ガスエネルギー事業を中核に据えながら、国内外での不動産事業や国際エネルギー事業等、事業の多角化・強靭化に向けた懸命な営業活動を展開した。
特に西部ガスグループの中核をなす都市ガス、LPG、LNGのガスエネルギー事業においては、地域に根差した事業体制のもと、他燃料を使用されているお客さまに対して環境性、省エネ性に優れたガスエネルギーを総合的にご提案する、お客さまのご要望に対応したソリューション提案営業を引き続き推進した。
第2の収益の柱と位置付ける不動産事業においては、まちづくり・再開発・建物建築などの計画段階から、ディベロッパーさま・ハウスメーカーさまなどに西部ガスグループのソリューション力を活かした提案を行い、西部ガスグループを真のパートナーとして選んでいただき、ガスエネルギー事業とのシナジー効果を生み出せるように取り組んだ。また、海外においては戸建分譲等を展開した。
国際エネルギー事業においては、ひびきLNG基地の立地条件の優位性や拡張性を活かし、ISOタンクコンテナ(国際基準(ISO規格)に基づいて製造された安全性の高いコンテナ)による海外へのLNG出荷事業を拡大した。
その他の分野では、ベンチャー企業をはじめとする成長企業への出資等を行うファンドを運営するなど、当社グループの強みと経営資源を最大限活用しながら、ガスエネルギー以外の事業拡大による事業構造の多様化・強靭化に向けたグループ変革を推進した。
このような事業活動の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高215,273百万円(前期比23,280百万円 12.1%増)、営業利益は前期に比べ4,400百万円減の451百万円、経常利益は前期に比べ3,987百万円減の571百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べ1,299百万円減の495百万円となった。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、主に工業用分野において新型コロナウイルス感染症の影響からの回復によりガス・LPG事業の販売量が増加した。
その他の事業においても、新型コロナウイルス感染症の影響からの一部回復により時短営業の実施等営業機会が回復傾向にあったことから売上高が増加した。
新型コロナウイルス感染症の影響がさらに長期に及ぶ場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性がある。
セグメント別の状況は次のとおりである。
(1) ガス
当連結会計年度末の都市ガス事業におけるお客さま戸数は113万2千戸であり、都市ガス販売量は前期に比べ4.7%増の903,997千㎥となった。このうち業務用ガス販売量については、主に工業用分野において新型コロナウイルス感染症の影響からの回復により7.7%増の552,965千㎥となった。一方、家庭用ガス販売量は、巣ごもり需要の縮小等により使用量が減少したことから3.4%減の231,168千㎥となった。また、他の事業者への卸供給ガス販売量については、卸供給先の需要増等によって8.0%増の119,864千㎥となった。
以上のような都市ガス販売量の結果と、原料費調整によるガス料金単価の上方調整の影響等により、売上高は前期に比べ7.2%増の120,449百万円となったものの、セグメント損益は、原料LNGを価格が高騰しているスポット市場から調達したことに加え、2020年12月に供用を開始した九州北部幹線の減価償却費の影響等により、5,331百万円の損失(前期セグメント利益4,080百万円)となった。
(2) LPG
LPG販売単価が上昇したこと等により、売上高は前期に比べ24.3%増の24,204百万円となり、セグメント利益は前期に比べ61.4%増の810百万円となった。
(3) 電力・その他エネルギー
国際エネルギー事業として海外向けのLNG出荷が拡大したことに加え、電力販売件数が増加したこと等から、売上高は前期に比べ66.0%増の21,009百万円となり、セグメント利益は前期の電力市場価格の高騰による影響改善により1,284百万円(前期セグメント損失1,811百万円)となった。
(4) 不動産
分譲、賃貸事業の拡大に加え、海外不動産事業の展開により、売上高は前期に比べ6.2%増の38,814百万円となり、セグメント利益は前期に比べ34.3%増の4,550百万円となった。
(5) その他
その他の事業には、食関連事業(食品販売事業、飲食店事業)、情報処理事業等が含まれているが、食関連事業における新型コロナウイルス感染症の影響からの一部回復等により、売上高は前期に比べ3.5%増の26,913百万円となったものの、新型コロナウイルス感染症による営業自粛等の影響から、セグメント損益は110百万円の損失(前期セグメント損失386百万円)となった。
(注)1.セグメント別売上高及びセグメント利益には、セグメント間の内部取引に係る金額を含んでいる。
2.本報告書では、ガス販売量は、毎月の検針による使用量の計量に基づいたものを45MJ(メガジュール)/㎥で表記している。
3.お客さま戸数は、年度末の都市ガスメーター取付個数である。
セグメント別の売上高及びその構成比は次のとおりである。
|
区分 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
|
金額(百万円) |
