課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  当連結会計年度の経済及び情報サービス産業における経営環境は以下のとおりです。

国内及び海外の経済は、新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状況にありましたが、下期以降は厳しい状況が緩和される中で基調としては持ち直してきています。また、景気の先行きについては、感染対策に万全を期し、経済社会が正常に向かう中で、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、更に持ち直していくことが期待されますが、下期の後半におけるウクライナ情勢等による不透明感や変異株をはじめとする新型コロナウイルス感染症の拡大による、金融資本市場の変動等の影響及び経済への影響等に十分注意する必要があります。

国内の情報サービス産業においては、新型コロナウイルス感染症の拡大による社会情勢の変化への対応のためIT投資の重要性が高まり、既存システムの更新・刷新需要の復調やデジタルトランスフォーメーションの取り組み加速等を受けて、市場は改善をみせています。また、変異株をはじめとする感染症の拡大に伴うお客様企業におけるIT投資の抑制が懸念されるものの、好調な需要環境が継続し、2022年度以降についても改善が続くことが期待されます。

海外の情報サービス産業においては、新型コロナウイルス感染症の拡大による社会情勢の変化への対応に加え、景気回復や成長に向けたデジタルビジネスが拡大しています。今後も各業種におけるデジタルトランスフォーメーションの取り組みが更に加速していくことが期待されますが、一方で、欧州地域を中心としたウクライナ情勢によるお客様企業への影響や、変異株をはじめとする感染症の再拡大が懸念されるため、十分に注視する必要があります。

また、IT市場における競争環境は激化しており、様々なプレイヤーが社会・テクノロジーの変化に合わせてサービス・ラインナップを拡大させる中、当社がお客様へ貢献し続けるために、更なるグローバルレベルでの事業競争力強化の必要性が高まっております。

 

[前中期経営計画の振り返り]

当社グループは、「信頼されるブランドの浸透」により2025年のGlobal 3rd Stageにおいて、Global Top 5として世界のお客様から信頼される企業をめざしています。
 前中期経営計画(2019年度~2021年度)は今後の成長力の源泉となる強みを明確化して徹底的に磨き、実行していく期間として、「変わらぬ信念、変える勇気によってグローバルで質の伴った成長」を推進し、前中期経営目標として「連結売上高2.5兆円」、「顧客基盤80社以上」、「連結営業利益率8%」、「海外EBITA率7%」(注1)の達成をめざしてきました。
 
・変える勇気
 「変える勇気」として、デジタルへの取り組みの更なる加速とグローバルシナジーの最大化によるお客様への提供価値最大化をめざし、以下の4つの戦略を実行してきました。

 

戦略1:グローバルデジタルオファリング (注2) の拡充

「グローバルマーケティングの加速」、「積極投資によるオファリング創出」では、「グローバルマーケティングの加速」で定めた注力インダストリーに対して「積極投資によるオファリング創出」に取り組むことで、複数の商用化オファリングを創出し、その一つである生保BPaaSでは2020年度に引き続き、北米で大型案件を受注しました。
「技術集約拠点(CoE(注3))の拡充」ではBlockchain、Digital Design、Agile/DevOps(注4)、AI等の7分野のデジタルの技術・知見の共有や展開をグローバルで推進しています。

 

戦略2:リージョン特性に合わせたお客様への価値提供の深化

国内では、官公庁や金融機関、法人のお客様における基幹システム等、複数の大型案件を受注しただけでなく、国庫金キャッシュレスサービス等の分野・業界を跨いだ社会課題の解決や新しい社会のしくみづくりにつながるサービスを創出しています。また、北米やEMEA・中南米においても、大手サービス企業のデジタルパートナー案件や、鉄道会社のMaaSプラットフォーム案件等、複数年のデジタル大型案件の受注につながりました。

 

 

戦略3:グローバル全社員の力を高めた組織力の最大化

デジタル活用人財強化のための研修プログラムやADP制度(注5)・TG制度(注6)等の人事制度の活用に加え、2021年度には人財の多様化に向け、ジョブ型雇用の拡大や女性活躍を推進し、人財の拡充や社内風土及び意識の変革を進めてきました。

また、コンテンツやノウハウを社内で共有するためのデジタルナレッジシェアをグループ会社にも展開するなど、デジタルを活用した働き方の変革を推進してきました。
 
 NTTグループ連携の強化

NTTグループの共創案件の参画では、オーストラリア ビクトリア州の交通システムを支えるチケットシステム「myki」の構築・運用・支援に参画し、NTT Smart SolutionsによるAIを活用したリアルタイム混雑状況把握などのデジタル事例に貢献しました。
 また、IOWNを活用したデジタル社会変革創造では、2020年度に立ち上げたIOWN推進室を中心に社内からIOWN成果活用可能な事業構想を収集し、データ連携基盤構想など、IOWN技術活用に向けた基盤的取り組みを推進しています。


 上記に加え、前中期経営計画の完遂に向けては重要経営課題である「不採算案件の抑止」、「海外事業の収益性改善」に重点的に取り組みました。

「不採算案件の抑止」では、プロジェクト審査委員会等の取り組みに加え、1.リスクへの早期対応強化、2.現場力の更なる強化、3.管理プロセス強化、4.ナレッジの更なる蓄積と活用の4つの施策に取り組むことで不採算案件を大幅に減少させ、営業利益の確保に貢献しました。

海外事業の収益性改善」では、北米とEMEA・中南米における事業構造改革の成果により、EBITA率の改善とデジタルビジネスの拡大が進んでおります。

 

・変わらぬ信念

「変わらぬ信念」として、当社の企業理念「情報技術で、新しい『しくみ』や『価値』を創造し、より豊かで調和のとれた社会の実現に貢献する」を根底に、「NTTデータのESG経営」として、ESGの考え方を明確にし、経営戦略に織り込むことで、事業と企業活動を通じてSDGsの達成に貢献するとともに、企業価値を持続的に向上させています。
 
 また、主な活動実績として、2019年3月国連グローバル・コンパクトとUnited Nations Entity for Gender Equality and the Empowerment of Womenが女性の活躍推進に積極的に取り組むための行動原則を示した「WEPs」の趣旨に賛同し、同原則に基づき行動するためのステートメントに署名しました。2020年6月には、持続的な企業価値向上に向けてコーポレート・ガバナンス態勢のいっそうの充実を図るため、監査等委員会設置会社へ移行しました。更に2021年10月、カーボンニュートラルへの社会的な要請の高まりをうけて、グリーンイノベーション推進室を新設し、お客様や業界のCO 2 削減を推進し、脱炭素化社会の実現に貢献しました。
 これらの取り組みにより、前中期経営目標である「連結売上高2.5兆円」、「顧客基盤80社以上」、「連結営業利益率8%」 (注1) を達成しました。「海外EBITA率7%」 (注1) については新型コロナウイルス感染症影響による一時的な遅れがありましたが、北米では達成しました。  

 

[前中期経営計画における課題]

前中期経営計画(2019年度~2021年度)では、グローバルで質を伴った成長をめざし、海外事業の収益性改善とデジタルへの取り組みの更なる加速を推進してきました。

海外事業の収益性改善については、事業構造改革の成果により北米が2021年度にEBITA率7%を達成しました。しかしながら、国内事業に比べると未だ収益性が低く、海外事業の更なる成長に向けて、引き続き収益性改善とデジタルシフトの推進に取り組んでいく必要があると認識しております。

デジタルへの取り組みの更なる加速では、グローバルオファリングによるグローバルビジネスの拡大や各リージョンにおける様々なデジタルビジネスの獲得など様々な成果を創出することができました。

一方で、社会課題の解決・地球環境の貢献に向けてデジタルトランスフォーメーションは加速しており、更なる競争力の強化に向けた取り組みが必要と認識しております。

Global 3rd Stageに向けては、海外事業の質を伴った成長とデジタル領域における競争力の強化が継続課題であり、加えて、世界的に人財獲得競争が激化していることを踏まえ、多様な人財が長期に活躍できる環境・文化へ変革していくとともに、真のグローバル企業へと成長していくことが課題であると認識しております。

 

[新中期経営計画]
 上記のような経営環境及び課題を踏まえ、当社グループは2022年度~2025年度の新中期経営計画を以下のとおり策定しました。

 

1.基本方針
 Trusted Global Innovatorとして、未来に向けた価値をつくり、様々な人々をテクノロジーでつなぐことでお客様とともにサステナブルな社会を実現することをめざしていきます。

 
2.中期戦略
 お客様事業の成長を支え、お客様とともにサステナブルな社会を実現していくために、これまで培ってきた顧客理解と高度な技術力でシステムをつくる力と、様々な企業システムや業界インフラを支え人と企業・社会をつなぐ力を更に高めていきます。