構成比(%) |
金額(百万円) |
構成比(%) |
|
|
ガス |
112,396 |
54.3 |
120,449 |
52.0 |
|
LPG |
19,476 |
9.4 |
24,204 |
10.5 |
|
電力・その他エネルギー |
12,656 |
6.1 |
21,009 |
9.1 |
|
不動産 |
36,540 |
17.6 |
38,814 |
16.8 |
|
その他 |
26,013 |
12.6 |
26,913 |
11.6 |
|
計 |
207,083 |
100.0 |
231,391 |
100.0 |
2.財政状態の状況
(1) 資産
当連結会計年度末における資産の残高は395,664百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,735百万円増加した。
固定資産の残高は291,415百万円であり、前連結会計年度末に比べ13,012百万円減少した。これは、投資有価証券が株価の下落により減少したものである。
流動資産の残高は104,248百万円であり、前連結会計年度末に比べ18,747百万円増加した。これは、LNG価格の上昇に伴いガス等の売掛金が増加したことに加え、不動産事業において販売用不動産の建設工事が進捗したことに伴い仕掛品が増加したこと等によるものである。
セグメント別の状況は次のとおりである。
① ガス
主に、固定資産の減価償却が進んだこと等により、資産合計は144,293百万円(前期比8,004百万円 5.3%減)となった。
② LPG
LPG供給設備やソフトウェアの更新等により、資産合計は20,408百万円(前期比468百万円 2.3%増)となった。
③ 電力・その他エネルギー
太陽光発電設備の取得やガス発電事業への出資等により、資産合計は20,440百万円(前期比2,238百万円 12.3%増)となった。
④ 不動産
販売用不動産の建設工事が進捗したことに伴い仕掛品等の棚卸不動産が増加したことから、資産合計は109,105百万円(前期比1,765百万円 1.6%減)となった。
⑤ その他
固定資産の減価償却が進んだこと等により、資産合計は30,233百万円(前期比1,680百万円 5.3%減)となった。
(注)セグメント別資産には、セグメント間の内部取引に係る金額を含んでいる。
(2) 負債
当連結会計年度末における負債の残高は315,024百万円となり、前連結会計年度末に比べ11,216百万円増加した。
固定負債の残高は211,677百万円であり、前連結会計年度末に比べ15,085百万円増加した。これは、社債、長期借入金が増加したこと等によるものである。
流動負債の残高は103,347百万円であり、前連結会計年度末に比べ3,868百万円減少した。これは、1年以内に期限到来の固定負債が減少したこと等によるものである。
なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は275,124百万円となり、前連結会計年度末に比べ10,794百万円増加した。
(3) 純資産
当連結会計年度末における純資産の残高は80,639百万円であり、前連結会計年度末に比べ5,482百万円減少した。これは、株価の下落に伴いその他有価証券評価差額金が減少したこと等によるものである。
なお、当連結会計年度末における自己資本比率は、18.8%(前連結会計年度末は20.5%)となった。
3.キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ4,928百万円増の24,411百万円となった。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりである。
(1) 営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度に営業活動により増加した資金は、10,542百万円となり、前連結会計年度に比べ10,206百万円の収入の減少となった。これは、都市ガス事業においてガス料金単価の上方調整により売上債権が増加したことや、原料取引による債権が発生したこと等によるものである。
(2) 投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度に投資活動により減少した資金は、14,125百万円となり、前連結会計年度に比べ11,403百万円の支出の減少となった。これは、有形固定資産の取得による支出が減少したこと等によるものである。
(3) 財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度に財務活動により調達した資金は、7,634百万円となり、前連結会計年度に比べ2,780百万円の収入の増加となった。これは、短期借入金による収入が増加したこと等によるものである。
4.生産、受注及び販売の実績
当社グループにおいては、ガスセグメントが生産及び販売活動の中心となっており、外部顧客に対する売上高及び営業費用の大半を占めている。また、当該セグメント以外のセグメントが生産及び販売する製品・サービスは広範囲かつ多種多様であり、受注形態をとらないものも多い。
このため、以下は、ガスセグメントにおける生産、受注及び販売の実績について記載している。
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績は次のとおりである。
品名 |
数量(千m3) |
|
前期比(%) |
||
ガス |
916,241 |
4.6 |
(2) 受注実績
ガスについては、その性質上受注生産は行っていない。
(3) 販売実績
当連結会計年度におけるガスの販売実績は次のとおりである。
項目 |
数量(千m3) |
|
金額(百万円) |
|
前期比(%) |
前期比(%) |
|||
家庭用 |
231,168 |
△3.4 |
49,258 |
2.3 |
業務用 |
552,965 |
7.7 |
40,116 |
17.0 |
卸供給 |
119,864 |
8.0 |
7,239 |
23.0 |
計 |
903,997 |
4.7 |
96,614 |
9.4 |
期末ガスお客さま戸数(千戸) |
1,132.0 |
△0.4 |
|
|
(注)「期末ガスお客さま戸数」は、年度末の都市ガスメーター取付個数である。
5.経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの主要な原材料であるLNGは、海外から輸入しているため為替や原油価格の変動により大きな影響を受ける。そのリスクをヘッジする手段として為替予約や原料価格に関するスワップ等を検討している。また、都市ガス事業においては、原料価格の変動は原料費調整により、タイムラグは生じるもののガス販売価格に反映して対応することが可能である。
また、当社グループの売上高の大半を占めているガスによる売上高は、気温・水温等の変動により、大きな影響を受ける。このため、当社グループは、金融機関等との天候デリバティブ契約の締結等、そのリスクの軽減を検討している。
さらに、都市ガス事業は、需要拡大や安定供給のためにガス導管の敷設等の多大な設備投資が必要であるため、社債や借入金等の残高が多く、金利変動の影響が大きい。このため、金利の固定化及び金利スワップ等の活用により、そのリスクをヘッジしている。
6.資本の財源及び資金の流動性
(1) 資金需要
当社グループの運転資金需要の主なものは、ガス事業における原料LNG購入費用のほか、製造費、供給販売費及び一般管理費等の営業費用である。また、投資を目的とした資金需要は、ガス事業における供給設備(導管等)投資及び電力その他エネルギー事業や不動産事業など成長を見込める分野への投資等によるものである。
なお、新型コロナウイルス感染症の予防対策等の影響により、当社グループ内で運転資金が不足する子会社については、融資等による支援を行っている。
(2) 財務政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資及びグループ事業拡大に向けた投資資金については、金融機関からの長期借入と社債の発行による調達を基本としている。
また、当社は、当社グループ内でキャッシュ・マネジメント・サービスを実施しており、資金調達の一元化、余剰資金の活用等により、当社グループ全体の有利子負債の削減に努めている。
なお、金融機関には十分な借入枠を有しているため、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転資金、設備投資資金の調達は、今後も可能であると考えている。
7.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されている。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4.会計方針に関する事項」に記載している。この連結財務諸表の作成にあたって、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる要因等に基づき見積り及び判断を行っているが、見積り特有の不確実性があるために実際の結果は異なる場合がある。
また、当社グループにおける重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表(1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載している。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、翌連結会計年度以降において緩やかに収束に向かい、当社グループを取り巻く経済環境が徐々に回復へ向かうとの見通しを前提に、入手可能な情報に基づいて会計上の見積りを行っている。
8.目標とする経営指標の実績
当社グループは、2023年3月期を最終年度とするグループ中期経営計画「スクラム2022」において、「経常利益」、「ROA」、「ROE」、「自己資本比率」を、目標とする経営指標と定めた。
当連結会計年度における当該指標は次のとおりである。
「経常利益」は571百万円(前期4,558百万円)となった。
「ROA」は0.1%(前期0.5%)となった。
「ROE」は0.6%(前期2.3%)となった。
「自己資本比率」は18.8%(前期20.5%)となった。
なお、グループ中期経営計画「スクラム2022」における目標は次のとおりである。
項 目 |
目 標(2022年度) |
経常利益(3年合計) |
320億円 (※) |
ROA |
1.8% |
ROE |
8.3% |
自己資本比率 |
21.8% |
(※)2020年度~2022年度 計画合計
お知らせ