具体的には、業界・技術のフォーサイトを起点とした変革提案と、高いアジリティを実現するアセットベースの価値提供により、経営変革・事業変革の構想策定から実現まで、End to Endの対応力を強化していくとともに、様々なモノやデータをつなぐEdge to Cloud サービス(注7)により、業界を超えて企業をつなぐ業際連携を実現し、企業・業界の枠を超えた新たな社会プラットフォームや革新的なサービスの創出をめざしていきます。

これらの取り組みをグローバル全体で推進していくため、NTTグループ傘下のNTT株式会社(以下、NTT, Inc.)と海外事業を統合し、ITとConnectivityを融合したサービスをトータルで提供する企業へ進化していきます。コンサルティングやアプリケーション開発に留まらず、Connectivity領域までを含むデジタルトランスフォーメーションに必要なサービスラインナップを一元的に整備し、複雑化・多様化するお客様のニーズにグローバルレベルで対応していきます。

 


 

戦略1.ITとConnectivityの融合による新たなサービスの創出
 NTTグループとの更なる連携強化により、Edge to Cloud(注7)のサービス提供力を強化していきます。幅広い業界にシステムを提供する強みと組み合わせ、様々な顧客接点やデータをセキュアにつなぎ合わせることで、企業・業界の枠を超えた業際連携を実現し、新たな社会プラットフォームや革新的なサービスを創出していきます。
 国内においてはソーシャルデザイン推進室を中心に各分野間の連携を強化し、海外ではSmart City(注8)分野や5G関連のビジネスを中心として、業際連携ビジネスの創出・拡大に取り組んでいきます。

 

戦略2.フォーサイト起点のコンサルティング力の強化
 各分野にコンサルティング専門組織を立ち上げるとともに、お客様や業界の未来(フォーサイト)を構想する方法論の整備とその実践の支援、コンサルティング人財の育成等、分野を横断的にサポートする機能を設置します。加えて、世界各地の業界・業務のスペシャリストが持つ様々な知見を集めて活用するネットワークを立ち上げます。これらの取り組みにより、お客様・業界の未来を構想するインダストリーコンサルティング力と、テクノロジー起点で未来を構想するテクノロジーコンサルティング力を強化し、共創パートナーとしてお客様の成長を支え、ビジネス変革を実現していきます

 
戦略3.アセットベースのビジネスモデルへの進化
 業界・業務のフォーサイト・ベストプラクティス、ソフトウェア、自社ツール等、お客様に提供できる価値を再利用可能な状態で集約化し、それらを活用したコンサルティングから、デリバリー・マネージドサービス(注9)をグローバル全体で推進していきます。これまでの受託SIを主体としたビジネスモデルから自ら提案・発信するビジネスモデルへと変革し、デジタル時代にふさわしいビジネスアジリティを備え、お客様への提供価値を最大化していきます 

 また、戦略2、戦略3における取り組みを全社横串で連携させ変革を加速していくために、社長直轄の本社組織として「コンサルティング&アセットビジネス変革本部」を2022年7月に設置します。

 

 戦略4.先進技術活用力とシステム開発技術力の強化
 Emerging、Growth、Mainstreamの技術の成熟度に応じた3つ領域における活動を推進し、未来の競争力獲得に向けた先進技術活用力の強化と生産性の向上に向けたシステム開発技術力の強化を両輪で進めていきます。
 (Emerging領域)
 先進技術に対する感度が高い世界7カ国にInnovation Centerを立ち上げ、各地域にチームを組成し、イノベータ顧客との共創R&Dを実施することで、未来の競争力獲得に向けた技術やノウハウを獲得していきます。
 (Growth領域)
 前中期経営計画で取り組んだCoE活動を発展させたCompetency Centerの施策に基づき、今後成長が見込まれる技術のビジネス仮説の立案検証、認知度拡大、プリセールス・デリバリ支援を推進し、次の注力技術領域を育てていきます。
 (Mainstream領域)
 グローバルビジネスの拡大に向けて、テクノロジーの注力領域を定め、主流となるグローバルテクノロジーのアセット開発・展開を推進していきます。

 

 戦略5.人財・組織力の最大化
 グローバルで最先端技術が学べる育成システムや、高い専門性に応じた処遇の実現等、社員の自律的な成長を促す制度を整備するとともに、業務の特性等に応じて働く時間と場所を柔軟に設定できる環境を実現することで、ダイバーシティ、エクイティ & インクルージョン(注10)を推進し、従業員エンゲージメントを向上していきます。
 多様な人財一人ひとりが自分自身を表現し、活躍できる組織機能・カルチャーを持った、働く人にとって魅力的な企業へと変革し、各戦略の実行を支える人財・組織力を最大化するとともに、将来にわたっての企業価値を高めていきます

 

事業成長に向けたグローバル連携機能の強化と戦略投資
 これらの5つの戦略を支える仕組みとして、グローバルを前提としたMarketing、Innovation、Governanceの機能を強化し、事業環境の変化に迅速に対応していくとともに、投資と成長の好循環を確立し、Global 3 rd  Stageに向けた事業成長を実現していきます。
 具体的には、Industry、Technologyの注力領域に加え、サステナビリティやIOWN (注11) といった社会変革を実現するテーマに対する投資枠を新設し、将来のビジネス創出に向けた戦略的な投資をグローバル全体で推進していきます。 

 

サステナビリティ経営

上記のような経営環境のとおり、社会を取り巻く環境は日々大きく変化しています。当社は、この大きな変化の局面を更なる成長の機会と捉え、これまでのESG経営の取り組みを拡大し、長期的な視点を持ったサステナビリティ経営として推進していきます。
 新中期経営計画では、「Realizing a Sustainable Future」というスローガンのもと、以下の3つの軸を定め、9つのマテリアリティを設定しました。
 
「Clients’Growth サステナブルな社会を支える企業の成長」
「Regenerating Ecosystems 未来に向けた地球環境の保全」
「Inclusive Society 誰もが健康で幸福に暮らせる社会の実現」
 
 これらマテリアリティを元に、企業活動と事業活動を通じてサステナブルな社会の実現に取り組んでいきます。 

なお、サステナビリティ経営の推進に向けて、2022年7月に非財務指標を中心とした事業戦略を統括するサステナビリティ経営推進部を設置します。

 

NTTデータの企業理念「情報技術で、新しい『しくみ』や『価値』を創造し、より豊かで調和のとれた社会の実現に貢献する」は、大きな変化を迎える時代においても、当社の存在意義そのものです。今後もこの企業理念のもと、当社は未来に向けた価値をつくり、様々な人々をテクノロジーでつなぐことでお客様とともにサステナブルな社会を実現していきます。

 


 

3.新中期経営目標※1
   連結売上高 4兆円超
   連結営業利益率※2 10%
   海外EBITA率※2 10%
   顧客基盤※3     120社

※1 当社とNTT, Inc.との事業統合を前提とした数値。なお、NTT, Inc.の業績予想値については、現時点で把握可能かつ一定の前提に基づく数値。

※2 M&A・構造改革等の一時的なコストを除く

※3 年間売上高50億円以上(日本)、もしくは50百万ドル以上(日本以外)のお客様

 

(注1)
前中期経営計画の目標値は以下の前提でのものとなります。
顧客基盤の対象は、年間売上高50億円以上(日本)、もしくは50百万ドル以上(日本以外)のお客様となります。
・連結営業利益率及び海外EBITA率は、M&A・構造改革等の一時的コストを除いたものとなります。

 

(注2)デジタルオファリング
最先端技術を活用してお客様へ提供する商品・サービス等のことです。

 

(注3CoE(Center of Excellence)
高度な研究・開発活動を行い、人財及び事業の創出・育成の中核となる拠点のことです

 

(注4)DevOps
開発チームと運用チームが連携してシステムに対するお客様要求に高品質・柔軟・短期間に対応するために、ツールや開発手法等で構成される仕組みのことです

 

(注5)ADP(Advanced Professional)制度
AI、IoT、クラウドなど先進技術領域やコンサルティングの領域において卓越した専門性を有した人財を外部から市場価値に応じた報酬で採用する制度です

 

(注6)TG(Technical Grade)制度
専門的スキルを持つ人財の潜在能力を最大限に活かして評価する制度です

 

(注7)Edge to Cloudサービス
IoT端末やスマートデバイス、その近くに設置されたサーバでデータ処理・分析を行うエッジコンピューティングと、データを集中管理・処理するクラウドコンピューティングを組み合わせたアーキテクチャのことです。
 
(注8)Smart City
IT技術をインフラ等の運用に活用する次世代型の都市のことです。
 
(注9)デリバリー・マネージドサービス
ITサービスに付随するハードウェア、ソフトウェア等の導入などの環境構築から管理運用までを一体型で提供するサービスのことです。

 

(注10)ダイバーシティ, エクイティ & インクルージョン

持続可能な社会の実現のために取り組むべき多様性、公平性、包摂性のことです。
 

(注11)IOWN
Innovative Optical and Wireless Networkの略称で、光を中心とした革新的技術を活用した、これまでのインフラの限界を超えた高速大容量通信ならびに膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤のことです。

 

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